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秀頼ルート 黒幕捜査3
天下人なのだから(エロ度☆☆☆☆☆)
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「秀頼様、お茶です」
「ん」
槿姫との堺観光を適当に切り上げさせてもらい、城に戻る。
それほどまでに林羅山の名は俺の心を乱した。
いや、発端が家康で、天海まで関わっていたことが、だ。
「桜、林羅山の内偵は?」
「はい。一通りは、ですが」
「そうか、言ってみろ」
「はい。現在京都で活動する朱子学者です。藤原惺窩と言う儒学者の弟子で、最近になって上下定分の理と言う説を発表し、あの、それがどうやら天皇陛下を擁護し、その・・・・・・」
「俺を批判している、か? 臣なら臣らしくして理に背く行為だってところだろ」
「そ、そうです。知っていらしたのですか?」
「少なくとも俺の知っているものじゃない」
そう、林羅山はその学説を江戸幕府のために書き上げた。
これによって君臣の別を説いたのだ。
その時点ではあくまで江戸幕府のためのもの、だが、それは二百年も後の時代に尊王論・尊王運動に繋がり、倒幕にまで至る。
だが、どうやらこの世界では最初から尊王論に使うために生み出されたと言うわけだ。
「今、俺が躍起になれば、奴の主張を後押ししているようなものだ。それに、徳本に繋がる人物でもある」
「その、お医者様の事は後でお考えになられませ」
「・・・・・・いや、林羅山を連れて来い。これは桜の件だけじゃないしな」
それにしても、家康の時は非常に分かりやすい脅威だった。
二百四十万石と言う臣としては大きすぎる知行に圧倒的な軍才と戦歴。
だが、天海にしろ、林羅山にしろ、その脅威は非常に曖昧なものだ。
現実的には全く脅威ではない様に見え、いざ気付いた時には手遅れになっているようなそんな予感。
「秀頼様」
「なんだ?」
姿勢を正し、正対して座った桜は俺をじっと見てくる。
「最近一体何を恐れておいでなのですか? 皇后様の事は確かに心配ではありますが、出来ることは全てしましたし、お麟ちゃん達も付いているのです。今は任せるしかございません。それに、天海和尚も林羅山も、所詮は小物ではないですか。お許しさえいただければ、明日までに暗殺してまいります」
また、恐ろしいことをサラッと言うな。だが、確かに暗殺で終わらせると言う手はある。徳本は別に探し、天海に繋がる商人も――
「・・・・・・何時もの秀頼様であれば暗殺などと言う手段を好まれません。直ぐに拒否されます。それが今は迷われている。本当に一体何を恐れておいでなのですか?」
流石に一緒にいる時間が一番長いだけはある。
この言いしれない不安からくる悩みを見透かしているんだろう。
「暗殺が、余計な混乱を生むから好まないだけだ。それが最も有効であるならそう指示する」
「では」
「ああ、暗殺は無し!」
肩透かしを食らって桜が驚いた顔をする。
だが、俺の方は妙にスッキリした気分だ。
前世の記憶なんぞに振り回され、うじうじ悩むのなんぞ阿保らしい。
「よく考えなくても俺は天下人だ。向こうが挑戦してくるなら正面から受けて立ってやる!」
家康の時だってそうやって乗り越えてきたのだ。
今はあの時よりも多くの頼りになる者達が揃っている、よくよく考えれば恐れる方が馬鹿らしい。
そう、俺は天下人なんだから。
「全部俺の思い通りにしてやる!」
「・・・・・・あの、それは余りカッコよくないです」
「やかましい! 桜はあと五十年生きてチビ桜を三人は産む事。これ天下人の命令な」
「いくらなんでも滅茶苦茶ですよ」
確かにあと五十年生きれば今の平均寿命の1.5倍にもなる。
しかし、桜が焦る姿を見るとなぜこうも落ち着くのか。
「さて、それじゃ」
スッと立ち上がり、大阪城化を見渡す。
「方策を練るとするかね」
不思議と自信満々にニヤリと笑ってやれば、なんでも出来る気がしてくる。
