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【最終話】22.横暴なる姉上様には逆らえない
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昔からわけのわからないことをする姉ではあったけど、よりによって王様の前で、弟の着ているシャツを無理やり破いて脱がせようとしてくるなんて。
あたまが沸いてんじゃないのか、コイツ?!
「あんたの手首だとかを見たところで怪我もなかったってことは、別に動けないほどギチギチに拘束されてたわけでもないんでしょ?なのにこれだけ痕をつけられまくったってことは、ろくに抵抗もできない据え膳状態だったわけよね?つまりそのときのあんたは、魔法の効果で強制発情中だった、って推測が成り立つじゃない」
「うっ………」
我が姉ながら、本当に勘働きはいい。
ろくに抵抗ができなかったし、それが相手のかけてきたあの魔法のせいというのは、ある意味で事実だ。
完ぺきな正解というわけではないけれど、ほぼほぼあたっている。
「一応、魔力封じが首につけられてたせいもあるし、そこから柱に鎖がつながれてたってのもあるからな?」
「あらぁ、鎖つきの首輪で拘束とは、子どものくせに今代魔王もなかなかいい趣味してんじゃない」
物理的な拘束もなくはなかったと訴えれば、むしろドツボにハマった。
「……それなのに昨日逃げてきたあんたのシャツは、ていねいにボタンがはずされてるだけで、破かれてもなかったのよ?!大事なことだからもう一度言うけど、こんなにたくさんの痕をつけるくらい、あんたに執着してる子が、そんな状態の相手を前に理性を保てると思う?!でも実際それができてたの!!これを『紳士的』と呼ばずして、なんと呼ぶのよ!」
ドヤァ……と音がしそうなほどに、自信しかない様子で姉貴が主張してくる。
うん、あの少ない情報のなかから、よくぞそこまで推測を重ねたもんだ。
「うむ、余の知る我が国秘蔵の文献にも、その魔法を行使したあとの魔王は、ケダモノ同然になると書いてある。シェイラの主張は正統性が認められるぞ」
王様まで、なにを言っちゃってるんだよ!?
それ、きちんとした文献じゃなく、古代語で書かれたエロ本だって昨日姉貴が言ってたぞ??
「わ、私もその話は読みましたぞ!」
「なんと、そなたもか!あれこそ余にとっての青き春の思い出とも言うべき心の聖書であろう」
なんてこった、勇者学校の責任者までもが王様に同意を示している。
ふたりのおっさんたちが盛り上がっているけれど、オレにしてみれば冗談じゃなかった。
ついでに『青春の思い出』だとか『心の聖書』だとかいい感じのこと言っちゃってるけど、王様にとっては聖書どころかむしろ『性春の思い出』で、『性書』なんだろ?
知ってるよ!
知りたくなかったけど!!
ホント、クソ姉貴のせいでさっきからオレの情緒が定まらない。
「だからって、その推論述べるために、ここまでする必要ないだろ?!」
あまりに残念すぎる各組織のトップたちの言動にあきれて閉口しそうになり、あわててはだけた服の前を手で押さえて抗議した。
「そんなもの簡単よ。目で見たほうが伝わりやすいんですもの、当然だわ!」
そしてクソ姉貴は姉貴で、まったく反省のかけらも見えなかった。
「ということで、そこまで過去に例がないほど紳士的な魔王なら、むしろ下手にあんたを取りあげてその執着がほかに向いてしまうとか、この世界に恨みを持たれてしまうより、目の届く範囲で泳がせといたほうが安心ってことになったわけよ」
「それって……」
めちゃくちゃいい笑顔のままに両手を顔の横で組む姉貴に、思わずこちらの顔が引きつった。
「魔王がこの世界に手ぇ出さないように、オレに犠牲になれってことじゃねーか!!」
ふざけんな!
前から横暴だとは思ってたけど、世界の平和のためなら弟の身を魔王に差し出すとか、ひどすぎだろ?!
「ある意味でこの世界を魔王の手から救うための尊い犠牲……言うなればそれは単身魔王に挑まねばならない、孤高の勇者にも等しいわ。つまり、勇者学校の『ぼっちセンセ』にはお似合いのお仕事じゃない?」
「冗談じゃない!」
ここであえて、オレのあだ名を出してくる姉貴が憎たらしい。
「あらやだ、これは国王様公認の策ですもの、あんたには当然従ってもらうわよ?おぼえてるよね、アルト?あんたはこのアタシに、絶対に逆らえないってこと」
そしてそんなオレの抗議の声は、今日も我が横暴なる姉上様によって黙殺される。
───あぁ、最悪だ。
結局オレは、この姉貴には一生逆らえないらしい。
苦虫を噛みつぶしたような顔で、深い深いため息をついたのだった。
* end *
あたまが沸いてんじゃないのか、コイツ?!
