関白の息子!

アイム

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狂乱

謀反の訳(エロ度☆☆☆☆☆)

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 捕らえられ、俺の前に引きずり出された茂勝を前に、何を言おうかと悩んでみる。

 本当は今すぐにでも手討ちにしてやりたいのだが、黒幕を吐かせるまではそうもいかない。それに、交渉は焦り過ぎてもいけないのもまた事実。

「・・・・・・まず、何が不満だったのか話して見よ」

「何がだと!? すべてだ! 10も年下の若造に頭を下げねばならぬことも、その若造が朝廷を軽んじることも、貴様のせいで朝廷にまで軽んじられることも、たった5万石の所領だということも、愚図な家臣共も! 全てが気に食わん!」

 ・・・・・・馬鹿か?

 ついついあんぐりと口を開けて呆けてしまった俺の代わりに信繁が進み出て何かを言おうとする。

「信繁、待て。俺はこいつの言うことをもう少し聞いてみたい」

「・・・・・・その価値も無いかと」

「いや、これほど面白い者はある意味で産まれて初めて見た。大名の癖に全て自分が可愛いとしか言わんとはな。こうはなるまいと言う反面教師としてもう少し観察してみたい」

「!? 何だとこの餓鬼が!」

 後ろ手に縛られているというのに、茂勝は今にも襲い掛かるかのように身を乗り出す。しかし、足の方も拘束しているので、一歩目でつんのめり顔からスライディングしてしまう。もちろん後ろ手で縛っているので手で顔を守ることも出来ない。

 ズザザァ

 畳の上で茂勝の顔の皮が削られる。血は出なかったものの真っ赤になった顔でそれでも恨めし気にこちらを睨んでくる。まったく、根性だけは割とあるのかもしれない。

「おい、そいつ臭いから二間(約3.6m)以内に近づかない様に縛っておいてくれ」

「き、貴様!」

「てかお前さ。生まれの不幸とかなんとか言っていたけど、俺が何もしないで今の地位にいると思ってんの?」

 確かに天下人を継いだ。だが、正史の通りに進んでいれば、七年前には徳川の世になっているし、俺の命はあと五年。母や息子の国松も死に、子孫もいなくなる。俺自身は特に悪いことをしていないのに、だ。今そうではなくなっているのは、歴史を知っていたからではない。俺が良いと思う方に歴史を動かしたからだ。

「貴様は天下人を継いで、俺はたかが五万石。生まれの不幸以外に何がある」

「馬鹿だな。農民の次男坊なんて何も貰えないんだぞ?」

 たわけ者の語源は子供達に自分の田畑を分割して継がせる者のことを言う。それでは新しい家族を養ってはいけないのだ。だから、次男は村を出て新天地に出なければいけない。餞別くらいは少しあるかもしれないが、それが今の時代のスタンダードだ。

「この俺を卑しい農民などと一緒にするな!」

「・・・・・・悪いのはお前の生まれ云々じゃないよ。もっと本質的なところでお前は終わっている。まぁ、お前の命ももうすぐ終わるから気にしなくて良いがな」

「ふん。俺には主のお導きが――

「そうそうお前切支丹だったな。やっぱり切支丹は危険だ。皆殺しにしよう」

「!? 何だと!?」

 当然ブラフだ。しかし、既に死ぬ気になっている者から情報を聞き出すのに何か良い手立てはないかと思い、茂勝のせいで切支丹が迫害されると言う文句を思いついたのだ。

「だってそうだろう? 少なくとも俺の代で問題を起こしたのは仏教徒ではなく、切支丹だ。天下を乱す者を認めるわけになどいかない」

「クク、そのような戯言に惑わされはせぬ!」

「ああ、それとな。右近に先程聞いたが、お前は確実に地獄行きだとよ」

「!?」

「十戒だったか? あれに反し過ぎていてお前のどこが切支丹なんだか教えて欲しいくらいだって言っていたぞ? 全くそんな奴のために切支丹が迫害されるんだからいい迷惑だよな」

