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千姫ルート 上海要塞防衛戦5
火計1(エロ度☆☆☆☆☆)
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信じられないものを目にした時、人は防御行動も何もとれなくなる。
ただただ、身体を固め、呆けるのみだ。
「・・・・・・これが狙いだった、のか?」
上海要塞の城壁が倒れ込む、その巨大な質量は挟まれた人間を破裂させ、断末魔の声すら上げる暇を与えない。
堀より外20尺(約6m)ほどの兵を押し潰してしまった。
・・・・・・だが、その効果などせいぜいが兵数千の命。
30万の大軍に対し、城壁を捨てるほどの効果など無い。
「・・・・・・なんだ? 水?」
城壁が倒れると同時にその中から溢れ出した液体が、広範囲に渡って兵にかかったのに気付いた時、居勝は再び背筋に悪寒が走った。
兵は、砂埃のせいかまともに鼻が利かずそれが何か分かっていない。
だが、居勝には油しかないと分かっていたのだ。
ヒンッ、ヒュンッ
城内から複数の飛翔体が放たれる。
間に合わないことを、届かないことを理解していながら、それでも居勝は叫ぶ。
「退け! 火計だ!」
それを合図にしたかのように、味方の兵たちが燃え上がっていく。
絶叫を上げ、暴れ回る兵が味方を更に燃やす。
阿鼻叫喚、密集した兵達は互いで互いを燃やしながら燃え広がっていく。
「グッ、後方の兵だけでも退かせ、ろ?」
そうして、後方の草原が凄まじい勢いで燃え広がっていることにようやく気付く。
実は、巨大な壁の倒壊は、敵の目を釘付けにし清正達の点けた火が拡がるまで気付かせないという目的もあったのだ。
前方の火計だけなら巻き返しようはあった。
だが、既に南も西にも火が回っている。
これは・・・・・・。
「火に囲まれた。あの火勢は強い、もはや攻城兵は間に合わん」
ギリッと歯軋りしながら、居勝は戦の完全な敗北を悟った。
敵の兵器ばかりを見て、古来から使われる火計を見落としたことは言い逃れようのない失態。
敵の城が風下だったことも油断した原因ではあるが・・・・・・。
「内部にまた土壁、か。あれで火が治まるまで待とうと言うのだな」
今日中に勝つなどと、どの口が言っていたのか・・・・・・。
自身の過ちを恥じながらも、居勝は次善の策を取る。
「本陣とここにいる兵だけで南京に後退する。一度、帷幕に戻り兵糧を確保するぞ!」
「っ!? 張将軍! 帷幕からも火の手が!」
兵のその言葉に居勝の頭の中が真っ白になる。
「っ季夏!!」
馬に飛び乗る。
「将軍!?」
兵たちが居勝を押しとどめようとするも、それを押しのけて駆けだす。
ただ愛しい人のところへと。
慌てて兵達も居勝を追いかけるが、そんな事は見えていない。
味方の悲鳴も何もかもが今はどうでも良い。
ただ、季夏が生きていてくれること、それだけを願い馬を走らせる。
・・・・・・だが、帷幕のあったそこに辿り着いた時、居勝の目に見えたのはただ煌々と燃える炎だけ。
そこにいて生きている者などいようはずもない。
そう告げる様な木材の燃える音だけが響いていた。
「・・・・・・季夏」
ポソリと呟き、返ってくるはずもない返事を待つ。
それが、絶対に返ってこないことを知りながら。
そして、ガクリとうな垂れて膝をついた。
兵たちが追いついてきた時、既に居勝は虚ろな目をしながらも立ち上がっていた。
「将軍!?」
兵の一人がその様子を心配し、声をかける。
「・・・・・・李将軍に伝えよ。もはやここは死地。南京まで逃げねば倭軍に殺される、と」
「し、しかし、この数を逃がして南京に辿り着くほどの食料は・・・・・・」
燃える食糧庫を見ながら兵が答える。
「いいや、逃げるのは本陣の兵のみだ。本隊30万は捨てる」
「!? それは!」
「早く伝えて来い。そうせねばここで燃え尽きるか、南京までの道で飢え死ぬかだ」
本陣に残された幾何かの食料。
5000余りの本陣の兵だけならば、20日と少しは食べて行けるだろう。
水は長江があるのだからどうとでもなる。
「・・・・・・フッ、逃げのびたところでこのような大失態。死んでも詫びきれん」
死ぬのはもう、構わない。
季夏がいなくなったことで、居勝は既に自暴自棄になっていた。
「それでも、国は守らねば・・・・・・」
