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秀頼ルート 家康を求めて
救出に向けて
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佐助からの報告は連日のように大阪に届き、情報の精度がドンドン増していく。
「・・・・・・これは、もう間違いないと思って良いな」
「はい。目的まではつかめていませんが、台湾で間違いないかと」
情報では家康の誘拐の際に指揮を執った将軍の名前や船まで記載され、それ以降その船はずっと港に停泊していると言うのに、毎日その船の中に食糧が運ばれていると言う情報まで書いてある。
「まずいな」
「船に幽閉していると言うのでしょうか? どうしてそのように無駄なことを?」
「恐らく、何時でも証拠ごと沈められるようにだ」
家康の誘拐は日本にとって大きな意味を持つ大逆。
これを起こせば日本の、俺の勘気を被りかねない。
いや、実際にこの情報を福岡にいた頃に知っていれば直ぐにでも大軍で攻めただろう。
だが、今はもう少し冷静に見ることが出来る。
そして、その冷静さで台湾の戦略を見え隠れしてくる。
「台湾はあくまで中立の立ち位置を取ろうとしている」
「えと、日本に対しては明らかな敵対では?」
「そうだ。だが、家康さえ見つからなければどうとでも言えるだろう?」
そう、家康さえ見つからなければ言い訳などどうとでもなる。
そして、海の上では船ごと、もしくは家康だけを沈めてしまえばもう手が出ない。
遺体を探そうにもダイバーも潜水艇もないこの時代、素潜りで助けるしかないのだ。
「そうなれば大義もなく中立国を攻めた国と言う事になる」
「・・・・・・それに何か問題が?」
不思議そうに桜が言うが、実際には大問題だ。
今の時代、大義など有っても無くても戦争は始まる。
あくまで弱肉強食。
国家間の関係でさえ、そうであった時代なのだ。
1対1の状況ならそれでいいのだ。
だが、事は日本と台湾だけの話ではない。
何度も言うが、南蛮の力が及んでいるからだ。
「桜が調べてくれたこの資料によると、スペインが台湾と取引を始めている。大義の無い戦となれば第三国が間に入りやすくなる」
今はまだ、南蛮勢力と海軍で戦うことは出来ない。
台湾の様な島国相手で南蛮勢力と交戦するわけにはいかないのだ。
「内陸で戦おうにも、攻撃側ではどうしたって一度船に乗らなければいけない。そうなればおそらく勝てん」
おまけに相手に出張ってくるのはあのスペイン。
無敵艦隊自体はアマルダで敗戦をしても、それで俺達が勝てる理屈はない。
・・・・・・言ってしまえばカルバリン砲で全てがひっくり返ってしまうからだ。
「俺達の最新の長距離砲の倍の射程。戦艦一隻に十数門の砲と言う事を考えれば、日本軍の船を何隻並べようと2・3隻でやられかねない」
「そ、そんなにですか!?」
「俺達が朝鮮や明を相手にやって来ただろう? 相手の射程外から有効打を放てると言うのは戦場において圧倒的だ。それに、船足も向こうが上」
射程も速度も、ついでに船の強度も敵わない。
「では、台湾の件は諦めますか?」
「それこそまさかだな。桜、戦と言う方法でなければどうやって人を助ける?」
少し桜が悩む。
だが、それもほんの少しの間、直ぐに思い至り返答してくる。
「救出のための忍びの選抜をしてまいります」
「ああ、無理に今台湾を攻める必要はない。忍び込み、助け出し、日本に連れ帰る。そのための準備を始めろ。・・・・・・だがな」
怒りのままに思いっ切り拳を振りかぶり、傍にあった床几を叩き割る。
「覚えていろよ。俺に舐めた真似をしたんだ。十倍にして返してやる」
沸々と込み上げる怒りも今は抑えるしかない。
だが、その時が来れば報いはしっかりと受けてもらう。
「・・・・・・で、天海たちのほうは?」
「そちらはまだ尻尾を出しません」
比叡山の僧たちは物乞いに山を下っているのに、まだ商人たちに助けを求めない。
相手はあの天海、そう簡単に上手くいくとは思わなかったがやはり強敵だ。
「フン。だが、まだまだ時間はある」
「・・・・・・秀頼様」
桜の視線を辿ると、随分と下の方を見ている。
俺の目ではなく、腕の方を。
「痛かったんでしょう?」
「・・・・・・うん」
