12 / 22
12.自称弟思いの姉上様は暴走中
しおりを挟む
オレはただ、必死に魔王の城から逃げてきただけだ。
それがまさか、よりによっていちばん会いたくない相手のところに飛んでしまったなんて……!
真っ白になるあたまは、ここがどこなのか、把握もできなくなっていた。
ただ呆然と目の前に立つ姉貴の姿を見上げて、アホみたいな顔をさらしてしまう。
「えぇと、とりあえず、無事だった……と思う……」
あやうく人として、というか男として大切なものを色々と失いかけたけど、結果的にはほぼ無事だった。
「今、呼び出されて話を聞いたとこだったの!あんたの担当するクラスの子たちが一斉に、学校に転移してきたって。しかもみんなパニックを起こしてるし、ようやくなだめて話を聞いたら、今代の魔王があらわれてあんたひとりが残ったっていうから……」
早口でまくし立ててくる姉貴のいきおいに飲まれ、無言でじっと見つめてしまっていた。
「別に、アタシは心配なんてしてなかったわよ?!個人の力でなら、対魔王に関しては、あんたがいちばん適してるんだから!でもね、見に行った先の森は焼け焦げて更地になってるし、あんたの姿も魔王の姿も見えないし!どこ行っちゃったんだろうって……!」
どうやら姉上様は、大変めずらしいことに、オレの心配をしてくれたらしい。
「うん。ごめん、心配かけた……それより、うちのクラスの生徒たちは大丈夫だったのか?」
気がつけば自然とそんなセリフが、口からこぼれていた。
今までなら、どんなにこちらに非があろうと横暴な姉貴にあやまろうなんて気にならなかったし、勇者学校の生徒たちにしたって、オレの嫌いな子どもたちだ。
心配することなんて、なかったと思う。
「安心して、みんな無事だったわよ!」
「そっか、よかった……」
目に涙を浮かべた姉貴が、大きくうなずくのに、ホッとして肩の力を抜く。
だけど次の瞬間、オレの動きはふたたびピシッと固まった。
「あんたの純潔を犠牲にして守っただけあるわ!だれひとりとして、怪我もしてないから安心なさい!!」
「はあぁっ??!」
なにを言ってるんだ、このバカ姉貴!?
「大丈夫、お婿に行けなくなっても、甲斐性あるステキな宮廷魔導師のお姉さまであるこのアタシが、ちゃんと最後まで面倒見てあげるからね!」
「いや、なんの誤解だよ、それっ?!」
いったいなにをどうしたら、そんな誤解につながるんだよ!?
「そんなあからさまな事後の気配ただよわせておいて、今さら取りつくろわなくてもいいのよ!はじめては痛かったでしょう?」
「だーかーらーっ!!オレの話を聞けっ!!」
「あんたこそ、今の自分の格好見なさいよーっ!!」
うん?オレの格好……?
半べその姉貴に指を差され、ようやく己の姿を見下ろした。
………あぁ、うん、これはヤバい。
シャツのボタンは全部はずされたままで、シエルにつけられたらしい甘噛みの歯形だとか赤い痕が、鎖骨だの胸だのにいくつも、それとわかるほどにしっかりと残されている。
さらにはグランデアモーレなるヤバい魔法のせいで、無理やりに高められたからだはしっとりと汗ばみ、何度もキスをされた口もとには、ぬぐい忘れた唾液の跡がついていた。
「あー、うん、悪い、見苦しいモン見せた」
たしかにこれは、姉貴じゃなくても誤解するわ。
あわてて袖口で、口もとをぬぐいながらあやまる。
「でもな、あらためて言うけど、それは誤解だから」
そうしてオレは、この姉が怖いがゆえに正気にかえったなんて本人を前にして言えるはずもなく、微妙にボカシながらも事の顛末を語った。
最後の最後で、なぜか精神支配系魔法がはじかれたんだと。
「あらー!じゃあ、やっぱりあんたは、このアタシに感謝すべきじゃなぁい?」
「はぁ?どうしてだよ?」
「あら、だって幼かったあんたに、絶対服従の呪……もとい、アタシを敬う魔法をかけたのはアタシだもの!」
はいぃ?!
なんだよ、それ!!
今さらながら明かされる真実に、今度こそオレは言葉を失ったのだった。
それがまさか、よりによっていちばん会いたくない相手のところに飛んでしまったなんて……!
真っ白になるあたまは、ここがどこなのか、把握もできなくなっていた。
ただ呆然と目の前に立つ姉貴の姿を見上げて、アホみたいな顔をさらしてしまう。
「えぇと、とりあえず、無事だった……と思う……」
あやうく人として、というか男として大切なものを色々と失いかけたけど、結果的にはほぼ無事だった。
「今、呼び出されて話を聞いたとこだったの!あんたの担当するクラスの子たちが一斉に、学校に転移してきたって。しかもみんなパニックを起こしてるし、ようやくなだめて話を聞いたら、今代の魔王があらわれてあんたひとりが残ったっていうから……」
早口でまくし立ててくる姉貴のいきおいに飲まれ、無言でじっと見つめてしまっていた。
「別に、アタシは心配なんてしてなかったわよ?!個人の力でなら、対魔王に関しては、あんたがいちばん適してるんだから!でもね、見に行った先の森は焼け焦げて更地になってるし、あんたの姿も魔王の姿も見えないし!どこ行っちゃったんだろうって……!」
どうやら姉上様は、大変めずらしいことに、オレの心配をしてくれたらしい。
「うん。ごめん、心配かけた……それより、うちのクラスの生徒たちは大丈夫だったのか?」
気がつけば自然とそんなセリフが、口からこぼれていた。
今までなら、どんなにこちらに非があろうと横暴な姉貴にあやまろうなんて気にならなかったし、勇者学校の生徒たちにしたって、オレの嫌いな子どもたちだ。
心配することなんて、なかったと思う。
「安心して、みんな無事だったわよ!」
「そっか、よかった……」
目に涙を浮かべた姉貴が、大きくうなずくのに、ホッとして肩の力を抜く。
だけど次の瞬間、オレの動きはふたたびピシッと固まった。
「あんたの純潔を犠牲にして守っただけあるわ!だれひとりとして、怪我もしてないから安心なさい!!」
「はあぁっ??!」
なにを言ってるんだ、このバカ姉貴!?
「大丈夫、お婿に行けなくなっても、甲斐性あるステキな宮廷魔導師のお姉さまであるこのアタシが、ちゃんと最後まで面倒見てあげるからね!」
「いや、なんの誤解だよ、それっ?!」
いったいなにをどうしたら、そんな誤解につながるんだよ!?
「そんなあからさまな事後の気配ただよわせておいて、今さら取りつくろわなくてもいいのよ!はじめては痛かったでしょう?」
「だーかーらーっ!!オレの話を聞けっ!!」
「あんたこそ、今の自分の格好見なさいよーっ!!」
うん?オレの格好……?
半べその姉貴に指を差され、ようやく己の姿を見下ろした。
………あぁ、うん、これはヤバい。
シャツのボタンは全部はずされたままで、シエルにつけられたらしい甘噛みの歯形だとか赤い痕が、鎖骨だの胸だのにいくつも、それとわかるほどにしっかりと残されている。
さらにはグランデアモーレなるヤバい魔法のせいで、無理やりに高められたからだはしっとりと汗ばみ、何度もキスをされた口もとには、ぬぐい忘れた唾液の跡がついていた。
「あー、うん、悪い、見苦しいモン見せた」
たしかにこれは、姉貴じゃなくても誤解するわ。
あわてて袖口で、口もとをぬぐいながらあやまる。
「でもな、あらためて言うけど、それは誤解だから」
そうしてオレは、この姉が怖いがゆえに正気にかえったなんて本人を前にして言えるはずもなく、微妙にボカシながらも事の顛末を語った。
最後の最後で、なぜか精神支配系魔法がはじかれたんだと。
「あらー!じゃあ、やっぱりあんたは、このアタシに感謝すべきじゃなぁい?」
「はぁ?どうしてだよ?」
「あら、だって幼かったあんたに、絶対服従の呪……もとい、アタシを敬う魔法をかけたのはアタシだもの!」
はいぃ?!
