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大戦1
事後
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「また、随分と励まれましたね」
取り敢えず二発出し、満足したところでお麟の入室を許可する。
一応はお千の侍女でもあるので、身体を拭いてやろうというのだろう。手には湯の入った桶と手ぬぐいもしっかり用意してある。
「お麟。お千が寝ている間にお前にだけは伝えておくことがある」
「はい?」
せっせと俺の精液を拭う手を止めず、何だと言わんばかりに振り返る。
「また、歴史から外れた」
明国に立った岳鶯と言う将軍。その名を俺は全く知らない。もっとも、心当たりがないわけでもない。
「今、明の軍を率いているのは岳飛の子孫を名乗る岳鶯と言う将軍だ。こいつが瀋陽の西でヌルハチの金軍を破った」
その内容に驚いたのだろう。お麟も手に持っていた手拭いを落とし、目を見開いている。
「宋の時代、前の金軍を苦しめたのが岳飛。そして、今その子孫を名乗る男が金軍を討って見せた。笑えるだろう?」
「・・・・・・我らが戦った明軍はさほどの精強さはもっていませんでした。とても金の、女真の強兵を相手に出来るはずが」
女真族はずっと戦続きだったため、かなりの強兵だ。おまけにヌルハチは間違いなく中華の歴史でも十指に上がる英雄。だが、岳飛は中国史上最も民に愛される将。今回金を打ち破ったことで、民も岳鶯を岳飛の再来と讃えだすだろう。
「しかも、半数の兵力で、それも野戦で破ったらしい。はっきり言おう、俺はこの岳鶯を、岳飛を相手にするつもりで戦う。先日、そのために国家総動員体制を命じた」
「・・・・・・陛下?」
俺の顔を見てお麟が訝しむ。はたして俺は震えているのか、それとも笑っているのか。
「俺自身が南京に入り、明を討ち滅ぼす。お麟、お前達がやるべきことは多い。先ずは硝石の確保のため、明の内陸を攻める。そして、北上を続け、北京を獲る」
「・・・・・・陛下、その前に一つ戦がございます」
お千の身体を拭き終えたお麟が、脱ぎ捨ててあった服を着させていく。
「おい、着せる必要ないぞ。このまま一緒に明日まで寝ようと・・・・・・戦って何のことだ?」
先程のお麟の発言を思い出し、疑問を投げかける。
「このお部屋の外で、大政所様が大変ご立腹で待たれています。それはそうでしょうね、ろくすっぽ皇后様とお話も出来ないまま待ち惚けですから。それも、皇后様は寝てしまいましたし、フフ。どうするんでしょうねぇ?」
随分と楽しそうに、笑っている。
「お麟、性格が悪くなったか?」
「いえ? 昔からです」
何かが吹っ切れた様な感じがするし、もしかしたら明で良いことでもあったのかもしれない。
そんな事を考えていると、お千に服を着せ終えてお麟が立ち上がる。
「大政所様に中に入っていただきますか?」
「・・・・・・いや、可哀想だがお千を起こして広間に連れて行く。裏内の者に集まる様に言っておけ。それと、お麟。お前は井頼と共に三成と情報のすり合わせを行っておけ。今後の対明政策もな。方針は変えないが南京が無傷と言うのはデカい。南京に新たな城を建ててそこを拠点にじっくり攻める予定だったが、一年は前倒しできるかもしれない」
「しかし、そうなると」
「ああ、明は広い。幾つかに軍を分ける必要がある。七将軍とは別に、何人か選出する必要があるだろう」
政宗もそうだが、立花宗茂や島津義弘など、日本にはまだまだ強力な将が生きている。彼等を軸にして戦略を練るのも良いだろう。
「・・・・・・皇后様にその一翼を任せ――
「馬鹿言うな。もう二度と俺の下から離さん。お麟、もう行け」
シッシッと手を振り部屋から追い出してやれば不満そうな顔だが渋々と従う。
改めてお千の寝顔を見れば、その穏やかな顔は満足そうに笑っている。
「フゥ、お千。可哀想だけど起きろ。残念だが、俺が独占して良い時間は終わったらしい」
お麟と入れ替わりに勝手に入って来た母上の怒り顔に、やむなくお千の肩を揺すり起こす。
「ん、むにゃ、兄上? フフ、一緒に寝ましょう?」
気を抜くと直ぐ兄上と言う呼称に戻ってしまうのは何時ものことだ。眠気眼のまま、添い寝を希望してくるが、母上のことになどはまだ気付いていないようだ。
「ん~、それは魅力的な提案だなぁ」
何が良いって、母上に怒られるより全然良い。
「秀頼、お千、そこに直りなさい!!」
ところがやはりそうは問屋が卸さないそうだ。お千も久しぶりに聞いた雷に飛び起き、慌てて正座してしばらくはお説教の時間。
まぁ、これはこれでようやく戻って来た平穏を感じられる。後は桜がいれば完璧だ。
