関白の息子!

アイム

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千姫ルート 南京城攻略戦1

進軍3(エロ度☆☆☆☆☆)

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 居勝は2日もせずに会敵すると思っていた倭軍が待てど暮らせど来ないことに驚き、その動向を聞いてさらに驚いていた。

「・・・・・・もう一度申せ」

「倭軍は、その、我らが襲った村の民を全て埋葬し供養しています」

「馬鹿を言うな! そのような軍があるか!」

 物語でも、せいぜい手を合わせて終わり。
 それが急がぬ進軍なら話は別だが、相手は追撃の最中だったはずだ。
 少なくとも追われる立場の居勝はそう感じていた。

「それが、戦に向かわずに敵の埋葬だと!?」

「・・・・・・はっ! ですが、事実でございます」

 若い、とは思っていた。
 だが、いくらなんでもそれは・・・・・・。

「嘘だと、言ってくれ・・・・・・」

 居勝は突然自分の行動が恥ずかしくなる。
 守るべき民を、より多く生かすために見殺しにした自分が。

「あの速度ですと、会敵まであと5日以上かかるかと思われます」

「・・・・・・そうか、そのことを兵達にも伝えよ」

 千姫の行動は、ともすれば行軍を遅らせる利敵行為であった。
 だが、そうでなくても季夏を失ったと言う苦しみに震える居勝の心に、大きな変化を産んでいた。

 倭軍より交渉の使者が来訪した時、居勝は即答で応じたのはその変化ゆえだった。




「お久しぶりです。張将軍」

「はい。相変わらずお美しい。ですが、少しばかり目に険が見えます」

 倭軍からは千姫と井頼、それに信繁と通訳が同席するのに対し、明軍は居勝がただ一人で現れた。
 かえって火薬でも仕込んでいるのではと井頼が疑ったほどだ。

「先ず、この会談を申し込まれた理由をお聞きしても?」

「ええ。ただ私がお聞きしたかったのです。どうして自国の民にあのような非道な行いをしたのかを」

 美しい顔で睨まれるが、居勝は動じない。

「あれには幾つかの理由があったそうです。一つは食糧確保、一つは見せしめ、一つは練兵、一つは兵の欲求解消、一つは倭軍に罪を押し付けることでの戦意高揚。ですが、どのような理由があれど許される行為であるとは思っていません」

「・・・・・・では、何故?」

「私には止められなかった、と言うのはただの言い訳でしょう。皇后陛下、我が国の民を弔っていただいた事、先ずは深く感謝いたします。私の首を差し上げますので、どうか兵はお見逃しください」

 深く頭を下げる居勝に千姫たちは困惑する。
 もともとこの交渉は居勝達に無駄な抵抗をせずに後退させることが目的だ。
 そうでなくても遅れている行軍を少しでも早めたい、それだけだった。
 正直に言えば、千姫の問いは軍としてはなんの意味も持たない問いだったのだ。

「どうして貴方の様な方がいてあんなことを!」

 ダン! と大きな音を立て、千姫が机を叩く。
 その白く細い指は、豆だらけの上に穴を掘った時にでも付いたのであろう土が爪に挟まっていた。

 井頼は居勝の言葉を受け入れようとしていたが、千姫はなおのこと許せぬと言った様子だった。

「出世に目がくらみ、守るべきものを見失った。そんな愚かな男ですよ――」

「民を救いたい。その志は今も変わりませんか?」

 もちろん通訳を通して言葉は伝えられる。
 だが、その少女の言葉は言語の壁とは別に居勝にとって救いのように感じられた。

「もしも、その志が残っているのなら、我らの下に降りなさい」

 それは、どれほど甘美な誘惑だっただろう。
 この3月ほどで、居勝は明と言う組織を嫌い、倭に好感を持つようになっていたのは事実。
 だが、同時に国を愛してやまないのだ。

「・・・・・・私は貴女方を騙し討ちにしたのですよ?」

「もちろん覚えています」

「言葉だけ従って裏切るとは思わないのですか?」

「自分の目を信じます。いえ、それは嘘ですね。季夏さんの、貴方の婚約者の言葉を信じているのです」

「っ!? 季夏!?」

 思いがけず出て来た名に居勝が立ち上がる。

「今は我々が保護しています。人質にするつもりはありませんが、明軍に引き渡して良いものかと悩んでもいます」

「・・・・・・会わせてはいただけませんか?」

 居勝が季夏と別れたのはもう11日も前。
 その間ずっと季夏を失った苦しみに耐えてきた。
 生きていてくれるだけで十分、だが、同時にもしも会えるのなら。

「はい。最近は随分と元気も出て来たようですし、それは問題ありません。ですが、会ってどうするつもりですか? これから死ぬつもりの人に会わせるつもりはありませんよ」

 千姫は先の答えを促す。
 すなわち、降るのか、それとも死ぬか。

「・・・・・・私はこの国の民を救いたいと考えています」

「日本はきっとそれを助けることができます」

「もしも、倭、いえ、日本が我らの国の民を虐げることあれば叛を起こすでしょう」

「心配しなくても、此処も日本となるのです。自国の民を虐げることを皇帝陛下は許しません」

 千姫と居勝が見つめ合う。
 ・・・・・・そして、

「我が身命を賭し、にお仕えしましょう」

 居勝が千姫に臣下の礼を取った。


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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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