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天下人
文禄の役の決着(エロ度☆☆☆☆☆)
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目を覚まし、先ずは如水だけを呼び出す。
清正達や三成達の聴取は後回しだ。
「如水、今直ぐに家康を攻めて勝てるか?」
「・・・・・・ふむ。勝つのは容易いかと。しかし、殿自らが惣無事令を破ることの問題。また、それほどの大義があるかという問題。これらに反発を覚える者も多いのではないでしょうか?」
「で、あれば家康の出頭を命じ、それに応じない時に攻める」
「そうなれば徳川殿に戦の支度をする時間を与えるだけです。それに、殿に諸将の訴えを届けなかったのは前田殿も同罪。落としどころはどうするおつもりで?」
そう、清正達の不満を書き連ねた訴状は徳川家康と前田利家の両方に渡されていたのだ。
だから、それをもとに家康を責めるなら、利家も責める必要がある。
「・・・・・・利家は亡くなったのだ。利長がこちらの出頭に応じさえすれば不問とする。前田は勝手に邸宅を離れたなどということもないからな」
「ふむ。それでよろしいでしょう。では大義は?」
「それこそ俺が出頭を命じたのに対応せずに戦準備をしていれば、謀反の疑いありと大義を立てられるのではないか?」
「徳川殿が出頭に応じたらどうされます?」
「綺麗ごとを言うな如水。徳川は大幅に減封しなければならない。そのためには徳川に謀反を起こしてもらわなければいけない。それだけだ!」
「それでよろしいでしょう。ところで・・・・・・」
「ん? なんだ?」
「もしも、某が徳川殿と通じていたらどうされるので?」
ドキリとする。
如水の言ったことは危惧していた事ではある。
正史では繋がりが有り、長政も正妻と別れ、家康の養女を娶ったばかり。
そして、此処で家康が逃れられた事も不思議だ。
「・・・・・・如水。父上が天下を狙えるなら家康か、如水かと言った。だから俺はお前を側に置いたんだ。如水なら、家康の下ではなく、より自分を活かせる方法をとるだろうとな」
「ほう、某の野心をこそ信じる、と?」
「そうだ。それに如水。家康の天下では日の本から出られんぞ?」
「・・・・・・それを某が望むと?」
「どうだろうな。だが恐らくはそうだろう?」
「どうでしょうな」
ニヤリと笑う如水にぞくりと背筋が冷える。
しかし、怖くても俺も笑ってみせる。
「如水、これからも頼む」
「ははっ!」
聚楽第の謁見の間には京や大阪に出向いている諸大名を呼び寄せている。
今この場にいるはずなのにいないのは徳川家康のみ。
「先ずは清正。お前から今回の経緯を説明してくれ」
「ははっ! 今回の一件は朝鮮での奉行衆の事実無根の報告により、我々の功が不当に貶められた事への抗議でございます! まず、某がオランカイに攻め入った際、石田殿達奉行衆により漢城にて軍評定が開かれました。某は物理的に間に合わない場所であったにも関わらず、それを問題とされたのです。これは戦功をあげた某に対し、追い落とそうとする意志があったものと考えます。某がオランカイを攻めたのは明に侵攻するための進路を探るものでありましたのに」
思い出してまたムカついたのだろう。
怒り心頭と三成を睨みつける。
「フム。それに対し三成の反論はあるか?」
「某が考えまするに、異国の地においては特に緊急に際しての連携をとる必要があります。その意味で加藤殿の行動は無闇に我が軍全体を危機に陥れるものでございました」
それに対し、三成の態度は冷静そのもの。
しかし、もともと清正はそれを危惧して侵攻前に進言していたのに、それを合議の上でやらせたのだ。
正直、清正は強すぎて侵攻が早かったこと以外に責はない。
「・・・・・・で、他には?」
「ははっ! 次に漢城の防備についてでございます。そもそもが明軍の参戦により軍議が開かれたと言うのに、小西殿は明軍の参軍を無きものとし、平壌に戻りました。黒田殿の主張の通りに漢城の防備に当たっておれば、今頃漢城までは我が軍のものでございました。これは死んでいった多くの者にとっても無念であり、再び攻め入った時に新たな被害を出すこととなります。また漢城は朝鮮の首都。これを押さえておればいずれは朝鮮人を心服せしめたのです!」
次は行長、か・・・・・・。
まぁ、そもそもが不満の大きい間柄だからな。
「行長、反論は?」
「はっ! 某が得た情報では明軍は示威行動のみであると――」
「ふざけるな! 貴様のせいで漢城の防備が手薄となり龍山の食糧庫を焼かれたのだ! そのせいでどれほどの者が飢えたことか!」
「清正! 俺が許すまで発言するな!」
