関白の息子!

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千姫ルート 上海要塞防衛戦2

上海要塞防壁建造作戦2(エロ度☆☆☆☆☆)

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 城壁の建造開始から2週間ほど経った頃。
 当初の予定から完成は大幅に早まり、あと1週間もあれば完成に至る。
 それは熟練の又左衛門にしても意外な事態だった。

 戦における士気の違いによる影響は良く知っていたが、城の建造でもこれほどの効果を上げるとは思っていなかったのだ。
 ・・・・・・その士気の高揚も、たかが一人の少女がおさんどんをしただけのことでだ。

 ただし、今は深夜。
 いくら急いでいるとは言っても、ここまで暗くなれば作業の音は止む。

 篝火を焚いて、というのも考えられないわけではない。
 しかし、それをするには上海要塞の人夫は足りていない。
 もともとここには工作も出来る兵がいるだけで、人夫にする農民たちがいないのも大きな問題だ。
 それに、夜通し作業すれば、集中力も疲労も溜まり、失敗が多くなる。
 火薬や油を多用する壊れる城壁を造る今回にあたっては、それは即ち死と作戦の失敗を意味しかねない。

「・・・・・・チッ、敵さんの足が早まっているというのに!」

 又左衛門は独り言ちて酒を呑む。

 飲み過ぎは厳禁にされているが、飲酒自体は建造に関わる褒美と言わんばかりに割とうまい酒が与えられる。
 だが、早まった敵の足から予想される来襲までの時間はあと五日。
 既に限界を超える速度で造っているのに、更に3割近くも急がなければ間に合わない計算だ。

「ふむ、そのためにも今は英気を養うのが先決でござろう? ささっ、もう一献」

 そう言って、やたらと大柄な老人が酒を勧めてくる。

 この酒と共に皇帝陛下に送られてきた追加の人員。
 見たところ、もう還暦を過ぎているのではなかろうか。
 ここに来た当初こそ、こんな老人を送るくらいなら馬鹿でもなんでも若者を送れ! と、腹も立てた。

 だが、蓋を開けてみれば、この老人はやたらと力があったのだ。
 工作兵の自分達の軽く3倍の重さを持ち上げ、疲れ知らず。
 おまけに夜はこうして又左衛門の酒に付き合ってくれる。
 歳も近いこともあり、又左衛門にとっては今ではいてくれるだけでありがたい存在だ。

「そうは言ってもなぁ、平八郎。俺は姫さんのためにも完璧なものを作りたいんだよ!」

 そう言いながら又左衛門はつまみになっていた炙ったさきいかを差し出す。

 この頑固一徹だったはずの又左衛門が千姫に完全にデレてからもう1週間ほどが経つ。
 しかし、それも無理からぬこと。
 上海に到着して以来、千姫は毎日朝・昼・晩と三食をこの上海要塞の各所に届けて周っている。
 慣れなかったはずの炊事も随分様になってきたようで、握り飯は相変わらず可愛らしい大きさだが、形は様になっている。
 汁物や煮物は当初の面影は既に無く、十分に家庭料理なら許せるものになった。
 ・・・・・・まぁ、そう簡単に美味くはならないが。

 それでも見た目の愛らしさも含め、その甲斐甲斐しさに誰もが虜になっている。
 又左衛門にしてみても、三食だけでなくこうしてつまみまで用意してくれるのは妻以上のもの。
 しかも、それを3万人も兵がいるこの上海要塞で行うのだ。

 ・・・・・・恐らく、寝ている暇もないのだろう。
 明るい笑顔で隠していても、化粧で誤魔化しても、日に日に濃くなる隈に気付かない者はいない。

 だから、自分達とて出来るなら夜も火を焚き作業を進めたい。

 だが、それは固く禁じられている。
 なにしろ、工作兵はあくまで兵。
 今回はこの後に戦闘も控えているのだから。

「儂としては出来れば顔を合わせたくないのでござるが・・・・・・」

 ところが、平八郎と呼ばれたこの男・本多平八郎忠勝にとって、千姫はばつが悪くて顔を合わせたくない者の筆頭に挙げられる。

 もしも、顔を合わせて自分の正体がバレればどうなるのか。
 家康と忠勝が共に暮らしていたことは、当然の如く千姫も知っているだろう。

 もっとも、今まで忠勝が千姫に会ったのはほんの数度のみ。
 それもほんの一瞬で、更に千姫が幼い時分の話。
 流石に忠勝の顔を覚えているということはないだろう。

 とは言え、彼女の護衛についているのは(真田)信繁。
 自分の娘婿の弟である。
 彼ならば一瞬で気付いてしまう。

「なんだ!? 平八郎、てめぇ。姫さんの悪口言うつもりなら、ただじゃおかねぇぞ!」

 又左衛門はガシッと忠勝の胸倉を掴み、今にも殴り掛からんとばかりに拳を振り上げる。

 もしも、周りの者が平八郎と呼ばれる男の正体を知っていれば、慌てて止めに入り土下座でもして謝っただろう。
 だが、又左衛門からしてみれば、いくら気が合うとはいえただの補充兵。

 凄まじい気迫を吐く又左衛門にも一切動じることもなく、忠勝は掌でさも簡単そうに拳を受け止める。

「ふっ、そういう意味ではござらん。そうじゃな、姫様には儂が合わせる顔がないという意味でござる」

 そう言って、又左衛門の拳を引かせると、肩を落として哀愁を漂わせながらチビリと酒を呑む。
 又左衛門もその様子に何も言えず、ただずいと酒をあおる。

「お見事。どれ、もう一杯」

「・・・・・・ああ。なぁ、平八郎。おめぇ、一体?」

 当然、又左衛門とてこの異様な気を発する男が普通ではないことは気付いている。
 それについても何度か尋ねたことがある。
 だが決まって返されるのは――

「ただの、役立たずでござるよ」

 武士としての名は己の士道、すなわち主君を助け出した時に名乗る。
 忠勝は心にそう決めたのだ。
 それまでは絶対に燃え尽きることはできない。

 松明の火に照らされた忠勝の目は、その火よりなお熱く燃え滾っていた。
 此処にいるのは、決して錆びついた老将などではない。

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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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