関白の息子!

アイム

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西京改名宣言

渡海

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「う~み~は~、広い~な~♪」

 安宅船・大和の船首に立ち、何となく頭に思い浮かんだ歌を歌ってみる。

「……陛下、その歌は?」

 隣のお千がそれを聞いて驚いている。まぁ、この時代にしてみれば激しく未来的な音楽だろうから当然だ。前世の俺が産まれた頃には版権切れだったこの国民的な歌でも、だ。

「海は広くて良いねって」

「本当ですね。何処までも蒼が広がって、今日はお空も真っ青ですからとても気持ち良いです」

「お千、もちょいこっち」

「嫌です」

 大阪を出て三日。散々悪戯したせいでお千はなかなか俺に近寄って来てくれない。

「え、皇帝命令だよ?」

「皇后の権利で断固拒否、です!」

 何がいけないって一応ここには大和には腹心ばかりしかいないが、今周囲には大輸送船団と護衛船団を伴っているのだ。まぁ、ぶっちゃけイチャついていると何処から見られるか分かったものではない。俺は見られることになれているが、お千は裏内暮らし、わりとそうでもないのだ。

「皇帝命令の方が強いと思うけどなぁ」

「義母上様から裏内の全権限は私にと言われたのを忘れましたか?」

「此処、裏内じゃないんだけど」

「南京に裏内が正式に移るまで臨時で私の周囲を裏台と言う事にしたんです」

 ベッと舌を出しながらお千が勝手なことを言う。

「聞いたこともないんだけど?」

「今決めましたから」

「……ま、良いけどね」

 所詮は旅の間の他愛のない会話。ちょっとした暇潰しだ。

「でも、あっちでもイチャついている奴いるよ?」

「え!? う、で、でも、別に夫婦なら問題ない、かもしれません」

 今までであれば軍隊ばかりであったが、今回この船団には1万人を超す非戦闘員が含まれている。日本人の南京、いや、西京への移民。当面は国からの支援が出る上に税を免除されると聞いて新天地へと応募する者は多かった。当然夫婦単位での移民も多く、中には赤子を抱く母親もいる。

「赤ん坊可愛いなぁ」

「赤ちゃんですか? 私も見たいです」

 そう言って縁に近づいて来たお千をいきなりがばっと捕まえる。

「もう! 嘘だったのですか!?」

「ん? これから作ろうと思ったんだよ。だから、完全な嘘じゃない」

 酷い理屈ではあるけれど、その内に出来るだろうお千の赤ん坊を可愛がったと言う事だね。

「せ、せめて船室で。じゃないと嫌です」

「ま、俺もお千の裸を他の者に見せてやろうなんて思わないさ。でも、もう少し此処にいたいな。お千と一緒に」

 適当に胡坐をかき、その上にお千を座らせ後ろから抱きしめる。

「ん、良い具合」

「……重く、ないですか?」

「ん~、強いて言うなら柔らかくて良い香り。でも、もうちょいお尻を押し付けて」

「もう!」

 お千も怒って見せるけど、本気で怒ってなんかいない。お千も分かっているのだろう。今は休む時、俺達は次の戦と背負うべき業を受け入れるために英気を養わなければいけない。

「お千はさ、息子が産まれたら何て名前を付けたい?」

「え? う~ん、そうですねぇ。幸せになってもらいたいから幸、幸千代なんてどうでしょう?」

 ……あ、それ、正史では3歳で夭逝したお千の長男の名だ……。

「い、いやいや、強い子になってもらいたいな、俺は」

「それもそうですね。でも、あなたの子ならきっと大きく強くなります」

「ああ、そうだね」

 海上は吹き抜ける風が心地いい。これから先は血みどろの戦いが待ち受けているのだろうに、そんな事は何も関係ないと言わんばかりだ。もう少しここにいるのも良いだろう。

「じゃぁ、女の子だったら?」

「そうですねぇ。あ、萬はいかがでしょう?」

「……おまん――

「あなた!」

 ギュミッと太腿を抓られてしまう。まぁ、今のタイミングで下ネタは確かに怒られても仕方ない。

「ごめんごめん。千の次は万ってこと?」

「はい。父上は千の幸せを願って私にそう名付けてくれました。だったら、それを万の幸せへと変えて時代に繋ぎたい。そう思うのです」

「……親から与えられたものを十倍にして時代に繋ぐ、か」

 よく考えなくても、それはとても難しい事だと言う事が分かる。だが、同時にそうしてどんどん幸せになっていけば、いずれ争った憎しみも辛かった思い出も全て洗い流してくれるかもしれない。

「そうだな。そうやって世界を幸せで満たしていこう」

「出来る、でしょうか?」

「ん? まぁ、出来んだろ」

「ちょ、あなた!?」

「俺達だけで出来るわけがない。今の家臣達全ての力を合わせても出来るわけがない。もっと、多くの人達の力を合わせて行かないと絶対に出来ないことだ」

 そう言いながらも襟元に手を差し込む。しっとりとした肌にプニプニの触感。

「もう! どうして、こういう話をしている時にそういうことをするんですか!」

「ムフフ、それは俺が俺だからだ!」

 小さく暴れるお千を無理矢理押さえつけ、やわやわとおっぱいを揉む。

「しばらくはこのおっぱいは俺だけのものだ。誰にも渡さない」

「……皇后としては子を産むために勤めなければいけないのですけど……」

「いやだ」

「はいはい」

 クスクスと小さく笑い、お千は首をひねって俺を見つめてくる。

「んっ、フッ」

 その求めに応じてしっかりとお千の口を吸う。

「しよ?」

「……はい」

 お千をお姫様抱っこで抱えあげ、船室へと急いだ。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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