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千姫ルート 南京城攻略戦1
進軍2(エロ度☆☆☆☆☆)
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上海を出発してより10日が経つ。
その間、日本軍の進軍は恐ろしくゆったりとしていた。
また、当初の戦略通りに遊軍を放ちもせず、途上の全ての村に立ち寄っていたのだ。
「・・・・・・皇后様、急がねばなりません」
「いいえ。彼等を早く埋葬してあげねばいけません」
破壊された村の全てを回り、巨大な穴を掘り、死体を埋める。
そして、埋め終われば全軍で念仏を唱える。
行軍に加えてこのような作業が加わってしまったのである。
当初の予定より5割は行軍が遅い。
これでは上海で稼いだ時間が無くなってしまう。
井頼を始め諸将が説得したが、千姫は頑として譲らず、軍は3つほどに分かれ、それぞれが埋葬作業に明け暮れていた。
通常であれば、兵の疲労が溜まり、不満が爆発しているころだ。
なにせ、上海のそれとは違い、この村の惨劇は日本が引き起こしたものではない。
だが、それが千姫の考えと知れば、兵達の表情は修験者のそれのように澄んでいた。
それは、忠勝をして、一向一揆ですらこれほどではなかったと言わしめるほど。
「皇后様、この先5里の地点に1000ほどの明兵が陣を張り待ち受けています」
「・・・・・・そうですか」
「加藤軍に向かってもらおうと思いますが――」
「いいえ、私たちの軍が先行します。そこで敵将と話がしたいのです」
「っ!?」
井頼は既に明との交渉は成立しないものと考えていた。
ついでに言うのなら、その苦い経験は忘れたくても忘れられない。
「し、しかし」
「井頼殿、申し訳ありませんがこれは命令です。敵将との会談の席を設けてください」
この10日の間、千姫は通訳を通して毎日季夏に話しかけていた。
最初は頑なに無言を貫いていた季夏も、日本軍の振る舞いを見るうちに少しずつ打ち解け、多少の会話をするようになってくれた。
季夏が南京の商人の娘で敵大将・李進安に手籠めにされていたこと。
そして、その生きる目的も。
「敵将は、あの張居勝らしいのです! 交渉など成立するはずがありません!」
「・・・・・・張居勝ですか」
季夏の情報は軍にとって有益なものではなかったため、千姫は井頼たちには特に伝えていなかった。
それを知っているのは共にいた通訳とお麟だけ。
「季夏さんの・・・・・・」
「皇后様?」
何か考える様な仕草を取る千姫を井頼が訝しむ。
「いえ、だとしたら逆に好都合です」
「は?」
「フフッ、井頼殿にとっても好機ではないですか?」
少し揶揄うような千姫の笑みに井頼は逆らうことなど出来なかった。
その間、日本軍の進軍は恐ろしくゆったりとしていた。
また、当初の戦略通りに遊軍を放ちもせず、途上の全ての村に立ち寄っていたのだ。
「・・・・・・皇后様、急がねばなりません」
「いいえ。彼等を早く埋葬してあげねばいけません」
破壊された村の全てを回り、巨大な穴を掘り、死体を埋める。
そして、埋め終われば全軍で念仏を唱える。
行軍に加えてこのような作業が加わってしまったのである。
当初の予定より5割は行軍が遅い。
これでは上海で稼いだ時間が無くなってしまう。
井頼を始め諸将が説得したが、千姫は頑として譲らず、軍は3つほどに分かれ、それぞれが埋葬作業に明け暮れていた。
通常であれば、兵の疲労が溜まり、不満が爆発しているころだ。
なにせ、上海のそれとは違い、この村の惨劇は日本が引き起こしたものではない。
だが、それが千姫の考えと知れば、兵達の表情は修験者のそれのように澄んでいた。
それは、忠勝をして、一向一揆ですらこれほどではなかったと言わしめるほど。
「皇后様、この先5里の地点に1000ほどの明兵が陣を張り待ち受けています」
「・・・・・・そうですか」
「加藤軍に向かってもらおうと思いますが――」
「いいえ、私たちの軍が先行します。そこで敵将と話がしたいのです」
「っ!?」
井頼は既に明との交渉は成立しないものと考えていた。
ついでに言うのなら、その苦い経験は忘れたくても忘れられない。
「し、しかし」
「井頼殿、申し訳ありませんがこれは命令です。敵将との会談の席を設けてください」
この10日の間、千姫は通訳を通して毎日季夏に話しかけていた。
最初は頑なに無言を貫いていた季夏も、日本軍の振る舞いを見るうちに少しずつ打ち解け、多少の会話をするようになってくれた。
季夏が南京の商人の娘で敵大将・李進安に手籠めにされていたこと。
そして、その生きる目的も。
「敵将は、あの張居勝らしいのです! 交渉など成立するはずがありません!」
「・・・・・・張居勝ですか」
季夏の情報は軍にとって有益なものではなかったため、千姫は井頼たちには特に伝えていなかった。
それを知っているのは共にいた通訳とお麟だけ。
「季夏さんの・・・・・・」
「皇后様?」
何か考える様な仕草を取る千姫を井頼が訝しむ。
「いえ、だとしたら逆に好都合です」
「は?」
「フフッ、井頼殿にとっても好機ではないですか?」
少し揶揄うような千姫の笑みに井頼は逆らうことなど出来なかった。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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