「ぐぅ。も、申し訳ございませぬ」
・・・・・・ふぅ、確かに根が深いな。
多くの将兵が死んでいるのだ。
しかも、その原因となった者が罰せられるどころか、功を奪って来たのだ。
「清正、他には?」
「ははっ! もっとも大きな罪は石田殿や小西殿が首謀した今は亡き秀吉公のお言葉を曲げての講話条件としたことでございます」
「その事は俺も知っている。だがな、戦線が膠着し、食糧のこともあり撤退したかったのは皆同じであろう?」
「・・・・・・それはそうでございますが」
「次の侵攻の際にはどのように朝鮮人やその後の明人を服従させるかを考える必要があるな。そう言った経験も活かし、征服の方法を考えるとしよう」
そう、次に生かさなければ、それこそ将兵の命が無駄になる。
「先ず、三成と行長、それと正則には自領での謹慎を申し付ける。これは先の2人は朝鮮での仕置きが決まるまでの措置だ。また、正則は俺に断りなく戦を起こした仕置きが決まるまでの措置だ」
「お、お待ちください!」
正則が声を上げる。
他にも部隊を動かした者がいるのに一人だけ問題視されたのが気に食わないのだろうか。
「正則。お前が惣無事令に反したのは紛れもない事実。悪いようにはせぬ、仕置きが決まるまで待っておれ」
「・・・・・・それは何時まででございますか?」
「はて? 此処にいるべき者とそれを協議しようと思ったのだが?」
そう、大名を処罰するのに六大老筆頭の徳川家康がいないのはおかしい。
此処は本来なら家康が俺に代わって執政をとる聚楽第なのだから。
「輝元、利長は加賀より向かっている最中とのことだが、家康はどうした?」
「は、ははぁ! それが何処にも姿が見えませぬ」
六大老の一人、毛利輝元に尋ねればそのように答える。
これで、条件は揃った。
「家康を連れて参れ。本来はこの聚楽第にいなければならぬのだから、午後までに現れぬようなら二心があるものとすると言明せよ。それまで、一先ずは休憩とする。皆、下がってよい!」
「「「ははぁ!」」」
家康は既に尾張を越え東海道に入っているとくノ一から報告が入っている。
結局伊賀越えはせずに早馬で逃げたのだ。
今から戻って来ても絶対に間に合わない。
とすれば謀反を疑われ、江戸で挙兵するしかないはず。
戦場は関ケ原よりもずっと東になるだろう。
その前に武断派の取り込みをしっかりしなければならない。
・・・・・・あの人に相談するしかない、か。
清正達や三成達の聴取は後回しだ。
「如水、今直ぐに家康を攻めて勝てるか?」
「・・・・・・ふむ。勝つのは容易いかと。しかし、殿自らが惣無事令を破ることの問題。また、それほどの大義があるかという問題。これらに反発を覚える者も多いのではないでしょうか?」
「で、あれば家康の出頭を命じ、それに応じない時に攻める」
「そうなれば徳川殿に戦の支度をする時間を与えるだけです。それに、殿に諸将の訴えを届けなかったのは前田殿も同罪。落としどころはどうするおつもりで?」
そう、清正達の不満を書き連ねた訴状は徳川家康と前田利家の両方に渡されていたのだ。
だから、それをもとに家康を責めるなら、利家も責める必要がある。
「・・・・・・利家は亡くなったのだ。利長がこちらの出頭に応じさえすれば不問とする。前田は勝手に邸宅を離れたなどということもないからな」
「ふむ。それでよろしいでしょう。では大義は?」
「それこそ俺が出頭を命じたのに対応せずに戦準備をしていれば、謀反の疑いありと大義を立てられるのではないか?」
「徳川殿が出頭に応じたらどうされます?」
「綺麗ごとを言うな如水。徳川は大幅に減封しなければならない。そのためには徳川に謀反を起こしてもらわなければいけない。それだけだ!」
「それでよろしいでしょう。ところで・・・・・・」
「ん? なんだ?」
「もしも、某が徳川殿と通じていたらどうされるので?」
ドキリとする。
如水の言ったことは危惧していた事ではある。
正史では繋がりが有り、長政も正妻と別れ、家康の養女を娶ったばかり。
そして、此処で家康が逃れられた事も不思議だ。
「・・・・・・如水。父上が天下を狙えるなら家康か、如水かと言った。だから俺はお前を側に置いたんだ。如水なら、家康の下ではなく、より自分を活かせる方法をとるだろうとな」
「ほう、某の野心をこそ信じる、と?」
「そうだ。それに如水。家康の天下では日の本から出られんぞ?」
「・・・・・・それを某が望むと?」
「どうだろうな。だが恐らくはそうだろう?」
「どうでしょうな」
ニヤリと笑う如水にぞくりと背筋が冷える。
しかし、怖くても俺も笑ってみせる。
「如水、これからも頼む」
「ははっ!」
聚楽第の謁見の間には京や大阪に出向いている諸大名を呼び寄せている。
