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遷都
発端1/2(エロ度☆☆☆☆☆)
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慶長12年(1607年)夏
突然の訃報に大阪城にも激震が走る。
九州の抑えとして、また七将の一人として活躍していた小早川秀秋が京の屋敷で病死したと言うのだ。
正史ではもっと前に亡くなるが、それは関ケ原での心痛が祟ってのことと推察されるからで、それがないこの世界でこんな早くになるとは思わなかった。
大阪の天守から堺の港を見下ろす。
今日もあくせく人々が働くのが見える。
豆粒の様な小ささだが、1人1人が俺達の生活を支えてくれている。
結構、ここから見る景色が俺は好きだ。
父上が残してくれたこの城は日の本の中心で、政治の中心の役割すら京都から奪った。
だが、朝鮮を支配し、明を睨む今となっては・・・・・・。
共に訃報を聞き、悲しみながらも善後策をということで集まった何時もの五大老・五奉行・七将軍もなかなか発言できないでいる。
特に(豊臣)秀次にとっては実の弟だし、(福島)正則、(加藤)清正、(黒田)長政、(宇喜多)秀家などは、幼少期を共に過ごした経験がある仲だ。
六月に徳川家の一武将として亡くなった(結城)秀康もだが、まだまだ活躍出来ると思っていた将が死んでいくのは単純な感傷だけでなく、現実的な対応が必要となる。
「・・・・・・殿、九州の守りに誰を置くかを考えなくては」
「三成。小早川家は無嗣断絶ということだったな?」
「は。ですので、七将のいずれかを転封するのがよろしいかと」
確かにそれが常道と言えば常道。
「六将になってしまいましたな・・・・・・」
「清正、言うな」
「はっ。申し訳ございません」
しかし、どうするか・・・・・・。
「・・・・・・特に、九州の重要性は――
「石田殿! 今はお待ちください」
景勝が三成の言葉を押しとどめる。
だが、三成が正しい。
「三成、福岡に城を作ろう。大阪を超える大きく壮大な城を」
「は?」
訝し気な声を上げる三成を見下ろす。
「俺が九州に行く。これからしばらくは政治の中心を福岡に置くものとする」
実は前から考えていた事ではあった。
昔、秀次叔父上に父上が九州の地を俺のものにしてやってくれと言ったらしい。
だからというわけではないが、最も心配な明の動向を知るのに二・三週間もかかる現状に悩んでいたのも確かだ。
福岡ならその時間も半分に減らせる。
その10日ほどが戦での致命的な敗因になりかねない。
諸将はそれで戦火に落ちるのは朝鮮だからとあまり気にしてはいないが・・・・・・。
「明の征伐や対応にも都合が良いし、今誰かに移ってもらうと言うのも無理がある。信繁に先に福岡に入ってもらい、整備をしておいてもらおう。それと、清正には築城を願いたい」
「ははっ!」
清正は熊本城などの城を立てた名人。
きっと様々な工夫を入れてくれるだろう。
「九州は久しぶりだろ?」
「はっ! 博多の馴染みの店に顔を出すのが愉しみでございますな」
「ふむ、その話はあとでするとしようか」
ニヤリと笑い合ってしまう。
秀秋が亡くなった直後に不謹慎だと言われればそうだが・・・・・・。
「それと秀次叔父上、(藤堂)高虎も一緒に城の設計に携わるように伝えてください。あいつも良い城を作るようなので」
「ははっ!」
高虎も同様に名人として後世に伝わる。
もっとも石垣や堀などで考え方が対照的らしいが・・・・・・。
ま、まぁ、大丈夫だろう。
まさか、良い大人が意見に食い違いがあったからって喧嘩したりしないよな?
