8 / 59
第一章 終わり。そして、新たな道へ。
番外編 Ep.1.5〈彼の後ろ姿〉-② おかしい……?
しおりを挟む
おかしいの?
お父さんが?
私の家が?
いつもされている事だから、さっき会ったばかりの男の子におかしいと言われても私は、よく分からない。
これが普通なんじゃないの?
「おかしいの?」
彼は大きく頷いた。
「当たり前だよ。
そもそも、子供はお酒とタバコは買っちゃダメだし、使ってもダメって法律で決まってるんだから。
あとさ、君だって、嫌じゃないの?
お父さんに殴られたりするの。
誰かに相談したほうがいいよ。」
確かに、痛いのは私だって嫌だ。
本当は殴られたりするのは嫌だ。
怖い事言われたり、無視されたり、家から追い出されたりするのも嫌だ。
でも、だからってどうしたらいいの?
相手は、大人だし……、怖いよ。
それとも誰かが止めてくれるとでもいうの?
「嫌だよ。
本当は。
でもさ、学校の先生にも迷惑かけたくないし、友達にも心配されるのは嫌だし……。
私が我慢すれば全部解決なんだよ。
私ね、よく学校で褒められるんだ~。
我慢強いって。
だから大丈夫だよ。」
あれ?
なんだろう。
心がきゅーっと締め付けられるような……。
「やっぱり辛いんじゃん。」
いきなり何言うんだろ?
この人。
別に私……。
「は?
なんで?」
彼は心配そうな顔で言った。
「だって君、今泣いてるじゃん。」
!?
驚いて目元に触れる。
濡れていた。
自分が泣いているのだと気づいた途端、涙がどっと溢れて来た。
抑えられなかった。
みっともなく、大泣きをしてしまった。
恥ずかしい。
でも、そんな事がどうでもよくなるほど、私は泣いた。
涙と鼻水で、顔をぐちゃぐちゃにしながら。
その間、彼は、黙ってティッシュを差し出してくれたり、背中をさすってくれたりした。
暖かかった。
初めてかもしれない。
人からここまで優しくしてもらったのは。
私は、学校の先生やクラスメイトとかに、「亜里沙ちゃんは一人でなんでもできてすごいね。」とか、「羨ましいなー。」などと、声をかけられることがあった。
でも、本当に私が欲しかったのはそんな言葉じゃない。
今、彼がやってくれているように、ただ、黙って側にいてくれる事だ。
静かな優しさをくれる事だ。
一体、彼は何者なのだろう?
まるで、ヒーローのようだ。
どこからともなく現れて、助けてくれる、底なしの優しさを持つ人。
しばらくして、私が落ち着いてくると、彼は言った。
「一人で抱え込んじゃだめなんだ、そういう事は。
我慢すんな。
頼れよ、誰でもいいから。
なんなら俺、力になるからさ。
じゃあ、これ。」
と彼は何かメモを渡してきた。
「なにこれ?」
彼は笑顔で答えた。
「俺の家の電話番号と、住所。
なんかあったら連絡してくれてもいいし、押しかけても大丈夫だから。
あ、そういえばまだ名前言って無かったね。
俺、霞ヶ浦佑介って言うんだ。
霞ヶ浦市の霞ヶ浦に、にんべんと右の佑と、介。」
霞ヶ浦佑介。
「ありがとう。
佑介君。
うん、なんかあったらするね、電話。」
「勿論!
いつでもいいよ。
じゃあ、君の名前……」
そう言った時、彼の腕時計がピーと鳴った。
すると、彼はハッとしたような顔をして、
「あ、いっけね。
ごめん、俺、おつかいして帰らないといけないんだ。
またね!
電話してね!」
と、走って行ってしまった。
***
ご気軽にコメントお願い致します。必ず返信させていただきます。応援、感想コメント頂けると嬉しいです。また、表現や、言葉などに間違えなどがあったら指摘してくださるとありがたいです。よろしければ、お気に入りをよろしくお願いいたします!
お父さんが?
私の家が?
いつもされている事だから、さっき会ったばかりの男の子におかしいと言われても私は、よく分からない。
これが普通なんじゃないの?
「おかしいの?」
彼は大きく頷いた。
「当たり前だよ。
そもそも、子供はお酒とタバコは買っちゃダメだし、使ってもダメって法律で決まってるんだから。
あとさ、君だって、嫌じゃないの?
お父さんに殴られたりするの。
誰かに相談したほうがいいよ。」
確かに、痛いのは私だって嫌だ。
本当は殴られたりするのは嫌だ。
怖い事言われたり、無視されたり、家から追い出されたりするのも嫌だ。
でも、だからってどうしたらいいの?
