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初陣
大阪出陣(エロ度☆☆☆☆☆)
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「絶対に認めません!」
「で、ですが、母上。俺は総大将なのです」
案の定というべきか、出陣に向けて意気揚々と歩いていれば母上が反対してきた。
それどころか今は母上の居室に拉致監禁状態。
敵と戦う以前の問題で、取り付く島もない状態である。
「総大将ならばわざわざ戦いに出る必要はありません。黒田殿や毛利殿に任せておきなさい!」
「えぇ!? ダメですよ。そんな事では全体の士気に関わります。士気が下がれば誰が寝返るか分かりません。負ければ豊臣が崩壊します」
俺の言葉にビクリと母上が体を震わせる。
二度も家の崩壊を経験した母上はその意味を誰よりも知っている。
正史では関ケ原で豊臣は滅ばないが、それは東西両軍とも豊臣の名の下に戦ったからだ。
今回は豊臣が前面に出て徳川と戦うので正史の通りとはいかない。
「母上。俺は母上のためにも戦うんです」
「で、でも、秀頼はまだ幼いのですよ」
「幼かろうと小さかろうと俺は男です。座して死を待ちたくありません。母上、必ず戻ってきます。だから、許してください」
キュッと母上を抱きしめる。
柔らかい感触に少し興奮してしまうが、今回はそれは無しだ。
今日は母と息子として。
「待っていてください、母上」
未だ泣き続ける母上が泣き止むまで抱きしめてやった。
そして、母上を大阪城に残し、山陽道より関東を目指したのが昨日の事。
「如水、どのくらいかかるんだ?」
最近ずっと騎乗の訓練をしていたので、俺も一人で騎馬に乗っている。
もっとも、逆に如水は騎馬ではなく、輿に乗っているが。
これも足が不自由なので仕方ないのだ。
「そうですな。まぁ、この速度なら一週間と言ったところでしょう。逆にそれまでに上田に着かないようなら糧食を節約した影響で我々が飢えます」
「・・・・・・恐ろしいことをサラッと言うな」
「おや、申しておりませんでしたか? 行軍を早めるために輜重も先に上田に運んでおるのです。従って我々は最低限の荷物で進め、軍の侵攻速度を速めることが出来るということ。もっともこの軍の目的はかく乱ですから、上田に着いた後も直ぐに出撃となるでしょうが」
分かってはいたがまったくもって休まらないな。
おまけにこの隊には忠興もいれば如水もいる。
桜も側にいてくれるとは言え、油断は出来ない。
・・・・・・この間虐めすぎたせいで少し不機嫌だし。
「如水、忠興。上田に着いたら先ずは何処を攻める?」
「・・・・・・秀頼様。忍城に攻め入ると軍議で決めたではございませんか」
少し憮然とした態度で忠興が言ってくる。
おそらく忠興は出陣前の軍議で決めた目標のことを言っているのだろう。
それを言うなら、俺も忠興も後詰めと言う話だった。
だというのに、蓋を開ければ一番先行している。
それもこれも・・・・・・。
「ん? それは表向きだろ? 誰が通じているかもしれないのに、如水がそのまま本心を言うと思えないし。そもそも忍城を攻めるのにわざわざ別働隊などいらんだろう?」
「・・・・・・黒田殿?」
「クッ、フフ。仰る通りです。小田原に裏から抜けようと考えております」
さもおかしそうに如水がそのやり取りを見ている。
8歳の子供に看破されたことに驚いているのだろうか?
「小田原、か。確か大久保とかいうのが守っているのだったな?」
「はっ! 然るに殿、城の落とし方はご存知で?」
「ん? 兵糧攻めか無理に兵で攻めとるかだと思うけど」
「どちらもこの兵力では不可能でございますな」
そう、この部隊は5つの侵攻軍の中で最も少ない1万の兵力しかない。
おまけにほとんどが騎兵で編成されるという異質さ。
逆に言えば城攻めに向かないともいえる。
「では、中に内通者がいて一気に攻め入れるとか?」
「いいえ。その隙がございません。そこは流石は徳川殿と言ったところでしょうな」
「むぅ、素通りできないの?」
その言葉に忠興が呆れた顔をするが、如水は違う。
城を素通りできない理由は軍と言うのが、多方面からの挟撃にどうしても弱いからだ。
たとえそれが片方が少数だったとしても。
攻めて来ない牽制だとしてもだ。
それだけではない。
ほったらかしでは補給線を立たれる可能性がある。
もっとも、今回の様に5ルートから進んでいる場合、1つの補給線を絶たれたからと問題があるわけではないが・・・・・・。
「素通りすれば背後を突かれる。当然でございますな。では我々は更にその背後を討てば良い。敵が出たところでもぬけの殻の城を攻めても良い。さてさてどうしましょうかな」
「・・・・・・如水。もしかして一度俺達の部隊が現れたことを敵に知らせ、その後は姿を隠してしまえば、敵は城を素通りしても俺達が気になって背を討てないのではないか?」
背を討たれるかもと思って城を素通りできないなら、逆に伏兵を心配して城を空けられないと言う事なんじゃないだろうか?