唯一残ったのは愛国心だけ。
居勝にはそれだけしか残っていなかった。
ただただ、身体を固め、呆けるのみだ。
「・・・・・・これが狙いだった、のか?」
上海要塞の城壁が倒れ込む、その巨大な質量は挟まれた人間を破裂させ、断末魔の声すら上げる暇を与えない。
堀より外20尺(約6m)ほどの兵を押し潰してしまった。
・・・・・・だが、その効果などせいぜいが兵数千の命。
30万の大軍に対し、城壁を捨てるほどの効果など無い。
「・・・・・・なんだ? 水?」
城壁が倒れると同時にその中から溢れ出した液体が、広範囲に渡って兵にかかったのに気付いた時、居勝は再び背筋に悪寒が走った。
兵は、砂埃のせいかまともに鼻が利かずそれが何か分かっていない。
だが、居勝には油しかないと分かっていたのだ。
ヒンッ、ヒュンッ
城内から複数の飛翔体が放たれる。
間に合わないことを、届かないことを理解していながら、それでも居勝は叫ぶ。
「退け! 火計だ!」
それを合図にしたかのように、味方の兵たちが燃え上がっていく。
絶叫を上げ、暴れ回る兵が味方を更に燃やす。
阿鼻叫喚、密集した兵達は互いで互いを燃やしながら燃え広がっていく。
「グッ、後方の兵だけでも退かせ、ろ?」
そうして、後方の草原が凄まじい勢いで燃え広がっていることにようやく気付く。
実は、巨大な壁の倒壊は、敵の目を釘付けにし清正達の点けた火が拡がるまで気付かせないという目的もあったのだ。
前方の火計だけなら巻き返しようはあった。
だが、既に南も西にも火が回っている。
これは・・・・・・。
「火に囲まれた。あの火勢は強い、もはや攻城兵は間に合わん」
ギリッと歯軋りしながら、居勝は戦の完全な敗北を悟った。
敵の兵器ばかりを見て、古来から使われる火計を見落としたことは言い逃れようのない失態。
敵の城が風下だったことも油断した原因ではあるが・・・・・・。
「内部にまた土壁、か。あれで火が治まるまで待とうと言うのだな」
今日中に勝つなどと、どの口が言っていたのか・・・・・・。
自身の過ちを恥じながらも、居勝は次善の策を取る。
「本陣とここにいる兵だけで南京に後退する。一度、帷幕に戻り兵糧を確保するぞ!」
「っ!? 張将軍! 帷幕からも火の手が!」
兵のその言葉に居勝の頭の中が真っ白になる。
「っ季夏!!」
馬に飛び乗る。
「将軍!?」
兵たちが居勝を押しとどめようとするも、それを押しのけて駆けだす。
ただ愛しい人のところへと。
慌てて兵達も居勝を追いかけるが、そんな事は見えていない。
味方の悲鳴も何もかもが今はどうでも良い。
ただ、季夏が生きていてくれること、それだけを願い馬を走らせる。
・・・・・・だが、帷幕のあったそこに辿り着いた時、居勝の目に見えたのはただ煌々と燃える炎だけ。
そこにいて生きている者などいようはずもない。
そう告げる様な木材の燃える音だけが響いていた。
「・・・・・・季夏」
ポソリと呟き、返ってくるはずもない返事を待つ。
それが、絶対に返ってこないことを知りながら。
そして、ガクリとうな垂れて膝をついた。
兵たちが追いついてきた時、既に居勝は虚ろな目をしながらも立ち上がっていた。
「将軍!?」
兵の一人がその様子を心配し、声をかける。
「・・・・・・李将軍に伝えよ。もはやここは死地。南京まで逃げねば倭軍に殺される、と」
「し、しかし、この数を逃がして南京に辿り着くほどの食料は・・・・・・」
燃える食糧庫を見ながら兵が答える。
「いいや、逃げるのは本陣の兵のみだ。本隊30万は捨てる」
「!? それは!」
「早く伝えて来い。そうせねばここで燃え尽きるか、南京までの道で飢え死ぬかだ」
本陣に残された幾何かの食料。
5000余りの本陣の兵だけならば、20日と少しは食べて行けるだろう。
水は長江があるのだからどうとでもなる。
「・・・・・・フッ、逃げのびたところでこのような大失態。死んでも詫びきれん」
死ぬのはもう、構わない。
季夏がいなくなったことで、居勝は既に自暴自棄になっていた。
「それでも、国は守らねば・・・・・・」
唯一残ったのは愛国心だけ。
居勝にはそれだけしか残っていなかった。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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