桜もそんな俺を見て嬉しそうに笑っていた。
「ん」
槿姫との堺観光を適当に切り上げさせてもらい、城に戻る。
それほどまでに林羅山の名は俺の心を乱した。
いや、発端が家康で、天海まで関わっていたことが、だ。
「桜、林羅山の内偵は?」
「はい。一通りは、ですが」
「そうか、言ってみろ」
「はい。現在京都で活動する朱子学者です。藤原惺窩と言う儒学者の弟子で、最近になって上下定分の理と言う説を発表し、あの、それがどうやら天皇陛下を擁護し、その・・・・・・」
「俺を批判している、か? 臣なら臣らしくして理に背く行為だってところだろ」
「そ、そうです。知っていらしたのですか?」
「少なくとも俺の知っているものじゃない」
そう、林羅山はその学説を江戸幕府のために書き上げた。
これによって君臣の別を説いたのだ。
その時点ではあくまで江戸幕府のためのもの、だが、それは二百年も後の時代に尊王論・尊王運動に繋がり、倒幕にまで至る。
だが、どうやらこの世界では最初から尊王論に使うために生み出されたと言うわけだ。
「今、俺が躍起になれば、奴の主張を後押ししているようなものだ。それに、徳本に繋がる人物でもある」
「その、お医者様の事は後でお考えになられませ」
「・・・・・・いや、林羅山を連れて来い。これは桜の件だけじゃないしな」
それにしても、家康の時は非常に分かりやすい脅威だった。
二百四十万石と言う臣としては大きすぎる知行に圧倒的な軍才と戦歴。
だが、天海にしろ、林羅山にしろ、その脅威は非常に曖昧なものだ。
現実的には全く脅威ではない様に見え、いざ気付いた時には手遅れになっているようなそんな予感。
「秀頼様」
「なんだ?」
姿勢を正し、正対して座った桜は俺をじっと見てくる。
「最近一体何を恐れておいでなのですか? 皇后様の事は確かに心配ではありますが、出来ることは全てしましたし、お麟ちゃん達も付いているのです。今は任せるしかございません。それに、天海和尚も林羅山も、所詮は小物ではないですか。お許しさえいただければ、明日までに暗殺してまいります」
また、恐ろしいことをサラッと言うな。だが、確かに暗殺で終わらせると言う手はある。徳本は別に探し、天海に繋がる商人も――
「・・・・・・何時もの秀頼様であれば暗殺などと言う手段を好まれません。直ぐに拒否されます。それが今は迷われている。本当に一体何を恐れておいでなのですか?」
流石に一緒にいる時間が一番長いだけはある。
この言いしれない不安からくる悩みを見透かしているんだろう。
「暗殺が、余計な混乱を生むから好まないだけだ。それが最も有効であるならそう指示する」
「では」
「ああ、暗殺は無し!」
肩透かしを食らって桜が驚いた顔をする。
だが、俺の方は妙にスッキリした気分だ。
前世の記憶なんぞに振り回され、うじうじ悩むのなんぞ阿保らしい。
「よく考えなくても俺は天下人だ。向こうが挑戦してくるなら正面から受けて立ってやる!」
家康の時だってそうやって乗り越えてきたのだ。
今はあの時よりも多くの頼りになる者達が揃っている、よくよく考えれば恐れる方が馬鹿らしい。
そう、俺は天下人なんだから。
「全部俺の思い通りにしてやる!」
「・・・・・・あの、それは余りカッコよくないです」
「やかましい! 桜はあと五十年生きてチビ桜を三人は産む事。これ天下人の命令な」
「いくらなんでも滅茶苦茶ですよ」
確かにあと五十年生きれば今の平均寿命の1.5倍にもなる。
しかし、桜が焦る姿を見るとなぜこうも落ち着くのか。
「さて、それじゃ」
スッと立ち上がり、大阪城化を見渡す。
「方策を練るとするかね」
不思議と自信満々にニヤリと笑ってやれば、なんでも出来る気がしてくる。
桜もそんな俺を見て嬉しそうに笑っていた。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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