「ほう、良く気付きましたな。たった今小田原を攻めるとは申しましたが、我らは存在だけを示し姿を見せぬことで関東中の城にとって脅威となりましょう。さすればこの1万が5万にも10万にも劣らぬ働きをすることでしょう」
「正則には伝えてあるのか?」
「はっ! 小田原を数日だけ包囲した後、一気に江戸城に攻め入る様に伝えてあります。途上の各城の備えに当たる将と兵数も指示してございますれば、一月もすれば江戸に達しましょう」
俺達の兵数が抑えられていることもあり、正則に任せた本隊は全進路で最大の9万近くになる。
その一隊で徳川軍と戦えるほどの戦力だ。
「如水、本当に野戦にならないのか?」
「・・・・・・いいえ。徳川本隊との野戦は何処かで発生することでしょう。守っているだけでは絶対に勝てませんからな。江戸を包囲された時点でどうあっても勝ちようがないのなら、討って出る。東海一の弓取りは健在でございましょう」
・・・・・・お前が軍議で色々と言ったことは何だったんだ?
隣の忠興も口をパクパクと開いて間抜け顔をしている。
うちの軍師様は平気で味方も主も騙してくるのだから気が抜けない。
「では、どうやって敵本隊の位置を掴む?」
「そうですな。それ次第で殿の忍びと某の忍び、どちらが優秀かが分かりますな」
「・・・・・・桜」
「ははっ!」
シュッと現れた桜に、ある意味で始めて本気で命令する。
「負けるなよ」
「必ずや!」
知恵で勝てないのに情報でまで負けたくはない。
だが、徳川にも強力な忍びが付いている。
場外では忍術合戦が行われるのかもしれないな。
大軍に策なし。
それは如水が指揮する軍には当てはまらない。
「で、ですが、母上。俺は総大将なのです」
案の定というべきか、出陣に向けて意気揚々と歩いていれば母上が反対してきた。
それどころか今は母上の居室に拉致監禁状態。
敵と戦う以前の問題で、取り付く島もない状態である。
「総大将ならばわざわざ戦いに出る必要はありません。黒田殿や毛利殿に任せておきなさい!」
「えぇ!? ダメですよ。そんな事では全体の士気に関わります。士気が下がれば誰が寝返るか分かりません。負ければ豊臣が崩壊します」
俺の言葉にビクリと母上が体を震わせる。
二度も家の崩壊を経験した母上はその意味を誰よりも知っている。
正史では関ケ原で豊臣は滅ばないが、それは東西両軍とも豊臣の名の下に戦ったからだ。
今回は豊臣が前面に出て徳川と戦うので正史の通りとはいかない。
「母上。俺は母上のためにも戦うんです」
「で、でも、秀頼はまだ幼いのですよ」
「幼かろうと小さかろうと俺は男です。座して死を待ちたくありません。母上、必ず戻ってきます。だから、許してください」
キュッと母上を抱きしめる。
柔らかい感触に少し興奮してしまうが、今回はそれは無しだ。
今日は母と息子として。
「待っていてください、母上」
未だ泣き続ける母上が泣き止むまで抱きしめてやった。
そして、母上を大阪城に残し、山陽道より関東を目指したのが昨日の事。
「如水、どのくらいかかるんだ?」
最近ずっと騎乗の訓練をしていたので、俺も一人で騎馬に乗っている。
もっとも、逆に如水は騎馬ではなく、輿に乗っているが。
これも足が不自由なので仕方ないのだ。
「そうですな。まぁ、この速度なら一週間と言ったところでしょう。逆にそれまでに上田に着かないようなら糧食を節約した影響で我々が飢えます」
「・・・・・・恐ろしいことをサラッと言うな」
「おや、申しておりませんでしたか? 行軍を早めるために輜重も先に上田に運んでおるのです。従って我々は最低限の荷物で進め、軍の侵攻速度を速めることが出来るということ。もっともこの軍の目的はかく乱ですから、上田に着いた後も直ぐに出撃となるでしょうが」
分かってはいたがまったくもって休まらないな。
おまけにこの隊には忠興もいれば如水もいる。
桜も側にいてくれるとは言え、油断は出来ない。
・・・・・・この間虐めすぎたせいで少し不機嫌だし。
「如水、忠興。上田に着いたら先ずは何処を攻める?」
「・・・・・・秀頼様。忍城に攻め入ると軍議で決めたではございませんか」
少し憮然とした態度で忠興が言ってくる。
おそらく忠興は出陣前の軍議で決めた目標のことを言っているのだろう。
それを言うなら、俺も忠興も後詰めと言う話だった。
だというのに、蓋を開ければ一番先行している。
それもこれも・・・・・・。
「ん? それは表向きだろ? 誰が通じているかもしれないのに、如水がそのまま本心を言うと思えないし。そもそも忍城を攻めるのにわざわざ別働隊などいらんだろう?」
「・・・・・・黒田殿?」
「クッ、フフ。仰る通りです。小田原に裏から抜けようと考えております」
さもおかしそうに如水がそのやり取りを見ている。
8歳の子供に看破されたことに驚いているのだろうか?
