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千姫ルート 上海要塞防衛戦4
守城1(エロ度☆☆☆☆☆)
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日本軍首脳陣は揃って明軍の30万と言う大軍勢の威容を眺めていた。
「凄い、ですね」
これほど多くの人を見たことなど無い。
それが、千姫の素直な感想だった。
おまけにその者達は誰もが千姫を殺そうと(少なくとも千姫はそう思っている)迫ってくるのだ。
「・・・・・・怖い、ですか?」
傍らのお麟が心配そうに袖を引く。
「・・・・・・はい。これほどの業を背負わなければならないのかと思うと」
千姫は勝利を、火計の成功を確信していた。
だが、それは、目の前の30万の大軍を焼き殺す行為なのだ。
「先ずは、敵大砲の無力化を行います」
「はい。敵の準備状況に合わせ、順次攻撃を開始してください」
井頼の進言を受け入れ、千姫が攻撃指示を出す。
「それにしても、物語の策をそのまま用いるとは・・・・・・」
遠眼鏡越しに見た敵兵の土嚢に井頼は一瞬その意味が理解できなかった。
井頼は三国志演義など読んだことが無いからだ。
だが、それを知っている者もいたのだ。
「でも、悪い策ではありません。あの厚みなら銃弾もある程度防げるかもしれない。機動力と持てる兵装を多少は犠牲にしますが、攻城であれば十分に有効だと思います」
井頼の呟きに返答したのはお麟。
三国志演義を知っていたのも、やはりお麟であった。
もっとも、秀頼の書庫にあるその本を読んだのではなく、前世で米内閣下に読んでもらい知っていたのであるが・・・・・・。
「確かに。あの戦術には一考の価値があります。土嚢袋と鍬だけであれば、運搬も極端に手間と言うわけではないですし」
井頼は少し感心したように顎に手を当てて考える。
随分と余裕そうに見えるが、実際には本人の心臓ははちきれんばかりに鼓動が高まっている。
だが、同時に今彼が出来ることは何一つない。
西門は基次が、南門は忠勝が守護と攻撃の指示を担当しているからだ。
井頼が指示するのは、城門、城壁からの後退、それに、城壁を崩すその時。
それは、まだまだ先の話ではある。
それこそ、当初は敵兵が城壁を乗り越えた時の予定であった。
「おかげで引きが不十分になってしまいますが・・・・・・」
土嚢を城壁前に積み上げられれば、倒れなくなってしまうかもしれない。
本来であれば、出来る限り敵が城門近くまで密集してからの攻撃を狙っていたのだが・・・・・・。
「仕方ないですね」
「はい。その代りに随分と強く東向きの風が吹いてくれています」
千姫がしゃがみ込み、土を風に乗せる。
まるで、日本に向けて運ぶように東へと。
ついつい、お麟と井頼もその土と風に見入ってしまう。
「・・・・・・始まります」
井頼の言葉に続く様に、棒火矢が明の大砲に向け放たれる。
ドン、と言う重い、大砲に似た発砲音の後に、ヒンと言う細く長い飛翔音。
一発や二発ではない。
実に一〇〇発以上の棒火矢がほぼ同時のタイミングで明軍の大砲陣地に向かう。
その速度は鉄砲の弾には及ばないが、人が見切れる速度ではない。
たかだか7丁半(約750m)の距離であれば、5秒とかからずに到達する。
そして、放った弾頭は棒火矢の中でもとりわけ爆発力の大きい種のもの。
それらの命中率自体は風の影響もありこの距離なら3発に一発程度。
だが、100発も撃ったのだ、20門の大砲陣地にそれぞれ一発は当たるし、その周辺には弾着する。
まして、次弾の装填にかかる時間は数十秒。
ドォーーン
明の大砲陣地の一つが巨大な爆炎を上げる。
敵大砲用の火薬に誘爆したのだろう。
他の大砲の被害もそれなりの様で、立て直すのにはそれなりに時間がかかるだろう。
「敵の火薬を遠ざけられる前に次弾を発射してください!」
千姫が大声を上げ、兵に指示する。
その相変わらずの冷静さには井頼も苦笑するしかない。
・・・・・・果たして、敵の被害はどれくらいだろうか。
大砲はどれほど生きているか。
「どうか、武運長久を・・・・・・」
