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側室達の日常
結託1/2(エロ度★☆☆☆☆)
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同じ裏内に在ると言っても、それぞれに別々の屋敷があり、ここが侍女を抱えるためにそれぞれの屋敷での行き交いはほとんど行われない。
更に言えば裏内に在る6つの離れの屋敷も3つは今は主がおらず、他にも1つは側室が増えた時のためのものでそもそも使われていない。
現在使われている2つのうちの一つ、駒姫の屋敷。
初めてそこにたら姫が訪れたのは気まぐれなどではなく、これからのことを話したかったからだ。
家康の失踪、というよりは千姫が正室から降ろされる可能性に裏内が揺れる中での後継候補を産んだ二人の側室の邂逅。
裏内の侍女たちはもしかしたらこれから正室争いが始まるのではないかと気を揉んでいた。
だが、当人たちの気持ちはまた別・・・・・・。
「駒姫様、このお饅頭美味しいです」
「でしょう? 京の老舗のものなのですが、抹茶の香りが良く気に入っているのです」
縁側でまったりと2人並んで茶菓子を愉しんでいた。
先に声をかけたのはたら姫の方だったが、その時点で自分に正室になりたいと思う気持ち自体がないとは伝えてある。
・・・・・・もっとも、細川家がどう考えるかは知らないが。
実は、たら姫は母・ガラシャと共に屋敷に閉じ込められて育てられた経験からか、実は家に対してあまり良い感情を持っていない。
「でも、千姫様を正室のままでいてもらう方法ってないでしょうか?」
今回のことを単純に法に照らせば千姫にも類が及ぶことは既に誰もが知る事実。
側室に出来ることなどなにもないと分かっていながらも相談できる者も少ない。
駒姫が同じ考えと思っているからこそできる相談だが・・・・・・。
「それは・・・・・・正室として残っていただくには・・・・・・恐らく陛下に強権を発動してもらうしか」
駒姫もずっと考えていたのだろう。
その目には多少の疲労の色が見える。
「でもそれって陛下自身が法を破るってことですよね?」
「そうなります。同時にそれは賞罰をうやむやにし、国の在り方をも曖昧にします。他の誰でもない、陛下はこの大日本帝国の皇帝なのですから・・・・・・」
「そうですね。もしもそうなれば表向きはともかく内心皆思うところもあるはずです」
少なくとも国内の統治に関して秀頼は無頼なことはしてこなかった。
羽柴家法を良く守り、それを各大名にも守らせてきた。
それを秀頼自身が自身のために破るとなれば・・・・・・。
「でも、千姫様は悪いことは何もしていません」
「ええ。ですが、我々はいやがおうにも家の名を背負わなければいけない運命にあります。それゆえに民と同じ仕事をせず、することも無い気苦労をしなければならない。そうでしょう?」
たしかに、常に家や一族のことを考えなければいけない大名家の娘と違い、民は恋愛して結婚することもあるのだろう。
秀頼のことを好きな二人でも恋愛というものに憧れないわけではない。
「だからこそ、愛し合う人達を引き離したくないのです」
「・・・・・・ええ。同感です」
家や権力などとは別の絆を感じる二人に羨む気持ちも有れど、妬む気持ちは無い。
それはこの側室二人の個人的な感情でしかないが、紛れもない本心。
「では、私のお二人の仲を応援するという提案には」
「もちろん賛同させていただきます。ですが、どうすれば良いのかが全く分かりません」
「残念ながらそれについても同感です・・・・・・」
情けないことに全く思いつかない。
結託してもなんの価値も無い。
「でもなにか思いついた時には協力して全力で事に当たる。それだけはお誓いします」
「はい。それは私もです!」
そうして二人は手を取り合い、誓い合う。
その想いには嘘偽りなどはない。
・・・・・・ないのだが、たら姫には少し不純なものが付きまとう。
「あの、駒姫様?」
「はい。なんでしょう?」
「このことは五郎八姫様にも秘密でお願いします」
五郎八姫の生家である伊達家はその大きさと地理的な条件の良さ、そして当主・政宗の才と性質からもっとも今回の件との関わりを懸念されている。
もちろんそれは細川家も同じなのだが、当のたら姫にそのつもりがないので無意味と考えているのだ。
更に言うなら五郎八姫自身の才覚もであろうか。
そして、側室達の中で駒姫がもっとも仲が良いのは五郎八姫。
親族でもあるのだから、ある意味では当然ではあるが・・・・・・。
「そう、ですね。今は信頼できる方だけと・・・・・・。私は五郎八様の事は信じていますが、お家のことまで含めると・・・・・・」
少し苦々しい顔になってしまうのは否めない。
駒姫はそういった顔をみせる。
駒姫の出身・最上家は永年五郎八姫の出身・伊達家と争いを続けてきた。
伊達家に最上義光の妹・義姫が嫁ぎ、その子・政宗が伊達家を継いでからも決して良好とは言い難い状態。
また、正史とは異なり、家康との天下分け目の大戦で敵味方に分かれ、最上家改易の大きな要因ともなっている。
それでも五郎八姫も駒姫を慕っていたし、駒姫も過去のわだかまりなど捨てて同じ側室として親族として接してきた。
可愛く思ってはいるが、それとこれとは話が別だ。
「お約束いただけますね?」
「・・・・・・はい」
「では、それを証明していただけますか?」
「っ!?」
急に先程までよりもだいぶ近くにずずいと近づいて来たたら姫に駒姫も驚いて身体が逃げるように仰け反ってしまう。
「え、ええ。でもどうすれば?」
「ふふ、それはですねぇ。お互いに他では話せない秘密を共有する、なんて如何でしょう?」
