関白の息子!

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千姫ルート 上海要塞防衛戦4

居勝と季夏(エロ度☆☆☆☆☆)

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 季夏が目を覚ました時、すでに辺りは明るくなっていた。
 いつもであれば進安が近くでイビキをかいているのだが、今日は姿が見えない。

「・・・・・・あれ?」

 思っていた以上に長く寝られたのだろうか?
 だとすれば、周りの者に声をかけて早く死体の処理をして、最低限汚れを落とさなければ・・・・・・。

「皆さん、手伝ってください」

 もう既に慣れたものだ。
 毎日、とは言わないが、三日に一度は死体の処理をするのだから。
 一月以上も一緒にいれば、十回は超える。

 始めの方に捕らわれた村の娘などは同様に慣れてしまっているはずだ。

「皆さ――」

 だが、季夏の声に応える者などここにはいない。
 もう、応えられる者はいないのだ。

「そう、ですか。あとは私だけ、なのですね」

 それにしても、たった一日で六人も犯し殺したのか・・・・・・。
 あまりにも異常なまでの性欲。
 それほどのことが昨日あったと言うのだろうか?

 幕舎の外からは明軍の凄まじい怒号が聞こえてくる。
 きっと、軍が動き出すのだろう。
 もしかしたら兵に手伝ってもらうこともできないかもしれない。

「良かったですね」

 季夏は、やはり彼女達を憐れとは思えない。
 ただ、苦しみが長引かずに逝けたことを羨ましく思うだけだ。
 手を合わせることもなく、死体の両手を掴む。
 ひやっとしたその感触をおぞましく思うことすらなくなってしまった。

 せめて、これ以上傷つけないようにと、何時もは持ち上げて運ぶのだが、一人ではそれも出来ない。
 引きずった跡が付こうがそうするしかない。

「・・・・・・別に殺されてもいいのだけれど」

 それでも何となく処理をしようとするのは、もしかしたら生存本能なのだろうか。
 だが、七人も運び出し、さらに自分の身を清める。
 間に合うのだろうか。

 汗だくになりながら、随分と痩せてしまった体を酷使し、死体を運ぶ。
 兵はいなくても、一町先においておけば後はやっておいてくれる。

「ふぅー」

 先ずは一人。
 それだけで、せっかくゆっくりと寝ることで回復した体力が空っぽになってしまったようだ。
 とても次を考えることができない。

「どうでも、いっか」

 ポツリ、と吐き捨て、その場にへたり込む。
 いっそこのまま逃げても良い。
 そうすれば、明兵に捕まって好き放題に輪姦されて死ねるだろう。
 進安に殺されるよりは少しはマシなようにも思える。

 いや、ここで死ねばいいのだ。
 此処は軍の帷幕、人を殺すための道具など腐るほどある。

 ・・・・・・だが、どうしても自殺することができない。

「居勝様ぁ」

 へたり込んだままで季夏は泣きだしてしまう。
 今なら、兵も誰も出払っている今なら、好きに泣くこともできる、と。



「季夏!?」



 最初はそれが自分の名前だと言うことさえ、気付くことが出来なかった。
 そんな事よりも、その声を聞いただけで・・・・・・。
 
「季夏、なのだな?」

 季夏の後ろから足音が聞こえる。
 だんだんと近づいてくるの・・・・・・。

「季夏、良かった。生きて・・・・・・」

 実は、季夏の中に居勝への恨みは一つもない。
 彼女はただ、彼の役に立つこと、それだけが望みだったのだ。

 でも、いざ近くでその存在を感じ取ると一つの感情が生まれてくる。
 それは嫌悪感、と言えばいいのだろうか。
 居勝に対して、ではない。
 さんざんに穢された自分自身に対してだ。
 このような姿を愛する人に見せたくない。
 それが、彼女に唯一残されていた女性としての尊厳だった。

「季夏――」
「来ないでください!」

 蹲って小さくなり、自分の身体を抱きかかえる。
 出来る限り居勝に見られないように、と。

「後生でございます。どうか、どうかこのままに・・・・・・」

 か細く、震えた声だが、久しぶりに聞いた季夏の声は居勝の心を激しく揺さぶられる。
 居勝としては記憶にある限り初めてのことだが、考える前に身体が動いてしまう。
 そして、何も言わずに季夏をうしろから強く抱きしめる。

「すまない。・・・・・・すまない」

 居勝は今までに多くの者を犠牲にしてきた。
 もう、そんな感傷を抱くことなど無いと、いや、許されないと考えてきた。
 だが、いざその姿を目にすれば、とても我慢など出来なかった。