相手は、大人だし……、怖いよ。
それとも誰かが止めてくれるとでもいうの?
「嫌だよ。
本当は。
でもさ、学校の先生にも迷惑かけたくないし、友達にも心配されるのは嫌だし……。
私が我慢すれば全部解決なんだよ。
私ね、よく学校で褒められるんだ~。
我慢強いって。
だから大丈夫だよ。」
あれ?
なんだろう。
心がきゅーっと締め付けられるような……。
「やっぱり辛いんじゃん。」
いきなり何言うんだろ?
この人。
別に私……。
「は?
なんで?」
彼は心配そうな顔で言った。
「だって君、今泣いてるじゃん。」
!?
驚いて目元に触れる。
濡れていた。
自分が泣いているのだと気づいた途端、涙がどっと溢れて来た。
抑えられなかった。
みっともなく、大泣きをしてしまった。
恥ずかしい。
でも、そんな事がどうでもよくなるほど、私は泣いた。
涙と鼻水で、顔をぐちゃぐちゃにしながら。
その間、彼は、黙ってティッシュを差し出してくれたり、背中をさすってくれたりした。
暖かかった。
初めてかもしれない。
人からここまで優しくしてもらったのは。
私は、学校の先生やクラスメイトとかに、「亜里沙ちゃんは一人でなんでもできてすごいね。」とか、「羨ましいなー。」などと、声をかけられることがあった。
でも、本当に私が欲しかったのはそんな言葉じゃない。
今、彼がやってくれているように、ただ、黙って側にいてくれる事だ。
静かな優しさをくれる事だ。
一体、彼は何者なのだろう?
まるで、ヒーローのようだ。
どこからともなく現れて、助けてくれる、底なしの優しさを持つ人。
しばらくして、私が落ち着いてくると、彼は言った。
「一人で抱え込んじゃだめなんだ、そういう事は。
我慢すんな。
頼れよ、誰でもいいから。
なんなら俺、力になるからさ。
じゃあ、これ。」
と彼は何かメモを渡してきた。
「なにこれ?」
彼は笑顔で答えた。
「俺の家の電話番号と、住所。
なんかあったら連絡してくれてもいいし、押しかけても大丈夫だから。
あ、そういえばまだ名前言って無かったね。
俺、霞ヶ浦佑介って言うんだ。
霞ヶ浦市の霞ヶ浦に、にんべんと右の佑と、介。」
霞ヶ浦佑介。
「ありがとう。
佑介君。
うん、なんかあったらするね、電話。」
「勿論!
いつでもいいよ。
じゃあ、君の名前……」
そう言った時、彼の腕時計がピーと鳴った。
すると、彼はハッとしたような顔をして、
「あ、いっけね。
ごめん、俺、おつかいして帰らないといけないんだ。
またね!
電話してね!」
と、走って行ってしまった。
***
ご気軽にコメントお願い致します。必ず返信させていただきます。応援、感想コメント頂けると嬉しいです。また、表現や、言葉などに間違えなどがあったら指摘してくださるとありがたいです。よろしければ、お気に入りをよろしくお願いいたします!
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説


悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。


婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……
こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた
こばやん2号
ファンタジー
とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。
気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。
しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。
そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。
※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
小説家になろうでジャンル別日間ランキング入り!
世界最強の剣聖――エルフォ・エルドエルは戦場で死に、なんと赤子に転生してしまう。
美少女のように見える少年――アル・バーナモントに転生した彼の身体には、一切の魔力が宿っていなかった。
忌み子として家族からも見捨てられ、地元の有力貴族へ売られるアル。
そこでひどい仕打ちを受けることになる。
しかし自力で貴族の屋敷を脱出し、なんとか森へ逃れることに成功する。
魔力ゼロのアルであったが、剣聖として磨いた剣の腕だけは、転生しても健在であった。
彼はその剣の技術を駆使して、ゴブリンや盗賊を次々にやっつけ、とある村を救うことになる。
感謝されたアルは、ミュレットという少女とその母ミレーユと共に、新たな生活を手に入れる。
深く愛され、本当の家族を知ることになるのだ。
一方で、アルを追いだした実家の面々は、だんだんと歯車が狂い始める。
さらに、アルを捕えていた貴族、カイベルヘルト家も例外ではなかった。
彼らはどん底へと沈んでいく……。
フルタイトル《文字数の関係でアルファポリスでは略してます》
魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります~父が老弱して家が潰れそうなので戻ってこいと言われてももう遅い~新しい家族と幸せに暮らしてます
こちらの作品は「小説家になろう」にて先行して公開された内容を転載したものです。
こちらの作品は「小説家になろう」さま「カクヨム」さま「アルファポリス」さまに同時掲載させていただいております。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる