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千姫ルート 上海要塞防衛戦3
初戦の攻防(エロ度☆☆☆☆☆)
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「敵方、およそ10万の大軍が、西門と南門より攻め寄せて参ります!」
櫓からの悲鳴にも似た報告に、千姫を始めとした日本の諸将は背筋を伸ばす。
「・・・・・・ついに、この時が来ました」
ポツリと呟き、御仏に祈る様にキュッと胸の前で手を合わせる。
これから起きる戦での犠牲者を悼むように。
「皇后様。敵は勢いのままに攻めて参りましたが、我々のやることは変わりません。まず初戦では敵の総攻撃を誘発するために苦戦に見せかけます。本番はその時になりますので――」
「はい! では、炊事場に参ります!」
井頼が話しかければ、そのように返される。
彼としては今のうちに休んでおいてほしいと言いたかったのだが・・・・・・。
「いえ、少なくともこれからは此処にいてもらいたいのですが・・・・・・」
士気高揚のためには既に十分役に立ってもらった。
ただ、どんどんと将というものからは離れてしまった気がする。
だが、最初に止めなかったせいで、今更やめろとは言えない雰囲気になってしまった。
「後藤様、ここはよろしくお願いいたします!」
「うぅむ、心得た」
基次が引き留めてくれるかもとは思ったが、そんな事はなかった。
基次としても、本番が来るまでは休んでいてほしいのだが、最近では千姫のおさんどんが兵の士気にもろに繋がっているのが分かっているのだ。
それに・・・・・・。
「先ずは我らの守城というものをお見せいたそう」
勢いのままの攻城など、基次からしてみれば愚の骨頂。
勢いがある兵は、むしろその勢いを止められた時には本来よりも脆くなる。
「ククッ、来るわ来るわ。この後藤又兵衛基次が守城。とくと見てゆかれい! 撃ち方用意! 火蓋を切れ」
堀の10歩前まで敵兵が辿り着いた頃、基次が大声を発する。
敵の大軍の怒号にも負けず、南と西の城壁に近づいて来た兵に狙いを定めさせる。
もっとも、それはフリだけ。
先ずは敵が日本の空堀に対してどう出るのか、それを確かめてからが本番だ。
「なっ!? 落とし穴!? 止まれ、止まれぇ!」
勢いのままに城壁を乗り越えるべく攻めあがった明兵の先頭の者が、近くにまで来て初めて壁に沿った大きな穴があることに気付いた。
だが、勢いの付いた軍がそのようなことで止まるはずがない。
「止ま、う、うわぁぁあああ!?」
後ろから来る兵に押し出されるようにして、前から5列程度の兵達は抵抗できずに堀に落ちていく。
その深さはおおよそ5丈(15m)。
転落した者は200程度だろうか。
その高さから武器や鎧などの重りを付けた状態で無事なはずもない。
ある者は頭から落ちて首を折り、ある者は腕や足を折り立ち上がれもしない。
ただ、勢いを止められ黙ってしまった明兵には、苦痛を訴える様な仲間のうめき声だけを耳にしていた。
その様子を見ていた基次はつまらないものでも見るような目で明軍を見下ろしていた。
「・・・・・・愚かな。碌に対策も考えてこなんだか。もうよい、堀の前で呆けておる明兵どもを狙え! って!」
先ずは苦戦しているように見せると言っても、これほど間抜けな的を見過ごすことなど出来ない。
どうせ敵兵は多いのだから、対策を考えてやってくるだろう。
その時に苦戦してみせればいいのだ。
そう考えた基次は、銃眼と城壁の上から敵兵を狙う兵達に攻撃指示を出した。
と、同時に南と西の両城壁の兵の鉄砲が火を噴く。
耳をつんざくような轟音が戦場を支配する。
相手は銃の前で密集してくれているのだ、狙いをつける必要すら感じない。
「狙撃兵は待機させい。連装銃で敵が撤退を開始するまでひたすら撃て!」
先程とは違い血飛沫を上げながら堀に落ちていく兵を見ながら、基次は初戦の勝利を確信する。
・・・・・・いや、このようなもの戦ではない。
戦になるとすれば、対策を考え出すこれ以降。
「・・・・・・フッ、しかし、敵が愚かであればそれも望むべくもないのじゃがな」
未だに混乱のただなかで、逃げるとも進ともしない明兵たちを見下ろしていた。
どの辺りの塀がもっとも早く兵を立て直し、撤退を完了させるかを。
「狙撃兵。立て直しの早い部隊の指揮官を狙うのじゃ! 小部隊の隊長格程度で良い。確実に殺せ!」
ライフリングが彫られ、どんぐり型の銃弾に、日本軍ではまだ珍しい火打ち式。