たら姫の口角が少し上がり、その目が怪し気に光った。
更に言えば裏内に在る6つの離れの屋敷も3つは今は主がおらず、他にも1つは側室が増えた時のためのものでそもそも使われていない。
現在使われている2つのうちの一つ、駒姫の屋敷。
初めてそこにたら姫が訪れたのは気まぐれなどではなく、これからのことを話したかったからだ。
家康の失踪、というよりは千姫が正室から降ろされる可能性に裏内が揺れる中での後継候補を産んだ二人の側室の邂逅。
裏内の侍女たちはもしかしたらこれから正室争いが始まるのではないかと気を揉んでいた。
だが、当人たちの気持ちはまた別・・・・・・。
「駒姫様、このお饅頭美味しいです」
「でしょう? 京の老舗のものなのですが、抹茶の香りが良く気に入っているのです」
縁側でまったりと2人並んで茶菓子を愉しんでいた。
先に声をかけたのはたら姫の方だったが、その時点で自分に正室になりたいと思う気持ち自体がないとは伝えてある。
・・・・・・もっとも、細川家がどう考えるかは知らないが。
実は、たら姫は母・ガラシャと共に屋敷に閉じ込められて育てられた経験からか、実は家に対してあまり良い感情を持っていない。
「でも、千姫様を正室のままでいてもらう方法ってないでしょうか?」
今回のことを単純に法に照らせば千姫にも類が及ぶことは既に誰もが知る事実。
側室に出来ることなどなにもないと分かっていながらも相談できる者も少ない。
駒姫が同じ考えと思っているからこそできる相談だが・・・・・・。
「それは・・・・・・正室として残っていただくには・・・・・・恐らく陛下に強権を発動してもらうしか」
駒姫もずっと考えていたのだろう。
その目には多少の疲労の色が見える。
「でもそれって陛下自身が法を破るってことですよね?」
「そうなります。同時にそれは賞罰をうやむやにし、国の在り方をも曖昧にします。他の誰でもない、陛下はこの大日本帝国の皇帝なのですから・・・・・・」
「そうですね。もしもそうなれば表向きはともかく内心皆思うところもあるはずです」
少なくとも国内の統治に関して秀頼は無頼なことはしてこなかった。
羽柴家法を良く守り、それを各大名にも守らせてきた。
それを秀頼自身が自身のために破るとなれば・・・・・・。
「でも、千姫様は悪いことは何もしていません」
「ええ。ですが、我々はいやがおうにも家の名を背負わなければいけない運命にあります。それゆえに民と同じ仕事をせず、することも無い気苦労をしなければならない。そうでしょう?」
たしかに、常に家や一族のことを考えなければいけない大名家の娘と違い、民は恋愛して結婚することもあるのだろう。
秀頼のことを好きな二人でも恋愛というものに憧れないわけではない。
「だからこそ、愛し合う人達を引き離したくないのです」
「・・・・・・ええ。同感です」
家や権力などとは別の絆を感じる二人に羨む気持ちも有れど、妬む気持ちは無い。
それはこの側室二人の個人的な感情でしかないが、紛れもない本心。
「では、私のお二人の仲を応援するという提案には」
「もちろん賛同させていただきます。ですが、どうすれば良いのかが全く分かりません」
「残念ながらそれについても同感です・・・・・・」
情けないことに全く思いつかない。
結託してもなんの価値も無い。
「でもなにか思いついた時には協力して全力で事に当たる。それだけはお誓いします」
「はい。それは私もです!」
そうして二人は手を取り合い、誓い合う。
その想いには嘘偽りなどはない。
・・・・・・ないのだが、たら姫には少し不純なものが付きまとう。
「あの、駒姫様?」
「はい。なんでしょう?」
「このことは五郎八姫様にも秘密でお願いします」
五郎八姫の生家である伊達家はその大きさと地理的な条件の良さ、そして当主・政宗の才と性質からもっとも今回の件との関わりを懸念されている。
もちろんそれは細川家も同じなのだが、当のたら姫にそのつもりがないので無意味と考えているのだ。
更に言うなら五郎八姫自身の才覚もであろうか。
そして、側室達の中で駒姫がもっとも仲が良いのは五郎八姫。
親族でもあるのだから、ある意味では当然ではあるが・・・・・・。
「そう、ですね。今は信頼できる方だけと・・・・・・。私は五郎八様の事は信じていますが、お家のことまで含めると・・・・・・」
少し苦々しい顔になってしまうのは否めない。
駒姫はそういった顔をみせる。
駒姫の出身・最上家は永年五郎八姫の出身・伊達家と争いを続けてきた。
伊達家に最上義光の妹・義姫が嫁ぎ、その子・政宗が伊達家を継いでからも決して良好とは言い難い状態。
また、正史とは異なり、家康との天下分け目の大戦で敵味方に分かれ、最上家改易の大きな要因ともなっている。
それでも五郎八姫も駒姫を慕っていたし、駒姫も過去のわだかまりなど捨てて同じ側室として親族として接してきた。
可愛く思ってはいるが、それとこれとは話が別だ。
「お約束いただけますね?」
「・・・・・・はい」
「では、それを証明していただけますか?」
「っ!?」
急に先程までよりもだいぶ近くにずずいと近づいて来たたら姫に駒姫も驚いて身体が逃げるように仰け反ってしまう。
「え、ええ。でもどうすれば?」
「ふふ、それはですねぇ。お互いに他では話せない秘密を共有する、なんて如何でしょう?」
たら姫の口角が少し上がり、その目が怪し気に光った。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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