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千姫ルート 上海要塞防衛戦5
火計2(エロ度☆☆☆☆☆)
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千姫はその様子を立って見ていた。
ただ、明兵が燃え、断末魔の叫びを上げながら絶命していく様子をじっと目を逸らさずに。
その瞳に涙を溜め、唇を血が出るほどに噛みしめて。
「皇后様、火が飛んでくるかもしれませぬ。中に」
井頼は千姫にそう言うが、そんなことにならない設計にはなっている。
それは無理に見る必要はないという気遣いの口実でしかない。
「井頼殿、私はなんと言う業を背負ってしまったのでしょう」
目の前で燃える人々には、敵ではあっても憎しみなど無い。
敵対してしまったが、それもそもそも自分たちの方が侵略したゆえだ。
「・・・・・・この火計は私が考えたものです。どうぞ皇后様はお悩みくださいますな」
見れば火はどんどんと拡がっていく。
前線にいた兵士たちには大体回っただろうか。
炎で上手く見えないが、どれほどの被害が出ているのだろうか。
草原と言っても、草はそれほど燃えやすいものではない。
だが、此処には油の詰まった30万の燃料がある。
そして、
「・・・・・・砲撃が始まりました」
長江の艦船から長距離砲撃が行われる。
この砲撃で敵は混乱し、さらに多くの者が焼け死ぬだろう。
そして、砂埃と砲撃と、火の勢いから逃れて知るのだ。
疾うに火に囲まれていることに。
「恐らく、我々も2日は動けぬかと」
返事を一向にしない千姫に井頼が触れようとする。
「・・・・・・井頼殿、貴方に責任は一切ありません。それは総大将である私のものです」
千姫が振り帰らずにはっきりとそう言う。
「この軍の誰も悪くない。業を背負うのは私だけで十分です」
「皇后様・・・・・・」
それ以上は誰も声をかけられず、千姫の真似をするようにただじっと燃える火を見ていた。
順調に火を点け終え、敵の逃走に備える加藤軍も、その火の勢いに肝を冷やしていた。
地雷火による延焼速度はあまりにも早く、清正の想像を大きく超えていたのだ。
「これは・・・・・・逃げてくる敵はほぼいないかもしれぬな」
それに、いざ風向きが変われば自分達も危うい。
「・・・・・・移動するぞ!」
予定された場所とは違うが、結局のところ南京までの経路に兵を置けばいい。
南側から淀山湖(上海南西部の湖)を迂回してくる者は島津軍が討ってくれる。
ガサッ
それは、気付いたこと自体が不思議なほどの小さな音だった。
なにかが動いた音、それだけは確かであった。
「何者だ!?」
言っておいてそれが酷く間抜けな質問であることに清正は気付く。
此処は明国なのだから。
「捕らえよ!」
戦場から退いて来たにしては早すぎる。
だが、もしも敵の伝令なら斬ってしまおうと考えながら、部下に命令する。
そして、ほどなくして兵士たちが捕らえてきたのは・・・・・・。
「・・・・・・フム、女、か。近隣の村から連れてこられたか?」
それは同時にあの帷幕の中に同様の者がいたかも知れないということでもあった。
「これは、可哀想なことをしたかもしれぬな」
少々後味の悪さを感じながらも、清正はそれも仕方ないと割り切って考えられた。
「・・・・・・フム、随分と痩せているが美しい。おい、携帯食で良い、飯を食わせてやれ」
昔であれば、もしくは、これが千姫の軍でなければ娘を犯していたかもしれない。
だが、清正はこの娘を手厚く遇してやることにした。
唯一人で帷幕から逃げてきた娘・季夏を。
ただ、明兵が燃え、断末魔の叫びを上げながら絶命していく様子をじっと目を逸らさずに。
その瞳に涙を溜め、唇を血が出るほどに噛みしめて。
「皇后様、火が飛んでくるかもしれませぬ。中に」
井頼は千姫にそう言うが、そんなことにならない設計にはなっている。
それは無理に見る必要はないという気遣いの口実でしかない。
「井頼殿、私はなんと言う業を背負ってしまったのでしょう」
目の前で燃える人々には、敵ではあっても憎しみなど無い。
敵対してしまったが、それもそもそも自分たちの方が侵略したゆえだ。
「・・・・・・この火計は私が考えたものです。どうぞ皇后様はお悩みくださいますな」
見れば火はどんどんと拡がっていく。
前線にいた兵士たちには大体回っただろうか。
炎で上手く見えないが、どれほどの被害が出ているのだろうか。
草原と言っても、草はそれほど燃えやすいものではない。
だが、此処には油の詰まった30万の燃料がある。
そして、
「・・・・・・砲撃が始まりました」
長江の艦船から長距離砲撃が行われる。
この砲撃で敵は混乱し、さらに多くの者が焼け死ぬだろう。
そして、砂埃と砲撃と、火の勢いから逃れて知るのだ。
疾うに火に囲まれていることに。
「恐らく、我々も2日は動けぬかと」
返事を一向にしない千姫に井頼が触れようとする。
「・・・・・・井頼殿、貴方に責任は一切ありません。それは総大将である私のものです」
千姫が振り帰らずにはっきりとそう言う。
「この軍の誰も悪くない。業を背負うのは私だけで十分です」
「皇后様・・・・・・」
それ以上は誰も声をかけられず、千姫の真似をするようにただじっと燃える火を見ていた。
順調に火を点け終え、敵の逃走に備える加藤軍も、その火の勢いに肝を冷やしていた。
地雷火による延焼速度はあまりにも早く、清正の想像を大きく超えていたのだ。
「これは・・・・・・逃げてくる敵はほぼいないかもしれぬな」
それに、いざ風向きが変われば自分達も危うい。
「・・・・・・移動するぞ!」
予定された場所とは違うが、結局のところ南京までの経路に兵を置けばいい。
南側から淀山湖(上海南西部の湖)を迂回してくる者は島津軍が討ってくれる。
ガサッ
それは、気付いたこと自体が不思議なほどの小さな音だった。
なにかが動いた音、それだけは確かであった。
「何者だ!?」
言っておいてそれが酷く間抜けな質問であることに清正は気付く。
此処は明国なのだから。
「捕らえよ!」
戦場から退いて来たにしては早すぎる。
だが、もしも敵の伝令なら斬ってしまおうと考えながら、部下に命令する。
そして、ほどなくして兵士たちが捕らえてきたのは・・・・・・。
「・・・・・・フム、女、か。近隣の村から連れてこられたか?」
それは同時にあの帷幕の中に同様の者がいたかも知れないということでもあった。
「これは、可哀想なことをしたかもしれぬな」
少々後味の悪さを感じながらも、清正はそれも仕方ないと割り切って考えられた。
「・・・・・・フム、随分と痩せているが美しい。おい、携帯食で良い、飯を食わせてやれ」
昔であれば、もしくは、これが千姫の軍でなければ娘を犯していたかもしれない。
だが、清正はこの娘を手厚く遇してやることにした。
唯一人で帷幕から逃げてきた娘・季夏を。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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