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第二章 王国国立学園入学。
Ep.9.0-② アルフェリス家の剣。-②
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「ま、まずはもう一度ゆっくり説明してくれ。
なんて言ったんだ?」
じいちゃんにそう言われた父さんと俺は、俺の“技能《スキル》”の事、魔素因子の事、そして俺がアルフェリス家の剣の型を習得したいと考えている事をゆっくりと落ち着きながら、二人で説明した。
「なるほど……。
……事情は分かった。
レナード、頼む、少し席を外してくれ。
この事についてまず、レイジと二人で話をしたい」
まあ、そうなるよな。
分かってたよ。
「分かった。
レイジ、しっかりじいちゃんと話し合いなさい」
「ああ、分かってるさ、父さん。
ゆっくり休んでて」
父さんが頷いて、出て行ったのを確認すると、じいちゃんは俺の正面に座り直し、俺のめを見ながら言った。
「レイジ。
お前には覚悟があるのか?
お前にとって適性魔素ではない、火と光の魔術を使うアルフェリス家の剣を習得するのは本当に想像を絶するほどに困難な道だ。
いくら、出来がよくて、我慢強いお前だからと言っても、ちゃんと習得しきれるとは限らんぞ?
親や国王陛下などの期待は今は一切考えなくてもいい、忘れていい。
お前の心の中にある、率直なお前の意思を教えてくれ。
もう一度聞く。
本当に、本当にお前にその覚悟はあるのか?」
そんなもの、最初から決まっている。
七年前のあの時、誓ったんだ。
もう、絶対に後悔しないように生きると。
「ある。
あるよ、じいちゃん。
どんなに困難な道でも俺は諦めない。
絶対に習得してみせる。
だから俺に、レイジ・アルフェリスに、アルフェリス家の剣を学ぶ事を許可してくれ。」
俺がそう言って頭を下げると、じいちゃんは笑って俺の頭を優しく撫でた。
「やっぱりか。
なんとなく、そんな気はしていたよ。
いいだろう、許可する。
父さんには私から伝えておく。」
「あ、ありがとう!
じいちゃん!」
俺が喜ぼうとすると、じいちゃんは真面目な顔になり、俺に言った。
「でも、一つ聞きなさい、レイジ。」
?
まだ何かあるのだろうか?
「何?
じいちゃん?」
「お前は強くて優しい、そして私の知る中で一二を争うほどに負けず嫌いな子だ。
何事にもまずはぶつかっていこうとする。
それは実にいい事だ。
だがな、時には諦めも、妥協も肝心だぞ?
くれぐれも……くれぐれも、自分を見失なってはならんぞ?
どこまでどこまでも、ただただ力を求め続け、結果的に自分自身の事をを見失なってしまった剣士は、もう、剣士ではない。
そうなってしまったら、それはもうただの獣なのだ」
どこか悲しそうな、悔しそうな、複雑な顔をしながらじいちゃんは俺にそう言った。
何かはよく分からないが、もしかしたら、じいちゃんにも複雑な事情があるのかも知れない。
でもこう言うのはあまり深掘りしない方がいいと思い、俺は特に何も言わなかった。
「分かった。
約束するよ、じいちゃん」
そう言うとじいちゃんは再び笑顔に戻り、俺に小指を向けて来た。
「よしじゃあ、約束だぞ、レイジ。
ほら、指切りだ」
こんな年(でも外見はまだ七歳だが)になってまで、指切りをするのは恥ずかしかったが、俺も小指を伸ばし、じいちゃんの血管の浮き出た指を握った。
「「指切りげんまん嘘ついたらブラストインフェルノドラゴンの巣に突き落とす。
指切った」」
じいちゃんの小指はしわしわで血管が浮き出ていて、いかにもおじいちゃんって感じの見た目だったが、握る力はとても強く、俺は指が潰れるかもと思ってしまうほどだった。
さすがは元王国騎士団長だね。
その後、俺はじいちゃんに父さんを呼んでくるように言われ、部屋を出た。
大広間のソファーでうとうとしていた父さんを見つけ、叩き起こし、じいちゃんの元へ行くように伝え、ソファーに座ると、唐突に凄まじい眠気に襲われた。
どうやらもうカフェインが効かないほどに疲れているらしい。
俺の意識は段々と沈んでいった。
ーーー
レイジがソファーに寝転ぶのを確認し、応接間に入ると、父が待っていた。
「父さん、レイジは……」
自分がそう聞くと、父は嬉しそうに答えた。
「頑張って習得するそうだ。
お前もいい息子を持ったものだな、レナード」
よかったな、レイジ、じいちゃんに褒められたぞ。
「ありがとう、父さん。
本当に出来すぎた自慢の息子だよ……。
それで……大丈夫なのか、父さん?
身体の方は」
父は苦虫を噛み潰したような顔をしながら答えた。
「大丈夫と言いたい所だが……少し、悪化した。
医者に渡される薬の量が増えたよ。
私の身体はあとどれほど持つのだろうな……」
やはりか……この頃顔色が悪いと思っていたのだが……。
だが、父にはまだ生きていてもらわないと困る。
まだ自分は一人では分家の総括とかもできないし、何よりも死なれたら悲しいのだ。
親孝行しきれてないのに、母みたいに逝ってしまわないでほしい……。
***
ご気軽にコメントお願い致します。必ず返信させていただきます。応援、感想コメント頂けると嬉しいです。また、表現や、言葉などに間違えなどがあったら指摘してくださるとありがたいです。よろしければ、お気に入りもよろしくお願いいたします!
