【どうにか必死で奮闘中!】前世ではコミュ症だった俺、漆黒剣聖に転生する。 ~陰キャだった俺とポンコツ元駄女神の異世界セカンドライフ~

錦木れるむ

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第一章 終わり。そして、新たな道へ。

番外編 Ep.1.5〈彼の後ろ姿〉-② おかしい……?

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おかしいの?
お父さんが?
私の家が?

いつもされている事だから、さっき会ったばかりの男の子におかしいと言われても私は、よく分からない。
これが普通なんじゃないの?

「おかしいの?」

彼は大きく頷いた。

「当たり前だよ。
 そもそも、子供はお酒とタバコは買っちゃダメだし、使ってもダメって法律で決まってるんだから。
 あとさ、君だって、嫌じゃないの?
 お父さんに殴られたりするの。
 誰かに相談したほうがいいよ。」

確かに、痛いのは私だって嫌だ。
本当は殴られたりするのは嫌だ。
怖い事言われたり、無視されたり、家から追い出されたりするのも嫌だ。

でも、だからってどうしたらいいの?
相手は、大人だし……、怖いよ。
それとも誰かが止めてくれるとでもいうの?

「嫌だよ。
 本当は。
 でもさ、学校の先生にも迷惑かけたくないし、友達にも心配されるのは嫌だし……。
 私が我慢すれば全部解決なんだよ。
 私ね、よく学校で褒められるんだ~。
 我慢強いって。
 だから大丈夫だよ。」

あれ?
なんだろう。
心がきゅーっと締め付けられるような……。

「やっぱり辛いんじゃん。」

いきなり何言うんだろ?
この人。
別に私……。

「は?
 なんで?」

彼は心配そうな顔で言った。

「だって君、今泣いてるじゃん。」

!?
驚いて目元に触れる。

濡れていた。

自分が泣いているのだと気づいた途端、涙がどっと溢れて来た。

抑えられなかった。
みっともなく、大泣きをしてしまった。
恥ずかしい。
でも、そんな事がどうでもよくなるほど、私は泣いた。
涙と鼻水で、顔をぐちゃぐちゃにしながら。

その間、彼は、黙ってティッシュを差し出してくれたり、背中をさすってくれたりした。

暖かかった。
初めてかもしれない。
人からここまで優しくしてもらったのは。

私は、学校の先生やクラスメイトとかに、「亜里沙ちゃんは一人でなんでもできてすごいね。」とか、「羨ましいなー。」などと、声をかけられることがあった。

でも、本当に私が欲しかったのはそんな言葉じゃない。

今、彼がやってくれているように、ただ、黙って側にいてくれる事だ。
静かな優しさをくれる事だ。

一体、彼は何者なのだろう?
まるで、ヒーローのようだ。
どこからともなく現れて、助けてくれる、底なしの優しさを持つ人。



しばらくして、私が落ち着いてくると、彼は言った。

「一人で抱え込んじゃだめなんだ、そういう事は。
 我慢すんな。
 頼れよ、誰でもいいから。
 なんなら俺、力になるからさ。
 じゃあ、これ。」

と彼は何かメモを渡してきた。

「なにこれ?」

彼は笑顔で答えた。

「俺の家の電話番号と、住所。
 なんかあったら連絡してくれてもいいし、押しかけても大丈夫だから。
 あ、そういえばまだ名前言って無かったね。
 俺、霞ヶ浦佑介って言うんだ。
 霞ヶ浦市の霞ヶ浦に、にんべんと右の佑と、介。」 

霞ヶ浦佑介。

「ありがとう。
 佑介君。
 うん、なんかあったらするね、電話。」

「勿論!
 いつでもいいよ。
 じゃあ、君の名前……」

そう言った時、彼の腕時計がピーと鳴った。
すると、彼はハッとしたような顔をして、

「あ、いっけね。
 ごめん、俺、おつかいして帰らないといけないんだ。
 またね!
 電話してね!」

と、走って行ってしまった。


***
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