【どうにか必死で奮闘中!】前世ではコミュ症だった俺、漆黒剣聖に転生する。 ~陰キャだった俺とポンコツ元駄女神の異世界セカンドライフ~

錦木れるむ

文字の大きさ
上 下
46 / 59
第二章 王国国立学園入学。

Ep.13.0-① 今、自分にできる全てを。-①

しおりを挟む
ギッ、ギ、ギギー!!

俺の刀とグレイブの剣が強く擦れ、黒板を引っ掻いた時よりも何倍も何倍も不快な音が辺りに響き渡る。

今度は俺とグレイブがうまく鍔迫り合いをしているのを見て、ルアが現実の方で、大きな声を上げた。

「レイジ、それって……!」 

やっぱりルアはよく分かってくれているみたいだ。

振り向かないまま、だが、笑顔で答える。

「ああ、コイツは、この刀は、俺の、霞ヶ浦佑介だった俺としての結晶だ……!」

「チッ。
 ……レイジ・アルフェリス!!
 なんだ、そのふざけた片刃の剣は!!
 やはり、お前は……殺す!」

グレイブはバツが悪そうな顔をしながら、舌打ちをして俺を脅してから、一度後ろに引き下がった。

おいおい、キャラ変わっちゃってますよ、グレイブさん。
でも、よし!
これなら……! 

全く疲れを感じさせられないほどに相変わらずグレイブの押す力はすごかった。
それこそ、一瞬でも気を抜いたら一瞬でやられるであろうほどに。
だが、先程とは異なっているのは、今は俺の刀は少し刃こぼれはしてしまったものの、全く折れたりしていない。

よかった……。

俺はまた内心少しだけほっとした。
流石、硬いな、
なにせ、この刀は、俺が知っている中で最も硬い合金、二ホウ化レニウム:化学式ReB2で作られているのだから。

さっき生成を始めようとしていたときに、俺は考えた。
このまま普通の素材で新たな剣を作ってしまっても、またグレイブに折れるだけなのではないかと。
そこで、前世、霞ヶ浦佑介だった頃の父さんが仕事の関係で持っていた材料工学の本の事を思い出した。
そこに最も硬い合金として記されていたのが、この二ホウ化レニウムだった。
その僅かな記憶から、その合金のイメージを固めるのは少し難しかったが、前世での化学の授業で得ていた知識も利用したおかげで、どうやらちゃんと生成できていたようだ。

まあ、硬さでは魔鉱にはやはり劣ってしまっているというような感じだが、これぐらいなら充分にまだ時間は稼げそうだ。

刀だったっていうのは正直、結構、予想外だったけど。

それにしても、元々日本人だった俺が、かつてニホニウムとして扱われかけたレニウムを使った合金でできたまたこれ日本に馴染み深い刀を異世界で使うことになるだなんて不思議な巡り合わせだ。

過去に捨てたつもりでいた、霞ヶ浦佑介という人生で獲得した知識を使ったという事、そしてあの状況で自分が無意識に刀を欲してしまっていたという事も、また感慨深い物だし。
案外、あの人生、霞ヶ浦佑介として生きた俺のあの十六年間も……全てが無くなってしまったって訳じゃなかったのかもしれないな……。

いけねえ、気、引き締めねえと。

軽く息を吐き、呼吸を整える。
グレイブはこちらの動きを警戒しているためか、なかなか手を出してこない。

再び、ルアに念話で語りかけた。

『ルア!
 反撃を始める!
 援護、頼むぞ!』

『りょうかい!!!
 後方支援は任せてー!!』

流石、やっぱりルアはすごいな。
ポンコツなとこ以外、いや、ポンコツなとこも含めて、愛してるよ、ルア。

覚悟を決め、火と光の合成魔素を練ろうとした時、体中を強烈な痛みが駆け巡った。

……!
……魔素切れが近い!
クッソ、それでも……!

頑張って練ろうと練ろうとするも、あまりの激痛に体中から悲鳴が上がる。

次の瞬間、グレイブが切り込んで来た。

……っ!

