170 / 188
170:お久しぶりのその音声
しおりを挟む
本当のことを言えば、ここまで好き放題ヤラカシて、そして自分の好きなキャラクター以外を人とも思っていないような態度を取りつづけた相手に、ここがどんな場所なのかを明かすのはどうなのか?って気もしていた。
正直、コイツの仲間の『ペロさん』が奪った権能の力である『物語創作者』は厄介で、この先も妙な改変がくわえられないともかぎらないからなぁ……。
でも、こちらから明かさないかぎり、いかに自分たちがとんでもないことをしでかそうとしていたのかってことを、正しく伝えられそうにないと思ったから。
だからこそ、やむなく真実に言及したわけだ。
本当に『星華の刻』自体を愛するものなら、その世界を大切にする気持ちをまちがいなく持っているハズだと信じて……!
そう期待を込めて、ジッとクレセントを見つめつづけた。
「冗談、だよね……?」
「んなわけあるか!だいたい原典の世界でもなきゃ、俺だってここまで目くじら立てたりなんかしねーっての!」
そうなんだ、これこそが今回の最大の問題点なんだから。
「そもそも俺は、ファンがどんな二次創作をしようと、そこでどんなキャラクター改変をしてもかまわないとは思っているんだ───そこが自分の世界のなかならば、な」
と、そこでゆっくりと相手の顔を見る。
「『自分の世界』……」
「あぁ、二次界隈ならその界隈だけで盛り上がってる分には、公式にとって無害どころか歓迎すべきことだしな」
冗談で済ませるつもりのないマジメな顔をしたままの俺に、クレセントの顔はなんとも形容しがたい表情になっていた。
ロゴの無断使用とか、海賊版の無断転載だとか、そういう権利を侵害するようなことをしなければ、どんな二次創作をしようと公式的には問題ない。
むしろそこに愛を感じれば、『なかの人』としては、ただうれしいだけなんだ。
うちの子たちが、こんなにも多くの人たちから愛されているんだって。
好きになってくれて、ありがとうって。
さっきクレセントに『神ゲー』って言われたときも、本当にうれしかったしな。
だからできることなら無理やり排除するんではなく、本人の反省をうながして、穏便にお引き取り願いたかった。
なら、こう言うしかないよな……?
「いわゆる二次創作をたしなむ人たちには、たしか守らなくちゃいけない不文律があるんだろう?『公式に迷惑をかけちゃいけない』っていうヤツがさ」
「そりゃ、同人活動が法律的にはグレーゾーンなことくらい、ちゃんと自覚しているし」
それはいつか、『歴戦のツワモノ腐女子』を名乗る同僚からも聞いた話だ。
「でも今のあんたたちのしてることは、それに真っ向から反しているようなものなんだ。だって『ペロさん』は、この世界を自分たちの二次創作上でのオリジナル設定に合わせて、改変しようとしてるわけだろ?それって公式にたいして自分たちの二次創作設定を、無理やり押しつけてきてるようなモンなんだからさ」
そうして、淡々と事実を語るように相手のしていることが、いかにおかしいのかを告げた。
「ウソでしょ?!」
「何度も言わせんな、ウソでもないし、冗談でもない。事実だ」
あまりの衝撃に、クレセントは目をかっぴらいて固まっている。
「───ここが『原典』の世界とか、そんなことある?!……でもたしかにあまりにも精度が高すぎるのは事実だよね……。再現度高いなんてもんじゃないし、ならこの人の言うことは本当のことなのかも……??」
ブツブツとつぶやきつづけるクレセントの顔色は、すっかり血の気が引いて真っ青だった。
「自分たちがヤラカシた罪の重さを、ちゃんと理解したか?」
反省して、この世界に侵食してきた『ペロさん』とやらの情報を吐けとうながそうとしたところで、クレセントは真っ青にふるえるくちびるで、懸命に歯を食いしばり、こちらを見つめてきた。
「ん、どうした?」
「た、たしかにここは、ものすごく隅から隅まで『星華の刻』の世界観を再現してる場所だけど!でもっ、ここがそうなんだって、証拠はあるの!?」
そしてこの期におよんでなお、まさかの反論が投げられた。
「『証拠』ねぇ……じゃあ逆に問いかえすけど、なにを見たらおまえはここが『原典』の世界なんだって確信できるんだ?」
「えっ?!そ、それは……」
たぶん深くかんがえていなかったんだろう、俺からの切りかえしにクレセントがまごつく。
「~~~っ、そうだっ、攻略!!無事にベルが攻略を進めて、だれかとくっつくまでを間近で見て、それが僕の知るゲームの内容と一致するなら信じてもいい!」
たしかにそれは、これ以上ない証拠かもしれない。
その一方で、これから先もクレセントがこの世界にとどまりつづけるってことでもあった。
それって、どうなんだ?
