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秀頼ルート 黒幕捜査3
VS五大老―後編―
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五大老が発言を止め、俺もまたその様子見に入ったせいで長い沈黙が訪れる。
五大老(当時六大老)制度自体は父上が決めたものだが、当の父上は完全な独裁政権を敷いていた。
その独裁により刑に処された者も少なくなく、それを恐れるものもまた同じ。
天下人になった俺がそうしないのも、自分へのそう言った戒めのつもりではあった。
それが今回は邪魔をしているわけだが、これからも変えようとは思わない。
だからこそ彼等は豊臣政権における最高意思決定機関であり、俺が豊臣を継いでから碌な戦果を挙げていなくても、他の大名とは別格の扱いを受けるのだ。
「・・・・・・これ以上、皆を説得するための理由は俺にはない」
「では、採決を?」
秀次叔父上がジッと俺を見つめてくる。
「ああ、でもその前に、俺の覚悟を伝えておく」
これは、言わば俺にとって五大老に対してとれる最終手段。
「俺は千の成功にこの帝位を賭ける!」
「っ!?」
五大老が皆仰天の顔で俺の顔を見つめる。
「個人的感情により国を乱した罰とし、俺はお千の失敗と同時に隠居し、帝位を息子の白寿丸に譲る。五大老は本件に関わりが無いので、当然留任とし、息子を補佐してもらう」
俺がいなくなり幼帝が立てば、その結果として権力は今と比較できないほどに大きくなる。
とりわけ一門である秀次叔父上と秀家はその更に中核となるだろう。
いっそ彼ら二人が次の天下人と言ってしまえるかもしれない。
そして、秀家の宇喜多家はその多くが加賀の前田家の出自。
秀家の妻・豪姫も前田利家の娘なのだから、義弟である利常の発言力も増すことだろう。
逆に毛利・上杉の双方にとっては変化が無い、若しくは、相対的に発言力が減る結果となるかもしれない。
「俺は、そうだな。九州の地で暮らすことにしようか。明やその他の事はお前達で決めればいい」
これが俺の取れる最終手段。
これで駄目なら、・・・・・・内戦も覚悟しなければならない。
「そこまで仰るのであれば、従わねば潰す、と?」
景勝がずんと重みのある声音で発する。
「ああ。出来ればそんなことはしたくないがな」
「・・・・・・女一人のためにそこまで天下を騒がせると?」
「そうだ。そのために後世に愚帝と罵られようが構わん」
久しぶりに感じる本物の戦国大名の威圧。
軍才はやはり謙信に及ぶべくもないのだろうが、その圧は恐らく大差ない。
だが、今はそんな圧に負けるわけにはいかない。
「だいたい、俺は産まれた時から常に天下を騒がせてきたんだ。今更だろう?」
そう、俺ほど天下を騒がせた者など恐らく歴史に照らしても一人もいない。
産まれた瞬間に次代の天下人を失墜させ自身が次代の天下人となり、発言力の大きい第一の部下である家康を戦で壊滅させ、海外を攻めて国土を倍にし、自ら皇帝の地位に就いた。
もちろん、それは父上の土台を継いだからこそできることだが、成し遂げた事だけを見れば父上にも劣らない。
「クク、確かに」
そう言って次代の天下人から落とされた張本人の秀次叔父上が、我慢できぬと言う様に笑う。
「まったくもってその通りですな」
一門の二人にとって余程面白い言い回しだったのか、見れば秀家も笑っている。
「秀次叔父上、採決を」
「・・・・・・採る必要も無いでしょう。毛利殿、上杉殿、前田殿、宇喜多殿よろしいな?」
「異議なし!」
秀家が早々に声を上げ、他三人も頷く。
「さて、では先程の件、したためるとしよう」
同一の文書を二通作成し、六人の連判を押す。
これでもう後戻りはできない。
・・・・・・そういや、白寿はいきなり天下人扱いされることになるんだけど・・・・・・まぁ、お千が成功すれば問題なし!
