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咲く花あれば散る花もあり
咲く花(エロ度☆☆☆☆☆)
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前々から父上が進めていた俺のための制度が今日発表される。
・・・・・・ってまぁ、もう知っているけど。
居並ぶ、いずれ劣らぬ名将の中で父上が発表する。
「儂が死んだ後も、太平の世を続けるために、幾つかの取り決めを考えた。皆にはこれからも更に豊臣家を盛り立て、我が子秀頼を支えて行ってもらいたい!」
「「「「「「「ははぁ!」」」」」」」
「そして、秀頼の実務を支えるために今日集まってもらった皆にはこの御掟五ヶ条と御掟追加九ヶ条に署名していただきたい」
五大老・・・・・・ん?
「徳川家康殿、豊臣秀次殿、前田利家殿、宇喜多秀家殿、上杉景勝殿、毛利輝元殿、小早川隆景殿、皆よろしいか?」
「「「「「「「ははぁ!」」」」」」」
7人もいる。
秀次が生きているから、か。
小早川隆景は、確か正史ではもうすぐ亡くなるから六大老となるのか?
署名順は先の父上が名前を挙げた順になり、格も同様となる。
石高はそれぞれ、徳川235万石(蝦夷の処分で20万石減)、大和豊臣100万石、前田105万石、宇喜多57万石、上杉120万石、毛利121万石、小早川36万石。
これに対し、豊臣家の直轄領は240万石。
やはり徳川が一際大きな勢力ではある。
宇喜多・小早川の規模が小さいが、小早川はそもそも毛利の従属大名であった。
現在の毛利家も含めた大勢力の実質上の統率者である。
また、宇喜多秀家は父上の猶子であり、養女豪姫の嫁ぎ先である。
そして、小早川隆景も養子に父上の養子・秀俊(後の秀秋)を迎えている。
準一門といったところだろうか。
それにしても関ケ原を知っている俺としては、この大和豊臣100万石が本当に大きい。
正史の様にこれが取潰しとなっていたままでは、関ケ原は絶対に起きると断言出来る。
後は、俺が成長するまでこのバランスを保つことだ。
少なくとも天下分け目の戦を5・6年遅らせられれば・・・・・・。
平伏する諸将を見下ろしながら父上が満足そうな顔をする。
やりきった、そんな感じの顔だ。
もしかして、父上は自分の死期を知っているのだろうか?
3つ下の秀長叔父上が亡くなったことで、自分の余命を考えただけかもしれない。
あっけなく、全員が署名を終えた後、秀次だけが残された。
数少ない一門武将。
「・・・・・・時に秀次。元気じゃったか?」
「ははっ。太閤殿下のお蔭でございます」
平伏したままの社交辞令。
かつては親子のようであったはずの二人でも、今はもう違う。
「いや・・・・・・あれは秀頼の助言があったからじゃ」
「は? なんのことでございますか?」
父上が俺を手招きするので、近づいて膝の上に乗る。
スゥっとまるで懺悔をする前のように一つ大きく息を吸って父上が語り出す。
「儂はあの時、お主を殺そうとしていた。そうしなければ不安じゃった」
「・・・・・・秀頼様に後を継がせるため、でございますね? 何故です? 私は鶴松様の時も、素直にお支えするつもりでした。何時もそうでした。我らの富は全て太閤殿下のお蔭でございます。十分すぎるほどに与えていただいてきたのに、更に何を望みましょう」
「それが、儂には分からなかったんじゃ。あの時、秀頼が止めてくれんかったら・・・・・・」
秀次の言葉は、少なくとも俺には本心のように思えた。
それに、父上も今は反省している。
「人の欲は尽きることがない。・・・・・・いや、決して尽きることのない欲を持つ者がいる。そう言った人間はまるで野獣の様な荒々しさを、氷の様に冷たい殻の内に隠し持っておる。信長公はそんなお方だと思っておった。それに憧れたのが儂や家康じゃ」
信長公のことを思い出しているのだろうか、懐かしむような視線で遠くを見る。
何時も力強かった瞳の輝きも、ただの老人のようになっていた。
「じゃが、最近になって分かったんじゃ、信長公と儂らは違う。信長公は欲が尽きないのではない。元々定めた欲の目的地に達していなかっただけじゃ。儂らは勝手に天下統一が信長公の目的と思っておったがの。そんな小さなところには無かったんじゃ。それに気づいて儂は明国を・・・・・・。ただの、真似事じゃ。のう、秀次。お前の望みは何じゃ?」
「・・・・・・豊臣家の繁栄です」
「儂は当たり前のように、儂と同様に天下人になることと思うとったよ。儂が信長公を真似たようにの。そう言った意味でお前は儂なんかよりよっぽど自分の事を見れていたのじゃ。・・・・・・秀次、儂の死んだ後、秀頼の後見を頼めんか? 頼む!」
天下人が30も下の甥に対して頭を下げた。
・・・・・・いや、ただ一人の子の父として。
「頭をお上げください。もともと秀頼様にお救い頂いた命です。秀頼様は一門の長になられるお方。お支えするのに何の不満がありましょう。身命を賭してお支えさせていただきます!」
そう言って秀次が深く頭を下げる。
「すまぬ。ありがとう、ありがとう!」
「ですが、殿下。出来得る限り長く生き、秀頼様に伝えていただかなければ困りますぞ? 私には天下人の事は分からないのですから」
「そうじゃの。そうじゃ、そうじゃ」
しみじみと噛み締めるように頷く。
そう、今生きている天下人は父上しかいないのだ。
「・・・・・・しかし、家康殿のことが少し気がかりではあります」
「家康はその機会があれば、いや、機会を作りだそうと画策するはずじゃ。儂が奴の立場ならそうする。蝦夷の失敗は追い落とす機会でもあったがの」
あ、それは俺が助け舟を出したからだ。
父上としてはもっと削っておきたかったのだろうか。
「それと、これからはどれだけ罪を厳しく取り仕切れるかが重要じゃ」
「・・・・・・功績に報いることが出来なくなるからですね?」
「そうじゃ、じゃから罪を見つけ改易や厳封させることが重要になる。それを忘れるな」
なるほど、確かに徳川幕府はそうだった。
・・・・・・でも、違う。
「しかと、心えまし――」
「いやです」
もう歴史は変わった。
だったら、とことんまで変えてみるのも面白いのではないか?
「ひでよりは、ひのもとだけではおわりませぬ!」
「秀頼? ・・・・・・では、どこまでじゃ?」
どこまで、か。
せっかく400年後の記憶を持つんだ。
「ひでよりのしるところまで」
「フッ、クク、ヌアッハハハハ」
父上が我慢できぬと言った様子で盛大に笑いだす。
「儂が死んだ後はお前のものじゃ。全て好きにせい!」
「はい!」
「秀頼、吐いた唾は呑めぬぞ?」
「はい!!」
俺だけじゃない。
父上の眼も爛々と輝いていた。
・・・・・・ってまぁ、もう知っているけど。
居並ぶ、いずれ劣らぬ名将の中で父上が発表する。
「儂が死んだ後も、太平の世を続けるために、幾つかの取り決めを考えた。皆にはこれからも更に豊臣家を盛り立て、我が子秀頼を支えて行ってもらいたい!」
「「「「「「「ははぁ!」」」」」」」
「そして、秀頼の実務を支えるために今日集まってもらった皆にはこの御掟五ヶ条と御掟追加九ヶ条に署名していただきたい」
五大老・・・・・・ん?
「徳川家康殿、豊臣秀次殿、前田利家殿、宇喜多秀家殿、上杉景勝殿、毛利輝元殿、小早川隆景殿、皆よろしいか?」
「「「「「「「ははぁ!」」」」」」」
7人もいる。
秀次が生きているから、か。
小早川隆景は、確か正史ではもうすぐ亡くなるから六大老となるのか?
署名順は先の父上が名前を挙げた順になり、格も同様となる。
石高はそれぞれ、徳川235万石(蝦夷の処分で20万石減)、大和豊臣100万石、前田105万石、宇喜多57万石、上杉120万石、毛利121万石、小早川36万石。
これに対し、豊臣家の直轄領は240万石。
やはり徳川が一際大きな勢力ではある。
宇喜多・小早川の規模が小さいが、小早川はそもそも毛利の従属大名であった。
現在の毛利家も含めた大勢力の実質上の統率者である。
また、宇喜多秀家は父上の猶子であり、養女豪姫の嫁ぎ先である。
そして、小早川隆景も養子に父上の養子・秀俊(後の秀秋)を迎えている。
準一門といったところだろうか。
それにしても関ケ原を知っている俺としては、この大和豊臣100万石が本当に大きい。
正史の様にこれが取潰しとなっていたままでは、関ケ原は絶対に起きると断言出来る。
後は、俺が成長するまでこのバランスを保つことだ。
少なくとも天下分け目の戦を5・6年遅らせられれば・・・・・・。
平伏する諸将を見下ろしながら父上が満足そうな顔をする。
やりきった、そんな感じの顔だ。
もしかして、父上は自分の死期を知っているのだろうか?
3つ下の秀長叔父上が亡くなったことで、自分の余命を考えただけかもしれない。
あっけなく、全員が署名を終えた後、秀次だけが残された。
数少ない一門武将。
「・・・・・・時に秀次。元気じゃったか?」
「ははっ。太閤殿下のお蔭でございます」
平伏したままの社交辞令。
かつては親子のようであったはずの二人でも、今はもう違う。
「いや・・・・・・あれは秀頼の助言があったからじゃ」
「は? なんのことでございますか?」
父上が俺を手招きするので、近づいて膝の上に乗る。
スゥっとまるで懺悔をする前のように一つ大きく息を吸って父上が語り出す。
「儂はあの時、お主を殺そうとしていた。そうしなければ不安じゃった」
「・・・・・・秀頼様に後を継がせるため、でございますね? 何故です? 私は鶴松様の時も、素直にお支えするつもりでした。何時もそうでした。我らの富は全て太閤殿下のお蔭でございます。十分すぎるほどに与えていただいてきたのに、更に何を望みましょう」
「それが、儂には分からなかったんじゃ。あの時、秀頼が止めてくれんかったら・・・・・・」
秀次の言葉は、少なくとも俺には本心のように思えた。
それに、父上も今は反省している。
「人の欲は尽きることがない。・・・・・・いや、決して尽きることのない欲を持つ者がいる。そう言った人間はまるで野獣の様な荒々しさを、氷の様に冷たい殻の内に隠し持っておる。信長公はそんなお方だと思っておった。それに憧れたのが儂や家康じゃ」
信長公のことを思い出しているのだろうか、懐かしむような視線で遠くを見る。
何時も力強かった瞳の輝きも、ただの老人のようになっていた。
「じゃが、最近になって分かったんじゃ、信長公と儂らは違う。信長公は欲が尽きないのではない。元々定めた欲の目的地に達していなかっただけじゃ。儂らは勝手に天下統一が信長公の目的と思っておったがの。そんな小さなところには無かったんじゃ。それに気づいて儂は明国を・・・・・・。ただの、真似事じゃ。のう、秀次。お前の望みは何じゃ?」
「・・・・・・豊臣家の繁栄です」
「儂は当たり前のように、儂と同様に天下人になることと思うとったよ。儂が信長公を真似たようにの。そう言った意味でお前は儂なんかよりよっぽど自分の事を見れていたのじゃ。・・・・・・秀次、儂の死んだ後、秀頼の後見を頼めんか? 頼む!」
天下人が30も下の甥に対して頭を下げた。
・・・・・・いや、ただ一人の子の父として。
「頭をお上げください。もともと秀頼様にお救い頂いた命です。秀頼様は一門の長になられるお方。お支えするのに何の不満がありましょう。身命を賭してお支えさせていただきます!」
そう言って秀次が深く頭を下げる。
「すまぬ。ありがとう、ありがとう!」
「ですが、殿下。出来得る限り長く生き、秀頼様に伝えていただかなければ困りますぞ? 私には天下人の事は分からないのですから」
「そうじゃの。そうじゃ、そうじゃ」
しみじみと噛み締めるように頷く。
そう、今生きている天下人は父上しかいないのだ。
「・・・・・・しかし、家康殿のことが少し気がかりではあります」
「家康はその機会があれば、いや、機会を作りだそうと画策するはずじゃ。儂が奴の立場ならそうする。蝦夷の失敗は追い落とす機会でもあったがの」
あ、それは俺が助け舟を出したからだ。
父上としてはもっと削っておきたかったのだろうか。
「それと、これからはどれだけ罪を厳しく取り仕切れるかが重要じゃ」
「・・・・・・功績に報いることが出来なくなるからですね?」
「そうじゃ、じゃから罪を見つけ改易や厳封させることが重要になる。それを忘れるな」
なるほど、確かに徳川幕府はそうだった。
・・・・・・でも、違う。
「しかと、心えまし――」
「いやです」
もう歴史は変わった。
だったら、とことんまで変えてみるのも面白いのではないか?
「ひでよりは、ひのもとだけではおわりませぬ!」
「秀頼? ・・・・・・では、どこまでじゃ?」
どこまで、か。
せっかく400年後の記憶を持つんだ。
「ひでよりのしるところまで」
「フッ、クク、ヌアッハハハハ」
父上が我慢できぬと言った様子で盛大に笑いだす。
「儂が死んだ後はお前のものじゃ。全て好きにせい!」
「はい!」
「秀頼、吐いた唾は呑めぬぞ?」
「はい!!」
俺だけじゃない。
父上の眼も爛々と輝いていた。
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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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