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千姫ルート 南京城攻略戦2
張居勝3(エロ度☆☆☆☆☆)
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千姫達日本軍と離れた居勝は、出来る限りの速度で南京に向かっていた。
数日間ほとんど休まずに馬を酷使し、あと少しで南京が見えると言うところまで来ていた。
「良いか、恐らく李将軍は此度の敗戦の責を私に取らせるため、城に戻り次第捕らえようとするはずだ」
居勝は南京への道中、部下に作戦を説明する。
捕らえられる時期によっては自分の兵を動かす間もないかもしれないからだ。
「クッ、張将軍は悪くないのに!」
「いいや、敗戦の責は確かに私にある。もちろん李将軍にもだがな。それは本来甘んじて受けねばならぬものだ」
部下は悔しげな声で居勝を擁護するが、間違いなくその責があるとは思っていた。
だが、それも明軍に残ればこそ発生するもの。
そもそも、民の幸福を願って行動する居勝にとって、もう明は必要のないものになっているのだ。
「だが、そもそもは国を疲弊させた堕落した朝廷に問題がある。民のことを思えばこそ倒さねばならぬのは倭ではない、明だ」
全員が全員納得してくれているわけではないだろう。
だが、彼等は居勝に全幅の信頼を寄せている。
彼がそう判断し、行動を起こすと言うのならそれに従うだけだ。
「話を戻すぞ。私が捕らえられたとしても、朝廷の裁可を仰ぐためにすぐには殺されることはない。政庁の牢にでも入れられることだろう。お前達は私の兵に声をかけ、軍を掌握しろ。上海への行軍の際の非道を話してやれば、進安に付く者などいなくなる。どうせ進安は今頃身の保身を必死に考えていることだろうし、こちらの考えになど思いもよらないだろう」
もちろん、進安の背後には李進忠がいる。
だが、北京にいるあの宦官との情報のやり取りには時間がかかる。
それまでには日本軍が到着しているだろう。
「・・・・・・出来れば埋葬作業を止め、急いでもらいたいがそう言うわけにもいかない、か」
あれさえなければこの作戦は完璧だ。
内と外で軍を連動させれば如何に南京城とてひとたまりもない。
「フッ、あれがあったから俺が降り、季夏に会えたのだ。止められるわけがない」
上海での最初の交渉の時、千姫を若いと感じた。
だが、それは居勝が上辺しか見れていなかっただけの話。
彼女は人間を獣に落とす戦場においてさえ、なお高潔でいたのだ。
「まさか、俺が人を崇拝する日が来るとは思わなかったな」
だからこそ彼は日本にではなく、千姫に仕えると言ったのだ。
正直に言えば、秀頼の命を聞くかどうかはその命令次第と考えている。
「・・・・・・出来るだけ多くの兵に声をかけて賛同を得、十分な数になるか、倭軍が南京を包囲した時に叛を起こせ。しかる後、東西南北の門と、政庁を押さえよ」
「ははっ!」
・・・・・・ただ、出来れば季夏の父のもとに説明に行きたい。
今頃は娘が進安の慰み者としてすらいなくなったことを深く悲しんでいることだろう。
それに、彼の支持を得られれば南京の商人たちの助力を期待でき――
「何だ、あれは?」
それは、居勝達が南京を出発した時にはなかった。
南京の城門にあったそれは・・・・・・。
「・・・・・・狂っている」
城門に吊るされた大量の人の死体に、居勝は怒りを通り越して呆れすら感じていた。
死体の辱めにはいくつかの効果がある。
一つは威嚇、敵に対してこうなりたくなければ近寄るなと言う警告。
もっとも、逆に敵軍は怒り、強力になることもあるが。
一つは煽動、味方に対し、敵兵の無残な姿を見せることで血に酔わせる。
だが、それも気の弱い者ならやる気を無くさせてしまう。
そして、見せしめ。
敗戦と、倭軍の行軍は既に南京市民にも伝わっているのだろう。
逃げ出す者はこうなると進安は示しているのだ。
南京城はまだ敵が近づいているわけでもないのに門が閉じ、誰の行き来もない。
普段は活気に溢れている旧王都だと言うのに、今は見る影もない。
「・・・・・・あれは倭軍の兵だけか?」
今回の戦で居勝達は一人として捕虜を取れていない。
敵遊軍の捕虜はいるかもしれないが・・・・・・。
「将軍、あちらを」
そう言って兵が指さす方を見れば、そこには老人がぶら下がっている。
あれこそまさに3つ目の効果を狙ったものだ。
籠城を前に市民を殺して晒すなどなんと愚かなことか!
