関白の息子!

アイム

文字の大きさ
上 下
168 / 323
黄海の戦い

初戦(エロ度☆☆☆☆☆)

しおりを挟む
 上海に陸上部隊、並びに護衛船団を配置し、同時に築城部隊が上海の要塞化に着手する。
 築城を指揮するのは名手加藤清正。
 そしてその護衛として陸上部隊を指揮するのは島津義弘。
 いずれ劣らぬ名将中の名将だ。

 今回、上海の要塞には壁の高さと厚みに特に配慮し、同時に火薬を濡らさぬように全周に屋根が設けられる予定だ。
 城の造りも兵器に合わせて変わってきているのだと実感する。

「清正、ではここは義弘と共に守ってくれ」
「ははっ! 鬼島津殿とでしたら百人力にございます」

 ガッハッハと笑いながら大男がガシッと腕を組んで見せる。
 ・・・・・・戦に関しては大して心配いらないと思うのだが・・・・・・。

「間違っても酒の呑み過ぎで戦が上の空になるなんてことが無いように」
「ま、まさか!?」
「ぬぁっはっはっはっは」

 どうやら早速飲み会を予定したらしい。

「呑み過ぎんなよ!」
「も、もちろんにござるよ?」
「信用できねぇ!?」

 清正が明後日の方向を見て答えるが、本当にほどほどにしてほしい。
 清正だってもう若くはないのだ。

「はぁ、ま、それでもほとんど負けなしの二人だから信用するけどさぁ」
「陛下、どうぞご心配召されるな。某にしてみれば海上部隊の方が心配にございます」

 これから俺と共に海上部隊が出撃するというのに不吉なことを言う。
 しかし、それも間違いではない。
 何故なら敵の海上戦力はいまいち掴み切れていないのだから。

「ただ、どう考えても海上戦力だけ整えているなんてことはないと思うんだよな。まぁ、有ったとしても大したことはないだろ」
「陛下、慢心はどのような勝ち戦もあっという間に負け戦に変えます。決してこの事をお忘れなきように」
「・・・・・・それが飲み会を企画する将の言うことかよ!?」

 ガハハと笑っているが、確かに清正の言う通りだ。
 気を緩めることなくいかなくては。




 大和を始めとした日本艦隊は多くの艦船で構築されるが、所謂小型艇は存在しない。
 それは海を越える必要があったためだが、そのせいで小回りの利く船が存在しないのも確かである。
 よって戦法としては敵の射程外から棒火矢や大砲による攻撃を行い、近づかれる前に撃破する。
 近づかれた場合は連装銃による銃撃で応戦するという戦法になる。

 もちろん雨が降ったくらいで発砲不可にならない様にそれぞれの艦船に屋根がつき、その中から敵を狙う形になる。
 これは敵の弓矢による攻撃への防御にもなるが、同時に重量が大幅に増したことで船足が遅くなり、風にあおられやすくなったことにより、悪天候への対処が難しくなった。
 メリットデメリットはあるが、それでも攻撃面のメリットを優先してこの形になった。

「早く黒船を作りたいなぁ」

 そんな俺の呟きに答えられるモノなんて只一人しかいない。

「それには解決すべき課題が幾つもあります。大規模な製鉄技術、材料研究、蒸気機関の開発、その燃料。足りないものが多過ぎです」
「でも鉄鋼船は存在したんだぞ?」
「何年で沈んだんでしたっけ?」

 お麟がお見通しと言う様に突っ込んでくる。

「そんな事より新兵器の試験は今回行うのですか?」
「ああ。あれなら敵の基地や造船所の破壊に有効だからな。しっかり観測を行い情報を役立ててくれ」
「はい」

 どうしても攻撃技術が先行するのは仕方のないことなのだろうか。
 出来る事ならその存在だけで戦争を回避できるような抑止力に・・・・・・。

 カーン、カーン、カーン

 物見櫓が鐘を鳴らし、敵の接近を知らせる。

「お麟、遠眼鏡を」
「はい、陛下、終わったら私にも」

 お麟は小さいので抱えあげてやらないとまともに遠くを見れない。
 別にお麟が見る必要もないのだが、まぁ、一応軍師としては見ないわけにはいかない。
 もっとも見たいという本当の理由はただの興味本位なのだろうけど。

「す、凄い数だ。100隻を越えるんじゃないか?」
「陛下、陛下!」

 お麟がピョンピョンと飛び跳ねて腕に縋りつく。
 そんなに見たいのだろうか。

「おお、凄いぞぉ!」
「陛下ぁ! 意地悪しないで」

 さて、そういう遊びも楽しいのだが、敵が接近する前に方針を決めなければいけない。
 まぁ、何時も通りに遠距離からの攻撃を行うだけだが。

 遠眼鏡をお麟に渡し、両脇を抱えて持ち上げる。

「ほれ、どうだ?」
「陛下・・・・・・、少し不味いかもしれません」

 先程見たところ特に大砲があるわけでもなかった。
 船にも特に変わった所もないし、なにも不安など無いだろうに。

「ん?」
「特攻艦が多いです」
「は?」
「・・・・・・実はこの時代の日本の船って竜骨を用いていないので衝突に弱いんです」
「はぁ?」
「あの、鉄の衝角を取り付けられた中国船に突撃されると一撃で沈みかねません」
「おい」
「・・・・・・さ、さぁ、近づかれる前に撃てですよ!」

 こうして予想をはるかに上回る緊張感を持って、黄海海上戦の戦端が開かれる。

しおりを挟む
新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
感想 61

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

処理中です...