関白の息子!

アイム

文字の大きさ
上 下
14 / 323
秀頼と申します。

大阪城の景色(エロ度☆☆☆☆☆)

しおりを挟む
 秀次事件の解決から二週間余りが経った。

 歴史を変えた波紋は、きっと今後も少しずつ出てくるのだろう。
 まず最初の変化は、せっかく造っていた父上の隠居場の伏見城。
 建設途中ではあるが、秀次叔父上が聚楽第を辞して大和に向かったので、聚楽第に再引越する形となった。

 ちなみにこの聚楽第、正史であれば秀次事件の後に徹底的に破壊されていたはずだ。
 それが今も残って俺達が住んでいるのだから、史実改編の余波と言っていい。

 さらにちなみに言うと、一応そのまま建設が進む予定の伏見城はまもなく地震で倒壊する。
 正史ではその伏見城を少し場所を移して立て直すが、今の父上にはこの聚楽第がある。
 きっと無駄なことはせずにそのままにしておくんじゃないだろうか。




 そんなある日のこと。

「ウム、大阪に行くか」

 縁側で茶をしばいていると、突然父上が言い出す。
 そのあまりの脈絡の無さに母上が驚いてしまう。

 と言うか、この聚楽第に移ったのもついこの前なのに・・・・・・。

「何故ですか?」

 訝しむ母上がチラリと俺を見た気がした。
 おそらく俺との関連を疑ったのだろう。
 
「久しぶりに城から景色を眺めたいんじゃ。どうじゃ、茶々?」

 ところが、父上の方はすっとぼけた顔で、暢気に年寄りの道楽じゃよと言わんばかり。

 大阪城には北政所・おねがいる。
 正直言って母上も会いたくないんじゃないだろうか?
 おねと淀殿は仲が悪かったなんて話を聞いたこともある。

「それは素晴らしいです! おね様に拾丸の成長をお見せしとうございます!」

 が、母上自身は素直に嬉しそうにしている。

 ・・・・・・ん?
 特にそう言う話も無かったので、何となく仲が悪いと考えていたんだけど・・・・・・。
 もしかして違うのか?

「そうかそうか、では三日後に向かうでな。用意をしてくれ」
「はい!」

 喜色満面の笑みを浮かべる母上は、父上がニヤリと隠れて笑った事には気付けなかったようだ。



 さて、父上の近くにいれば否応にも自然と歴史上の重要人物に会うことになる。
 今回はおね。
 もしかしたら加藤清正らとも会えるかもしれない。

 彼等は皆、関ケ原が発生した時の重要人物だ。
 今の俺では何も出来ないけど、顔を覚えておくことは重要だろう。
 特に豊臣恩顧の将は俺の時代に重要な戦力になる。

「ああ、それとじゃな――」

「拾丸を連れて遊びに行く件なら駄目です」

 まだ話の途中だと言うのに父上の言葉は母上に遮られてしまう。

 例の阿国との乱痴奇騒ぎ以降、父上と二人でどこかに行くことすら許してくれない。
 まぁ、二歳児にいろいろ性教育しちゃう人だ。
 通常の母親の感覚なら当然っちゃ当然。

 でも、・・・・・・母上。
 豊臣家はとにかく一門武将が少ないんです。
 だから、パコパコ俺が作らなきゃいけないんです!

 もちろんそんな心の声は届かずに、父上はすごすごとお茶を飲んでいた。
 俺も何時になく諦めが早いな、なんて思っていた。




「どうじゃ、お拾よ。久しぶりの大阪の天守は気持ち良かろう?」

 四日後、大阪城の天守で父上の腕に抱かれながら大阪湾や堺の街を見渡す。
 確かにこの時代では天下に並ぶもののない絶景だ。

 絶景、なのだが・・・・・・。

「ん? どうした? 不満でもあるのか?」

「おくにぃ」

 未練がましく俺が呟く。

 そう、阿国達の舞の方がよっぽど素晴らしい光景だった。
 少なくとも俺にとっては。

 この景色を見れる者はほんの一握り。
 でもこんなものより阿国達の舞こそ天下人にふさわしいと思うんだ。

「こ、これ。茶々に聞こえたらどうするんじゃ!?」

「ぶぅ」

 父上が慌てて俺の口に手を当てる。
 確かに後ろの方では母上が腰を休めている。
 もしもさっきの呟きが聞こえればカンカンに怒っていたかもしれない。

 この時代に天下人・秀吉に面と向かって文句を言えるのって、もしかしたら俺くらいじゃないか?

「もう少し待っておれ、もう少しじゃ」

「あう?」

 父上が再び城下を見ながら、笑いを噛み殺すようにしてボソボソと俺だけに聞こえる様に話す。

 しかし、何を言いたいんだろう?
 いくら待とうと母上が俺から離れることは無さそうなのに・・・・・・。

「もう少しで江が徳川秀忠に嫁ぐ。茶々はそこに付き添いで京都まで行くのじゃ」

「あい?」

「聚楽第では近すぎてバレてしまうんじゃ。でもここでなら少々のことは何でももみ消せる。な?」

 ニヒッと俺に笑いかけながらそんなことを言う。

 うちの父はマジで最高だと思う。

しおりを挟む
新作「プニプニホッペの魔王様」を連載し始めました。ご一読いただけると幸いです。……ただ、あれは女性目線の小説に挑戦してみたというものなので、こっちの雰囲気は一切関係ないですけどw
感想 61

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

生残の秀吉

Dr. CUTE
歴史・時代
秀吉が本能寺の変の知らせを受ける。秀吉は身の危険を感じ、急ぎ光秀を討つことを決意する。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...