「民の不満にも気づかぬ愚か者が!」
疾うに民は明を見限っている。
だからこそ居勝は何を犠牲にしてでも早急に出世し、立て直そうとしていたのだ。
だが、ことここに至れば、もう南京市民は明を受け入れることはないだろう。
巨大な権力を嵩に人の心を無くした者にはそれが分からないのだ。
「良いか、民に倭軍の善行と精強さを伝えよ。それだけで民の方から倭を受け入れるだろう」
もっとも、善行に関しては倭軍ではなく、千姫の軍特有のものであるが・・・・・・。
「また、今来ている倭軍は倭冠とは全くの別物だということもだ」
こう言うのは気が引けるが、おかげで民が倭軍を受け入れやすい土壌は整った。
不安があるとすれば、この惨状を見るだけでも進安が狂っていることが分かること。
もしかすると居勝は顔を出した瞬間に殺されるかもしれない。
「・・・・・・そこは賭け、だな」
そう呟きながら、少しだけ開けられた城門を通っていった。
数日間ほとんど休まずに馬を酷使し、あと少しで南京が見えると言うところまで来ていた。
「良いか、恐らく李将軍は此度の敗戦の責を私に取らせるため、城に戻り次第捕らえようとするはずだ」
居勝は南京への道中、部下に作戦を説明する。
捕らえられる時期によっては自分の兵を動かす間もないかもしれないからだ。
「クッ、張将軍は悪くないのに!」
「いいや、敗戦の責は確かに私にある。もちろん李将軍にもだがな。それは本来甘んじて受けねばならぬものだ」
部下は悔しげな声で居勝を擁護するが、間違いなくその責があるとは思っていた。
だが、それも明軍に残ればこそ発生するもの。
そもそも、民の幸福を願って行動する居勝にとって、もう明は必要のないものになっているのだ。
「だが、そもそもは国を疲弊させた堕落した朝廷に問題がある。民のことを思えばこそ倒さねばならぬのは倭ではない、明だ」
全員が全員納得してくれているわけではないだろう。
だが、彼等は居勝に全幅の信頼を寄せている。
彼がそう判断し、行動を起こすと言うのならそれに従うだけだ。
「話を戻すぞ。私が捕らえられたとしても、朝廷の裁可を仰ぐためにすぐには殺されることはない。政庁の牢にでも入れられることだろう。お前達は私の兵に声をかけ、軍を掌握しろ。上海への行軍の際の非道を話してやれば、進安に付く者などいなくなる。どうせ進安は今頃身の保身を必死に考えていることだろうし、こちらの考えになど思いもよらないだろう」
もちろん、進安の背後には李進忠がいる。
だが、北京にいるあの宦官との情報のやり取りには時間がかかる。
それまでには日本軍が到着しているだろう。
「・・・・・・出来れば埋葬作業を止め、急いでもらいたいがそう言うわけにもいかない、か」
あれさえなければこの作戦は完璧だ。
内と外で軍を連動させれば如何に南京城とてひとたまりもない。
「フッ、あれがあったから俺が降り、季夏に会えたのだ。止められるわけがない」
上海での最初の交渉の時、千姫を若いと感じた。
だが、それは居勝が上辺しか見れていなかっただけの話。
彼女は人間を獣に落とす戦場においてさえ、なお高潔でいたのだ。
「まさか、俺が人を崇拝する日が来るとは思わなかったな」
だからこそ彼は日本にではなく、千姫に仕えると言ったのだ。
正直に言えば、秀頼の命を聞くかどうかはその命令次第と考えている。
「・・・・・・出来るだけ多くの兵に声をかけて賛同を得、十分な数になるか、倭軍が南京を包囲した時に叛を起こせ。しかる後、東西南北の門と、政庁を押さえよ」
「ははっ!」
・・・・・・ただ、出来れば季夏の父のもとに説明に行きたい。
今頃は娘が進安の慰み者としてすらいなくなったことを深く悲しんでいることだろう。
それに、彼の支持を得られれば南京の商人たちの助力を期待でき――
「何だ、あれは?」
それは、居勝達が南京を出発した時にはなかった。
南京の城門にあったそれは・・・・・・。
「・・・・・・狂っている」
城門に吊るされた大量の人の死体に、居勝は怒りを通り越して呆れすら感じていた。
死体の辱めにはいくつかの効果がある。
一つは威嚇、敵に対してこうなりたくなければ近寄るなと言う警告。
もっとも、逆に敵軍は怒り、強力になることもあるが。
一つは煽動、味方に対し、敵兵の無残な姿を見せることで血に酔わせる。
だが、それも気の弱い者ならやる気を無くさせてしまう。
そして、見せしめ。
敗戦と、倭軍の行軍は既に南京市民にも伝わっているのだろう。
逃げ出す者はこうなると進安は示しているのだ。
南京城はまだ敵が近づいているわけでもないのに門が閉じ、誰の行き来もない。
普段は活気に溢れている旧王都だと言うのに、今は見る影もない。
「・・・・・・あれは倭軍の兵だけか?」
今回の戦で居勝達は一人として捕虜を取れていない。
敵遊軍の捕虜はいるかもしれないが・・・・・・。
「将軍、あちらを」
そう言って兵が指さす方を見れば、そこには老人がぶら下がっている。
あれこそまさに3つ目の効果を狙ったものだ。
籠城を前に市民を殺して晒すなどなんと愚かなことか!
「民の不満にも気づかぬ愚か者が!」
疾うに民は明を見限っている。
だからこそ居勝は何を犠牲にしてでも早急に出世し、立て直そうとしていたのだ。
だが、ことここに至れば、もう南京市民は明を受け入れることはないだろう。
巨大な権力を嵩に人の心を無くした者にはそれが分からないのだ。
「良いか、民に倭軍の善行と精強さを伝えよ。それだけで民の方から倭を受け入れるだろう」
もっとも、善行に関しては倭軍ではなく、千姫の軍特有のものであるが・・・・・・。
「また、今来ている倭軍は倭冠とは全くの別物だということもだ」
こう言うのは気が引けるが、おかげで民が倭軍を受け入れやすい土壌は整った。
不安があるとすれば、この惨状を見るだけでも進安が狂っていることが分かること。
もしかすると居勝は顔を出した瞬間に殺されるかもしれない。
「・・・・・・そこは賭け、だな」
そう呟きながら、少しだけ開けられた城門を通っていった。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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