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千姫ルート 上海要塞防衛戦5
狼煙1(エロ度☆☆☆☆☆)
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「将軍、狼煙が!」
「なに!?」
清正が驚いたのは、そのあまりの早さだった。
狼煙の意味は敵の総攻撃を引き出すので、火計の時が近いという意味。
すなわち、それに連動して明軍の外からの火計、事前に埋めた地雷火(油を入れた壺に火薬を仕込んだもの)に火を付ける準備をするための合図。
「敵がもう、総攻撃を? いや、不測の事態で早めたか? どちらにせよ我らがやることは変わらぬ、か」
「ははっ!」
清正が愛馬・帝釈栗毛に乗馬する。
「良いか? 我らは敵後方、風上に火をかけ、敵軍を一息に火で囲む。同時に敵帷幕を襲い、兵糧を焼き払う。そうすれば狩りつくした南京までの道で敵は補給も出来ずに飢え死ぬだろう」
ザッと、誰一人として声を漏らさずに、一挙手一投足足並みを揃えた清正の兵たちがその意を汲む。
「・・・・・・自国の民にまで非道を行う外道どもには似合いの末路じゃ。火に焼かれるか、飢え死ぬか、報いを受けるが良い!」
明軍の進軍の跡を見て来た加藤軍の士気は、否応なく上がっていた。
ほぼ同時刻、要塞の南側でこの狼煙を見た義弘も、その意を受けて動き出す。
「良いか? 我らは火を付けた後は急ぎ風上に向かう。遅れれば火にまかれるものと思えよ!」
加藤軍と同様に、明軍の非道を見て来た島津軍もその士気は高い。
「・・・・・・ちっ、つまらん。火で勝負が着くのならば俺の腕を見せる場所がないわ!」
だが、そこには一人不服そうな者もいる。
島津豊久、義弘の弟、家久の嫡子である。
正史であれば関ケ原で活躍し討死するも、この世界では沖田綴の後に活躍の場もなく、己の腕を腐らせていた。
「そう言うな豊久。お前の働き場所は別にある。お前は薩摩の誇りじゃ!」
義弘は、この男の勇猛さと、島津4兄弟の中でも秀でた軍才を見せた家久に似た双眸を好いていた。
もしも、未だ戦国の世であれば、共に轡を並べていたであろう。
だが、泰平の世ではその才も腐り落ちてしまう。
そう思っていた矢先での明への出兵。
実は、義弘は既に高齢ということもあり、この機会に島津の戦をこの甥に預けようと考えていた。
しかし、ひょんなことからこの戦の意義は大きく変わり、ただの持久戦ではあげられぬ戦果をあげ、皇帝・秀頼にその腕を、その才を、その価値を知らしめる好機となったのだ。
「良いか、焦るでない。必ずお前の腕を振るうべき場所がある。その時には死など恐れずに島津の家を背負い戦え!」
「カハッ! 承知!」
確かに、この上海では豊久に活躍の機会はなかった。
だが、南京ではおそらくそうではない。
今度はこちらが攻め手となるのだから。
海上にて敵海軍の襲来を警戒する水軍も、その狼煙を合図に慌ただしく動き始める。
すなわち、長江を上る用意を始める。
火にまかれた明兵の行き先など川、戦場の北に位置する長江しかない。
それを討つのは当然水軍の出番だ。
何もその全員を鉄砲で撃ち殺そうというのではない。
そのようなことをしなくても、長江の流れは速い、少し溺れさせてやるだけで良い、後は自然がやってくれる。
大和を中心とした船団がゆっくりと川を上り出す。
そうでなくても川の遡上には大変な時間がかかる。
漕ぎ手に死に物狂いで漕がせ、要塞から1里突出したところに錨を打つのにも、それなりに時間が必要なのだ。
2つの遊軍と水軍、その誰もが上海要塞の攻防に集中していた。
「なに!?」
清正が驚いたのは、そのあまりの早さだった。
狼煙の意味は敵の総攻撃を引き出すので、火計の時が近いという意味。
すなわち、それに連動して明軍の外からの火計、事前に埋めた地雷火(油を入れた壺に火薬を仕込んだもの)に火を付ける準備をするための合図。
「敵がもう、総攻撃を? いや、不測の事態で早めたか? どちらにせよ我らがやることは変わらぬ、か」
「ははっ!」
清正が愛馬・帝釈栗毛に乗馬する。
「良いか? 我らは敵後方、風上に火をかけ、敵軍を一息に火で囲む。同時に敵帷幕を襲い、兵糧を焼き払う。そうすれば狩りつくした南京までの道で敵は補給も出来ずに飢え死ぬだろう」
ザッと、誰一人として声を漏らさずに、一挙手一投足足並みを揃えた清正の兵たちがその意を汲む。
「・・・・・・自国の民にまで非道を行う外道どもには似合いの末路じゃ。火に焼かれるか、飢え死ぬか、報いを受けるが良い!」
明軍の進軍の跡を見て来た加藤軍の士気は、否応なく上がっていた。
ほぼ同時刻、要塞の南側でこの狼煙を見た義弘も、その意を受けて動き出す。
「良いか? 我らは火を付けた後は急ぎ風上に向かう。遅れれば火にまかれるものと思えよ!」
加藤軍と同様に、明軍の非道を見て来た島津軍もその士気は高い。
「・・・・・・ちっ、つまらん。火で勝負が着くのならば俺の腕を見せる場所がないわ!」
だが、そこには一人不服そうな者もいる。
島津豊久、義弘の弟、家久の嫡子である。
正史であれば関ケ原で活躍し討死するも、この世界では沖田綴の後に活躍の場もなく、己の腕を腐らせていた。
「そう言うな豊久。お前の働き場所は別にある。お前は薩摩の誇りじゃ!」
義弘は、この男の勇猛さと、島津4兄弟の中でも秀でた軍才を見せた家久に似た双眸を好いていた。
もしも、未だ戦国の世であれば、共に轡を並べていたであろう。
だが、泰平の世ではその才も腐り落ちてしまう。
そう思っていた矢先での明への出兵。
実は、義弘は既に高齢ということもあり、この機会に島津の戦をこの甥に預けようと考えていた。
しかし、ひょんなことからこの戦の意義は大きく変わり、ただの持久戦ではあげられぬ戦果をあげ、皇帝・秀頼にその腕を、その才を、その価値を知らしめる好機となったのだ。
「良いか、焦るでない。必ずお前の腕を振るうべき場所がある。その時には死など恐れずに島津の家を背負い戦え!」
「カハッ! 承知!」
確かに、この上海では豊久に活躍の機会はなかった。
だが、南京ではおそらくそうではない。
今度はこちらが攻め手となるのだから。
海上にて敵海軍の襲来を警戒する水軍も、その狼煙を合図に慌ただしく動き始める。
すなわち、長江を上る用意を始める。
火にまかれた明兵の行き先など川、戦場の北に位置する長江しかない。
それを討つのは当然水軍の出番だ。
何もその全員を鉄砲で撃ち殺そうというのではない。
そのようなことをしなくても、長江の流れは速い、少し溺れさせてやるだけで良い、後は自然がやってくれる。
大和を中心とした船団がゆっくりと川を上り出す。
そうでなくても川の遡上には大変な時間がかかる。
漕ぎ手に死に物狂いで漕がせ、要塞から1里突出したところに錨を打つのにも、それなりに時間が必要なのだ。
2つの遊軍と水軍、その誰もが上海要塞の攻防に集中していた。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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