281 / 323
秀頼ルート 黒幕捜査3
徳本の診断ー中編ー(エロ度☆☆☆☆☆)
しおりを挟む
「爺さん、今俺を坊主って」
「ほ? 何じゃ、お主なぞ儂にとっては赤子も同然。坊主で良かろう?」
これでも俺ももう18。
と言うか、年齢もそうだが、人並み外れたこの巨躯で坊主と言われるとは思わなかった。
何故か新鮮な心地にいっそ晴れ晴れとしてしまう。
「いや、良いよ坊主で。でも爺さん、患者を見せるのは良いが、まだ耄碌してないだろうな?」
如何せん呆けているのでは? と疑いたくなる徳本の様子についついそう聞いてしまう。
「なんじゃ坊主! 年寄りを馬鹿にするとはけしからん!」
コツッ
・・・・・・軽くとは言え、殴られたのは何時ぶりだろう?
いや、頭を殴られたのは恐らく初めてだ。
もっとも、母上にケツを叩かれたことは数え切れないほどだが。
「ハハ、悪い悪い。でも、何せ死ぬかもしれないような患者を見せるわけだからさ」
俺が笑っているので周りは耐えているが、相当数の部下が無礼討ちにしてやろうと刀に手をかけている。
まぁ、天下人に対する態度としては知らぬこととは言え、確かにまずいだろう。
知らないかどうかも分からないが・・・・・・。
「安心せい坊主。儂は患者と向き合う時は命を懸ける。この100年近い人生の全てで立向う。儂が間違えた時は、そうさな、儂の牛に縄でもくくり付けて牛轢きにでもするが良い」
その一瞬、徳本の目が鋭く光る。
この俺が少したじろぐほどに鋭く。
「坊主、侍に産まれれば分からんかもしれんがな。お主らが百人殺す間に儂は一人の命を救うてきた。あちこちで人が殺されていくのを知りながら、ほんの一握りの者を生き永らえさせてきた」
・・・・・・それは、この時代に医療に生きた者の本音なのだろう。
救えど救えど更に多くの患者で溢れ、どんなに優秀でも救いきれない。
そんな無念さが伝わってくるようだ。
「坊主。儂は100年生きて来た。その間ずっと侍の世じゃ。その世の中に儂ほど刃向かってきた者は他におらん」
応仁の乱より約150年。
化け物の様な長寿のこの男でも、平和な御世は知らない。
常に余は戦に溢れ、そしてこの男はそれを嫌い続けたのだ。
「坊主は産まれてまだ20年も経っておるまい。儂にとっては赤子も同じ。じゃと言うのに、何と多くの者を殺してきたか!」
・・・・・・直接殺したのは、前田茂勝くらいのもの。
だが、俺が指示して死んだ人間は恐らく既に数十万。
俺の治世の失敗で死んだ者はそれに倍するかもしれない。
「儂にとっても、坊主の様な患者は初めてじゃ」
「・・・・・・患者は俺じゃない」
「いいや、お主も患者じゃ。もう一人の患者を診た後に診てやるので少し待っておれ。医(旧字:醫)とは本来、神前で魔を払う行為じゃ。儂に直せるものであれば、神に誓って誠心誠意力を尽くそう。お主の想い人も、当然お主もな」
天海とはまるで違う。
あれは裏に謀略を隠していたが、この男はそうじゃない。
そうになるのが悪いとは言わない。
だが、己のために積み重ねた生と、ただただ他人のために積み重ねた生。
同じ百歳間際の者だとしても、同じようにどこか超然とした存在だとしても、その本質はまるで違うのだ。
「・・・・・・先生、是非俺も診てほしい」
素直に、彼ともっと話がしたい、そう思った。
もちろん、俺には十人以上の典医が付いているし、健康面に問題はない。
だが、彼が言っているのはそれだけではないはずだ。
彼となら――
「カァーッ、長旅で疲れたわい! 坊主。腰を揉めい」
腰の方を指し示し、徳本がそう言う。
その姿はすっかり耄碌爺に戻っていた。
・・・・・・俺の感動を返してほしい。
「ほ? 何じゃ、お主なぞ儂にとっては赤子も同然。坊主で良かろう?」
これでも俺ももう18。
と言うか、年齢もそうだが、人並み外れたこの巨躯で坊主と言われるとは思わなかった。
何故か新鮮な心地にいっそ晴れ晴れとしてしまう。
「いや、良いよ坊主で。でも爺さん、患者を見せるのは良いが、まだ耄碌してないだろうな?」
如何せん呆けているのでは? と疑いたくなる徳本の様子についついそう聞いてしまう。
「なんじゃ坊主! 年寄りを馬鹿にするとはけしからん!」
コツッ
・・・・・・軽くとは言え、殴られたのは何時ぶりだろう?