千姫の祈りの言葉に続くように戦場の空気が一変する。
「凄い、ですね」
これほど多くの人を見たことなど無い。
それが、千姫の素直な感想だった。
おまけにその者達は誰もが千姫を殺そうと(少なくとも千姫はそう思っている)迫ってくるのだ。
「・・・・・・怖い、ですか?」
傍らのお麟が心配そうに袖を引く。
「・・・・・・はい。これほどの業を背負わなければならないのかと思うと」
千姫は勝利を、火計の成功を確信していた。
だが、それは、目の前の30万の大軍を焼き殺す行為なのだ。
「先ずは、敵大砲の無力化を行います」
「はい。敵の準備状況に合わせ、順次攻撃を開始してください」
井頼の進言を受け入れ、千姫が攻撃指示を出す。
「それにしても、物語の策をそのまま用いるとは・・・・・・」
遠眼鏡越しに見た敵兵の土嚢に井頼は一瞬その意味が理解できなかった。
井頼は三国志演義など読んだことが無いからだ。
だが、それを知っている者もいたのだ。
「でも、悪い策ではありません。あの厚みなら銃弾もある程度防げるかもしれない。機動力と持てる兵装を多少は犠牲にしますが、攻城であれば十分に有効だと思います」
井頼の呟きに返答したのはお麟。
三国志演義を知っていたのも、やはりお麟であった。
もっとも、秀頼の書庫にあるその本を読んだのではなく、前世で米内閣下に読んでもらい知っていたのであるが・・・・・・。
「確かに。あの戦術には一考の価値があります。土嚢袋と鍬だけであれば、運搬も極端に手間と言うわけではないですし」
井頼は少し感心したように顎に手を当てて考える。
随分と余裕そうに見えるが、実際には本人の心臓ははちきれんばかりに鼓動が高まっている。
だが、同時に今彼が出来ることは何一つない。
西門は基次が、南門は忠勝が守護と攻撃の指示を担当しているからだ。
井頼が指示するのは、城門、城壁からの後退、それに、城壁を崩すその時。
それは、まだまだ先の話ではある。
それこそ、当初は敵兵が城壁を乗り越えた時の予定であった。
「おかげで引きが不十分になってしまいますが・・・・・・」
土嚢を城壁前に積み上げられれば、倒れなくなってしまうかもしれない。
本来であれば、出来る限り敵が城門近くまで密集してからの攻撃を狙っていたのだが・・・・・・。
「仕方ないですね」
「はい。その代りに随分と強く東向きの風が吹いてくれています」
千姫がしゃがみ込み、土を風に乗せる。
まるで、日本に向けて運ぶように東へと。
ついつい、お麟と井頼もその土と風に見入ってしまう。
「・・・・・・始まります」
井頼の言葉に続く様に、棒火矢が明の大砲に向け放たれる。
ドン、と言う重い、大砲に似た発砲音の後に、ヒンと言う細く長い飛翔音。
一発や二発ではない。
実に一〇〇発以上の棒火矢がほぼ同時のタイミングで明軍の大砲陣地に向かう。
その速度は鉄砲の弾には及ばないが、人が見切れる速度ではない。
たかだか7丁半(約750m)の距離であれば、5秒とかからずに到達する。
そして、放った弾頭は棒火矢の中でもとりわけ爆発力の大きい種のもの。
それらの命中率自体は風の影響もありこの距離なら3発に一発程度。
だが、100発も撃ったのだ、20門の大砲陣地にそれぞれ一発は当たるし、その周辺には弾着する。
まして、次弾の装填にかかる時間は数十秒。
ドォーーン
明の大砲陣地の一つが巨大な爆炎を上げる。
敵大砲用の火薬に誘爆したのだろう。
他の大砲の被害もそれなりの様で、立て直すのにはそれなりに時間がかかるだろう。
「敵の火薬を遠ざけられる前に次弾を発射してください!」
千姫が大声を上げ、兵に指示する。
その相変わらずの冷静さには井頼も苦笑するしかない。
・・・・・・果たして、敵の被害はどれくらいだろうか。
大砲はどれほど生きているか。
「どうか、武運長久を・・・・・・」
千姫の祈りの言葉に続くように戦場の空気が一変する。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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