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千姫ルート 上海要塞防衛戦
軍議 in 大和(エロ度☆☆☆☆☆)
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この面子が顔を揃えたとして、果たして周りからはどういう関係に見えるだろうか。
一人はこの南京攻略軍において、急遽最高司令官となった未だ14歳の千姫。
一人は幼少からの英教育を受け、福岡で石田三成を始めとした名将達の手ほどきを受けて来た湊井頼。
この戦の第一参謀ととなる最年長の18歳。
最後に第二参謀として常に千姫の横に付き従うことになるお麟。
その歳は、わずかに5歳。
全員足し合わせても40にもならない。
その3人がこの南京攻略作戦の最高意思決定機関となる。
「先ず、南京攻略までの絵図をご説明差し上げます」
井頼が地図と共に巻物を取り出す。
「現在、明軍は上海奪還に向け南京に軍を集結中であるとの報が入りました。恐らく一月後には兵力が集まることでしょう」
新しく得た情報も含め淡々と話し出す。
ただし、それを聞いた千姫は一際慌て出す。
「井頼様、お待ちください!」
「はい。ただ、皇后様。某の事はただ井頼と」
「は、はい。えと、井頼・・・・・・殿。集結に一月、上海到達に一月では戦の開始までに二月も必要ということですか?」
半年という限られた時間の中で、二か月の時間は余りにも大きい。
逆に日本軍が上海を出発し、南京を制圧するまでも最低限二か月と言われている。
つまり圧倒的な兵力を誇る明軍を、残りの二か月足らずで倒さなければいけないこととなる。
こうやって明に向かうにも勝報を大阪に届けるにも、それなりの時間がかかることを考えれば一月半といったところだろうか。
「そうなります。しかし、籠城戦はあまり時間はかからぬかと」
「何故、ですか?」
普通に考えれば野戦と違い、籠城戦は時間がかかる。
そうでなくとも兵糧攻めに切り替わる可能性もあるのだから。
「単純に明軍に兵糧が足りません。自国の支配地域と言えど、明軍は金軍対策に大量の資金と備蓄の兵糧を使ってしまい、こちらに使う分の余裕がほとんどありません。まぁ、手が無いわけではありませんが・・・・・・。とは言え、雇い入れた兵のことを考えても、犠牲は厭わずに短期決戦に持ち込むことでしょう」
「何故、犠牲を厭わないのですか?」
金軍のことを言うのであれば、むしろ兵は残ってくれなければ困るのではないかと千姫は不思議に思った。
「死んでくれた方が恩賞が少なくて済むからです。この後に何度も戦が続くと言うのでない限り、戦って敵を殺し、死んでくれるのが一番安く済む」
農民兵達には支度金が前金として与えられ、それに加えて戦での活躍に対する報奨金、そして戦後の報酬。
報奨金は活躍出来なければそもそも与えられはしないが、報酬は勝ち戦でしかも生きて帰らなければ渡されない。
支度金だけなら同じ人数を雇いいれても半額程度で済む。
「人の命をなんだと・・・・・・」
「姫様、これよりは我が軍5万、敵軍想定50万の命を握るのです。甘い考えはお捨てください。幸い我々は亡き太閤殿下や皇帝陛下の蓄財のおかげで、財政を気にする必要はありませんから、後々の戦力のことも考えて味方を殺さず、敵を多く殺すことをお考えください」
「・・・・・・はい」
千姫の表情が少し曇るが、井頼としてはこれだけは言っておかなければいけないと考えていたことだ。
「話を戻します。敵軍は数を頼りに一息に攻めてくると思われます。ですが、想定通りに50万も集められては流石にことです。ゆえに加藤様と島津様に遊軍として動いていただきます」
「こちらの方が数が少ないのにさらに減らすのですか!?」
千姫としては、先ずは5万の兵で亀のように上海要塞に閉じこもると考えていたのだろう。
まさに当初の戦略がそうであったので、それ自体は間違いではない。
ただし、それではやはり間に合わないと考えられるのだ。
「はい。遊軍が城外で暴れ、本陣の数が少ないと見れば敵も数が整わないうちに攻めて来ましょう。それを防ぎ、討ち破った勢いのままに南京に攻め込みます。加藤様と島津様にはそれぞれ一万を率いていただき、補給線や別動隊を叩いていただきます」
