関白の息子!

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千姫ルート 上海要塞防衛戦

戦支度2(エロ度☆☆☆☆☆)

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 二将の同意を得たことで、ようやく本来の軍議が開始される。

 進行役として、第一参謀となる井頼が上海周辺の地図を広げて説明する。

「先ず、お二人には1万ずつ兵を率いてもらい、遊軍となって敵の補給線と増援を潰していただきます。そして、敢えて上海の手薄さと要塞化を見せ、敵主軍を上海要塞に引き付けます。そしてこれを撃破し、一息に南京を陥落せしめる。大まかな考えとしてはこのようになっております」

 先ずは概要を説明し、詳細を順を追って話すつもりなのだろう。
 しかし、簡単そうに話されるその内容に二将は眉根を寄せる。

「井頼。十倍の軍と言うのは本来倒すものではない。退けるものだ」

「・・・・・・はい。加藤様の仰る通りです。そもそも十倍の軍とは戦ってはならぬと言うのが、兵法書の言うところ。戦うとしても直接ではなく、補給線を狙うか、将を狙うか、兵と兵をぶつけるのは過ちである、とも」

「うむ。敵より士気や兵器が優れていようと数を頼みにされればどうしようもない。儂とてもしも兵に囲まれればせいぜい五や十を道連れにするのが精一杯」

 たしかに、清正が一度の戦の中で殺す数は数十ではきかないかもしれない。
 ただ、それは周りに味方がいて一対一、ないしはそれに近い状況に出来るから。
 そしてそれは軍と軍の争いでも同じことが言える。
 大事なのはいかに多対一の状況に持ち込むかである。
 そう言った意味でもやはり数に劣ると言うのは、始める前から負けているということに近い。

「分かっています。正直に言えば、兵と兵の争いでは十倍の兵を倒すことは出来ないでしょう。ですが、策に嵌めることが出来るのであれば話は異なります」

「・・・・・・十倍の敵を倒すとなれば」

「はい。火攻めにございます」

 長江と言えば、まさに赤壁(南京よりも上流)の戦いの舞台である。
 火攻め自体に考えが行き着くのに時間はかからない。

「確かに最近は常に東向きの風は吹いている。だが、その分敵も警戒しているはずだ」

「はい。ですので分からぬように準備をせねばなりません。それと、お二人には申し訳ないのですが、この要塞は破棄します」

「む?」

「この要塞自体を火種とし、敵を一網打尽に致します」

 要塞は外壁こそ煉瓦や石、漆喰で作ってはいるものの、その内部構造は木製。
 燃えることは間違いがない。

「敵を城に招き入れ燃やすと?」

「それも考えはしましたが、こちらによほどの被害が出てからでないと敵は誘いには乗らないでしょう。そうしてしまえば南京攻略のための兵力が残らない」

 あくまで南京攻略が目的なのだから、それでは意味がない。
 大軍に当たるには兵が必要であるのと同様に、城を攻略するにも大軍が必要である。

「・・・・・・では?」

「現在建設中の城壁。この中に油と火薬を仕込み、敵の接近と共に敵軍に向け倒し、一挙に広範囲に火をかけます。また、長江の船団で集中砲火をかけ、敵を混乱させます」

「城壁を倒す? だと?」

 敵の虚を突くには想像もしない方法を考える。
 それは確かに正しい。
 だが、壁とは壊れないように造るもので、崩れるように造ったことなど無い。

「はい。壁の基部を抉り大量の火薬を仕込みます。ちょうど木を切り倒す時のことをご想像ください。また、あらかじめ地面に油を込めた瓶を埋めておきます。これは底部に火薬が仕込まれており、着火すれば辺り一面に油を大量に巻き散らし延焼させることが出来ます」

「大量の火薬と油が必要となるな」

「陛下が請け負ってくださいましたので、随時運ばれてくるでしょう。そして、この策の結果、どうせ要塞には城壁も無くなり丸裸同然になるのですから、南京の先の事は考えず全て使い切ってしまいましょう」

「・・・・・・ふむ。それで南京を守れるのか?」

 失敗すれば南京より戻る場所も無くなっている可能性がある。
 そうすれば敵国に孤立した者達の末路など決まっている。

「はい。その頃には明は北京を守るのに苦心しているはずですので」

「金軍が瀋陽を越えられる、と?」

「いえ、越えさせます」

 それすら金軍と朝鮮部隊頼りの賭け。

「・・・・・・成る程な。しかし、本当にそんな事が可能なのか?」

 まだ誰も試したことのない策。
 予測されることはない代わりに成功するかは事前の準備次第。
 しかし、その時間も人手も無い。
 むしろ、南京のためにも早く敵を引き付ける必要すらある。

「出来ると言いたいところですが、全てが始めてのこと、全力を尽くすとしか申せませぬ」

「それで良い。綱渡りばかりだが、出来る限りもがけば不思議となんとかなるものだ。儂と島津殿は明朝には出立する。井頼よ、ここは任せるぞ」

「ははっ!」

 清正と義弘はのそりと立ち上がると、千姫に一礼して軍議の間を辞す。
 これよりしばらくは2人の隊は野営続き。
 一晩だけでもしっかり休んでおこうと言うのだろう。

 そして、2人が去り、4人だけが残る。

「お麟。私も城壁の設計図を見せてくる。その間に敵の情報や周辺の地形、物資の確認を頼む。念のため敵の斥候などには気を付けろよ」

「はい。井頼様も事故など起きぬようにお気を付けください」

 そう言い合い、2人も軍議の間を出ていっ――

「あの、私はなにをすれば?」

「・・・・・・いえ、休んでいてください」

 自分のためにしてくれているのに、なにもしないのは居心地が悪い。
 その気持ちも理解できないわけでもないが、現実的に千姫に出来ることなど無い。
 だから、井頼としては少し申し訳なくも思うが、そう言うしかなかった。

「いいえ。仕事なんて幾らでもあります。皇后様は自分で出来る仕事を探してください。私達も今は付きっきりではいられません!」

 だが、お麟の方はハッキリとそう言った。
 井頼の方はその言葉にこそ驚いていたが、千姫はそれに気を悪くするでもなく、着ていた打掛を脱ぐと紐で間着の裾を縛り動きやすいようにする。

「分かりました。では、炊事場に向かいます!」

 ムン! と気合を入れて千姫が部屋を出る。
 それに続いてお麟も出て行けば、結果として軍議の間には井頼と信繁だけが残されてしまったのだった。

「・・・・・・真田殿、皇后様の護衛をよろしくお願いいたします」

「心得ている。だが、某はそれだけに集中するし、もしも敗色濃厚の時には無理にでも皇后様だけを連れて逃げる。それを覚えておいてくれ」

「はっ! もとより承知の上でございます!」

 形勢が悪くなることすら許されない状況に、しかし井頼はニヤリと笑う。

 もうここまで来ればやれるだけやるだけ。
 井頼はこの一戦に己の全てを賭けると心に誓った。


 
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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