「あんたの手首だとかを見たところで怪我もなかったってことは、別に動けないほどギチギチに拘束されてたわけでもないんでしょ?なのにこれだけ痕をつけられまくったってことは、ろくに抵抗もできない据え膳状態だったわけよね?つまりそのときのあんたは、魔法の効果で強制発情中だった、って推測が成り立つじゃない」
「うっ………」
我が姉ながら、本当に勘働きはいい。
ろくに抵抗ができなかったし、それが相手のかけてきたあの魔法のせいというのは、ある意味で事実だ。
完ぺきな正解というわけではないけれど、ほぼほぼあたっている。
「一応、魔力封じが首につけられてたせいもあるし、そこから柱に鎖がつながれてたってのもあるからな?」
「あらぁ、鎖つきの首輪で拘束とは、子どものくせに今代魔王もなかなかいい趣味してんじゃない」
物理的な拘束もなくはなかったと訴えれば、むしろドツボにハマった。
「……それなのに昨日逃げてきたあんたのシャツは、ていねいにボタンがはずされてるだけで、破かれてもなかったのよ?!大事なことだからもう一度言うけど、こんなにたくさんの痕をつけるくらい、あんたに執着してる子が、そんな状態の相手を前に理性を保てると思う?!でも実際それができてたの!!これを『紳士的』と呼ばずして、なんと呼ぶのよ!」
ドヤァ……と音がしそうなほどに、自信しかない様子で姉貴が主張してくる。
うん、あの少ない情報のなかから、よくぞそこまで推測を重ねたもんだ。
「うむ、余の知る我が国秘蔵の文献にも、その魔法を行使したあとの魔王は、ケダモノ同然になると書いてある。シェイラの主張は正統性が認められるぞ」
王様まで、なにを言っちゃってるんだよ!?
それ、きちんとした文献じゃなく、古代語で書かれたエロ本だって昨日姉貴が言ってたぞ??
「わ、私もその話は読みましたぞ!」
「なんと、そなたもか!あれこそ余にとっての青き春の思い出とも言うべき心の聖書であろう」
なんてこった、勇者学校の責任者までもが王様に同意を示している。
ふたりのおっさんたちが盛り上がっているけれど、オレにしてみれば冗談じゃなかった。
ついでに『青春の思い出』だとか『心の聖書』だとかいい感じのこと言っちゃってるけど、王様にとっては聖書どころかむしろ『性春の思い出』で、『性書』なんだろ?
知ってるよ!
知りたくなかったけど!!
ホント、クソ姉貴のせいでさっきからオレの情緒が定まらない。
「だからって、その推論述べるために、ここまでする必要ないだろ?!」
あまりに残念すぎる各組織のトップたちの言動にあきれて閉口しそうになり、あわててはだけた服の前を手で押さえて抗議した。
「そんなもの簡単よ。目で見たほうが伝わりやすいんですもの、当然だわ!」
そしてクソ姉貴は姉貴で、まったく反省のかけらも見えなかった。
「ということで、そこまで過去に例がないほど紳士的な魔王なら、むしろ下手にあんたを取りあげてその執着がほかに向いてしまうとか、この世界に恨みを持たれてしまうより、目の届く範囲で泳がせといたほうが安心ってことになったわけよ」
「それって……」
めちゃくちゃいい笑顔のままに両手を顔の横で組む姉貴に、思わずこちらの顔が引きつった。
「魔王がこの世界に手ぇ出さないように、オレに犠牲になれってことじゃねーか!!」
ふざけんな!
前から横暴だとは思ってたけど、世界の平和のためなら弟の身を魔王に差し出すとか、ひどすぎだろ?!
「ある意味でこの世界を魔王の手から救うための尊い犠牲……言うなればそれは単身魔王に挑まねばならない、孤高の勇者にも等しいわ。つまり、勇者学校の『ぼっちセンセ』にはお似合いのお仕事じゃない?」
「冗談じゃない!」
ここであえて、オレのあだ名を出してくる姉貴が憎たらしい。
「あらやだ、これは国王様公認の策ですもの、あんたには当然従ってもらうわよ?おぼえてるよね、アルト?あんたはこのアタシに、絶対に逆らえないってこと」
そしてそんなオレの抗議の声は、今日も我が横暴なる姉上様によって黙殺される。
───あぁ、最悪だ。
結局オレは、この姉貴には一生逆らえないらしい。
苦虫を噛みつぶしたような顔で、深い深いため息をついたのだった。
* end *
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コメントをいただきまして、ありがとうございます。
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最後までお楽しみいただけますと幸いです。
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サン様
コメントをいただきまして、ありがとうございます。
とても面白いと言っていただけて、うれしいです。
毎日更新予定ですので、最後までお楽しみいただけますと幸いです。