関白の息子!

アイム

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時代を越える

勇退2/2(エロ度☆☆☆☆☆)

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「まず、女真族との交渉はどうなっている?」

 担当しているという清正に向かって質問してみる。

「はい、ヌルハチという男が台頭してきており、我々がかつて交戦した部族とは敵対関係であったため、試みに交渉を持ちかけております」
「明とも関係を持っていると聞いたが?」
「確かに。ヌルハチは明から竜虎将軍の地位を与えられております。しかし、明からは搾取されるのみで、こちらの贈り物に大きく関心を示しておりました」
「フム。あくまで従属を求めるのではなく、同盟相手として扱え。俺達が朝鮮に兵を送れば、明もまた兵を送ってくる。その時こそ明の長年の支配から脱却する好機だと言ってやれ。陸路から明を攻めよとな」

 知らないふりをしてはいるが、ヌルハチこそ明を打ち倒し、中国最後の王朝・清を建国する人物だ。
 遊牧民族である女真族の機動力の前に、財政破綻した明は腐敗した政治と各地の反乱が重なり敗北する。

 彼と組めば明を倒すのに半分の労力で済むだろう。
 もちろん時代が進めば、何処かで女真との戦いになるかもしれないけれど。

 そして、シルクロードを伝い欧州の知恵を仕入れれば、きっと欧州列強にも負けない国を作れる。

「しかし、朝鮮から先、また明と戦うに航海をしなければなりません」
「そうだな。陸路は女真族、俺らは海路で南から攻める」
「どちらにしても朝鮮を占拠し安定させてからですから、七年後といったところでしょうな・・・・・・」

 七年。まぁ、そんなもんか。

「殿、本日をもって某の任を解いていただきたく」

 如水が軍議中だと言うのに、いきなり関係のない話を始める。

「またその話か。駄目だって言ってるだろう?」
「・・・・・・重用していただけるのは有り難いのですが、某も何時迎えが来るとも限りません。いえ、正直なところ、もう長くないでしょう」
「駄目だ」
「殿・・・・・・」
「お前がいないと俺は不安なんだ! 如水は俺の父だ。最後までいてもらう!」

 ただの子供の我儘だ。
 そう言われようとかまわない。

 しかし、同時に分かっている。
 その時は来年・・・・・・。
 もう、如水に時間は残されていない。

「殿、此処には日の本を代表する大名達が集まっております。どうかそのような事を申されますな」
「しかし、まだまだ如水に教えてもらいたいことが多いのだ!」
「いいえ、十分にございましょう。私の後は、まだまだ未熟ではございますが息子達がお支えします。今すぐに出来なくても、必ずや将来私以上の者となるものばかりです。殿、安心して心を寄せられませ」

 そう言って如水は隠居の願いをしたためた書状を差し出してくる。
 それを持つ手は震え、良く見れば古傷のせいもあるのだろう、立っているだけで辛そうだ。

「如水。来年も花見をするぞ」
「ははっ! そのくらいは某も生きて見せましょう」

 書状を受け取り、認めの印を押す。
 当代最高の軍師はこれで再び隠居の身となった。
 そして、翌年四月に没することになる。




 ヌルハチへの調略は引き続き清正に任せ、補助に長政も付くこととなった。
 兄弟のように育った二人であれば仲も問題ない。

 ヌルハチを口説き落とせるかどうかは今後の戦略に大きく影響する。
 何としてでも落とせと命じ、そうそうに軍議は終わらせた。

「お駒、酒」

 夜になり、お駒を呼び寄せる。
 何時もなら直ぐにでも脱がしにかかるけれど、今日は違う。

「殿、お酒はあまり小さい頃から呑む物ではありません」
「いいから、酒」

 如水という大きな支えは、俺にとって絶対に必要な物だった。
 何度も隠居生活を迎えたいとは言われていたが、それでも認めなかったのは、やはり父と心底慕い頼っていたからなのだろう。

 駒姫が持って来たのはかなり水で薄めた酒で、飲み易い様に甘い果汁を垂らしてあった。
 サワーの様なものである。
 普段ならそれも良いのだろうが、今日は酔いたかったので余計な真似としか思えない。

「なんだこれは?」
「黒田殿より、呑みたいと申されたらこのようにお出ししろと言われました」

 ・・・・・・此処まで読むか。
 ということは今回だけは認めると分かっていたということだ。
 つまり、自分の死期を・・・・・・。
 もしかしたら俺が未来を知っていることも・・・・・・。

「とんだ化け物だった」
「出来たお方です」
「お駒、如水が退屈せぬように何か贈り物をしたいんだ。何が良いと思う?」
「秀頼様、それは秀頼様が考える事ですわ」
「・・・・・・そうだな。本当にそうだ」
「本当に黒田殿のことが大好きだったんですね」
「如水がいないと思うと不安でたまらないよ。お駒、俺、勝てるのかなぁ? 父上ですら勝てなかったのに」

 戦に勝てないことを考えると、途端に震えがくる。
 負ければ家康と同じ島流し?
 違う負ければ殺されるんだ。

「いっそ戦などやめてしまえばよろしいのでは?」

 駒姫が俺を抱きしめながらそう言ってくれる。

「・・・・・・駄目だ。もう、賽は投げた。この俺が」

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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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