・・・・・・早く、帰ってこい。
取り敢えず二発出し、満足したところでお麟の入室を許可する。
一応はお千の侍女でもあるので、身体を拭いてやろうというのだろう。手には湯の入った桶と手ぬぐいもしっかり用意してある。
「お麟。お千が寝ている間にお前にだけは伝えておくことがある」
「はい?」
せっせと俺の精液を拭う手を止めず、何だと言わんばかりに振り返る。
「また、歴史から外れた」
明国に立った岳鶯と言う将軍。その名を俺は全く知らない。もっとも、心当たりがないわけでもない。
「今、明の軍を率いているのは岳飛の子孫を名乗る岳鶯と言う将軍だ。こいつが瀋陽の西でヌルハチの金軍を破った」
その内容に驚いたのだろう。お麟も手に持っていた手拭いを落とし、目を見開いている。
「宋の時代、前の金軍を苦しめたのが岳飛。そして、今その子孫を名乗る男が金軍を討って見せた。笑えるだろう?」
「・・・・・・我らが戦った明軍はさほどの精強さはもっていませんでした。とても金の、女真の強兵を相手に出来るはずが」
女真族はずっと戦続きだったため、かなりの強兵だ。おまけにヌルハチは間違いなく中華の歴史でも十指に上がる英雄。だが、岳飛は中国史上最も民に愛される将。今回金を打ち破ったことで、民も岳鶯を岳飛の再来と讃えだすだろう。
「しかも、半数の兵力で、それも野戦で破ったらしい。はっきり言おう、俺はこの岳鶯を、岳飛を相手にするつもりで戦う。先日、そのために国家総動員体制を命じた」
「・・・・・・陛下?」
俺の顔を見てお麟が訝しむ。はたして俺は震えているのか、それとも笑っているのか。
「俺自身が南京に入り、明を討ち滅ぼす。お麟、お前達がやるべきことは多い。先ずは硝石の確保のため、明の内陸を攻める。そして、北上を続け、北京を獲る」
「・・・・・・陛下、その前に一つ戦がございます」
お千の身体を拭き終えたお麟が、脱ぎ捨ててあった服を着させていく。
「おい、着せる必要ないぞ。このまま一緒に明日まで寝ようと・・・・・・戦って何のことだ?」
先程のお麟の発言を思い出し、疑問を投げかける。
「このお部屋の外で、大政所様が大変ご立腹で待たれています。それはそうでしょうね、ろくすっぽ皇后様とお話も出来ないまま待ち惚けですから。それも、皇后様は寝てしまいましたし、フフ。どうするんでしょうねぇ?」
随分と楽しそうに、笑っている。
「お麟、性格が悪くなったか?」
「いえ? 昔からです」
何かが吹っ切れた様な感じがするし、もしかしたら明で良いことでもあったのかもしれない。
そんな事を考えていると、お千に服を着せ終えてお麟が立ち上がる。
「大政所様に中に入っていただきますか?」
「・・・・・・いや、可哀想だがお千を起こして広間に連れて行く。裏内の者に集まる様に言っておけ。それと、お麟。お前は井頼と共に三成と情報のすり合わせを行っておけ。今後の対明政策もな。方針は変えないが南京が無傷と言うのはデカい。南京に新たな城を建ててそこを拠点にじっくり攻める予定だったが、一年は前倒しできるかもしれない」
「しかし、そうなると」
「ああ、明は広い。幾つかに軍を分ける必要がある。七将軍とは別に、何人か選出する必要があるだろう」
政宗もそうだが、立花宗茂や島津義弘など、日本にはまだまだ強力な将が生きている。彼等を軸にして戦略を練るのも良いだろう。
「・・・・・・皇后様にその一翼を任せ――
「馬鹿言うな。もう二度と俺の下から離さん。お麟、もう行け」
シッシッと手を振り部屋から追い出してやれば不満そうな顔だが渋々と従う。
改めてお千の寝顔を見れば、その穏やかな顔は満足そうに笑っている。
「フゥ、お千。可哀想だけど起きろ。残念だが、俺が独占して良い時間は終わったらしい」
お麟と入れ替わりに勝手に入って来た母上の怒り顔に、やむなくお千の肩を揺すり起こす。
「ん、むにゃ、兄上? フフ、一緒に寝ましょう?」
気を抜くと直ぐ兄上と言う呼称に戻ってしまうのは何時ものことだ。眠気眼のまま、添い寝を希望してくるが、母上のことになどはまだ気付いていないようだ。
「ん~、それは魅力的な提案だなぁ」
何が良いって、母上に怒られるより全然良い。
「秀頼、お千、そこに直りなさい!!」
ところがやはりそうは問屋が卸さないそうだ。お千も久しぶりに聞いた雷に飛び起き、慌てて正座してしばらくはお説教の時間。
まぁ、これはこれでようやく戻って来た平穏を感じられる。後は桜がいれば完璧だ。
・・・・・・早く、帰ってこい。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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