「通常の城と異なり、かなり巨大にしてもらう必要がある。ついでに朝鮮や後の中華の地との重要な商業の地となることを考えて、直接的な守り自体より政治の中心地と考えよ」
「陛下! この大阪はどうされます?」
三成が当然と言えば当然の質問をしてくる。
「ん? まぁ、そのうち戻ってくるだろうから誰か家臣に留守居を任せるよ。今更国内で俺に逆らう者もそうはいないだろう?」
「・・・・・・では、戻った際に福岡はどうされます?」
「そこで相談なんだが、少し良いか?」
「何でございましょう?」
「各領地における優秀な人材、これはまだ若い者で良い、とにかく二〇歳になる前の若い者を一大名二人ずつ輩出してくれ。武で一人、知で一人と言った感じにな。その者が活躍出来た場合には出身の領地に十分な恩賞を取らすし、俺の家臣としてだけでなく、白寿の家臣としてや今後の明での支配者階級としての取入れを考えている」
「そ、それは随分と急な」
この人物の推挙自体に領地の威信をかけさせたいがためにこのような形を取ったのだ。
もちろん各地でも優秀な人材を取られるのは痛いだろうが、基本的に安泰な世の中では武辺者に活躍の機会はないし、血筋でどうしても上役を占拠してしまう各地に居させるよりも俺のもとに居させた方が活躍の機会は多い。
そして活躍してくれれば恩賞と更にその者に与えられた土地や役目との繋ぎが出来る。
更に言えば、白寿と言う時代の天下人候補の真っ新な家臣団に加えられるのであれば・・・・・・。
「どうだ? 大名達にとっても悪くない話だろう?」
「ですが、どうにも漠然とした話ですな」
「そうか? それとな、この人材の発掘は五年に一回行う。各大名はその威信にかけて優秀な人材を探し出させろ。良いか? 農民でも奴隷でも一向に構わん。ただ能力の優秀さだけを重視する。歳も幼くても良い。幼ければこちらで教育する」
「農民や奴隷ですか!?」
「父上とて農民出身だぞ?」
「む、むぅ。それは・・・・・・」
もっとも父上の時代にあからさまに農民出身というのは憚られたみたいだが。
まぁ、俺としては農民が天下人にまでなったこと自体にも尊敬の念を感じているから、結構大っぴらに言ってしまうのだが・・・・・・。
血筋だけで言えば俺は一応織田家と浅井家の血も引いているしね。
「とにかく、各地で一番と思う者を連れて参れ。逆に言えば農民が一人減っただけで一万石を得たくらいの活躍をするかもしれんのだぞ? そう言った意味では良い機会だと思うがな」
「確かに・・・・・・」
三成の思案顔が納得し始めたところで人材発掘案について、後は五奉行が何とかしてくれる。
俺は何時も方針を打ち出すだけ、決済の仕事もかなりまとめてから持って来てくれるから楽なものだ。
突然の訃報に大阪城にも激震が走る。
九州の抑えとして、また七将の一人として活躍していた小早川秀秋が京の屋敷で病死したと言うのだ。
正史ではもっと前に亡くなるが、それは関ケ原での心痛が祟ってのことと推察されるからで、それがないこの世界でこんな早くになるとは思わなかった。
大阪の天守から堺の港を見下ろす。
今日もあくせく人々が働くのが見える。
豆粒の様な小ささだが、1人1人が俺達の生活を支えてくれている。
結構、ここから見る景色が俺は好きだ。
父上が残してくれたこの城は日の本の中心で、政治の中心の役割すら京都から奪った。
だが、朝鮮を支配し、明を睨む今となっては・・・・・・。
共に訃報を聞き、悲しみながらも善後策をということで集まった何時もの五大老・五奉行・七将軍もなかなか発言できないでいる。
特に(豊臣)秀次にとっては実の弟だし、(福島)正則、(加藤)清正、(黒田)長政、(宇喜多)秀家などは、幼少期を共に過ごした経験がある仲だ。
六月に徳川家の一武将として亡くなった(結城)秀康もだが、まだまだ活躍出来ると思っていた将が死んでいくのは単純な感傷だけでなく、現実的な対応が必要となる。
「・・・・・・殿、九州の守りに誰を置くかを考えなくては」
「三成。小早川家は無嗣断絶ということだったな?」
「は。ですので、七将のいずれかを転封するのがよろしいかと」
確かにそれが常道と言えば常道。
「六将になってしまいましたな・・・・・・」
「清正、言うな」
「はっ。申し訳ございません」
しかし、どうするか・・・・・・。
「・・・・・・特に、九州の重要性は――
「石田殿! 今はお待ちください」
景勝が三成の言葉を押しとどめる。
だが、三成が正しい。
「三成、福岡に城を作ろう。大阪を超える大きく壮大な城を」