不安しかないぞ??
でも……さっきはクレセントに制約をかけて、しゃべれないようにすることはできてたんだよなぁ。
たぶんこの世界を司る女神様の力も、少しは回復してきているのだとしたら。
───いっそのこと、この世界にいてもらったほうが、こちらとしてもクレセントの言動を制限できるのか……?
そう思った瞬間、その声は久しぶりに聞こえてきた。
『世界創造者権限を確認しました。テストプレイユーザーの追加を受諾。なお、テストプレイ中は一部機能が制限されますので、ご注意ください』
「っ!?」
「え、なに?急にビクッとなるとか、どうしたの!?」
まるで機械で合成したようなその声は、どうやら俺にしか聞こえていないようだった。
正直、コイツの仲間の『ペロさん』が奪った権能の力である『物語創作者』は厄介で、この先も妙な改変がくわえられないともかぎらないからなぁ……。
でも、こちらから明かさないかぎり、いかに自分たちがとんでもないことをしでかそうとしていたのかってことを、正しく伝えられそうにないと思ったから。
だからこそ、やむなく真実に言及したわけだ。
本当に『星華の刻』自体を愛するものなら、その世界を大切にする気持ちをまちがいなく持っているハズだと信じて……!
そう期待を込めて、ジッとクレセントを見つめつづけた。
「冗談、だよね……?」
「んなわけあるか!だいたい原典の世界でもなきゃ、俺だってここまで目くじら立てたりなんかしねーっての!」
そうなんだ、これこそが今回の最大の問題点なんだから。
「そもそも俺は、ファンがどんな二次創作をしようと、そこでどんなキャラクター改変をしてもかまわないとは思っているんだ───そこが自分の世界のなかならば、な」
と、そこでゆっくりと相手の顔を見る。
「『自分の世界』……」
「あぁ、二次界隈ならその界隈だけで盛り上がってる分には、公式にとって無害どころか歓迎すべきことだしな」
冗談で済ませるつもりのないマジメな顔をしたままの俺に、クレセントの顔はなんとも形容しがたい表情になっていた。
ロゴの無断使用とか、海賊版の無断転載だとか、そういう権利を侵害するようなことをしなければ、どんな二次創作をしようと公式的には問題ない。
むしろそこに愛を感じれば、『なかの人』としては、ただうれしいだけなんだ。
うちの子たちが、こんなにも多くの人たちから愛されているんだって。
好きになってくれて、ありがとうって。
さっきクレセントに『神ゲー』って言われたときも、本当にうれしかったしな。
だからできることなら無理やり排除するんではなく、本人の反省をうながして、穏便にお引き取り願いたかった。
なら、こう言うしかないよな……?