いや、頭を殴られたのは恐らく初めてだ。
もっとも、母上にケツを叩かれたことは数え切れないほどだが。
「ハハ、悪い悪い。でも、何せ死ぬかもしれないような患者を見せるわけだからさ」
俺が笑っているので周りは耐えているが、相当数の部下が無礼討ちにしてやろうと刀に手をかけている。
まぁ、天下人に対する態度としては知らぬこととは言え、確かにまずいだろう。
知らないかどうかも分からないが・・・・・・。
「安心せい坊主。儂は患者と向き合う時は命を懸ける。この100年近い人生の全てで立向う。儂が間違えた時は、そうさな、儂の牛に縄でもくくり付けて牛轢きにでもするが良い」
その一瞬、徳本の目が鋭く光る。
この俺が少したじろぐほどに鋭く。
「坊主、侍に産まれれば分からんかもしれんがな。お主らが百人殺す間に儂は一人の命を救うてきた。あちこちで人が殺されていくのを知りながら、ほんの一握りの者を生き永らえさせてきた」
・・・・・・それは、この時代に医療に生きた者の本音なのだろう。
救えど救えど更に多くの患者で溢れ、どんなに優秀でも救いきれない。
そんな無念さが伝わってくるようだ。
「坊主。儂は100年生きて来た。その間ずっと侍の世じゃ。その世の中に儂ほど刃向かってきた者は他におらん」
応仁の乱より約150年。
化け物の様な長寿のこの男でも、平和な御世は知らない。
常に余は戦に溢れ、そしてこの男はそれを嫌い続けたのだ。
「坊主は産まれてまだ20年も経っておるまい。儂にとっては赤子も同じ。じゃと言うのに、何と多くの者を殺してきたか!」
・・・・・・直接殺したのは、前田茂勝くらいのもの。
だが、俺が指示して死んだ人間は恐らく既に数十万。
俺の治世の失敗で死んだ者はそれに倍するかもしれない。
「儂にとっても、坊主の様な患者は初めてじゃ」
「・・・・・・患者は俺じゃない」
「いいや、お主も患者じゃ。もう一人の患者を診た後に診てやるので少し待っておれ。医(旧字:醫)とは本来、神前で魔を払う行為じゃ。儂に直せるものであれば、神に誓って誠心誠意力を尽くそう。お主の想い人も、当然お主もな」
天海とはまるで違う。
あれは裏に謀略を隠していたが、この男はそうじゃない。
そうになるのが悪いとは言わない。
だが、己のために積み重ねた生と、ただただ他人のために積み重ねた生。
同じ百歳間際の者だとしても、同じようにどこか超然とした存在だとしても、その本質はまるで違うのだ。
「・・・・・・先生、是非俺も診てほしい」
素直に、彼ともっと話がしたい、そう思った。
もちろん、俺には十人以上の典医が付いているし、健康面に問題はない。
だが、彼が言っているのはそれだけではないはずだ。
彼となら――
「カァーッ、長旅で疲れたわい! 坊主。腰を揉めい」
腰の方を指し示し、徳本がそう言う。
その姿はすっかり耄碌爺に戻っていた。
・・・・・・俺の感動を返してほしい。
0
新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
お気に入りに追加
876
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?



【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる