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12.自称弟思いの姉上様は暴走中
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オレはただ、必死に魔王の城から逃げてきただけだ。
それがまさか、よりによっていちばん会いたくない相手のところに飛んでしまったなんて……!
真っ白になるあたまは、ここがどこなのか、把握もできなくなっていた。
ただ呆然と目の前に立つ姉貴の姿を見上げて、アホみたいな顔をさらしてしまう。
「えぇと、とりあえず、無事だった……と思う……」
あやうく人として、というか男として大切なものを色々と失いかけたけど、結果的にはほぼ無事だった。
「今、呼び出されて話を聞いたとこだったの!あんたの担当するクラスの子たちが一斉に、学校に転移してきたって。しかもみんなパニックを起こしてるし、ようやくなだめて話を聞いたら、今代の魔王があらわれてあんたひとりが残ったっていうから……」
早口でまくし立ててくる姉貴のいきおいに飲まれ、無言でじっと見つめてしまっていた。
「別に、アタシは心配なんてしてなかったわよ?!個人の力でなら、対魔王に関しては、あんたがいちばん適してるんだから!でもね、見に行った先の森は焼け焦げて更地になってるし、あんたの姿も魔王の姿も見えないし!どこ行っちゃったんだろうって……!」
どうやら姉上様は、大変めずらしいことに、オレの心配をしてくれたらしい。
「うん。ごめん、心配かけた……それより、うちのクラスの生徒たちは大丈夫だったのか?」
気がつけば自然とそんなセリフが、口からこぼれていた。
今までなら、どんなにこちらに非があろうと横暴な姉貴にあやまろうなんて気にならなかったし、勇者学校の生徒たちにしたって、オレの嫌いな子どもたちだ。
心配することなんて、なかったと思う。
「安心して、みんな無事だったわよ!」
「そっか、よかった……」
目に涙を浮かべた姉貴が、大きくうなずくのに、ホッとして肩の力を抜く。
だけど次の瞬間、オレの動きはふたたびピシッと固まった。
「あんたの純潔を犠牲にして守っただけあるわ!だれひとりとして、怪我もしてないから安心なさい!!」
「はあぁっ??!」
なにを言ってるんだ、このバカ姉貴!?
「大丈夫、お婿に行けなくなっても、甲斐性あるステキな宮廷魔導師のお姉さまであるこのアタシが、ちゃんと最後まで面倒見てあげるからね!」
「いや、なんの誤解だよ、それっ?!」
いったいなにをどうしたら、そんな誤解につながるんだよ!?
「そんなあからさまな事後の気配ただよわせておいて、今さら取りつくろわなくてもいいのよ!はじめては痛かったでしょう?」
「だーかーらーっ!!オレの話を聞けっ!!」
「あんたこそ、今の自分の格好見なさいよーっ!!」
うん?オレの格好……?
半べその姉貴に指を差され、ようやく己の姿を見下ろした。
………あぁ、うん、これはヤバい。
シャツのボタンは全部はずされたままで、シエルにつけられたらしい甘噛みの歯形だとか赤い痕が、鎖骨だの胸だのにいくつも、それとわかるほどにしっかりと残されている。
さらにはグランデアモーレなるヤバい魔法のせいで、無理やりに高められたからだはしっとりと汗ばみ、何度もキスをされた口もとには、ぬぐい忘れた唾液の跡がついていた。
「あー、うん、悪い、見苦しいモン見せた」
たしかにこれは、姉貴じゃなくても誤解するわ。
あわてて袖口で、口もとをぬぐいながらあやまる。
「でもな、あらためて言うけど、それは誤解だから」
そうしてオレは、この姉が怖いがゆえに正気にかえったなんて本人を前にして言えるはずもなく、微妙にボカシながらも事の顛末を語った。
最後の最後で、なぜか精神支配系魔法がはじかれたんだと。
「あらー!じゃあ、やっぱりあんたは、このアタシに感謝すべきじゃなぁい?」
「はぁ?どうしてだよ?」
「あら、だって幼かったあんたに、絶対服従の呪……もとい、アタシを敬う魔法をかけたのはアタシだもの!」
はいぃ?!
なんだよ、それ!!