「いわゆる二次創作をたしなむ人たちには、たしか守らなくちゃいけない不文律があるんだろう?『公式に迷惑をかけちゃいけない』っていうヤツがさ」
「そりゃ、同人活動が法律的にはグレーゾーンなことくらい、ちゃんと自覚しているし」
それはいつか、『歴戦のツワモノ腐女子』を名乗る同僚からも聞いた話だ。
「でも今のあんたたちのしてることは、それに真っ向から反しているようなものなんだ。だって『ペロさん』は、この世界を自分たちの二次創作上でのオリジナル設定に合わせて、改変しようとしてるわけだろ?それって公式にたいして自分たちの二次創作設定を、無理やり押しつけてきてるようなモンなんだからさ」
そうして、淡々と事実を語るように相手のしていることが、いかにおかしいのかを告げた。
「ウソでしょ?!」
「何度も言わせんな、ウソでもないし、冗談でもない。事実だ」
あまりの衝撃に、クレセントは目をかっぴらいて固まっている。
「───ここが『原典』の世界とか、そんなことある?!……でもたしかにあまりにも精度が高すぎるのは事実だよね……。再現度高いなんてもんじゃないし、ならこの人の言うことは本当のことなのかも……??」
ブツブツとつぶやきつづけるクレセントの顔色は、すっかり血の気が引いて真っ青だった。
「自分たちがヤラカシた罪の重さを、ちゃんと理解したか?」
反省して、この世界に侵食してきた『ペロさん』とやらの情報を吐けとうながそうとしたところで、クレセントは真っ青にふるえるくちびるで、懸命に歯を食いしばり、こちらを見つめてきた。
「ん、どうした?」
「た、たしかにここは、ものすごく隅から隅まで『星華の刻』の世界観を再現してる場所だけど!でもっ、ここがそうなんだって、証拠はあるの!?」
そしてこの期におよんでなお、まさかの反論が投げられた。
「『証拠』ねぇ……じゃあ逆に問いかえすけど、なにを見たらおまえはここが『原典』の世界なんだって確信できるんだ?」
「えっ?!そ、それは……」
たぶん深くかんがえていなかったんだろう、俺からの切りかえしにクレセントがまごつく。
「~~~っ、そうだっ、攻略!!無事にベルが攻略を進めて、だれかとくっつくまでを間近で見て、それが僕の知るゲームの内容と一致するなら信じてもいい!」
たしかにそれは、これ以上ない証拠かもしれない。
その一方で、これから先もクレセントがこの世界にとどまりつづけるってことでもあった。
それって、どうなんだ?
不安しかないぞ??
でも……さっきはクレセントに制約をかけて、しゃべれないようにすることはできてたんだよなぁ。
たぶんこの世界を司る女神様の力も、少しは回復してきているのだとしたら。
───いっそのこと、この世界にいてもらったほうが、こちらとしてもクレセントの言動を制限できるのか……?
そう思った瞬間、その声は久しぶりに聞こえてきた。
『世界創造者権限を確認しました。テストプレイユーザーの追加を受諾。なお、テストプレイ中は一部機能が制限されますので、ご注意ください』
「っ!?」
「え、なに?急にビクッとなるとか、どうしたの!?」
まるで機械で合成したようなその声は、どうやら俺にしか聞こえていないようだった。
1
お気に入りに追加
399
あなたにおすすめの小説
悪役が英雄を育てるカオスな世界に転生しました(仮)
塩猫
BL
三十路バツイチ子持ちのおっさんが乙女ソーシャルゲームの世界に転生しました。
魔法使いは化け物として嫌われる世界で怪物の母、性悪妹を持つ悪役魔法使いに生まれかわった。
そしてゲーム一番人気の未来の帝国の国王兼王立騎士団長のカイン(6)に出会い、育てる事に…
敵対関係にある魔法使いと人間が共存出来るように二人でゲームの未来を変えていきます!
「俺が貴方を助けます、貴方のためなら俺はなんでもします」
「…いや俺、君の敵……じゃなくて君には可愛いゲームの主人公ちゃんが…あれ?」
なにか、育て方を間違っただろうか。
国王兼王立騎士団長(選ばれし英雄)(20)×6年間育てたプチ育ての親の悪役魔法使い(26)
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
王道学園なのに、王道じゃない!!
主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。
レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…
悪役令息に転生しましたが、なんだか弟の様子がおかしいです
ひよ
BL
「今日からお前の弟となるルークだ」
そうお父様から紹介された男の子を見て前世の記憶が蘇る。
そして、自分が乙女ゲーの悪役令息リオンでありその弟ルークがヤンデレキャラだということを悟る。
最悪なエンドを迎えないよう、ルークに優しく接するリオン。
ってあれ、なんだか弟の様子がおかしいのだが。。。
初投稿です。拙いところもあると思いますが、温かい目で見てくださると嬉しいです!
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
乙女ゲーの悪役に転生したらハーレム作り上げてしまった
かえで
BL
二十歳のある日、俺は交通事故に遭い命を終わらせた…
と思ったら何故か知らない世界で美少年として産まれていた!?
ていうかこれ妹がやってた乙女ゲーの世界じゃない!?
おいお前らヒロインあっち、俺じゃないってば!ヒロインさん何で涎垂らしてるのぉ!?
主人公総受けのハーレムエンドになる予定です。シリアスはどこかに飛んで行きました
初投稿です
語彙力皆無なのでお気をつけください
誤字脱字訂正の方は感想でおっしゃって頂けると助かります
豆腐メンタルの為、内容等に関する批判は控えて頂けると嬉しいです
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる