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第一章 終わり。そして、新たな道へ。
番外編 Ep.1.5〈彼の後ろ姿〉-① 出会い
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彼には結局言うことはできなかったし、覚えていなさそうだったが、私と彼が初めて出会ったのは、実は高校に入学した時ではない。
あれは今からもう、五年も前の事になるだろうか。
決して忘れることのない、できない、彼との大切な記憶だ。
積極的に表に出す気はないものの、実は私は両親との関係性があまり良いものとは言えない。
今では両親が私に対して関心を持たなくなったことでほとんど無くなったものの、当時、私がまだ十一歳だったあの頃は、親の機嫌が悪くなったら殴られたり、何もしていないのに罵声を浴びせられたり、何日もご飯を与えてもらえなかったり、大雨が降っている日の真夜中に家から追い出されたりしていた。
今思い出してみると、学校の懇談会や、授業参観に来ていた覚えもない。
あの頃はこれが世間一般的に言う虐待というものだとは分からなかった。
ただただ、自分の家が他の家に比べて少しだけ変わっているだけなのだと思いながら、毎日を耐えながら過ごしていた。
その日、朝から父に殴られて腫れていた右の頬を抑え、痛みに耐えながら私は堤防に座りながらボーっと海を見つめていた。
「ねえ、ここで何してるの?」
後ろから声がした。
今は誰とも話したくないのに、一体誰だろう?
腫れている顔を見られたくなくて、少しだけ、後ろを振り向く。
同じぐらいの歳の男の子がこちらを見つめていた。
「ねえ、何してるの?」
また聞いてきた。
しつこい。
私のことなんかほっといて欲しいのに。
振り向かないで答える。
「別に。
何もしてないし。」
早くどっかに行ってほしい。
しかしそんな私の思いに反して彼はまた、話しかけてきた。
「ねえ、隣……。
いい?」
答える間も無く彼は隣に座ってきた。
そして私の顔を見て驚いた。
「うわ、それ、どうしたの!?
大丈夫?
痛くない?」
どうやら彼はひどく慌てているようだ。
あーめんどくさい。
だから見せたくなかったのに。
こんな怪我、頻繁に殴られるから慣れっこだ。
「別に。
大したことないし。」
すると彼は怒ったような顔をして言った。
「ダメだって!
傷は早めに対処しておかないと!
ちょっと待ってて!」
彼は背負っていたバックを地面に下ろし、ごそごそと何かを取り出した。
救急箱だった。
「俺ね。
実は剣道やってて、これ、それ用の救急箱なんだ。
今湿布出すから待ってね。」
と言って今度は救急箱をごそごそと弄り始めた。
何故、彼は全く知りもしない赤の他人の私に構うのだろう。
でも何故か、彼から暖かさのようなものを感じる。
「よし!
顔こっちに向けて!」
黙って彼に従う。
冷たい湿布が頬に張り付いてきた。
気持ちいい。
「……あ、ありがとう。」
「いやいや、そんなお礼を言われるようなことでもないよ。
人が何か困っていたら助けるのは当然のことだよ。」
彼は笑顔で答えた。
私も少しだけ笑顔になった。
「でさ、あの怪我どうしたの?
ぶつけたりしたぐらいだったら、あんなにはならないでしょ。」
彼は急にシリアスな口調になる。
「……その、お父さんに、殴られて……。」
彼は目を丸くした。
「お父さんが?
なんで?
おかしくない?
親が子供に暴力を振るうだなんて。」
違う、お父さんは悪くない。
「ち、違うの。
私が悪いの。
お父さんにお酒を買ってくるよう言われたのに。
子供だから、コンビニでお酒を買えなかったの。
それで……」
「おかしいだろ!
そんなの!
そもそも子供がコンビニでお酒を買えないのは当たり前のことだし、それにそんな理由で子供を殴るだなんて!」
彼はすごい剣幕で捲し立てた。
***
こんにちは、錦木れるむです!佐川亜里沙サイドで見る過去と佑介の死の物語、Ep.1.5がここから本格的に始まります!佐川亜里沙の過去は、振り返りと乗り越えがテーマになっています。この話で本編の話をより堪能していただけると幸いです!