五大老(当時六大老)制度自体は父上が決めたものだが、当の父上は完全な独裁政権を敷いていた。
その独裁により刑に処された者も少なくなく、それを恐れるものもまた同じ。
天下人になった俺がそうしないのも、自分へのそう言った戒めのつもりではあった。
それが今回は邪魔をしているわけだが、これからも変えようとは思わない。
だからこそ彼等は豊臣政権における最高意思決定機関であり、俺が豊臣を継いでから碌な戦果を挙げていなくても、他の大名とは別格の扱いを受けるのだ。
「・・・・・・これ以上、皆を説得するための理由は俺にはない」
「では、採決を?」
秀次叔父上がジッと俺を見つめてくる。
「ああ、でもその前に、俺の覚悟を伝えておく」
これは、言わば俺にとって五大老に対してとれる最終手段。
「俺は千の成功にこの帝位を賭ける!」
「っ!?」
五大老が皆仰天の顔で俺の顔を見つめる。
「個人的感情により国を乱した罰とし、俺はお千の失敗と同時に隠居し、帝位を息子の白寿丸に譲る。五大老は本件に関わりが無いので、当然留任とし、息子を補佐してもらう」
俺がいなくなり幼帝が立てば、その結果として権力は今と比較できないほどに大きくなる。
とりわけ一門である秀次叔父上と秀家はその更に中核となるだろう。
いっそ彼ら二人が次の天下人と言ってしまえるかもしれない。
そして、秀家の宇喜多家はその多くが加賀の前田家の出自。
秀家の妻・豪姫も前田利家の娘なのだから、義弟である利常の発言力も増すことだろう。
逆に毛利・上杉の双方にとっては変化が無い、若しくは、相対的に発言力が減る結果となるかもしれない。
「俺は、そうだな。九州の地で暮らすことにしようか。明やその他の事はお前達で決めればいい」
これが俺の取れる最終手段。
これで駄目なら、・・・・・・内戦も覚悟しなければならない。
「そこまで仰るのであれば、従わねば潰す、と?」
景勝がずんと重みのある声音で発する。
「ああ。出来ればそんなことはしたくないがな」
「・・・・・・女一人のためにそこまで天下を騒がせると?」
「そうだ。そのために後世に愚帝と罵られようが構わん」
久しぶりに感じる本物の戦国大名の威圧。
軍才はやはり謙信に及ぶべくもないのだろうが、その圧は恐らく大差ない。
だが、今はそんな圧に負けるわけにはいかない。
「だいたい、俺は産まれた時から常に天下を騒がせてきたんだ。今更だろう?」
そう、俺ほど天下を騒がせた者など恐らく歴史に照らしても一人もいない。
産まれた瞬間に次代の天下人を失墜させ自身が次代の天下人となり、発言力の大きい第一の部下である家康を戦で壊滅させ、海外を攻めて国土を倍にし、自ら皇帝の地位に就いた。
もちろん、それは父上の土台を継いだからこそできることだが、成し遂げた事だけを見れば父上にも劣らない。
「クク、確かに」
そう言って次代の天下人から落とされた張本人の秀次叔父上が、我慢できぬと言う様に笑う。
「まったくもってその通りですな」
一門の二人にとって余程面白い言い回しだったのか、見れば秀家も笑っている。
「秀次叔父上、採決を」
「・・・・・・採る必要も無いでしょう。毛利殿、上杉殿、前田殿、宇喜多殿よろしいな?」
「異議なし!」
秀家が早々に声を上げ、他三人も頷く。
「さて、では先程の件、したためるとしよう」
同一の文書を二通作成し、六人の連判を押す。
これでもう後戻りはできない。
・・・・・・そういや、白寿はいきなり天下人扱いされることになるんだけど・・・・・・まぁ、お千が成功すれば問題なし!
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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