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江戸城陥落
決着(エロ度☆☆☆☆☆)
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「敵兵の数は?」
「6千余り。流石は家康殿ですな。先鋒は本多忠勝殿、まごうこと無き東国一の豪勇でございます」
江戸城の秀忠などにはその気配を悟らせずに家康と決着を着けるため、軍は一切動かさずに俺と如水、忠興、信繁だけで移動し、待機させていた部隊に合流したのが昨晩遅く。
3方向から迫った徳川軍はあちこちで如水の配した伏兵にあい、道を急ぐがために碌な抵抗もせずにただ突破だけしてきた。
そのために向こうは一方的に数を減らすこととなったが、それでも6千がこの決戦の地に抜けてきたのだ。
こちらは1万を超える兵力とは言え、多くが長い船旅で疲れ切った四国・九州兵。
この決戦の場に将も含めて集わせたのは、細川忠興・2千(他軍から兵を借り受けている状態)、加藤嘉明・2千、島津義弘・2千、立花宗茂・千、長曾我部盛親・千、鍋島直茂・千、小早川秀秋・千、小西行長・千、それに俺と如水のいるここに5百。
鶴翼の陣にて敵総大将徳川家康を討つ。
徳川軍を削る伏兵にかなり使ってしまったので、此処にいるのはたったのこれだけ。
決着を急いだにしても随分とギリギリの決着にしようとしたものだ。
いや、そもそも・・・・・・。
「なぜ、完全に潰さなかった?」
「総大将は殿でございます」
旧世代との決着を俺自身の手で付けろということだろう。
スゥーッと深呼吸する。
此処まで、俺の指示で何万人という人間が死んだ。
如水はこれをこそ味あわせたかったのだろう。
「全軍、前進」
中天に上った太陽の下、両軍は同時に動き出す。
伝令が慌ただしく戦況を告げる。
「小西行長殿より救援要請でございます!」
「島津義弘殿、敵第1陣を突破!」
「敵方、本多忠勝、味方第2陣を中ほどまで突破!」
本多忠勝が、忠興と行長が守る中央を一点突破で破ってくる。
左翼より家康本陣に向け突貫させた義弘は、敵の堅い守りに阻まれ当初の勢いはない。
「右翼の加藤、鍋島両隊を中央に向かわせい! ええい、敵の守りはまだ敗れぬのか!」
如水が珍しく焦っている。
それほどに本多忠勝の攻めが激しい。
「い、依然激しい抵抗が!」
「・・・・・・左翼後詰めの立花にも突貫させよ」
如水の指示ではなく、俺の指示。
守りを固めるのではない。
攻め勝つのだ。
「指示を出せ!」
「は、ははぁっ!」
伝令が走る。
それを見た如水が俺を見やる。
「殿、後方に退きましょう」
「いや、俺達が行くべきは右前方だ」
ここで絶対に終わらせる。
此処にだって5百の兵はいるのだ。
いざとなれば・・・・・・。
「真田殿より連絡が、合図を待つ、と」
「如水!」
「まだです。立花殿が交戦し、敵の守りがもう少し前方に寄るまでお待ちください」
しかし、父上に古今独歩の勇士と謳われた男は伊達ではない。
忠興の2千・行長の千を抜けきり、本陣に迫る。
そして、そこが既にもぬけの殻と知れば、改めて俺達に目標を定めて迫ってくる。
「如水、合図を!」
「まだ早うございます!」
「いいや、信繁はやる!」
この時点での真田信繁の武名など何もない。
最初はこの遊撃隊に信繁を当てることを如水に反対されたくらいだ。
しかし、信繁はあの真田幸村だ。
正史では家康に届かなかった刃も今なら!
「合図を!」
「ははっ!」
如水の指示でホラ貝が鳴らされる。
これで信繁が家康の後方を突くはずだ。
後は俺達が殺されないことだけ。
「鍋島殿を本隊の直衛に! 細川・小西・加藤は今すぐにあの化け物を止めい!」
如水が興奮した声で指示を出す。
それほどまでに常識外れの突破力。
こちらの歴戦の勇将たちが霞むほどの豪傑ぶり。
「如水、策は!?」
「あれには通じません。今のあれには近寄ってはなりません!」
遠目でもハッキリと分かる。
あの男は無傷だ。
鎧に傷も付けずに4千近くの兵を先頭になって突破してきたのだ。
銃も矢も本多忠勝を避けて通る。
57度の戦で傷一つなかった男。
あれは戦場で武神に加護され、武器の方から逃げ出すのだ。
「馬だ、馬を狙え!」
本多忠勝も正史ではその乗馬三国黒を、関ケ原で射殺されている。
武神の加護も馬にまでは及ばない。
俺の指示で本隊の銃の名手が三国黒を狙う。
パァーンという乾いた音とともに本多忠勝の巨馬が沈み込む。
「撃て、て―!」
今なら銃も当たるはず。
そう信じて撃たせた銃は、しかし、三国黒を持ち上げ盾にした忠勝に防がれてしまう。
「な!? そんなの有りか!?」
「有り得ませぬ。あのような巨馬を人間が持ち上げるなど!」
理解不能でもその化け物は確実に近づいてくる。
既に万策尽きている俺達は、兎に角先に家康にこちらの槍が届くのを信じて逃げるしかない。
「・・・・・・いや、如水。味方の陣に切り込むぞ!」
「しかし、中も乱戦となっています!」
「あの化け物から姿をくらませるにはそれしかない!」
此処で退却すれば、それこそ戦をひっくり返されかねない。
総大将の撤退とはそれほどに重い。
「分かりました。では、参りましょう!」
本多忠勝の対処のために後方に下がった右翼を素通りし、忠勝の軍と未だ乱戦中の中央軍に押し入る。
これで忠勝からはこちらが見えない。
しかし、同時にこちらからも忠勝が見えない。
「如水、どのくらいもてばいい?」
「あと四半刻は必要かと!」
幾ら周りはだいたい味方といえど、乱戦の中を三十分!?
それも、あのターミネーターに追われているって言うのにか!?
「あの化け物は次にどっちからくる!?」
「恐らくは、我々が元いた本陣の方からかとっ!?」
如水の予言は当り、元本陣の方から化け物が迫ってくる。
もはやその過酷な攻めについて来れているものは50騎足らず。
それでも今でも4000人近くが戦う乱戦場に躊躇なく突貫してくる。
あいつは必ずここまで来る。
そう、実感してしまう。
「無理、か?」
「・・・・・・いえ、間に合ったようにございます」
ブォォォオオオォ~
えい、えい、おー!!
大きなホラ貝の音とともに勝鬨の声が聞こえる。
慶長5年3月。
関ケ原に代わり、関東全土を戦場にした天下分け目の大戦は本物の徳川家康の捕縛によって幕を閉じた。
「6千余り。流石は家康殿ですな。先鋒は本多忠勝殿、まごうこと無き東国一の豪勇でございます」
江戸城の秀忠などにはその気配を悟らせずに家康と決着を着けるため、軍は一切動かさずに俺と如水、忠興、信繁だけで移動し、待機させていた部隊に合流したのが昨晩遅く。
3方向から迫った徳川軍はあちこちで如水の配した伏兵にあい、道を急ぐがために碌な抵抗もせずにただ突破だけしてきた。
そのために向こうは一方的に数を減らすこととなったが、それでも6千がこの決戦の地に抜けてきたのだ。
こちらは1万を超える兵力とは言え、多くが長い船旅で疲れ切った四国・九州兵。
この決戦の場に将も含めて集わせたのは、細川忠興・2千(他軍から兵を借り受けている状態)、加藤嘉明・2千、島津義弘・2千、立花宗茂・千、長曾我部盛親・千、鍋島直茂・千、小早川秀秋・千、小西行長・千、それに俺と如水のいるここに5百。
鶴翼の陣にて敵総大将徳川家康を討つ。
徳川軍を削る伏兵にかなり使ってしまったので、此処にいるのはたったのこれだけ。
決着を急いだにしても随分とギリギリの決着にしようとしたものだ。
いや、そもそも・・・・・・。
「なぜ、完全に潰さなかった?」
「総大将は殿でございます」
旧世代との決着を俺自身の手で付けろということだろう。
スゥーッと深呼吸する。
此処まで、俺の指示で何万人という人間が死んだ。
如水はこれをこそ味あわせたかったのだろう。
「全軍、前進」
中天に上った太陽の下、両軍は同時に動き出す。
伝令が慌ただしく戦況を告げる。
「小西行長殿より救援要請でございます!」
「島津義弘殿、敵第1陣を突破!」
「敵方、本多忠勝、味方第2陣を中ほどまで突破!」
本多忠勝が、忠興と行長が守る中央を一点突破で破ってくる。
左翼より家康本陣に向け突貫させた義弘は、敵の堅い守りに阻まれ当初の勢いはない。
「右翼の加藤、鍋島両隊を中央に向かわせい! ええい、敵の守りはまだ敗れぬのか!」
如水が珍しく焦っている。
それほどに本多忠勝の攻めが激しい。
「い、依然激しい抵抗が!」
「・・・・・・左翼後詰めの立花にも突貫させよ」
如水の指示ではなく、俺の指示。
守りを固めるのではない。
攻め勝つのだ。
「指示を出せ!」
「は、ははぁっ!」
伝令が走る。
それを見た如水が俺を見やる。
「殿、後方に退きましょう」
「いや、俺達が行くべきは右前方だ」
ここで絶対に終わらせる。
此処にだって5百の兵はいるのだ。
いざとなれば・・・・・・。
「真田殿より連絡が、合図を待つ、と」
「如水!」
「まだです。立花殿が交戦し、敵の守りがもう少し前方に寄るまでお待ちください」
しかし、父上に古今独歩の勇士と謳われた男は伊達ではない。
忠興の2千・行長の千を抜けきり、本陣に迫る。
そして、そこが既にもぬけの殻と知れば、改めて俺達に目標を定めて迫ってくる。
「如水、合図を!」
「まだ早うございます!」
「いいや、信繁はやる!」
この時点での真田信繁の武名など何もない。
最初はこの遊撃隊に信繁を当てることを如水に反対されたくらいだ。
しかし、信繁はあの真田幸村だ。
正史では家康に届かなかった刃も今なら!