すぐに反応し、剣を軌道を妨げるように持っていく。

ガン!

グレイブの剣を受け止め、流す。

『レイジ、伏せて!』

言われた通りに伏せると、ルアの放った水でできた龍のような魔術、“龍神”が頭の上を通過する。
グレイブはそれを避け、また引き下がる。

『レイジ、集中して!』

分かってるよ、そんな事!
なんだ!?
何か方法はないのか!?
あー!
どうすれば……!!
何か重大な事を見落としている気がする……!

正面の方を向くと、ルアの“龍神”がグレイブに喰らい付いていた。
そして、グレイブがそれをがなかなか離れない。


俺の魔素因子って水と闇じゃん……!

この世界に転生した時から自分の魔素因子が水と闇って分かってたから、毎日毎日ずっと水と闇の魔術を練り続けて来たんじゃないか!!
刀に乗せる型が無くたっていい。
今は、自分にできる全てを出し切るべきだ。
それに、属性が持っている魔素因子と同じであれば、より使う魔素も少なくてすむ……!

手から莫大な量の闇と水の魔術を練り出し、刀に注ぎ込む。

アルフェリス家の剣とは反対に、刀は段々冷たくなり、黒いオーラを纏い始める。

後は。

今の俺には、前世で、霞ヶ浦佑介として六歳から始めた剣道の型がある。
レイジ・アルフェリスとして詰んだ金属の剣の扱いの理解がある。

もう、負けねえ!

***
こんばんは、設定の見直しに追われている錦木れるむです。

ご気軽にコメントお願い致します。必ず返信させていただきます。応援、感想コメント頂けると嬉しいです。また、表現や、言葉などに間違えなどがあったら指摘してくださるとありがたいです。よろしければ、お気に入りもよろしくお願いいたします!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……

こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた

こばやん2号
ファンタジー
 とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。  気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。  しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。  そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。  ※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

婚約破棄された私と、仲の良い友人達のお茶会

もふっとしたクリームパン
ファンタジー
国名や主人公たちの名前も決まってないふわっとした世界観です。書きたいとこだけ書きました。一応、ざまぁものですが、厳しいざまぁではないです。誰も不幸にはなりませんのであしからず。本編は女主人公視点です。*前編+中編+後編の三話と、メモ書き+おまけ、で完結。*カクヨム様にも投稿してます。

魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
小説家になろうでジャンル別日間ランキング入り!  世界最強の剣聖――エルフォ・エルドエルは戦場で死に、なんと赤子に転生してしまう。  美少女のように見える少年――アル・バーナモントに転生した彼の身体には、一切の魔力が宿っていなかった。  忌み子として家族からも見捨てられ、地元の有力貴族へ売られるアル。  そこでひどい仕打ちを受けることになる。  しかし自力で貴族の屋敷を脱出し、なんとか森へ逃れることに成功する。  魔力ゼロのアルであったが、剣聖として磨いた剣の腕だけは、転生しても健在であった。  彼はその剣の技術を駆使して、ゴブリンや盗賊を次々にやっつけ、とある村を救うことになる。  感謝されたアルは、ミュレットという少女とその母ミレーユと共に、新たな生活を手に入れる。  深く愛され、本当の家族を知ることになるのだ。  一方で、アルを追いだした実家の面々は、だんだんと歯車が狂い始める。  さらに、アルを捕えていた貴族、カイベルヘルト家も例外ではなかった。  彼らはどん底へと沈んでいく……。 フルタイトル《文字数の関係でアルファポリスでは略してます》 魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります~父が老弱して家が潰れそうなので戻ってこいと言われてももう遅い~新しい家族と幸せに暮らしてます こちらの作品は「小説家になろう」にて先行して公開された内容を転載したものです。 こちらの作品は「小説家になろう」さま「カクヨム」さま「アルファポリス」さまに同時掲載させていただいております。

処理中です...