今さらながら明かされる真実に、今度こそオレは言葉を失ったのだった。
それがまさか、よりによっていちばん会いたくない相手のところに飛んでしまったなんて……!
真っ白になるあたまは、ここがどこなのか、把握もできなくなっていた。
ただ呆然と目の前に立つ姉貴の姿を見上げて、アホみたいな顔をさらしてしまう。
「えぇと、とりあえず、無事だった……と思う……」
あやうく人として、というか男として大切なものを色々と失いかけたけど、結果的にはほぼ無事だった。
「今、呼び出されて話を聞いたとこだったの!あんたの担当するクラスの子たちが一斉に、学校に転移してきたって。しかもみんなパニックを起こしてるし、ようやくなだめて話を聞いたら、今代の魔王があらわれてあんたひとりが残ったっていうから……」
早口でまくし立ててくる姉貴のいきおいに飲まれ、無言でじっと見つめてしまっていた。
「別に、アタシは心配なんてしてなかったわよ?!個人の力でなら、対魔王に関しては、あんたがいちばん適してるんだから!でもね、見に行った先の森は焼け焦げて更地になってるし、あんたの姿も魔王の姿も見えないし!どこ行っちゃったんだろうって……!」
どうやら姉上様は、大変めずらしいことに、オレの心配をしてくれたらしい。
「うん。ごめん、心配かけた……それより、うちのクラスの生徒たちは大丈夫だったのか?」
気がつけば自然とそんなセリフが、口からこぼれていた。
今までなら、どんなにこちらに非があろうと横暴な姉貴にあやまろうなんて気にならなかったし、勇者学校の生徒たちにしたって、オレの嫌いな子どもたちだ。
心配することなんて、なかったと思う。
「安心して、みんな無事だったわよ!」
「そっか、よかった……」
目に涙を浮かべた姉貴が、大きくうなずくのに、ホッとして肩の力を抜く。
だけど次の瞬間、オレの動きはふたたびピシッと固まった。
「あんたの純潔を犠牲にして守っただけあるわ!だれひとりとして、怪我もしてないから安心なさい!!」
「はあぁっ??!」
なにを言ってるんだ、このバカ姉貴!?
「大丈夫、お婿に行けなくなっても、甲斐性あるステキな宮廷魔導師のお姉さまであるこのアタシが、ちゃんと最後まで面倒見てあげるからね!」
「いや、なんの誤解だよ、それっ?!」
いったいなにをどうしたら、そんな誤解につながるんだよ!?
「そんなあからさまな事後の気配ただよわせておいて、今さら取りつくろわなくてもいいのよ!はじめては痛かったでしょう?」
「だーかーらーっ!!オレの話を聞けっ!!」
「あんたこそ、今の自分の格好見なさいよーっ!!」
うん?オレの格好……?
半べその姉貴に指を差され、ようやく己の姿を見下ろした。
………あぁ、うん、これはヤバい。
シャツのボタンは全部はずされたままで、シエルにつけられたらしい甘噛みの歯形だとか赤い痕が、鎖骨だの胸だのにいくつも、それとわかるほどにしっかりと残されている。
さらにはグランデアモーレなるヤバい魔法のせいで、無理やりに高められたからだはしっとりと汗ばみ、何度もキスをされた口もとには、ぬぐい忘れた唾液の跡がついていた。
「あー、うん、悪い、見苦しいモン見せた」
たしかにこれは、姉貴じゃなくても誤解するわ。
あわてて袖口で、口もとをぬぐいながらあやまる。
「でもな、あらためて言うけど、それは誤解だから」
そうしてオレは、この姉が怖いがゆえに正気にかえったなんて本人を前にして言えるはずもなく、微妙にボカシながらも事の顛末を語った。
最後の最後で、なぜか精神支配系魔法がはじかれたんだと。
「あらー!じゃあ、やっぱりあんたは、このアタシに感謝すべきじゃなぁい?」
「はぁ?どうしてだよ?」
「あら、だって幼かったあんたに、絶対服従の呪……もとい、アタシを敬う魔法をかけたのはアタシだもの!」
はいぃ?!
なんだよ、それ!!
今さらながら明かされる真実に、今度こそオレは言葉を失ったのだった。
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