関白の息子!

アイム

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宿敵家康!

慶長狸合戦(エロ度☆☆☆☆☆)

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「秀頼、考えことですか?」

「ははうえ。おとなになるってむずかしいですね」

 フッと自嘲気味に大阪の城下を眺める。
 4歳(満3歳)のことである。

「……秀頼。曲りなりにも元服したのですから、何時もどこで何をしているのかは聞きません。ですが、危ないことをすることは許しませんよ?」

 何を勘違いしているのだろうか?
 俺は射精の話をしているのだが……

「最近、御父上や養育係に戦の仕方ばかり尋ねているようですね? 幾ら武家とはいえ、お前が戦に出ることはないのです。無駄なことをするのはおよしなさい」

 なんだ、その事か。
 戦のことを学ぶのはそれが一番楽しいからだ。

 確かに、摂関家である豊臣家は政治を学ぶ方が良いだろう。
 でも、単純に男の子がそう言う話が好き、と言うのがまずある。
 それになんと言っても戦の質問は父上が喜ぶ。
 
 特に最近の時代であれば、自分の自慢話が中心になる。
 時代を追うように教えてもらっているが、織田信長公の桶狭間の戦いから始まり、今は小牧長久手の戦いに入っている。
 歴史好きだった俺にとっても知らなかった事実や、詳細な戦略・戦術の紹介、実際にその目で見た後世に名も伝わらなかった名将・名参謀達、たった一つの戦場で花火のように一瞬で散った戦場の華・つわもの達。

 100人切りを上げた剛の者も、将でなかったが故に軽視され、火縄で撃たれて死んでいく。
 そういう時代ではあるけれど、少し思うところもある。そう言っていた。

「でもははうえ、おもしろいのです」

「面白い? まぁ、秀頼も男の子ですものね。剣の修行もしているのでしたね?」

「はい! たのしいです」

「……そうですか。でも、母はそんな危険なことをしてほしくないのです」

 母上はとにかく俺を戦や剣から遠ざけたいようだ。
 関ケ原ではそれをしたせいで……
 いや、もう言うまい。

「ですが、とよとみけはぶしのおさです」

「だから必要ないと言っているのです!」

「いいえ、おさがしらなくてはしめしがつきません!」

 始めて母上に逆らったかもしれない。
 反抗期と言う奴だろうか?
 いや、違うか?
 だって母上大好きだし。

「危ないと言っているのです!」

「……ははうえ。ひでより、がんばってるのに……」

 グスッと涙ぐむ。
 言っておくけど演技ではない。
 この子供の身体と言うのは、少しでも悲しいと思えば直ぐに涙が出るのだ。
 ここら辺は記憶がどうとかは関係ない。

「ち、違います。勉強するのも運動するのも悪くはありません。でも、母は秀頼が危険なことをしていると思うと気が気ではないのです。……母は戦で多くの親しい人を失いました。父上には聞いていますか?」

「じじうえとばばうえ、ちちうえがころしたって」

「……そうですか、殿下はそのように。いえ、間違いではありません。でも、それが戦なのです。秀頼、私は殿下を恨んではいません。ですが、戦を心底憎んでいるのです。それにあなたを近づけたくない。分かってはくれませぬか?」

 ふわりと母上に抱きしめられる。

「ははうえ、おれは! ははうえをくるしめたいくさをなくしたいのです!」

「秀頼。今はもう戦はありません」

「いま、だけかもしれません」

 なんせ歴史上はあと4年で関ケ原の戦いが勃発するのだ。





 ところで、豊臣秀頼の最大の敵は誰か?
 言うまでもないだろう、当然徳川家康だ。
 関ケ原で西軍を打ち破り、2度に渡る大阪での戦いの末の豊臣家の崩壊・秀頼の自決。

 その家康が、今目の前でひれ伏している。
 つい先日に京では大地震が起こり、聚楽第での謁見が危ぶまれたため、大阪城での謁見となったのだ。

 内容は徳川家康に蝦夷遠征軍の総司令官を任せるというもの。
 そのために今江戸では急ピッチで大船団用の艦船の製作が行われているはずだ。

「総司令官の勤め、有り難く拝命させていただきます!」

 恰幅の良い老人が何処から出すのだと言う大きさの声でそう言う。

「うむ。任せたぞ、家康殿! お主なら儂も安心じゃ!」

「ははぁ!」

 本来なら俺がいる場ではないが、無理を言って同席させてもらった。
 赤ん坊の頃に会っている可能性はあるが、記憶にある中では初めての遭遇。
 ちなみに家康の後ろにいる眼帯の男が伊達政宗だ。

「ちちうえぇ、どうやってえぞにいくの?」

「ん? 秀頼、知りたいか? ふむ、正宗よ説明してみせい」

「ははぁ!」

 バッと大きな地図が広げられる。
 ……ん? 何の地図だ?
 函館のある渡島半島から北に山々が連なり、その先は同じ陸の幅の土地が続く。
 長方形の大地。

 ……あれ? この時代の北海道ってこんな形なの?
 って、んなわけねー!

「先ず、先方隊の某の先導する伊達・最上・南部・津軽の東北連合軍がこの山を越えて参りまする。本来であれば、この軍だけでも十分な陣容ではございますが、更に上杉・前田・堀の信越連合が艦船にて北側の海岸に接舷し攻め入ります。次いで徳川殿・佐竹・蒲生の関東連合が南部より艦船にて攻め入るのです。総勢、4万の大軍勢! この布陣であれば一月で蝦夷を支配出来ましょう!」

 ……無理だ。蝦夷の大きさを分かっていない。
 山の緑豊かさを、そして、自然の脅威を分かっていない。
 狩猟民族の精強さも分かっていない。
 蝦夷の地の合戦はそうとうに苦戦することだろう。

「ちちうえ、ひとつきでえぞにいけるの?」

「ん? いやいや、儂らが行けるようになるのは半年以上先じゃ、冬の北はとてつもなく寒いからの。じゃが、来年の春には向かえるぞ。 なぁ、家康殿?」

「もちろんでございます! 太閤殿下と若様が安全にお楽しみいただけるよう、蝦夷の地をつぶさに調べ、名所をこの家康自身でご案内差し上げましょう!」

「おうおう、楽しみにしておるぞ?」

 ガッハッハッハ

 謁見の間に拡がる既に勝ち誇ったような笑い声。
 フフ、来年の春。
 それまでに制圧が終わっていなければ、責任問題だぞ家康殿?

 俺を含めて誰もがカラカラと笑う。
 その誰もが腹の中に一物を隠していながら、一見すると朗らかそうな謁見の間は、確かに戦国時代であった。

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新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
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