 だと言うのに、気の利いたことも、言い訳も思いつかない。
 ただ謝ることしかできない。

 一瞬、ほんの一瞬だけ、季夏はそれを受け入れたいと感じた。
 だが、彼女が少し顔を上げた時に見えたのは・・・・・・。

 自分と同じように穢され続け、醜くなり果てた女だったもの。
 今の彼女にはそれは本当に醜く見えた。

「・・・・・・放して、放してください」

 急に季夏が暴れ出し、居勝の腕の中から逃れようとする。

「放して、触らないで、見ないでよぉ」

 居勝はそれを聞いた時、自分が嫌われたのだと思った。
 だが、それも当然のこと。

「すまない。俺なんかのために・・・・・・」

 しゃらりと音をたて、居勝は腰の剣を引き抜く。
 その音を聞き、季夏は居勝が殺してくれるのだと思った。

 心がスーッと穏やかに澄み渡っていくのを感じる。
 どんな形であれ、最後に声を聞けて良かったと――



「俺を殺せ」



 ガチャリと剣を季夏の方に投げ捨て、居勝は着ていた鎧を脱ぎだす。

「・・・・・・なにを?」

 その動作を不思議に思い、思わず振り返ってしまう。

「俺が憎いのだろう? 俺も・・・・・・もう耐えられないらしい」

 逃げる気はないとばかりに鎧を脱ぎ終えた居勝はその場に座り込む。

 季夏にしてみれば酷い誤解である。
 そんなことをすれば、一体今までの苦労は何だったのか分からなくなる。

「ち、違います。・・・・・・今の、私を見てほしくないのです!」

 そう言って顔を見合わせる。
 なんて間抜けな、と季夏は自分を責めるが、同時に久しぶりに見た居勝の顔に様々な思いが溢れて来てしまう。

「・・・・・・お痩せになられましたね」

 当然、季夏の方がより痩せているのだが、自分の事より居勝の方が気になるのだろう。

「き、季夏。季夏! ・・・・・・こんなにやつれて」

「居勝様だって、ああ、こんなに頬がこけて、ちゃんとご飯を食べていらっしゃいますか?」

 季夏が居勝の頬に手を添えて包み込む。
 とても大事なものを扱うように優しく。

「居勝様、私を殺してください」

 一瞬、なにを言われたか居勝には理解が出来なかった。

「な? ・・・・・・」

 何故、と聞こうとして、それが如何に愚かな質問かに思い当たる。
 死にたいと思う程に辛いのは、その顔を見なくても分かっている。

 いっそ、このまま連れ去ってしまえばいい。

「・・・・・・もう少し、待ってはくれぬか?」

 それがどれほど非情な言葉か想像がつかないわけではない。
 居勝とて、これ以上自制が効くか自信が無い。
 だが、ここで諦めればそれこそ季夏にあんなことをさせた意味がない。

「もう、無理です」

「頼む。直ぐに戦を終わらせ、お前を迎えに行く」

 季夏の肩に手を置き、激しく揺する。

「必ず――」
「駄目です!」

 居勝の言葉を遮り、突き飛ばすように身体を押す。

「・・・・・・私は、もう居勝様の妻になど、なれません。こんな穢れた女のことはお忘れください」

 この時代の貞操観念は現代の比ではなく緩いはずではある。
 だが、例外ももちろんあり、季夏がそれにあたる。
 裕福な商家の出で、箱入りに育てられたことも関係しているのだろう。
 それ以上に進安と共に過ごさねばならなかった日々が・・・・・・。

「お前は穢れてなどいない」

 なおも精一杯の力で居勝を遠ざけようとする季夏だが、痩せ細っている上に女の力、居勝が抱きしめれば抵抗できるはずもない。

「んっ!?」

 居勝がそのままに季夏の唇を奪う。

「んー、んー!」

 季夏は本能では幸福感に包まれながらも、必死に抵抗する。
 昨晩から口すらゆすげていないのだ。
 最愛の人に、進安の汚い精液を出された口などに触れられたくない。
 だと言うのに、居勝は一向に離れようとしてくれない。

「・・・・・・季夏であるなら、その他のことはどうでもよい。あと二日だけ待ってくれ。いや、今日だけで良い。昨日のうちに今日終わらせるための策を練ったのだ」

 それは、北の脅威から戦を早めたい明の事情、兵糧の不安と言う軍の事情、千姫を早く抱きたい進安の欲、そして、季夏を一刻も早く取り返したい居勝の想い、それぞれの目的が一致したからこその早期決着案。

「いいか、待っているのだぞ!」

 返事は聞かずに居勝は走り出す。
 既に全軍が今日の総攻撃に向けて動いているのだ。
 もう、倭軍を叩き潰すまで止まることはない。

 上海要塞における戦いは、攻城戦としては異例の早さとも言える僅か三日目にして最大の局面を迎える。


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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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