「小田原、か。確か大久保とかいうのが守っているのだったな?」
「はっ! 然るに殿、城の落とし方はご存知で?」
「ん? 兵糧攻めか無理に兵で攻めとるかだと思うけど」
「どちらもこの兵力では不可能でございますな」
そう、この部隊は5つの侵攻軍の中で最も少ない1万の兵力しかない。
おまけにほとんどが騎兵で編成されるという異質さ。
逆に言えば城攻めに向かないともいえる。
「では、中に内通者がいて一気に攻め入れるとか?」
「いいえ。その隙がございません。そこは流石は徳川殿と言ったところでしょうな」
「むぅ、素通りできないの?」
その言葉に忠興が呆れた顔をするが、如水は違う。
城を素通りできない理由は軍と言うのが、多方面からの挟撃にどうしても弱いからだ。
たとえそれが片方が少数だったとしても。
攻めて来ない牽制だとしてもだ。
それだけではない。
ほったらかしでは補給線を立たれる可能性がある。
もっとも、今回の様に5ルートから進んでいる場合、1つの補給線を絶たれたからと問題があるわけではないが・・・・・・。
「素通りすれば背後を突かれる。当然でございますな。では我々は更にその背後を討てば良い。敵が出たところでもぬけの殻の城を攻めても良い。さてさてどうしましょうかな」
「・・・・・・如水。もしかして一度俺達の部隊が現れたことを敵に知らせ、その後は姿を隠してしまえば、敵は城を素通りしても俺達が気になって背を討てないのではないか?」
背を討たれるかもと思って城を素通りできないなら、逆に伏兵を心配して城を空けられないと言う事なんじゃないだろうか?
「ほう、良く気付きましたな。たった今小田原を攻めるとは申しましたが、我らは存在だけを示し姿を見せぬことで関東中の城にとって脅威となりましょう。さすればこの1万が5万にも10万にも劣らぬ働きをすることでしょう」
「正則には伝えてあるのか?」
「はっ! 小田原を数日だけ包囲した後、一気に江戸城に攻め入る様に伝えてあります。途上の各城の備えに当たる将と兵数も指示してございますれば、一月もすれば江戸に達しましょう」
俺達の兵数が抑えられていることもあり、正則に任せた本隊は全進路で最大の9万近くになる。
その一隊で徳川軍と戦えるほどの戦力だ。
「如水、本当に野戦にならないのか?」
「・・・・・・いいえ。徳川本隊との野戦は何処かで発生することでしょう。守っているだけでは絶対に勝てませんからな。江戸を包囲された時点でどうあっても勝ちようがないのなら、討って出る。東海一の弓取りは健在でございましょう」
・・・・・・お前が軍議で色々と言ったことは何だったんだ?
隣の忠興も口をパクパクと開いて間抜け顔をしている。
うちの軍師様は平気で味方も主も騙してくるのだから気が抜けない。
「では、どうやって敵本隊の位置を掴む?」
「そうですな。それ次第で殿の忍びと某の忍び、どちらが優秀かが分かりますな」
「・・・・・・桜」
「ははっ!」
シュッと現れた桜に、ある意味で始めて本気で命令する。
「負けるなよ」
「必ずや!」
知恵で勝てないのに情報でまで負けたくはない。
だが、徳川にも強力な忍びが付いている。
場外では忍術合戦が行われるのかもしれないな。
大軍に策なし。
それは如水が指揮する軍には当てはまらない。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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