目ざとく見つけられてしまい、擦り切れて少し血が出ていた俺の腕を治療してくれた。
「・・・・・・これは、もう間違いないと思って良いな」
「はい。目的まではつかめていませんが、台湾で間違いないかと」
情報では家康の誘拐の際に指揮を執った将軍の名前や船まで記載され、それ以降その船はずっと港に停泊していると言うのに、毎日その船の中に食糧が運ばれていると言う情報まで書いてある。
「まずいな」
「船に幽閉していると言うのでしょうか? どうしてそのように無駄なことを?」
「恐らく、何時でも証拠ごと沈められるようにだ」
家康の誘拐は日本にとって大きな意味を持つ大逆。
これを起こせば日本の、俺の勘気を被りかねない。
いや、実際にこの情報を福岡にいた頃に知っていれば直ぐにでも大軍で攻めただろう。
だが、今はもう少し冷静に見ることが出来る。
そして、その冷静さで台湾の戦略を見え隠れしてくる。
「台湾はあくまで中立の立ち位置を取ろうとしている」
「えと、日本に対しては明らかな敵対では?」
「そうだ。だが、家康さえ見つからなければどうとでも言えるだろう?」
そう、家康さえ見つからなければ言い訳などどうとでもなる。
そして、海の上では船ごと、もしくは家康だけを沈めてしまえばもう手が出ない。
遺体を探そうにもダイバーも潜水艇もないこの時代、素潜りで助けるしかないのだ。
「そうなれば大義もなく中立国を攻めた国と言う事になる」
「・・・・・・それに何か問題が?」
不思議そうに桜が言うが、実際には大問題だ。
今の時代、大義など有っても無くても戦争は始まる。
あくまで弱肉強食。
国家間の関係でさえ、そうであった時代なのだ。
1対1の状況ならそれでいいのだ。
だが、事は日本と台湾だけの話ではない。
何度も言うが、南蛮の力が及んでいるからだ。
「桜が調べてくれたこの資料によると、スペインが台湾と取引を始めている。大義の無い戦となれば第三国が間に入りやすくなる」
今はまだ、南蛮勢力と海軍で戦うことは出来ない。
台湾の様な島国相手で南蛮勢力と交戦するわけにはいかないのだ。
「内陸で戦おうにも、攻撃側ではどうしたって一度船に乗らなければいけない。そうなればおそらく勝てん」
おまけに相手に出張ってくるのはあのスペイン。
無敵艦隊自体はアマルダで敗戦をしても、それで俺達が勝てる理屈はない。
・・・・・・言ってしまえばカルバリン砲で全てがひっくり返ってしまうからだ。
「俺達の最新の長距離砲の倍の射程。戦艦一隻に十数門の砲と言う事を考えれば、日本軍の船を何隻並べようと2・3隻でやられかねない」
「そ、そんなにですか!?」
「俺達が朝鮮や明を相手にやって来ただろう? 相手の射程外から有効打を放てると言うのは戦場において圧倒的だ。それに、船足も向こうが上」
射程も速度も、ついでに船の強度も敵わない。
「では、台湾の件は諦めますか?」
「それこそまさかだな。桜、戦と言う方法でなければどうやって人を助ける?」
少し桜が悩む。
だが、それもほんの少しの間、直ぐに思い至り返答してくる。
「救出のための忍びの選抜をしてまいります」
「ああ、無理に今台湾を攻める必要はない。忍び込み、助け出し、日本に連れ帰る。そのための準備を始めろ。・・・・・・だがな」
怒りのままに思いっ切り拳を振りかぶり、傍にあった床几を叩き割る。
「覚えていろよ。俺に舐めた真似をしたんだ。十倍にして返してやる」
沸々と込み上げる怒りも今は抑えるしかない。
だが、その時が来れば報いはしっかりと受けてもらう。
「・・・・・・で、天海たちのほうは?」
「そちらはまだ尻尾を出しません」
比叡山の僧たちは物乞いに山を下っているのに、まだ商人たちに助けを求めない。
相手はあの天海、そう簡単に上手くいくとは思わなかったがやはり強敵だ。
「フン。だが、まだまだ時間はある」
「・・・・・・秀頼様」
桜の視線を辿ると、随分と下の方を見ている。
俺の目ではなく、腕の方を。
「痛かったんでしょう?」
「・・・・・・うん」
目ざとく見つけられてしまい、擦り切れて少し血が出ていた俺の腕を治療してくれた。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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