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8.魔王の強欲の向かう先
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だから、どうしてこうなった?!
さっきから必死に考えているのに、思考がうまくまとまらない。
肩に軽く置かれていたはずの手は、今やしっかりとオレの後頭部にまでまわされている。
「~~~っ!!」
口内をねぶる舌が、こちらのそれに絡みつき、じゅるじゅると音を立てる。
それとともに流し込まれているのは、相手の魔力だろうか?
「んっ……はぁ、やめ……っ!」
ともすれば力が抜けてしまいそうになるのを必死にこらえ、無理やり相手の肩を押し返して引きはがせば、おたがいの顔のあいだに透明に光る糸ができ、そしてすぐに切れた。
「フフッ、真っ赤になっちゃって、本当にかわいいな君は……」
そっと頬に小さな手が添えられ、ささやかれる。
そのどこまでも紳士的な態度からは、若干の余裕が感じられた。
「真っ赤なのは、てめぇもおなじだろ!」
クソッ、ガキのクセに、大人をからかうんじゃねぇ!
こっちなんて今のですっかり息が上がったっていうのに、なんでそんなに余裕があんだよ?!
くやしまぎれにそう言って、横を向く。
つーかこんな濃密なキス、はじめて人からされたんだぞ!?
言うなればそれは息苦しさと、それだけではないなにかにクラクラするほどの経験だった。
しかもその相手が、まだ幼い子どもの姿をした魔王、シエルだなんて……!
「大丈夫、はずかしいのは最初のうちだけだよ。そのうちに僕を受け入れてくれればいいから、なんたって時間はたっぷりとあるんだから」
そう言いながらシエルは、オレの額や鼻のあたま、そして頬と次々に音を立ててキスをしてくる。
「冗談、だろ……っ?」
オレをからかうにしても、タチが悪いそれに、情緒が定まらない。
「まさか、僕は至って本気で君のことを欲しているんだ。もう逃がしてあげないから」
なのにシエルは、マジメな顔でそんなことを言う。
なんだよ、その監禁フラグ!?
たしかに、こいつがやけにオレに絡んでくるとは思っていたけれど、それは単なる子どもの執着だと思っていた。
よくあるお気に入りのおもちゃとか、遊び相手とか、そういう幼さゆえの執着だ。
それこそ魔王なんて絶対的な強者、周囲にはライバルなんてそうそういないからこそ、全力で魔法を使えって戦える相手がいたのが楽しくて、それで気に入られているだけなんだと思っていたのに……オレの認識がまちがえていたっていうのか?
そう思ったとたんに、ふいに足もとがゆらいだような気がした。
いや、だってそうだとしたら、その感情はもはや子どもの執着なんてかわいらしいものじゃ済まされない。
それはもう、悪名高き『魔王の執着』だ。
───そうだ、オレたち人間は、敵である魔王について、こう学んできた。
いわく『魔王とは、我々人間よりもはるかに強欲であり、ひとたび気に入れば己が手中に納めんと、世界さえも欲するものである』と。
だからこそ魔王は、この世界の征服を目論むものだし、それはもはや勇者が魔王を討ち取ることでしか止められないのだと。
その魔王がだぞ、万が一世界を欲するようなレベルのその強欲を、ただひとりの人物に向けたとしたらどうなるだろうか?
ゾクゾクゾク────!!
その可能性に気づいた瞬間、背すじに寒気が走る。
ヤバい、ヤバい、それは絶対にヤバいやつだ───!!
絶対に逃げられない、最凶のフラグでしかないものだと、本能がガンガンと警鐘を鳴らしてくる。
そんなオレの顔に、ふっと影が落ちる。
ベッドの上にひざをつき、こちらににじり寄るシエルの金の瞳に映るのは、おびえたようなオレの顔だ。
そんなオレを見て、シエルはうっそりとほほえんだ。
さっきから必死に考えているのに、思考がうまくまとまらない。
肩に軽く置かれていたはずの手は、今やしっかりとオレの後頭部にまでまわされている。
「~~~っ!!」
口内をねぶる舌が、こちらのそれに絡みつき、じゅるじゅると音を立てる。
それとともに流し込まれているのは、相手の魔力だろうか?
「んっ……はぁ、やめ……っ!」
ともすれば力が抜けてしまいそうになるのを必死にこらえ、無理やり相手の肩を押し返して引きはがせば、おたがいの顔のあいだに透明に光る糸ができ、そしてすぐに切れた。
「フフッ、真っ赤になっちゃって、本当にかわいいな君は……」
そっと頬に小さな手が添えられ、ささやかれる。
そのどこまでも紳士的な態度からは、若干の余裕が感じられた。
「真っ赤なのは、てめぇもおなじだろ!」
クソッ、ガキのクセに、大人をからかうんじゃねぇ!
こっちなんて今のですっかり息が上がったっていうのに、なんでそんなに余裕があんだよ?!
くやしまぎれにそう言って、横を向く。
つーかこんな濃密なキス、はじめて人からされたんだぞ!?
言うなればそれは息苦しさと、それだけではないなにかにクラクラするほどの経験だった。
しかもその相手が、まだ幼い子どもの姿をした魔王、シエルだなんて……!
「大丈夫、はずかしいのは最初のうちだけだよ。そのうちに僕を受け入れてくれればいいから、なんたって時間はたっぷりとあるんだから」
そう言いながらシエルは、オレの額や鼻のあたま、そして頬と次々に音を立ててキスをしてくる。
「冗談、だろ……っ?」
オレをからかうにしても、タチが悪いそれに、情緒が定まらない。
「まさか、僕は至って本気で君のことを欲しているんだ。もう逃がしてあげないから」
なのにシエルは、マジメな顔でそんなことを言う。
なんだよ、その監禁フラグ!?
たしかに、こいつがやけにオレに絡んでくるとは思っていたけれど、それは単なる子どもの執着だと思っていた。
よくあるお気に入りのおもちゃとか、遊び相手とか、そういう幼さゆえの執着だ。
それこそ魔王なんて絶対的な強者、周囲にはライバルなんてそうそういないからこそ、全力で魔法を使えって戦える相手がいたのが楽しくて、それで気に入られているだけなんだと思っていたのに……オレの認識がまちがえていたっていうのか?
そう思ったとたんに、ふいに足もとがゆらいだような気がした。
いや、だってそうだとしたら、その感情はもはや子どもの執着なんてかわいらしいものじゃ済まされない。
それはもう、悪名高き『魔王の執着』だ。
───そうだ、オレたち人間は、敵である魔王について、こう学んできた。
いわく『魔王とは、我々人間よりもはるかに強欲であり、ひとたび気に入れば己が手中に納めんと、世界さえも欲するものである』と。
だからこそ魔王は、この世界の征服を目論むものだし、それはもはや勇者が魔王を討ち取ることでしか止められないのだと。
その魔王がだぞ、万が一世界を欲するようなレベルのその強欲を、ただひとりの人物に向けたとしたらどうなるだろうか?
ゾクゾクゾク────!!
その可能性に気づいた瞬間、背すじに寒気が走る。
ヤバい、ヤバい、それは絶対にヤバいやつだ───!!
絶対に逃げられない、最凶のフラグでしかないものだと、本能がガンガンと警鐘を鳴らしてくる。
そんなオレの顔に、ふっと影が落ちる。
ベッドの上にひざをつき、こちらににじり寄るシエルの金の瞳に映るのは、おびえたようなオレの顔だ。
そんなオレを見て、シエルはうっそりとほほえんだ。
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