関白の息子!

アイム

文字の大きさ
上 下
230 / 323
千姫ルート 上海要塞防衛戦4

2日目夜(エロ度☆☆☆☆☆)

しおりを挟む
 両軍にとって、会談のあった午前と比較してみれば、なんとも変哲の無い午後が過ぎる。
 明軍は陽が傾く前には撤退し、日本軍も当然の如く追撃しない。
 結果から見れば日本は数人の、明軍は数百人の死傷者を出して2日目を終えたのであった。

「明日、明軍は本格的な攻勢をかけてきます」

 それは本来であれば明軍しか知らないことだが、遠眼鏡で敵陣を観察していた兵が何か巨大な荷が運び込まれたと報告したことで、日本軍にも知られるところとなる。

「その荷が兵糧ということは?」

「いえ、向こうは知られることを気にもせずに組み立てを始めています。明日は真っ先に攻撃地点に動かすことでしょう。棒火矢を撃つ機は、敵が設置を終え砲撃を開始する直前。つまり、敵の大砲用の火薬にも引火させることを狙います」

 下手をすれば撃ち込まれかねないということでもある。
 だが、敵の火薬に引火させられるのなら、用いないのはもったいないと言える。
 それに、棒火矢は辺り一面を燃やすものもある。
 仮に誘爆できなくても、砲手を遠ざけられれば撃てはしない。
 

「しかし、幾度かの戦でもう何度か棒火矢は用いているのだろう。無防備にその腹をさらすものだろうか?」

「その可能性については留意しています。ですが、朝鮮の折や先日の黄海では、ほぼ海上での使用でしたので短距離でしか用いていません。また、上海城では大砲の方が目立った事でしょう。現状で大砲の命中率はさしたるものではありませんので、お互い狙っても当たらない程度に考えている可能性もあります」

 と言う憶測ではある。
 だが、井頼は敵を侮る恐ろしさを知った。

「あちらがもしも大砲を守るための対策を行うとすれば、やはり城門や城壁への同時攻撃であると考えます。それも、今日のようなものではなく、長梯子や衝車を用いた本格的なものでしょう」

 現状で井蘭などの攻城兵器の姿は見えないが、あんなものは今の戦闘ではむしろ的。
 大砲対策を考える相手なら出してくるはずもない。

「ふむ。長梯子も衝車も攻城の道具としては最も昔からある物じゃが、逆にそれだけが残っていると言うのも不思議なものだ」

「そうですね。ですが、大砲をまさか城門前と言う敵の攻撃が密集する場所に持ち込んで弾込めをするわけにもいかない。一発で門を破る自信が無いのなら、衝車を使うのは悪い手ではありません。まぁ、大砲が安価になればまた話は別なのでしょうが・・・・・・。梯子については、明国が使うものなら堀の外から一息に城壁の上まで届きましょう」

「その長梯子対策はどうする?」

「どうもしません。銃で撃つのみです。直線状に敵が並んでくれると言うのなら、むしろありがたいくらいです」

 あっさりと井頼は言う。

「ただし、そのためには城壁の上に顔を出さねばならなくなります」

「・・・・・・いよいよこちらにも被害が出るということじゃな」

 だが、ここにいる誰もが、戦は本来一方的な結果などで済むものでは無いと知っている。
 その大体が味方と敵の血だまりの上で決せられるものなのだ。

「そうなれば数の多い明軍に我々は押し込まれましょう。明日は大丈夫だとしても、明後日はそうはいかないかもしれない」

「元より敵の総攻撃を引き出すのが目的。気にする必要もない」

「はい。ただ、恐らく敵軍は大砲による攻城を試みるはずです。それを終えてからの話にはなると思うのですが」

 だが、やはり自信が無いのか、少し声が小さい。

「自信を持て参謀長殿。5歳の少女があれほど堂々としておったのじゃぞ?」

 ガハハと笑いながら基次が励ます。
 だが、あれは例外中の例外だ。

 と、言うか、5歳の少女だからこそ許されているとも言える。

「井頼殿」

「はっ! 皇后様」

 少し自虐的になっていたところで千姫に声をかけられ、井頼は飛び上がる。

「貴方は間違いなく陛下のこれからを支えるお方。必ずやあの敵の将を打ち倒してくれると信じています。大体にして、貴方の最大の策はまだ始まってすらいないのに、今から自信を無くしていてどうするのですか」

 言われて見れば確かにその通り。
 井頼の真価は火計の成功如何で語られるべきものだ。

「・・・・・・ははっ!」

 千姫に向かい、井頼は深く深くお辞儀をする。

 井頼は今日の一日だけで千姫のことを崇拝すらしていた。
 ともすればその念は秀頼に対するものすら越えるかもしれない。
 恋愛感情であるかも、とは無理矢理に考えないように努めていた。

「さ、今日はゆっくり休みましょう!」

 パンッと手を叩き、千姫が皆を軍議の間から追い立てる。
 早く部屋に戻り休めと言うのだろう。

 だが、それに従わない者も一人。

「皇后様、今日は一緒に寝てください」

 それだけ聞けば年端もいかない少女が姉に甘えているようにも見える。

「最近碌に寝ていないのでしょう? 今日は無理にでも寝ていただきますからね。下手をすれば明日が本番になる可能性もあるんですから!」

 お麟はむしろ聞き分けの無い子供を諭すように、千姫の手を引っ張り寝所へと連れて行く。
 その光景が何処か微笑ましく思え、軍議の間に残された諸将は一頻り笑った後に解散した。

しおりを挟む
新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
感想 61

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

生残の秀吉

Dr. CUTE
歴史・時代
秀吉が本能寺の変の知らせを受ける。秀吉は身の危険を感じ、急ぎ光秀を討つことを決意する。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...