「し、しかし、一万で動くのはお二人が危ういのでは?」
たしかに、50万もの敵に囲まれれば、如何にあの二人でも何も出来ない。
ただ、それは囲まれればの話だし、そもそも遊軍を叩いたところで上海は戻って来ない。
なによりも兵糧の消費を気にするであろう明軍が、そんな事をするはずもない。
そして、敵も小分けに兵力を分散すると言うならそれこそ望むところ。
指揮をするのは加藤清正に島津義弘。
実践の指揮を一度たりとも取ったことが無いだろう明の将と農民兵が相手なら、10倍の相手でも打ち倒してくれるだろう。
「お二人とも歴戦の猛者でございます。元々、上海駐屯の兵が敵に比べて圧倒的に少ないのは、両将を頼りにしてのこと。こちらは力を蓄えつつ明には大きな出費を強い、将の差を見せつける。確かに数というものは、戦においてなによりも重視されるものです。しかし、逆に言えば寡兵で敵を撃ち破り続けられれば、それだけ明の弱体を内外に知らしめることが出来る。そうすれば多くの国が独立し明はその多方面での戦を強いられ、数の優位を無くす。元はそう言った戦略でございました。戦術の基本とは大きく異なりますが、今は明側よりも我々が大いに優位に立てる経験の差に賭けたのでございます」
だが、それも千姫が指揮を執るというのなら話が違う。
経験の豊富な両将には、本来であれば副将として近くにいてもらいたいところ。
だが同時に遊軍を任せられるのも彼等しかいない。
「・・・・・・では、我々が十倍以上の明軍を倒すための献策をお願いします」
千姫にとっては予想を超える苦境だと言うのに、それも飲み込みなお落ち着いている姿に、少なからず井頼は驚いていた。
黄海での戦いでも確かにその芯の強さは見せていたけれど・・・・・・。
これで可能性は出てきた、と井頼はそう思ったのだろう。
薄く微笑み、秀頼とお麟と共に熟慮に熟慮を重ねた策を提示する。
「では、献策させていただきます――」
絶対の自信がある。
と、見える様に自信に満ちた声で、己の不安も共に吹き飛ばすように井頼は語りだす。
一人はこの南京攻略軍において、急遽最高司令官となった未だ14歳の千姫。
一人は幼少からの英教育を受け、福岡で石田三成を始めとした名将達の手ほどきを受けて来た湊井頼。
この戦の第一参謀ととなる最年長の18歳。
最後に第二参謀として常に千姫の横に付き従うことになるお麟。
その歳は、わずかに5歳。
全員足し合わせても40にもならない。
その3人がこの南京攻略作戦の最高意思決定機関となる。
「先ず、南京攻略までの絵図をご説明差し上げます」
井頼が地図と共に巻物を取り出す。
「現在、明軍は上海奪還に向け南京に軍を集結中であるとの報が入りました。恐らく一月後には兵力が集まることでしょう」
新しく得た情報も含め淡々と話し出す。
ただし、それを聞いた千姫は一際慌て出す。
「井頼様、お待ちください!」
「はい。ただ、皇后様。某の事はただ井頼と」
「は、はい。えと、井頼・・・・・・殿。集結に一月、上海到達に一月では戦の開始までに二月も必要ということですか?」
半年という限られた時間の中で、二か月の時間は余りにも大きい。
逆に日本軍が上海を出発し、南京を制圧するまでも最低限二か月と言われている。
つまり圧倒的な兵力を誇る明軍を、残りの二か月足らずで倒さなければいけないこととなる。
こうやって明に向かうにも勝報を大阪に届けるにも、それなりの時間がかかることを考えれば一月半といったところだろうか。
「そうなります。しかし、籠城戦はあまり時間はかからぬかと」
「何故、ですか?」
普通に考えれば野戦と違い、籠城戦は時間がかかる。
そうでなくとも兵糧攻めに切り替わる可能性もあるのだから。
「単純に明軍に兵糧が足りません。自国の支配地域と言えど、明軍は金軍対策に大量の資金と備蓄の兵糧を使ってしまい、こちらに使う分の余裕がほとんどありません。まぁ、手が無いわけではありませんが・・・・・・。とは言え、雇い入れた兵のことを考えても、犠牲は厭わずに短期決戦に持ち込むことでしょう」
