関白の息子!

アイム

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秀頼ルート 徳川家存続作戦

大坂城五人衆の一(エロ度☆☆☆☆☆)

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「おお。何時も見下ろすばかりだからか、自分の足で歩いて見ると雰囲気が違うな」

 堺の街を一般の武士と変わらぬ服装で歩く。
 隣りには同じく町娘姿の桜と護衛がいるものの、危険と言えば危険。
 なんと言っても今日会いに行くのは歴史に名を残す剛の者なのだから。

 それにしても身分を隠しての市中見回りなど、まるでどこぞのチャンバラ将軍のようだ。

「ちょっ、あまり大きな声で話さないでください!」

 俺自身は少し楽しんでいるきらいがある。
 だが、護衛役からすれば、そこかしこを刀を差した者が行き交うのだから気が気じゃないかもしれない。

「おいおい、変に警戒していたら逆に怪しいじゃん」

「・・・・・・その様。本当にこんなところに後藤様はいらっしゃるんですか?」

 豊秀とは世を忍ぶ仮の姿w
 まぁ、俺の体格はこの時代では珍しいので、実はあまり隠れてないんだけどね。

 それに、もちろん世直しや見分を広げることが目的ではない。
 明での助っ人に、正史では大阪五人衆の一人として活躍した後藤(又兵衛)基次を頼ろうと考え、直接頼みにやって来たのだ。

 大阪城五人衆と言えば真田信繁、毛利勝永、長宗我部盛親、後藤基次、明石全登の五人。
 彼等は風前の灯火と化した豊臣家に味方し、大坂の陣で奮戦してくれたのだ。
 もっとも、そのほとんどが関ケ原の敗者側の立場で浪人生活を送っていた者達。
 そして、関ケ原が起きなかった今は勝長や盛親、全登もそれぞれ大名になったり、その下で活躍している。

 ただし、その中で一人だけ、正史と同様に浪人生活を送っている者がいる。
 それが今回会いに来た後藤基次と言うわけだ。

「調べてきたのは桜の部下のくノ一だろう? 信じてやれよ」

「でも、こんなみすぼらしい長屋にあんなに武名高い方がいるとは・・・・・・」

 基次は如水や長政の指揮下で、多くの戦において活躍した名将。
 既に全国に名が知れ渡っていて、浪人となった今は引く手数多・・・・・・のはずだったのだが、そうはいかない。

 基次は四年も前に黒田家を出奔。
 一時は細川家に仕えていたそうだが、黒田家に奉公構と言う処置をとられてしまう。

 この奉公構というのは、出奔したり改易した者を他家が召し抱えないための措置であり、切腹に次ぐほどの重い刑罰に当たる。
 だからどんなに名将と言えども、彼を召し抱えれば黒田家に喧嘩を売ることになる。

 ・・・・・・いや、羽柴家法に、豊臣家に喧嘩を売ることになるのだ。

「謀反の疑いをかけられ出奔した方なんですよね?」

「ん~、なんでも顔が広い奴で(細川)忠興とかと手紙をやり取りしてたらしいよ? んでそれを他家とのやり取りって疑われたと」

 他家と言ってもみんな豊臣の一部なんだけどね。

「そのような方、大丈夫なんですか?」

「ん? 長政にも確認とったじゃん。大丈夫だよ」

 先日長政が来た時に奉公構を解いてもらい、その人物についても尋ねてみた。
 ・・・・・・ザックリ言うと、自分にも他人にも厳しく、こうと思ったことは決して曲げない男だそうだ。
 まぁ、融通が利かないとも言う。

「で、この部屋で良いのか?」

「・・・・・・あの、部屋じゃなくて家ですよ? 庶民の家はお城と違って小さいんですからね?」

「へ? こんな小さなところで暮らしてるの?」

 大阪城なら厠くらいの大きさじゃなかろうか?
 むぅ、天下人の生活が続くと一般的な感覚が分からなくなるな。
 こういう時は前世の知識を・・・・・・うーん、ワンルームマンションよりは少し広い?