「合図を!」
「ははっ!」
如水の指示でホラ貝が鳴らされる。
これで信繁が家康の後方を突くはずだ。
後は俺達が殺されないことだけ。
「鍋島殿を本隊の直衛に! 細川・小西・加藤は今すぐにあの化け物を止めい!」
如水が興奮した声で指示を出す。
それほどまでに常識外れの突破力。
こちらの歴戦の勇将たちが霞むほどの豪傑ぶり。
「如水、策は!?」
「あれには通じません。今のあれには近寄ってはなりません!」
遠目でもハッキリと分かる。
あの男は無傷だ。
鎧に傷も付けずに4千近くの兵を先頭になって突破してきたのだ。
銃も矢も本多忠勝を避けて通る。
57度の戦で傷一つなかった男。
あれは戦場で武神に加護され、武器の方から逃げ出すのだ。
「馬だ、馬を狙え!」
本多忠勝も正史ではその乗馬三国黒を、関ケ原で射殺されている。
武神の加護も馬にまでは及ばない。
俺の指示で本隊の銃の名手が三国黒を狙う。
パァーンという乾いた音とともに本多忠勝の巨馬が沈み込む。
「撃て、て―!」
今なら銃も当たるはず。
そう信じて撃たせた銃は、しかし、三国黒を持ち上げ盾にした忠勝に防がれてしまう。
「な!? そんなの有りか!?」
「有り得ませぬ。あのような巨馬を人間が持ち上げるなど!」
理解不能でもその化け物は確実に近づいてくる。
既に万策尽きている俺達は、兎に角先に家康にこちらの槍が届くのを信じて逃げるしかない。
「・・・・・・いや、如水。味方の陣に切り込むぞ!」
「しかし、中も乱戦となっています!」
「あの化け物から姿をくらませるにはそれしかない!」
此処で退却すれば、それこそ戦をひっくり返されかねない。
総大将の撤退とはそれほどに重い。
「分かりました。では、参りましょう!」
本多忠勝の対処のために後方に下がった右翼を素通りし、忠勝の軍と未だ乱戦中の中央軍に押し入る。
これで忠勝からはこちらが見えない。
しかし、同時にこちらからも忠勝が見えない。
「如水、どのくらいもてばいい?」
「あと四半刻は必要かと!」
幾ら周りはだいたい味方といえど、乱戦の中を三十分!?
それも、あのターミネーターに追われているって言うのにか!?
「あの化け物は次にどっちからくる!?」
「恐らくは、我々が元いた本陣の方からかとっ!?」
如水の予言は当り、元本陣の方から化け物が迫ってくる。
もはやその過酷な攻めについて来れているものは50騎足らず。
それでも今でも4000人近くが戦う乱戦場に躊躇なく突貫してくる。
あいつは必ずここまで来る。
そう、実感してしまう。
「無理、か?」
「・・・・・・いえ、間に合ったようにございます」
ブォォォオオオォ~
えい、えい、おー!!
大きなホラ貝の音とともに勝鬨の声が聞こえる。
慶長5年3月。
関ケ原に代わり、関東全土を戦場にした天下分け目の大戦は本物の徳川家康の捕縛によって幕を閉じた。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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