「何故、犠牲を厭わないのですか?」
金軍のことを言うのであれば、むしろ兵は残ってくれなければ困るのではないかと千姫は不思議に思った。
「死んでくれた方が恩賞が少なくて済むからです。この後に何度も戦が続くと言うのでない限り、戦って敵を殺し、死んでくれるのが一番安く済む」
農民兵達には支度金が前金として与えられ、それに加えて戦での活躍に対する報奨金、そして戦後の報酬。
報奨金は活躍出来なければそもそも与えられはしないが、報酬は勝ち戦でしかも生きて帰らなければ渡されない。
支度金だけなら同じ人数を雇いいれても半額程度で済む。
「人の命をなんだと・・・・・・」
「姫様、これよりは我が軍5万、敵軍想定50万の命を握るのです。甘い考えはお捨てください。幸い我々は亡き太閤殿下や皇帝陛下の蓄財のおかげで、財政を気にする必要はありませんから、後々の戦力のことも考えて味方を殺さず、敵を多く殺すことをお考えください」
「・・・・・・はい」
千姫の表情が少し曇るが、井頼としてはこれだけは言っておかなければいけないと考えていたことだ。
「話を戻します。敵軍は数を頼りに一息に攻めてくると思われます。ですが、想定通りに50万も集められては流石にことです。ゆえに加藤様と島津様に遊軍として動いていただきます」
「こちらの方が数が少ないのにさらに減らすのですか!?」
千姫としては、先ずは5万の兵で亀のように上海要塞に閉じこもると考えていたのだろう。
まさに当初の戦略がそうであったので、それ自体は間違いではない。
ただし、それではやはり間に合わないと考えられるのだ。
「はい。遊軍が城外で暴れ、本陣の数が少ないと見れば敵も数が整わないうちに攻めて来ましょう。それを防ぎ、討ち破った勢いのままに南京に攻め込みます。加藤様と島津様にはそれぞれ一万を率いていただき、補給線や別動隊を叩いていただきます」
「し、しかし、一万で動くのはお二人が危ういのでは?」
たしかに、50万もの敵に囲まれれば、如何にあの二人でも何も出来ない。
ただ、それは囲まれればの話だし、そもそも遊軍を叩いたところで上海は戻って来ない。
なによりも兵糧の消費を気にするであろう明軍が、そんな事をするはずもない。
そして、敵も小分けに兵力を分散すると言うならそれこそ望むところ。
指揮をするのは加藤清正に島津義弘。
実践の指揮を一度たりとも取ったことが無いだろう明の将と農民兵が相手なら、10倍の相手でも打ち倒してくれるだろう。
「お二人とも歴戦の猛者でございます。元々、上海駐屯の兵が敵に比べて圧倒的に少ないのは、両将を頼りにしてのこと。こちらは力を蓄えつつ明には大きな出費を強い、将の差を見せつける。確かに数というものは、戦においてなによりも重視されるものです。しかし、逆に言えば寡兵で敵を撃ち破り続けられれば、それだけ明の弱体を内外に知らしめることが出来る。そうすれば多くの国が独立し明はその多方面での戦を強いられ、数の優位を無くす。元はそう言った戦略でございました。戦術の基本とは大きく異なりますが、今は明側よりも我々が大いに優位に立てる経験の差に賭けたのでございます」
だが、それも千姫が指揮を執るというのなら話が違う。
経験の豊富な両将には、本来であれば副将として近くにいてもらいたいところ。
だが同時に遊軍を任せられるのも彼等しかいない。
「・・・・・・では、我々が十倍以上の明軍を倒すための献策をお願いします」
千姫にとっては予想を超える苦境だと言うのに、それも飲み込みなお落ち着いている姿に、少なからず井頼は驚いていた。
黄海での戦いでも確かにその芯の強さは見せていたけれど・・・・・・。
これで可能性は出てきた、と井頼はそう思ったのだろう。
薄く微笑み、秀頼とお麟と共に熟慮に熟慮を重ねた策を提示する。
「では、献策させていただきます――」
絶対の自信がある。
と、見える様に自信に満ちた声で、己の不安も共に吹き飛ばすように井頼は語りだす。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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