なんだよ、それ!!
今さらながら明かされる真実に、今度こそオレは言葉を失ったのだった。
10
お気に入りに追加
300
あなたにおすすめの小説
記憶の欠けたオメガがヤンデレ溺愛王子に堕ちるまで
橘 木葉
BL
ある日事故で一部記憶がかけてしまったミシェル。
婚約者はとても優しいのに体は怖がっているのは何故だろう、、
不思議に思いながらも婚約者の溺愛に溺れていく。
---
記憶喪失を機に愛が重すぎて失敗した関係を作り直そうとする婚約者フェルナンドが奮闘!
次は行き過ぎないぞ!と意気込み、ヤンデレバレを対策。
---
記憶は戻りますが、パッピーエンドです!
⚠︎固定カプです
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
奴隷の僕がご主人様に!? 〜森の奥で大きなお兄さんを捕まえました〜
赤牙
BL
ある日、森の奥に仕掛けていた罠を確認しに行くと捕獲網に大きなお兄さんが捕まっていた……。
記憶を無くし頭に傷を負ったお兄さんの世話をしたら、どういう訳か懐かれてしまい、いつの間にか僕はお兄さんのご主人様になってしまう……。
森で捕まえた謎の大きなお兄さん×頑張り屋の少年奴隷
大きな問題を抱える奴隷少年に、記憶を無くした謎のスパダリお兄さんが手を差し伸べるお話です。
珍しくR指定ありません(^^)←
もし、追加する場合は表記変更と告知します〜!
転生したら乙女ゲームの攻略対象者!?攻略されるのが嫌なので女装をしたら、ヒロインそっちのけで口説かれてるんですけど…
リンゴリラ
BL
病弱だった男子高校生。
乙女ゲームあと一歩でクリアというところで寿命が尽きた。
(あぁ、死ぬんだ、自分。……せめて…ハッピーエンドを迎えたかった…)
次に目を開けたとき、そこにあるのは自分のではない体があり…
前世やっていた乙女ゲームの攻略対象者、『ジュン・テイジャー』に転生していた…
そうして…攻略対象者=女の子口説く側という、前世入院ばかりしていた自分があの甘い言葉を吐けるわけもなく。
それならば、ただのモブになるために!!この顔面を隠すために女装をしちゃいましょう。
じゃあ、ヒロインは王子や暗殺者やらまぁ他の攻略対象者にお任せしちゃいましょう。
ん…?いや待って!!ヒロインは自分じゃないからね!?
※ただいま修正につき、全てを非公開にしてから1話ずつ投稿をしております
総受けなんか、なりたくない!!
はる
BL
ある日、王道学園に入学することになった柳瀬 晴人(主人公)。
イケメン達のホモ活を見守るべく、目立たないように専念するがー…?
どきどき!ハラハラ!!王道学園のBLが
今ここに!!
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
猫が崇拝される人間の世界で猫獣人の俺って…
えの
BL
森の中に住む猫獣人ミルル。朝起きると知らない森の中に変わっていた。はて?でも気にしない!!のほほんと過ごしていると1人の少年に出会い…。中途半端かもしれませんが一応完結です。妊娠という言葉が出てきますが、妊娠はしません。
【完結】イケメン騎士が僕に救いを求めてきたので呪いをかけてあげました
及川奈津生
BL
気づいたら十四世紀のフランスに居た。百年戦争の真っ只中、どうやら僕は密偵と疑われているらしい。そんなわけない!と誤解をとこうと思ったら、僕を尋問する騎士が現代にいるはずの恋人にそっくりだった。全3話。
※pome村さんがXで投稿された「#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる」向けに書いたものです。元イラストを表紙に設定しています。投稿元はこちら→https://x.com/pomemura_/status/1792159557269303476?t=pgeU3dApwW0DEeHzsGiHRg&s=19
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる