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千姫ルート 南京城攻略戦1
居勝と季夏2(エロ度☆☆☆☆☆)
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「季夏!」
それ以上は一言も発せず、ただ強く季夏を抱きしめる。
千姫には明軍、とりわけ居勝は冷酷非道と言う意識のある。
だからこそ、その光景を見つめる目には少しばかりの驚きも含まれていた。
「・・・・・・張将軍は日本に降ってくださるそうです。季夏さんは如何されますか? もう、会えて満足ですか?」
実は、千姫が居勝に会った理由は、この季夏のことも大きく関わっていた。
それともう一人、お麟が男に道具として扱われた季夏を憐れに思ったのだ。
「・・・・・・ふん」
今もお麟は居勝を侮蔑した目で睨んでいる。
5歳の少女にそうされてしまえば、千姫達も苦笑いするしかない。
どうにもお麟は感情を抑えるのが苦手なのかもしれない。
千姫などはそれにどことなく歳相応な愛らしさを感じてしまっていた。
「季夏さん、それでどうしますか? 短刀くらいなら私も持っています。前に仰っていたように自害なされるようならお貸ししますよ?」
既に、当初聞いていた季夏の目的は果たした。
季夏はそれが終われば死にたい、そう言っていたのだ。
「・・・・・・はい。お貸し、願えますか?」
そう言った季夏の表情はとても満足そうで、本当にいつ死んでも構わないと言っているように思えた。
そのやり取りは通訳の言葉を交えてのものなので、当然居勝にも聞こえている。
「何を言っている!? どうして季夏が死ぬ必要がる!」
取り乱したまま涙もなにも拭わずに季夏の肩を揺する。
その様子に季夏は微笑みながら・・・・・・。
「今の私は穢れています。居勝様の妻になどなれようはずもございません。居勝様がそれを許したとしても、私自身がそれを許せないのです。私の意志を尊重していただけるのなら、どうぞお許しください」
疾うに季夏は覚悟を決めている。
それは、居勝が何を言おうと覆せるものではなかった。
だが、これで居勝は最愛の人を3度も亡くすことになるのだ。
「駄目だ! お前が死ぬなら俺も死ぬ。いや、先に死んでやる!」
そこにはかつて日本軍を追い詰めた冷酷な謀略家はいない。
いるのはただ必死に女に縋る男だけ。
「困った人。それではなんのために今まで我慢してきたのか分からないではないですか」
子供のように泣き縋る居勝の頭を胸に抱き、優しく髪を漉きながらまるで母親のように教え諭す。
「貴方には志がある。それが私や父が貴方を信じ愛した理由でもある。このようなところで挫けて良いものではありません」
千姫が短刀を手に近づく。
実際のところ、千姫には季夏の決断が理解できた。
それ故に彼女の意思を尊重する気になっていたのだ。
逆にお麟などは、その短刀で居勝を切り殺してしまえと物騒なことを考えていたが・・・・・・。
「どうぞ、季夏さん」
「ありがとうございます。皇后様」
千姫から季夏の手に短刀が手渡されようとした時。
ふと、千姫本人にも思いがけない言葉が出てきた。
「貴女、卑怯ですね」
出てきた時、千姫自身も驚いたほどだったが、どうにもその言葉が千姫には思い浮かんだのだ。
「・・・・・・卑怯、ですか?」
「ええ。卑怯、です」
季夏と千姫の目がかち合う。
それは、この10日あまり何時も慈愛の眼差しで季夏を見て来た千姫が初めて見せた怒りだった。
「貴女はまだ婚約者と言うかも知れませんが、もうその方の妻の様なものです。だと言うのに妻の務めを一つもこなさぬまま、死にながらに妻の座に居座るつもりです」
その時、千姫が何を言っているのか、季夏には理解できなかった。
もしや通訳が誤訳でもしたのではと疑うほどに。
「妻の役目は子を成すこと、家庭を守ること、夫を支えること。これからその方は他国に降り、これまでと比較にならない苦労をするはずだと言うのに、妻がそれを放棄するとは何事ですか!」
言っている意味は分かって来た。
でも、それは・・・・・・。
「あまつさえ、今あなたが死ねばこの方は妻を3度も殺したことになる。二度と妻を娶ろうとせずに貴女の幻影がその座を占めるのでしょう。・・・・・・卑怯です!」
実際、季夏にどうしてほしいと言うものがあったわけではない。
ただそう思い、同じ女として許せなくなっただけ。
千姫の心情はただそれだけだった。
「・・・・・・皇后様、私にどうしろと言うんですか?」
「知りません!」
千姫は短刀を季夏に押し付けると、とっとと出て行ってしまう。
自分自身で自分が分からなくなったのだろう。
「・・・・・・皇后様も、卑怯、です」
千姫の遠ざかる背中を見ながら季夏が呟く。
死ぬという決意は、何かもうどうでも良くなってしまっていた。
「皆、卑怯です」
胸の中の居勝を撫でながら季夏は穏やかに微笑む。
短刀は抜かれることもなく井頼の手で千姫に戻された。
それ以上は一言も発せず、ただ強く季夏を抱きしめる。
千姫には明軍、とりわけ居勝は冷酷非道と言う意識のある。
だからこそ、その光景を見つめる目には少しばかりの驚きも含まれていた。
「・・・・・・張将軍は日本に降ってくださるそうです。季夏さんは如何されますか? もう、会えて満足ですか?」
実は、千姫が居勝に会った理由は、この季夏のことも大きく関わっていた。
それともう一人、お麟が男に道具として扱われた季夏を憐れに思ったのだ。
「・・・・・・ふん」
今もお麟は居勝を侮蔑した目で睨んでいる。
5歳の少女にそうされてしまえば、千姫達も苦笑いするしかない。
どうにもお麟は感情を抑えるのが苦手なのかもしれない。
千姫などはそれにどことなく歳相応な愛らしさを感じてしまっていた。
「季夏さん、それでどうしますか? 短刀くらいなら私も持っています。前に仰っていたように自害なされるようならお貸ししますよ?」
既に、当初聞いていた季夏の目的は果たした。
季夏はそれが終われば死にたい、そう言っていたのだ。
「・・・・・・はい。お貸し、願えますか?」
そう言った季夏の表情はとても満足そうで、本当にいつ死んでも構わないと言っているように思えた。
そのやり取りは通訳の言葉を交えてのものなので、当然居勝にも聞こえている。
「何を言っている!? どうして季夏が死ぬ必要がる!」
取り乱したまま涙もなにも拭わずに季夏の肩を揺する。
その様子に季夏は微笑みながら・・・・・・。
「今の私は穢れています。居勝様の妻になどなれようはずもございません。居勝様がそれを許したとしても、私自身がそれを許せないのです。私の意志を尊重していただけるのなら、どうぞお許しください」
疾うに季夏は覚悟を決めている。
それは、居勝が何を言おうと覆せるものではなかった。
だが、これで居勝は最愛の人を3度も亡くすことになるのだ。
「駄目だ! お前が死ぬなら俺も死ぬ。いや、先に死んでやる!」
そこにはかつて日本軍を追い詰めた冷酷な謀略家はいない。
いるのはただ必死に女に縋る男だけ。
「困った人。それではなんのために今まで我慢してきたのか分からないではないですか」
子供のように泣き縋る居勝の頭を胸に抱き、優しく髪を漉きながらまるで母親のように教え諭す。
「貴方には志がある。それが私や父が貴方を信じ愛した理由でもある。このようなところで挫けて良いものではありません」
千姫が短刀を手に近づく。
実際のところ、千姫には季夏の決断が理解できた。
それ故に彼女の意思を尊重する気になっていたのだ。
逆にお麟などは、その短刀で居勝を切り殺してしまえと物騒なことを考えていたが・・・・・・。
「どうぞ、季夏さん」
「ありがとうございます。皇后様」
千姫から季夏の手に短刀が手渡されようとした時。
ふと、千姫本人にも思いがけない言葉が出てきた。
「貴女、卑怯ですね」
出てきた時、千姫自身も驚いたほどだったが、どうにもその言葉が千姫には思い浮かんだのだ。
「・・・・・・卑怯、ですか?」
「ええ。卑怯、です」
季夏と千姫の目がかち合う。
それは、この10日あまり何時も慈愛の眼差しで季夏を見て来た千姫が初めて見せた怒りだった。
「貴女はまだ婚約者と言うかも知れませんが、もうその方の妻の様なものです。だと言うのに妻の務めを一つもこなさぬまま、死にながらに妻の座に居座るつもりです」
その時、千姫が何を言っているのか、季夏には理解できなかった。
もしや通訳が誤訳でもしたのではと疑うほどに。
「妻の役目は子を成すこと、家庭を守ること、夫を支えること。これからその方は他国に降り、これまでと比較にならない苦労をするはずだと言うのに、妻がそれを放棄するとは何事ですか!」
言っている意味は分かって来た。
でも、それは・・・・・・。
「あまつさえ、今あなたが死ねばこの方は妻を3度も殺したことになる。二度と妻を娶ろうとせずに貴女の幻影がその座を占めるのでしょう。・・・・・・卑怯です!」
実際、季夏にどうしてほしいと言うものがあったわけではない。
ただそう思い、同じ女として許せなくなっただけ。
千姫の心情はただそれだけだった。
「・・・・・・皇后様、私にどうしろと言うんですか?」
「知りません!」
千姫は短刀を季夏に押し付けると、とっとと出て行ってしまう。
自分自身で自分が分からなくなったのだろう。
「・・・・・・皇后様も、卑怯、です」
千姫の遠ざかる背中を見ながら季夏が呟く。
死ぬという決意は、何かもうどうでも良くなってしまっていた。
「皆、卑怯です」
胸の中の居勝を撫でながら季夏は穏やかに微笑む。
短刀は抜かれることもなく井頼の手で千姫に戻された。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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