関白の息子!

アイム

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天下人

父上の死(エロ度☆☆☆☆☆)

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 父上の葬儀はさながら国葬の様だった。
 全国各地の大名が招集され、深い悲しみで日の本が塗りつぶされるように見えた。

 だが、此処には百戦錬磨の狸や、独眼の眠れる竜、表も裏も分からない六文爺、そして、真っ黒黒なキリシタンも来ている。
 他にも牙を隠し持った連中ばかりだ。
 言う言葉をそのままに受け取ったり、表情で判断するなどということではただの愚行としか言えない。

「それでは、太閤殿下の遺言を読み上げる!」

 一堂に会した面々の前で、三成が父上の遺言書を開く。
 その内容は以下の通り。

①後継は秀頼(俺)とし、諸将はこれを良く助ける事。
②秀頼の後見には豊臣秀次が務める事。
③秀頼は六大老とよく相談し、合議の上で自ら裁可を下す事。
 なお、六大老は徳川家康・豊臣秀次・前田利家・毛利輝元・上杉景勝・宇喜多秀家。
④朝廷との交渉については豊臣秀次に一任する。
⑤政務においては五奉行とよく相談し、秀頼の裁可にて決定を下す事。
 なお、五奉行とは司法担当 浅野長政(筆頭)、宗教担当 前田玄以(次席)、行政担当 石田三成、土木担当 増田長盛、財政担当 長束正家。
⑥秀頼は居城を聚楽第から大阪城へと移す事。

 大雑把ではあるが、概要はこうだ。

「「「「「ははぁっ!」」」」」

 その場にいる誰もが頭を下げる。
 それには俺も含まれており、今この時までは俺も父上の臣なのだ。

 だが、それもここまで。
 俺はスッと立ち上がり、上座に座る。

 これからは父上の臣ではない。
 俺が天下人として上に立たなければいけないのだ。

「豊臣の秀頼である! 皆、よろしく頼むぞ!」

「「「「「ははぁっ!」」」」」

 精一杯、だけど声が裏返らないように叫ぶ。
 なんとか威厳を持とうとしても、六歳の少年のことなど誰も怖がるわけもない。
 そうでなくてもここにいるのは数々の戦を生き抜いた猛者たちなのだから。

 だからこそ、今この手を打つのだ!

「早速だが、少し俺に相談がある。黒田如水を俺の相談役として大阪城に招きたいと思うがどうだ?」

 一瞬で周囲がざわつき出す。
 だが、俺には知恵者が必要なのだ。
 誰にも劣らない知恵を持つ者が。

「恐れながら申し上げます! 黒田殿の才覚は此処にいる誰もが知るところではあります。ですが、それは戦時において役に立つ種のもの。太平の世に必要なものとは異なりまする!」

 家康が早々に異議を申し立てる。

 あれは二カ月も前だったか、すっかり布団の中から出られなくなった父上と話したのだ。
 次代に天下を狙える者とは?

 それに対し父上は、「徳川家康と黒田如水よ、秀頼がこの2人を超えられるなら天下の方からお前に従うだろう」と、確かにそう仰ったのだ。

 家康は五大老筆頭。
 聚楽第で指揮を執るので放っておいても頻繁に会う。

 しかし、如水は豊後の大名。
 今は隠居して剃髪しているが、まだ47歳。
 この時代とはいえ、まだまだ活躍出来る。

「太平は漫然としているだけでは持続しない! 如水、父上にそうしたように俺の傍で次の天下を支えてくれぬか?」

 一同の視線が如水に集まる。
 だが、如水の方はどこ吹く風といったように平然と事の成り行きを見守っている。

 父上はこのやたら目つきの鋭い坊主のことを恐れていた。
 だけど、毒を以て毒を制す、だ!

「秀頼様! 御父上は重大事は六大老と合議の上で決めよと。然るに秀頼様の相談役といえば天下の相談役、重大事の中の重大事でございますぞ!?」

 なおも家康が食い下がる。
 如水の方もその議論が出てからでないと答えられないと考えているのだろう。

「確かにそうだ。だが、此処には六大老の全員がいる。1人ずつ意見を申してみよ。家康はもう聞いたので、秀次! お主はどうだ?」

「はっ! 秀頼様の良きように!」

 秀次叔父上には如水に対して思うところは無いのだろう。
 豊臣家の者にとって如水は本来頼るべき者であって、袖にするべき者ではないのだ。

「うむ。利家はどうだ?」

「ははぁ! 元より黒田殿は豊臣家にとって大変に功多き方。反対などしようもございませぬ」

 そう、如水はなんと言っても豊臣の天下の立役者なのだ。

「秀家は?」

「・・・・・・はっ! 黒田殿は既に隠居の身、それを無理に働かせるのは如何なものかと」

 ・・・・・・は? 何を言っている?
 関ケ原での如水の動きを知っている俺からすればそんなしおらしい奴じゃないと分かっている。

 だが、秀家の様な若い世代にはただの老人に見えるのだろうか。
 いずれにせよ反対ということだろう。

「分かった。次、輝元は?」

「はい。賛成でございます」

 輝元の場合は如水に九州からいなくなってほしいんじゃないだろうか?
 あれほどの将が近くにいるより、よほど中央に行ってくれた方が良い。

「ふむ。景勝はどうだ?」

「はっ! ・・・・・・何も今決める必要は無いかと」

 結論を先延ばしするような景勝の言葉。
 しかし、先延ばしする必要などない。

「いや、早い方が良かろう」

「・・・・・・では、反対でございます」

「ふむ。理由は?」

「黒田殿は枯れてなどおりませぬ!」

 そう来たか。
 一物抱えているから中央で用いるな、と。
 だが、そうでなければ意味がない。

「うむ。俺を含めて賛成四、反対三だ。俺の判断で黒田如水を相談役に任命する。良いな!」

「「「「「ははぁっ!」」」」」

 何かを言える雰囲気などではない。
 如水は何か言いたげだったが、諸将の前で決定したことを覆してくれるなよ?

「如水、良いな?」

「・・・・・・ははっ!」

 これからは歴史との比較はしない。
 俺が作っていくのだから!

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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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