【どうにか必死で奮闘中!】前世ではコミュ症だった俺、漆黒剣聖に転生する。 ~陰キャだった俺とポンコツ元駄女神の異世界セカンドライフ~

錦木れるむ

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第一章 終わり。そして、新たな道へ。

番外編 Ep.1.5〈彼の後ろ姿〉-⑦ 間に合え

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その次の瞬間、私と神楽坂君は同時に教室を飛び出した。

榊原君が何かを佑介君にするとは考えたくないけど、あのさっきの表情からして、多分何かを考えているはず。
榊原君の中学時代を知る神楽坂君がここまで焦っていると言うことからも、この仮説はあり得なくはないと言うことなのだろう。

「佐川!
 今、佑介がいるとしたら、恐らく、駅や!
 さっき話した時、アイツ、隣の駅のゲーセンに寄るって言っとった!」

「分かった!
 急ごう!」

私と神楽坂君が死ぬ物狂いで走っているのを見て、廊下にいた他の生徒達は道を開けてくれた。

ねえ、佑介君。
私は頑張るよ。
止めて見せるよ、榊原君を。
私を救ってくれた、見つけてくれたあなたへの恩返しにはまだまだ足りないと思う。
こんなの自分勝手な傲慢だってこともちゃんと分かってる。
でも、もう私、決めたよ。
私は、あなたを、霞ヶ浦佑介君を諦めない……!

急いで階段を下る。

と、その時、足を踏み外し、踊り場までまだ六段ぐらいある所から落下した。

やばい、手をつかないと……!

が、間に合わず、頭から落下した。

ガンッ!

っ……!

かつてないほどに強く頭をぶつけて、一瞬意識が揺らぐ。
気が遠くなる……。

「大丈夫か!?
 佐川!?」

「さーちゃん!?」

「佐川さん!?」

私が転落した事に驚いて大勢の人が駆け寄って来てくれた所で、私は意識を持ち直した。

まずい、急がないと……!

少し先まで走っていた神楽坂君も、駆け寄って来た。

「さ、佐川、大丈夫か?
 佑介の事はええ、俺に任せろ、お前は保健室に……」

「いい!
 大丈夫だから!
 それよりも早く……!」

任せた方がいいと分かっていたのに、私は何故かそれを頑なに拒否してしまった。

「いや、言っときなよ」

「そうそう、行っといた方がいいよ?
 大体なんでそんな急いでんの?」

「さーちゃん、本当に行った方がいいよ!?
 おでこから血が……!」

他の人も口々に保健室に行くように促されるも、私はそれを振り切ってまた走り始めた。
それを見て、神楽坂君も続く。

後ろから、人が心配そうに叫んでいたが、私は気にしなかった。

「おい、佐川!
 本当に大丈夫なんか、お前?」

校舎の一階に着いた神楽坂君は走りながら、心配そうに聞いた。

正直に言うと、とても痛い。
まだ頭が全体的にガンガンするし、おでこのところはズキズキと痛む。
そういえば、おでこから血が出てるとかさっきだれか言ってたっけ?
まあ、気にしないけど。

「大丈夫だよ!
 急ごう!」

私と神楽坂君は、上履きを外靴に高速で履き替え、外に飛び出した。

「まあ、それは別として、お前、着いて来れるか!?
 ここから先はマジでスピード勝負やぞ?
 なんなら俺、先行かせてもらうで?」

「つべこべ言わずに急ぐよ?
 忘れた?
 私、陸上部!」

そう言い放ち、一気に加速する。

校門までざっと百メートル、学校から駅までの最短の道のりで、約四分。
絶対に間に合わせる!

全速力で校門を飛び出し、一気に通学路を駆け抜ける。


「ギャアアアアアアアア!」

学校と駅の中間ぐらいの所で急に、後ろから神楽坂君の耳をつん裂くような悲鳴が聞こえた。

急いで立ち止まって後ろを振り返る。
神楽坂君は左脚を抱えて地面に蹲っていた。

中学の時からずっと陸上部をやって来ていた私はが何なのかすぐに分かった。

腱……!

すぐに神楽坂君に駆け寄る。

「か、神楽坂君!
 大丈夫!?
 足、腱だよね!?
 救急車……!」

すぐにスマートフォンをポケットから出そうと引っ張り出そうとすると、神楽坂君はそのまさに引っ張り出そうとした手を握り、それを止めた。

「いい、やらんで……!
 早く行っとくれ!
 お前の好きな人の……、いや、お前に恋しとる、佑介の元に!
 そして、助けてやってくれ!
 俺の親友、霞ヶ浦佑介を!
 ……そして……俺が救えなかったかつての親友、榊原玄弥を……!
 俺も応急処置したら行く!」

神楽坂君は泣いていた。
叫びながら。

私は再び立ち上がって駆け出した。

佑介君と両片思いその事が今分かっても、今はただ、走ることしか出来ない。


そのまま走り続けたものの、私は佑介君も榊原君も両方見つける事ができなかった。

と言う事は、ここ、駅にいるの?

改札機に定期の入った財布をかざし、駆け足で構内に入る。

そして、ホームに入った所で、見つけた。

佑介君も榊原君も、両方。


だが、遅かった。
ちょうど、榊原君は佑介君をホームから線路に突き落とした所だった。

「佑介君!!!!!!」

叫ぶことしか、できなかった。

***
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