なんて言ったんだ?」
じいちゃんにそう言われた父さんと俺は、俺の“技能《スキル》”の事、魔素因子の事、そして俺がアルフェリス家の剣の型を習得したいと考えている事をゆっくりと落ち着きながら、二人で説明した。
「なるほど……。
……事情は分かった。
レナード、頼む、少し席を外してくれ。
この事についてまず、レイジと二人で話をしたい」
まあ、そうなるよな。
分かってたよ。
「分かった。
レイジ、しっかりじいちゃんと話し合いなさい」
「ああ、分かってるさ、父さん。
ゆっくり休んでて」
父さんが頷いて、出て行ったのを確認すると、じいちゃんは俺の正面に座り直し、俺のめを見ながら言った。
「レイジ。
お前には覚悟があるのか?
お前にとって適性魔素ではない、火と光の魔術を使うアルフェリス家の剣を習得するのは本当に想像を絶するほどに困難な道だ。
いくら、出来がよくて、我慢強いお前だからと言っても、ちゃんと習得しきれるとは限らんぞ?
親や国王陛下などの期待は今は一切考えなくてもいい、忘れていい。
お前の心の中にある、率直なお前の意思を教えてくれ。
もう一度聞く。
本当に、本当にお前にその覚悟はあるのか?」
そんなもの、最初から決まっている。
七年前のあの時、誓ったんだ。
もう、絶対に後悔しないように生きると。
「ある。
あるよ、じいちゃん。
どんなに困難な道でも俺は諦めない。
絶対に習得してみせる。
だから俺に、レイジ・アルフェリスに、アルフェリス家の剣を学ぶ事を許可してくれ。」
俺がそう言って頭を下げると、じいちゃんは笑って俺の頭を優しく撫でた。
「やっぱりか。
なんとなく、そんな気はしていたよ。
いいだろう、許可する。
父さんには私から伝えておく。」
「あ、ありがとう!
じいちゃん!」
俺が喜ぼうとすると、じいちゃんは真面目な顔になり、俺に言った。
「でも、一つ聞きなさい、レイジ。」
?
まだ何かあるのだろうか?
「何?
じいちゃん?」
「お前は強くて優しい、そして私の知る中で一二を争うほどに負けず嫌いな子だ。
何事にもまずはぶつかっていこうとする。
それは実にいい事だ。
だがな、時には諦めも、妥協も肝心だぞ?
くれぐれも……くれぐれも、自分を見失なってはならんぞ?
どこまでどこまでも、ただただ力を求め続け、結果的に自分自身の事をを見失なってしまった剣士は、もう、剣士ではない。
そうなってしまったら、それはもうただの獣なのだ」
どこか悲しそうな、悔しそうな、複雑な顔をしながらじいちゃんは俺にそう言った。
何かはよく分からないが、もしかしたら、じいちゃんにも複雑な事情があるのかも知れない。
でもこう言うのはあまり深掘りしない方がいいと思い、俺は特に何も言わなかった。
「分かった。
約束するよ、じいちゃん」
そう言うとじいちゃんは再び笑顔に戻り、俺に小指を向けて来た。
「よしじゃあ、約束だぞ、レイジ。
ほら、指切りだ」
こんな年(でも外見はまだ七歳だが)になってまで、指切りをするのは恥ずかしかったが、俺も小指を伸ばし、じいちゃんの血管の浮き出た指を握った。
「「指切りげんまん嘘ついたらブラストインフェルノドラゴンの巣に突き落とす。
指切った」」
じいちゃんの小指はしわしわで血管が浮き出ていて、いかにもおじいちゃんって感じの見た目だったが、握る力はとても強く、俺は指が潰れるかもと思ってしまうほどだった。
さすがは元王国騎士団長だね。
その後、俺はじいちゃんに父さんを呼んでくるように言われ、部屋を出た。
大広間のソファーでうとうとしていた父さんを見つけ、叩き起こし、じいちゃんの元へ行くように伝え、ソファーに座ると、唐突に凄まじい眠気に襲われた。
どうやらもうカフェインが効かないほどに疲れているらしい。
俺の意識は段々と沈んでいった。
ーーー
レイジがソファーに寝転ぶのを確認し、応接間に入ると、父が待っていた。
「父さん、レイジは……」
自分がそう聞くと、父は嬉しそうに答えた。
「頑張って習得するそうだ。
お前もいい息子を持ったものだな、レナード」
よかったな、レイジ、じいちゃんに褒められたぞ。
「ありがとう、父さん。
本当に出来すぎた自慢の息子だよ……。
それで……大丈夫なのか、父さん?
身体の方は」
父は苦虫を噛み潰したような顔をしながら答えた。
「大丈夫と言いたい所だが……少し、悪化した。
医者に渡される薬の量が増えたよ。
私の身体はあとどれほど持つのだろうな……」
やはりか……この頃顔色が悪いと思っていたのだが……。
だが、父にはまだ生きていてもらわないと困る。
まだ自分は一人では分家の総括とかもできないし、何よりも死なれたら悲しいのだ。
親孝行しきれてないのに、母みたいに逝ってしまわないでほしい……。
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