今この場にいるはずなのにいないのは徳川家康のみ。
「先ずは清正。お前から今回の経緯を説明してくれ」
「ははっ! 今回の一件は朝鮮での奉行衆の事実無根の報告により、我々の功が不当に貶められた事への抗議でございます! まず、某がオランカイに攻め入った際、石田殿達奉行衆により漢城にて軍評定が開かれました。某は物理的に間に合わない場所であったにも関わらず、それを問題とされたのです。これは戦功をあげた某に対し、追い落とそうとする意志があったものと考えます。某がオランカイを攻めたのは明に侵攻するための進路を探るものでありましたのに」
思い出してまたムカついたのだろう。
怒り心頭と三成を睨みつける。
「フム。それに対し三成の反論はあるか?」
「某が考えまするに、異国の地においては特に緊急に際しての連携をとる必要があります。その意味で加藤殿の行動は無闇に我が軍全体を危機に陥れるものでございました」
それに対し、三成の態度は冷静そのもの。
しかし、もともと清正はそれを危惧して侵攻前に進言していたのに、それを合議の上でやらせたのだ。
正直、清正は強すぎて侵攻が早かったこと以外に責はない。
「・・・・・・で、他には?」
「ははっ! 次に漢城の防備についてでございます。そもそもが明軍の参戦により軍議が開かれたと言うのに、小西殿は明軍の参軍を無きものとし、平壌に戻りました。黒田殿の主張の通りに漢城の防備に当たっておれば、今頃漢城までは我が軍のものでございました。これは死んでいった多くの者にとっても無念であり、再び攻め入った時に新たな被害を出すこととなります。また漢城は朝鮮の首都。これを押さえておればいずれは朝鮮人を心服せしめたのです!」
次は行長、か・・・・・・。
まぁ、そもそもが不満の大きい間柄だからな。
「行長、反論は?」
「はっ! 某が得た情報では明軍は示威行動のみであると――」
「ふざけるな! 貴様のせいで漢城の防備が手薄となり龍山の食糧庫を焼かれたのだ! そのせいでどれほどの者が飢えたことか!」
「清正! 俺が許すまで発言するな!」
「ぐぅ。も、申し訳ございませぬ」
・・・・・・ふぅ、確かに根が深いな。
多くの将兵が死んでいるのだ。
しかも、その原因となった者が罰せられるどころか、功を奪って来たのだ。
「清正、他には?」
「ははっ! もっとも大きな罪は石田殿や小西殿が首謀した今は亡き秀吉公のお言葉を曲げての講話条件としたことでございます」
「その事は俺も知っている。だがな、戦線が膠着し、食糧のこともあり撤退したかったのは皆同じであろう?」
「・・・・・・それはそうでございますが」
「次の侵攻の際にはどのように朝鮮人やその後の明人を服従させるかを考える必要があるな。そう言った経験も活かし、征服の方法を考えるとしよう」
そう、次に生かさなければ、それこそ将兵の命が無駄になる。
「先ず、三成と行長、それと正則には自領での謹慎を申し付ける。これは先の2人は朝鮮での仕置きが決まるまでの措置だ。また、正則は俺に断りなく戦を起こした仕置きが決まるまでの措置だ」
「お、お待ちください!」
正則が声を上げる。
他にも部隊を動かした者がいるのに一人だけ問題視されたのが気に食わないのだろうか。
「正則。お前が惣無事令に反したのは紛れもない事実。悪いようにはせぬ、仕置きが決まるまで待っておれ」
「・・・・・・それは何時まででございますか?」
「はて? 此処にいるべき者とそれを協議しようと思ったのだが?」
そう、大名を処罰するのに六大老筆頭の徳川家康がいないのはおかしい。
此処は本来なら家康が俺に代わって執政をとる聚楽第なのだから。
「輝元、利長は加賀より向かっている最中とのことだが、家康はどうした?」
「は、ははぁ! それが何処にも姿が見えませぬ」
六大老の一人、毛利輝元に尋ねればそのように答える。
これで、条件は揃った。
「家康を連れて参れ。本来はこの聚楽第にいなければならぬのだから、午後までに現れぬようなら二心があるものとすると言明せよ。それまで、一先ずは休憩とする。皆、下がってよい!」
「「「ははぁ!」」」
家康は既に尾張を越え東海道に入っているとくノ一から報告が入っている。
結局伊賀越えはせずに早馬で逃げたのだ。
今から戻って来ても絶対に間に合わない。
とすれば謀反を疑われ、江戸で挙兵するしかないはず。
戦場は関ケ原よりもずっと東になるだろう。
その前に武断派の取り込みをしっかりしなければならない。
・・・・・・あの人に相談するしかない、か。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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