関白の息子!

アイム

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黄海の戦い

大波(エロ度☆☆☆☆☆)

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 西方より現れたのは大型の艦船ばかりで、一台に乗る兵の数も明らかに多い。
 見るからにこちらが本命と分かる。

「新式大砲の使用を許す! 敵が射程に入り次第西側の艦隊は斉射せよ!」

 ドシッと構えていれば良いと言ったが、やはりこういう場面では口出しをしたくなる。
 なんせこの船にはお千も乗っているのだから。

「井頼! 西側は俺が直接指揮する。お前は正面を!」
「ははっ! お任せいたします!」

 未だ多くの突撃艇が動いている正面側を疎かにすることなど出来ない。
 此処から呼び掛けても中々棒火矢の甲高い飛行音に邪魔をされて伝わらないかとも思ったが、俺の声は割と通る方だったようでちゃんと伝わった。

「お千、中で」
「あなた。共に」

 キュッと手を握りしめられる。
 一瞬、なにを? とも思ったが、同時にそれも良いかと思い直す。

「危ないと思ったら中に入れるからな」
「はい。その時は我儘は言いません」

 結局この黄海の真っ只中では船と命運を共にするしかない。
 実際、一昔前の戦だったら俺達は此処で敗北していたはずだ。
 本当に狙ってこうなったかはともかく、慣れない海域で敵に挟撃に会い、敵の突撃に対して脆弱というならそれも仕方ない。

 だが、こちらには敵に近づかれる前に突撃艇程度なら1・2発で沈没せしめる棒火矢があり、そして・・・・・・。

「ここにいたかお麟。大砲を使うぞ!」
「ははっ! 観測員の準備も出来ております」
「では射線上の友軍を退けろ!」

 敵艦隊までの距離は半里(2km)ほどに近づいてきている。

 こちらの新型大砲はこの時代におけるOパーツ的技術をふんだんに盛り込んだものだ。
 これを積んでいるのは大和と他3隻だけ、それも全砲が新型というのは大和だけだ。

 新型大砲は前装式の大砲だが、今までのものと異なり砲身にライフリングが彫られている。
 そして、砲弾はどんぐり型の形状をしており、ライフリングに食い込むようにスタッドが計8カ所に取り付けられている。

 左舷側の砲は5門。
 弾道学の発達していない日本ではほぼ直線的に狙うしかない。
 しかし、半里くらいなら大分照準に近い位置に飛ぶことも分かっている。

「お麟、準備は?」
「はっ! ・・・・・・陛下、もしも私の願いを聞き入れてくれるなら千姫様に」
「・・・・・・ああ、お千」
「わ、私でございますか!?」

 お麟の目的は女が指揮を執ること。
 そして、俺の目的はこれまでの武家の戦との決別を意味する。

 ライフリングを入れた新式銃を皆に見せた時に誰かが発した一言。
「戦が変わる」
 そう、戦が変わるのだ。
 まだまだ数が少ないとは言え、どんどん生産と改良、研究を行っている。
 これからは刀槍で闘う時代ではなくなるのだ。

「・・・・・・頼む」
「は、はい。・・・・・・では、全門斉射してください!」

 バッとお千の手が振られる。
 可憐な少女の声に合わせ、ドドーンという凄まじい音と共に5門の大砲が火を噴く。
 大量の硝煙が辺りに立ちこめる。

「次弾の弾込めをしてください!」

 弾着とその成果も確認せずにお千が次弾装填の指示を出す。
 誰もが敵船の方を見ていたので、言われて慌てて兵が動き出す。

 暴発を防ぐために外側から水がかけられ保身が冷やされる。
 同時に弾薬のカスを清掃するために兵の一人が前面に布を巻いた棒を突き込む。

「観測係の方、初弾の成果の報告を願います!」

 そうしている間に櫓にいる観測係に着弾報告を求める。
 まったくもって正しいやり方だ。
 一体どこで学んだと言うのだろう?

「・・・・・・私よりも実践に向かれているようです」
「お麟、だからと言ってお千を戦場に出す事なんてないからな」

 しかし、お麟がそれに答える前に観測係の報告が届く。

「5発中2発が着弾、敵艦の進行は未だ止まらず!」

 聞くが早いかといったタイミングで弾込めを終えた砲手達にお千が次の指示を出す。

「次弾、撃ってください!」

 再びの五門の射撃音に船全体が揺れる。
 しかし・・・・・・。

「ほ、砲は連続では4回の射撃までしか許されておりません!」

 砲手達はこのままでは砲の暴発が起きかねないことを心配していた。

「ならば、右舷側の砲をこちらに運び込んでください。ここで圧倒的な力を見せれば以降の制海権を我が軍が利することが出来ます! 今ここで無茶をすることで、同胞の命を多く救えるのです!」

 確かにこの砲は陸上での運搬も出来るように固定砲台にはなっていない。

 ブルリと目の前でお麟が震えたのが分かった。
 お千の予想以上の将器に武者震いしているのだろう。

 だが・・・・・・。

「第二射、三発が命中! 敵大型艦の内一隻が航行不能となった様子です! また敵艦隊の足もだいぶ遅くなっております」

 観測係が大声で叫んでくる。
 前面に出ている艦が浸水して邪魔になったのだろう。

「第三射は敵左翼の艦を狙ってください! 前面の友軍に右翼を狙う様に指示を!」

 凛とそうお千が告げる。
 前面の友軍と敵までの距離は四半里(1km)通常の砲や棒火矢の射程に十分に入っている。

「撃ってください!」

 お千の指示で三射目が放たれる。
 その指示で今度は二艦が航行不能になる。
 どうやら敵も砲は積んでいるようだが、こちらの射程とはだいぶ差があるようだ。

 だが、まだまだ油断できない。
 敵には未だ三十艦近くの船がいる上に、今は東向きの風が吹いている。
 その風に乗り敵の船足は早い。

 そして、こちらは全面の味方の硝煙で視界が一気に悪くなるのだから。

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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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