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大戦1
忠勝の忠
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さて、他はともかく、この男とだけは早めに話さなければいけない。信繁を伴い、一人の男が待つ部屋へと向かう。
正史であればもう既に死んでいるはずの男。剛勇無双・本多忠勝。今もなお、巌とした体は死にかけとはとても思えない。人間、やり残したことがあれば気力で生きて見せるのだろう。
「陛下!!」
「・・・・・・忠勝、ご苦労だったな」
「我が主は何処に?」
俺のねぎらいの言葉など聞こえぬかのように、真っ先に家康の居場所を聞いてくる。
まぁ、それはそうだろう。もともとそのために忠勝は戦っていたのだ。だが、俺の方針で納得するかどうか・・・・・・。
「場所は台湾。だがな、今の俺に台湾と戦をするつもりはない」
「っな!?」
「聞け。台湾は南蛮も狙う土地だ。今戦えば奴らの干渉を受ける可能性が高い。そもそも、俺にとって家康の身は既に戦をしてまで欲しいものではない」
「それでは話が違う!」
憤慨する忠勝は今にも俺に掴みかかってきそうで、信繁が慌てて間に入るほどだ。
「落ち着け、別にこれはお前にとっても悪い話じゃない」
「何を!?」
「軍が関わって正式に家康を連れて来るなら殺さなければいけなくなる」
家康は流罪先から勝手にいなくなった重罪人。一族郎党、は無くなったが、本人を許すことは出来ない。
「少しでも長生きさせたいなら、忠勝、お前自身で救い出し、帰ってくるな」
「・・・・・・むぅ」
「すでに台湾には多くの忍びを潜り込ませている。家康の居場所にも目途はついた。後は指揮をする者がいれば良い。今回の褒美に助け出した後、俺達はお前達を追わん。もしも家康を穏やかに死なせてやりたいのであれば、好きにするがいい」
後は忍びと忠勝だけで家康を助け出す。もともと拉致された人材を拉致しかえすだけであれば国同士の争いにまでは発展しない。何故なら、この時代では証拠がないし、人一人に重きを置かないからだ。
「陛下、感謝いたします」
「だが・・・・・・忠勝、お前の体はもつのか?」
「ッ!? ふむ、流石は天下人」
「ま、まぁな」
見抜かれたのがよほど驚きだったのか、妙な関心のされ方をしてしまう。まぁ、寿命を知っていただけなのだが・・・・・・。
「ですが、この忠勝。主をお救いするまで死んでも死に切れぬ」
理屈ではない。だが、今此処に忠勝がいること、それ自体が彼の言葉を裏付ける証。
使命を果たすまでは死ねぬというその瞳は戦場で見せるそれと同じように強く澄んでいる。
「そうか、堺の港に行き、あとは忍びの指示に従え。お千が哀しむからな、夜が明けぬうちに行け」
「かたじけない!」
平伏する忠勝には一瞥もせず、信繁と共に部屋を後にする。
「信繁、惜しい男を失くしてしまうな」
「・・・・・・はっ、某にとっても憧れの男でございました」
花実兼備・東方無双・本多忠勝。徳川が誇る最強の男は頑なに主への忠に生きる。そして、俺がその姿を見ることはもう二度と無かった。
正史であればもう既に死んでいるはずの男。剛勇無双・本多忠勝。今もなお、巌とした体は死にかけとはとても思えない。人間、やり残したことがあれば気力で生きて見せるのだろう。
「陛下!!」
「・・・・・・忠勝、ご苦労だったな」
「我が主は何処に?」
俺のねぎらいの言葉など聞こえぬかのように、真っ先に家康の居場所を聞いてくる。
まぁ、それはそうだろう。もともとそのために忠勝は戦っていたのだ。だが、俺の方針で納得するかどうか・・・・・・。
「場所は台湾。だがな、今の俺に台湾と戦をするつもりはない」
「っな!?」
「聞け。台湾は南蛮も狙う土地だ。今戦えば奴らの干渉を受ける可能性が高い。そもそも、俺にとって家康の身は既に戦をしてまで欲しいものではない」
「それでは話が違う!」
憤慨する忠勝は今にも俺に掴みかかってきそうで、信繁が慌てて間に入るほどだ。
「落ち着け、別にこれはお前にとっても悪い話じゃない」
「何を!?」
「軍が関わって正式に家康を連れて来るなら殺さなければいけなくなる」
家康は流罪先から勝手にいなくなった重罪人。一族郎党、は無くなったが、本人を許すことは出来ない。
「少しでも長生きさせたいなら、忠勝、お前自身で救い出し、帰ってくるな」
「・・・・・・むぅ」
「すでに台湾には多くの忍びを潜り込ませている。家康の居場所にも目途はついた。後は指揮をする者がいれば良い。今回の褒美に助け出した後、俺達はお前達を追わん。もしも家康を穏やかに死なせてやりたいのであれば、好きにするがいい」
後は忍びと忠勝だけで家康を助け出す。もともと拉致された人材を拉致しかえすだけであれば国同士の争いにまでは発展しない。何故なら、この時代では証拠がないし、人一人に重きを置かないからだ。
「陛下、感謝いたします」
「だが・・・・・・忠勝、お前の体はもつのか?」
「ッ!? ふむ、流石は天下人」
「ま、まぁな」
見抜かれたのがよほど驚きだったのか、妙な関心のされ方をしてしまう。まぁ、寿命を知っていただけなのだが・・・・・・。
「ですが、この忠勝。主をお救いするまで死んでも死に切れぬ」
理屈ではない。だが、今此処に忠勝がいること、それ自体が彼の言葉を裏付ける証。
使命を果たすまでは死ねぬというその瞳は戦場で見せるそれと同じように強く澄んでいる。
「そうか、堺の港に行き、あとは忍びの指示に従え。お千が哀しむからな、夜が明けぬうちに行け」
「かたじけない!」
平伏する忠勝には一瞥もせず、信繁と共に部屋を後にする。
「信繁、惜しい男を失くしてしまうな」
「・・・・・・はっ、某にとっても憧れの男でございました」
花実兼備・東方無双・本多忠勝。徳川が誇る最強の男は頑なに主への忠に生きる。そして、俺がその姿を見ることはもう二度と無かった。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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