「ま、どうでもいいや。桜」

「はい。ごめんくださーい」

 障子付きの引き戸を叩きながら桜が声をかける。
 だが返事は無い。

「豊秀様、中からは人の気配がしません」

「ん? 留守か?」

「は、っ!? 下がって!」

 瞬間、爆弾でも弾けた様な音と共に、引き戸が宙に向かって吹き飛ぶ。
 一早く桜が気付いてくれたおかげで、それがぶつかることは無かったが、当たっていれば痛いじゃすまなかっただろう。

 そして、

「なんじゃい、お主らは?」

 のそりと現れた毛むくじゃらの大男。
 と、言っても俺の方が身長は高いが、相手は二回りほど横に大きい。
 脂肪も結構ついているが、浮き出た血管から異常なほど発達した筋肉が観察できる。
 まさに熊と言っていいだろう。

「・・・・・・後藤基次様、でよろしいですか?」

「お主・・・・・・忍びじゃのう。また若殿が刺客を放たれたか?」

 身構えたままで確認を取る桜だったが、それが余計さら基次の警戒心を煽る。
 周囲の空気が凍りつくほどの、まるで抜身のような殺気を互いに放つ。

「豊臣秀頼だ」

「・・・・・・は?」

「・・・・・・へ?」

 俺が一言発すると、基次と桜が同時に間の抜けた声を上げる。
 一触即発の雰囲気になっている中悪いが、先の質問に答えさせてもらう。
 と言うか、そもそもなんで戦闘になりそうな雰囲気になっているんだろう?

「だから、豊臣秀頼だ。職業は皇帝」

 ぬん、と腕組みをして威張りながら言ってみる。
 常識的に言って皇帝は偉いはずだ。

「・・・・・・お主、阿呆か? 秀頼公がこのようなところにおるはずが無かろうが!」

 言うが早いか肉厚の長い太刀を抜き放つ。

「陛下、お下がりを!」

 それに反応して俺の前に立った桜も、何時の間にやら忍び刀を抜き、逆手に持っている。

「いるはずないって言われても、いるんだし仕方ないだろ。ほれ、桜。刀をしまえ」

「し、しかし・・・・・・」

「基次もだ。そんなに疑わしいならこの刀を見てみろよ。天下五剣の一、鬼丸国綱だ。こんなもん腰に差してるやつ俺しかいないぞ」

 ポイッと腰の国綱を投げて渡す。
 後世では間違いなく国宝級の品(御物なので国宝指定や重文指定はされていない)。
 それをこれほど適当に扱う人間が天下人以外にいるだろうか?

 受け取った基次はそれをすらりと抜き放てば、驚いたような顔をした後に吸い込まれるように見入っている。

「な? 本物だろ?」

「・・・・・・たしかに。しかし、武士の心である刀を左様に扱うは、陛下と言えども武士の所存にはございません」

「そう言うな。これで人一人の命が助かったんだからそれで良い。俺にはいざ戦った時にどちらが勝つかは分からないけどな」

「先ずはご無礼をいたしましたこと、平にご容赦を」

 そう言うと、鬼丸国綱を鞘に戻し、片膝をついて差し出してくる。

「もういいから、中に入れてくれ。やたらと喉が渇いた」

「む・・・・・・しかし、当家には陛下にお出しできる物など」

「水でいい。入っても良いか?」

「ははっ! 汚いところではございますが何卒ご容赦を!」

 長屋の中はほとんど日も射さないので薄暗い。
 おまけに埃っぽくてカビ臭いと劣悪な環境だった。

 水を汲んで渡された茶碗にまでひびが入っている。
 本当に喉が渇いていたので、一気に飲み干し本題に入る。

「・・・・・・基次。頼みがある――」





 これでお千の元には兵と武器と将。
 それに盟友まで揃うことになる。
 更に俺に出来ることがあるとすれば・・・・・・。

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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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