秀頼やお麟の未来知識により生み出された時代を超えた兵器が、初めてその猛威を振るう。
櫓からの悲鳴にも似た報告に、千姫を始めとした日本の諸将は背筋を伸ばす。
「・・・・・・ついに、この時が来ました」
ポツリと呟き、御仏に祈る様にキュッと胸の前で手を合わせる。
これから起きる戦での犠牲者を悼むように。
「皇后様。敵は勢いのままに攻めて参りましたが、我々のやることは変わりません。まず初戦では敵の総攻撃を誘発するために苦戦に見せかけます。本番はその時になりますので――」
「はい! では、炊事場に参ります!」
井頼が話しかければ、そのように返される。
彼としては今のうちに休んでおいてほしいと言いたかったのだが・・・・・・。
「いえ、少なくともこれからは此処にいてもらいたいのですが・・・・・・」
士気高揚のためには既に十分役に立ってもらった。
ただ、どんどんと将というものからは離れてしまった気がする。
だが、最初に止めなかったせいで、今更やめろとは言えない雰囲気になってしまった。
「後藤様、ここはよろしくお願いいたします!」
「うぅむ、心得た」
基次が引き留めてくれるかもとは思ったが、そんな事はなかった。
基次としても、本番が来るまでは休んでいてほしいのだが、最近では千姫のおさんどんが兵の士気にもろに繋がっているのが分かっているのだ。
それに・・・・・・。
「先ずは我らの守城というものをお見せいたそう」
勢いのままの攻城など、基次からしてみれば愚の骨頂。
勢いがある兵は、むしろその勢いを止められた時には本来よりも脆くなる。
「ククッ、来るわ来るわ。この後藤又兵衛基次が守城。とくと見てゆかれい! 撃ち方用意! 火蓋を切れ」
堀の10歩前まで敵兵が辿り着いた頃、基次が大声を発する。
敵の大軍の怒号にも負けず、南と西の城壁に近づいて来た兵に狙いを定めさせる。
もっとも、それはフリだけ。
先ずは敵が日本の空堀に対してどう出るのか、それを確かめてからが本番だ。
「なっ!? 落とし穴!? 止まれ、止まれぇ!」
勢いのままに城壁を乗り越えるべく攻めあがった明兵の先頭の者が、近くにまで来て初めて壁に沿った大きな穴があることに気付いた。
だが、勢いの付いた軍がそのようなことで止まるはずがない。
「止ま、う、うわぁぁあああ!?」
後ろから来る兵に押し出されるようにして、前から5列程度の兵達は抵抗できずに堀に落ちていく。
その深さはおおよそ5丈(15m)。
転落した者は200程度だろうか。
その高さから武器や鎧などの重りを付けた状態で無事なはずもない。
ある者は頭から落ちて首を折り、ある者は腕や足を折り立ち上がれもしない。
ただ、勢いを止められ黙ってしまった明兵には、苦痛を訴える様な仲間のうめき声だけを耳にしていた。
その様子を見ていた基次はつまらないものでも見るような目で明軍を見下ろしていた。
「・・・・・・愚かな。碌に対策も考えてこなんだか。もうよい、堀の前で呆けておる明兵どもを狙え! って!」
先ずは苦戦しているように見せると言っても、これほど間抜けな的を見過ごすことなど出来ない。
どうせ敵兵は多いのだから、対策を考えてやってくるだろう。
その時に苦戦してみせればいいのだ。
そう考えた基次は、銃眼と城壁の上から敵兵を狙う兵達に攻撃指示を出した。
と、同時に南と西の両城壁の兵の鉄砲が火を噴く。
耳をつんざくような轟音が戦場を支配する。
相手は銃の前で密集してくれているのだ、狙いをつける必要すら感じない。
「狙撃兵は待機させい。連装銃で敵が撤退を開始するまでひたすら撃て!」
先程とは違い血飛沫を上げながら堀に落ちていく兵を見ながら、基次は初戦の勝利を確信する。
・・・・・・いや、このようなもの戦ではない。
戦になるとすれば、対策を考え出すこれ以降。
「・・・・・・フッ、しかし、敵が愚かであればそれも望むべくもないのじゃがな」
未だに混乱のただなかで、逃げるとも進ともしない明兵たちを見下ろしていた。
どの辺りの塀がもっとも早く兵を立て直し、撤退を完了させるかを。
「狙撃兵。立て直しの早い部隊の指揮官を狙うのじゃ! 小部隊の隊長格程度で良い。確実に殺せ!」
ライフリングが彫られ、どんぐり型の銃弾に、日本軍ではまだ珍しい火打ち式。
秀頼やお麟の未来知識により生み出された時代を超えた兵器が、初めてその猛威を振るう。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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