ご気軽にコメントお願い致します。必ず返信させていただきます。応援、感想コメント頂けると嬉しいです。また、表現や、言葉などに間違えなどがあったら指摘してくださるとありがたいです。よろしければ、お気に入りをよろしくお願いいたします!
あれは今からもう、五年も前の事になるだろうか。
決して忘れることのない、できない、彼との大切な記憶だ。
積極的に表に出す気はないものの、実は私は両親との関係性があまり良いものとは言えない。
今では両親が私に対して関心を持たなくなったことでほとんど無くなったものの、当時、私がまだ十一歳だったあの頃は、親の機嫌が悪くなったら殴られたり、何もしていないのに罵声を浴びせられたり、何日もご飯を与えてもらえなかったり、大雨が降っている日の真夜中に家から追い出されたりしていた。
今思い出してみると、学校の懇談会や、授業参観に来ていた覚えもない。
あの頃はこれが世間一般的に言う虐待というものだとは分からなかった。
ただただ、自分の家が他の家に比べて少しだけ変わっているだけなのだと思いながら、毎日を耐えながら過ごしていた。
その日、朝から父に殴られて腫れていた右の頬を抑え、痛みに耐えながら私は堤防に座りながらボーっと海を見つめていた。
「ねえ、ここで何してるの?」
後ろから声がした。
今は誰とも話したくないのに、一体誰だろう?
腫れている顔を見られたくなくて、少しだけ、後ろを振り向く。
同じぐらいの歳の男の子がこちらを見つめていた。
「ねえ、何してるの?」
また聞いてきた。
しつこい。
私のことなんかほっといて欲しいのに。
振り向かないで答える。
「別に。
何もしてないし。」
早くどっかに行ってほしい。
しかしそんな私の思いに反して彼はまた、話しかけてきた。
「ねえ、隣……。
いい?」
答える間も無く彼は隣に座ってきた。
そして私の顔を見て驚いた。
「うわ、それ、どうしたの!?
大丈夫?
痛くない?」
どうやら彼はひどく慌てているようだ。
あーめんどくさい。
だから見せたくなかったのに。
こんな怪我、頻繁に殴られるから慣れっこだ。
「別に。
大したことないし。」
すると彼は怒ったような顔をして言った。
「ダメだって!
傷は早めに対処しておかないと!
ちょっと待ってて!」
彼は背負っていたバックを地面に下ろし、ごそごそと何かを取り出した。
救急箱だった。
「俺ね。
実は剣道やってて、これ、それ用の救急箱なんだ。
今湿布出すから待ってね。」
と言って今度は救急箱をごそごそと弄り始めた。
何故、彼は全く知りもしない赤の他人の私に構うのだろう。
でも何故か、彼から暖かさのようなものを感じる。
「よし!
顔こっちに向けて!」
黙って彼に従う。
冷たい湿布が頬に張り付いてきた。
気持ちいい。
「……あ、ありがとう。」
「いやいや、そんなお礼を言われるようなことでもないよ。
人が何か困っていたら助けるのは当然のことだよ。」
彼は笑顔で答えた。
私も少しだけ笑顔になった。
「でさ、あの怪我どうしたの?
ぶつけたりしたぐらいだったら、あんなにはならないでしょ。」
彼は急にシリアスな口調になる。
「……その、お父さんに、殴られて……。」
彼は目を丸くした。
「お父さんが?
なんで?
おかしくない?
親が子供に暴力を振るうだなんて。」
違う、お父さんは悪くない。
「ち、違うの。
私が悪いの。
お父さんにお酒を買ってくるよう言われたのに。
子供だから、コンビニでお酒を買えなかったの。
それで……」
「おかしいだろ!
そんなの!
そもそも子供がコンビニでお酒を買えないのは当たり前のことだし、それにそんな理由で子供を殴るだなんて!」
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***
こんにちは、錦木れるむです!佐川亜里沙サイドで見る過去と佑介の死の物語、Ep.1.5がここから本格的に始まります!佐川亜里沙の過去は、振り返りと乗り越えがテーマになっています。この話で本編の話をより堪能していただけると幸いです!
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