【どうにか必死で奮闘中!】前世ではコミュ症だった俺、漆黒剣聖に転生する。 ~陰キャだった俺とポンコツ元駄女神の異世界セカンドライフ~

錦木れるむ

文字の大きさ
上 下
7 / 59
第一章 終わり。そして、新たな道へ。

番外編 Ep.1.5〈彼の後ろ姿〉-① 出会い

しおりを挟む
彼には結局言うことはできなかったし、覚えていなさそうだったが、私と彼が初めて出会ったのは、実は高校に入学した時ではない。

あれは今からもう、五年も前の事になるだろうか。
決して忘れることのない、できない、彼との大切な記憶だ。


積極的に表に出す気はないものの、実は私は両親との関係性があまり良いものとは言えない。
今では両親が私に対して関心を持たなくなったことでほとんど無くなったものの、当時、私がまだ十一歳だったあの頃は、親の機嫌が悪くなったら殴られたり、何もしていないのに罵声を浴びせられたり、何日もご飯を与えてもらえなかったり、大雨が降っている日の真夜中に家から追い出されたりしていた。
今思い出してみると、学校の懇談会や、授業参観に来ていた覚えもない。

あの頃はこれが世間一般的に言う虐待というものだとは分からなかった。
ただただ、自分の家が他の家に比べて少しだけ変わっているだけなのだと思いながら、毎日を耐えながら過ごしていた。


その日、朝から父に殴られて腫れていた右の頬を抑え、痛みに耐えながら私は堤防に座りながらボーっと海を見つめていた。



「ねえ、ここで何してるの?」

後ろから声がした。
今は誰とも話したくないのに、一体誰だろう?

腫れている顔を見られたくなくて、少しだけ、後ろを振り向く。

同じぐらいの歳の男の子がこちらを見つめていた。

「ねえ、何してるの?」

また聞いてきた。

しつこい。
私のことなんかほっといて欲しいのに。

振り向かないで答える。

「別に。
 何もしてないし。」

早くどっかに行ってほしい。

しかしそんな私の思いに反して彼はまた、話しかけてきた。

「ねえ、隣……。
 いい?」

答える間も無く彼は隣に座ってきた。

そして私の顔を見て驚いた。

「うわ、それ、どうしたの!?
 大丈夫?
 痛くない?」

どうやら彼はひどく慌てているようだ。

あーめんどくさい。
だから見せたくなかったのに。
こんな怪我、頻繁に殴られるから慣れっこだ。

「別に。
 大したことないし。」

すると彼は怒ったような顔をして言った。

「ダメだって!
 傷は早めに対処しておかないと!
 ちょっと待ってて!」

彼は背負っていたバックを地面に下ろし、ごそごそと何かを取り出した。
救急箱だった。

「俺ね。
 実は剣道やってて、これ、それ用の救急箱なんだ。
 今湿布出すから待ってね。」

と言って今度は救急箱をごそごそと弄り始めた。

何故、彼は全く知りもしない赤の他人の私に構うのだろう。
でも何故か、彼から暖かさのようなものを感じる。

「よし!
 顔こっちに向けて!」

黙って彼に従う。

冷たい湿布が頬に張り付いてきた。

気持ちいい。

「……あ、ありがとう。」

「いやいや、そんなお礼を言われるようなことでもないよ。
 人が何か困っていたら助けるのは当然のことだよ。」

彼は笑顔で答えた。

私も少しだけ笑顔になった。


「でさ、あの怪我どうしたの?
 ぶつけたりしたぐらいだったら、あんなにはならないでしょ。」

彼は急にシリアスな口調になる。

「……その、お父さんに、殴られて……。」

彼は目を丸くした。

「お父さんが?
 なんで?
 おかしくない?
 親が子供に暴力を振るうだなんて。」

違う、お父さんは悪くない。

「ち、違うの。
 私が悪いの。
 お父さんにお酒を買ってくるよう言われたのに。
 子供だから、コンビニでお酒を買えなかったの。
 それで……」

「おかしいだろ!
 そんなの!
 そもそも子供がコンビニでお酒を買えないのは当たり前のことだし、それにそんな理由で子供を殴るだなんて!」

彼はすごい剣幕で捲し立てた。


***
こんにちは、錦木れるむです!佐川亜里沙サイドで見る過去と佑介の死の物語、Ep.1.5がここから本格的に始まります!佐川亜里沙の過去は、振り返りと乗り越えがテーマになっています。この話で本編の話をより堪能していただけると幸いです!
ご気軽にコメントお願い致します。必ず返信させていただきます。応援、感想コメント頂けると嬉しいです。また、表現や、言葉などに間違えなどがあったら指摘してくださるとありがたいです。よろしければ、お気に入りをよろしくお願いいたします!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……

こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた

こばやん2号
ファンタジー
 とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。  気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。  しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。  そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。  ※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ

犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。 僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。 僕の夢……どこいった?

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

処理中です...