「嘘だ! ふざけるな!」

 茂勝がブンブンと首を振り、必死に否定する。宣教師達を追い出した今となっては、高山右近こそこの国における切支丹の最高位。右近の言葉はすなわち彼等の主の言葉に近いのである。

「考えてもみろよ。父母を敬えってやつにはさっきの発言を見る限り反している。殺人をするなはお前のせいで死んだ人間を思えば言うまでもない。盗むなは俺の茶器を持ち出そうとしたことから明らか。隣人の家を貪ってはいけないは、ほれこの通りだ。お前のどこが切支丹だ?」

「違う、違う、違う~!」

「だいたいお前ら切支丹は救いを求めてあの教えに縋るが、大名ってのは本来救いを与える側の立場だ。お前のとこの民がどれだけ困窮しているか分かっているのか? それもこれもお前が継いでから、お前がまともな政治をしないからだ」

「ちがーう!」

 発狂したようにキンキン声を発する茂勝。

 もっと言ってやろうかとも思ったが、信繁にそれくらいでと目くばせされてしまう。まぁ、こんな奴を相手にしても仕方ないか・・・・・・。

「で、お前を悪の道にそそのかした悪魔は誰だ?」

 此処で、「悪いのはお前じゃないんじゃないか?」そう問いかけるような救いの手を差し伸べてみる。もともと精神の弱い男だ、これでコロッと行くんじゃないだろうか。

「俺が悪いんじゃない。俺は悪くない」

「ん? じゃぁ、誰が悪い? 誰が悪の道に誘った?」

「あいつが、あいつが悪いんだ!」

「悪魔を差し出せば、きっと主は喜ぶんじゃないか?」

「近衛が、あいつが悪魔だ!」

 そう言った瞬間に刀を取り、抜き放ちざまに一閃する。目を見開いた顔のまま茂勝の首が飛ぶ。

「そこまで聞ければ十分。これ以上汚い息を吐くな」

「殿。素晴らしい太刀筋でございました」

「ふん。信繁、近衛家の門前にこの首を晒せ。前田の子弟もだ」

「・・・・・・茂勝殿にお子はございません。正勝という弟と、その子に正信という子がいるのみでございます」

 ・・・・・・何処までやるか、だが。

「正勝だけでよい。腹を切らせよ。また、その家督は全て子に譲ることも許す。もちろん茂勝の前田家自体は改易だ」

「ははっ!」

 三成が帰ってくる前に決めればあとで文句を言われそうだが、まぁ、それも仕方ない。とにかく、今回はもう疲れた。父上の一期一振の血糊を拭い、侍従に渡す。

 だが、震える手を見て、初めて自らの手で人を殺したことを実感させられる。こんなにも簡単に・・・・・・。

 今までに俺の指示で死んだ人間は既に万を軽く超える。だというのに、たった一人を殺しただけで震えているわけにはいかない。

「ふうぅ」

「お疲れ、でございますな?」

 恐らく信繁には俺の葛藤が分かっているのだろうが、敢えてそこには目を瞑ってそう言ってくれる。それに心の中で感謝しながら、気遣いに乗ることにする。

「仕方ないだろう? 朝鮮から帰ってすぐにこれだ。おまけに数少ない頼りになる将が次々と死んでいく。信繁、お前は俺の後にしろよ」

「幾ら殿の命でもそれは・・・・・・。某、殿より30近く上でございますぞ?」

「冗談だよ」

 そう、三成も清正も信繁も皆俺よりずっと上の世代だ。果たして、何時まで彼等に頼って良いのか・・・・・・。

「殿、疲れを取るために湯治に行かれるのはいかがでしょう?」

「・・・・・・なに!?」

「ですから、湯治に」

 信繁が不思議そうに言い直す。しかし、そういうことじゃない。

「・・・・・・桜!」

「はっ!」

「側室全員連れて温泉に行くぞ!」

 ピンと勃起した股間を見て桜が嫌そうな顔をする。
 なに、温泉に着けばヒンヒン言わせてやるさ。

 いざ、湯煙旅情編ってことでw


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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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