「は?」
訝し気な声を上げる三成を見下ろす。
「俺が九州に行く。これからしばらくは政治の中心を福岡に置くものとする」
実は前から考えていた事ではあった。
昔、秀次叔父上に父上が九州の地を俺のものにしてやってくれと言ったらしい。
だからというわけではないが、最も心配な明の動向を知るのに二・三週間もかかる現状に悩んでいたのも確かだ。
福岡ならその時間も半分に減らせる。
その10日ほどが戦での致命的な敗因になりかねない。
諸将はそれで戦火に落ちるのは朝鮮だからとあまり気にしてはいないが・・・・・・。
「明の征伐や対応にも都合が良いし、今誰かに移ってもらうと言うのも無理がある。信繁に先に福岡に入ってもらい、整備をしておいてもらおう。それと、清正には築城を願いたい」
「ははっ!」
清正は熊本城などの城を立てた名人。
きっと様々な工夫を入れてくれるだろう。
「九州は久しぶりだろ?」
「はっ! 博多の馴染みの店に顔を出すのが愉しみでございますな」
「ふむ、その話はあとでするとしようか」
ニヤリと笑い合ってしまう。
秀秋が亡くなった直後に不謹慎だと言われればそうだが・・・・・・。
「それと秀次叔父上、(藤堂)高虎も一緒に城の設計に携わるように伝えてください。あいつも良い城を作るようなので」
「ははっ!」
高虎も同様に名人として後世に伝わる。
もっとも石垣や堀などで考え方が対照的らしいが・・・・・・。
ま、まぁ、大丈夫だろう。
まさか、良い大人が意見に食い違いがあったからって喧嘩したりしないよな?
「通常の城と異なり、かなり巨大にしてもらう必要がある。ついでに朝鮮や後の中華の地との重要な商業の地となることを考えて、直接的な守り自体より政治の中心地と考えよ」
「陛下! この大阪はどうされます?」
三成が当然と言えば当然の質問をしてくる。
「ん? まぁ、そのうち戻ってくるだろうから誰か家臣に留守居を任せるよ。今更国内で俺に逆らう者もそうはいないだろう?」
「・・・・・・では、戻った際に福岡はどうされます?」
「そこで相談なんだが、少し良いか?」
「何でございましょう?」
「各領地における優秀な人材、これはまだ若い者で良い、とにかく二〇歳になる前の若い者を一大名二人ずつ輩出してくれ。武で一人、知で一人と言った感じにな。その者が活躍出来た場合には出身の領地に十分な恩賞を取らすし、俺の家臣としてだけでなく、白寿の家臣としてや今後の明での支配者階級としての取入れを考えている」
「そ、それは随分と急な」
この人物の推挙自体に領地の威信をかけさせたいがためにこのような形を取ったのだ。
もちろん各地でも優秀な人材を取られるのは痛いだろうが、基本的に安泰な世の中では武辺者に活躍の機会はないし、血筋でどうしても上役を占拠してしまう各地に居させるよりも俺のもとに居させた方が活躍の機会は多い。
そして活躍してくれれば恩賞と更にその者に与えられた土地や役目との繋ぎが出来る。
更に言えば、白寿と言う時代の天下人候補の真っ新な家臣団に加えられるのであれば・・・・・・。
「どうだ? 大名達にとっても悪くない話だろう?」
「ですが、どうにも漠然とした話ですな」
「そうか? それとな、この人材の発掘は五年に一回行う。各大名はその威信にかけて優秀な人材を探し出させろ。良いか? 農民でも奴隷でも一向に構わん。ただ能力の優秀さだけを重視する。歳も幼くても良い。幼ければこちらで教育する」
「農民や奴隷ですか!?」
「父上とて農民出身だぞ?」
「む、むぅ。それは・・・・・・」
もっとも父上の時代にあからさまに農民出身というのは憚られたみたいだが。
まぁ、俺としては農民が天下人にまでなったこと自体にも尊敬の念を感じているから、結構大っぴらに言ってしまうのだが・・・・・・。
血筋だけで言えば俺は一応織田家と浅井家の血も引いているしね。
「とにかく、各地で一番と思う者を連れて参れ。逆に言えば農民が一人減っただけで一万石を得たくらいの活躍をするかもしれんのだぞ? そう言った意味では良い機会だと思うがな」
「確かに・・・・・・」
三成の思案顔が納得し始めたところで人材発掘案について、後は五奉行が何とかしてくれる。
俺は何時も方針を打ち出すだけ、決済の仕事もかなりまとめてから持って来てくれるから楽なものだ。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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