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163:両者の溝は厳然として横たわる
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この世界に侵食してきた『ペロさん』がしたことは、言うなれば己の欲望に忠実に、たとえそれが元々の世界観に反することだとしても、気にせずにその権能の力をふるったということでしかない。
そしてクレセントは、それに全力で乗っかった。
それこそ本来ならブレイン殿下とならんで『星華の刻』の二大腹黒キャラクターと称されるようなパレルモ様を、『純粋無垢』というキャラ設定のもとに白痴化させ、周囲から溺愛されるだけのシナリオをこの世界へと押しつけてきたわけだ。
これは本来の設定を無視した、とんでもない改悪と言えなくもないわけで。
「はぁ?!なんでそんなこと、あなたに言われなきゃならないんだよ!余計なことって……ヒロインがパレくんと仲良くすることなんて、あたりまえのことじゃん!なのになんで僕が糾弾されなきゃいけないんだよ?!」
クレセントは顔を赤くしていきどおる。
「そりゃ、おまえがパレルモ様と仲良くしているだけなら、問題はなかっただろうな」
───そう、正直なところクレセントだって、パレルモ様との親密度を上げていただけなら、そのままこの夢のような世界で楽しい生活を送れていたハズだった。
あんな改変をされていたとしても、もとをただせばパレルモ様だって、攻略対象キャラクターのひとりなんだ。
想いを寄せるヒロインのベルと結ばれるなら、たとえその性別が男でも問題ないと、俺だって見逃していたかもしれなかった。
なのに彼はわざわざ俺に冤罪をふっかけて陥れ、強制的に断罪タイムに突入させようとした。
それがめぐりめぐって、結果的に自らの首を絞めることにつながっていたというのは、もはや自業自得でしかないだろ!?
なのにクレセントは、俺のかんがえ方が気に入らなかったらしい。
格子をつかむと、思いっきりこちらをにらみつけてくる。
「そっちだって余計なことしてるクセに!テイラーなんて金魚のフン、パレくんのためになら、いくら犠牲にしようと問題ない存在のハズなのにさ!!なに勝手に自我とか芽生えさせてんだよ!」
カッとなったクレセントは、感情のままにさけんでくる。
「え……?」
───なんなんだよ、それ!?
あまりにも理不尽すぎる言いがかりじゃないか?!
俺がヒロインよろしく、各キャラクターの攻略を進めてしまっていたことを怒るならまだわかる。
だってテイラーは、『星華の刻』の主人公ではないのだから。
なんなら、俺からも積極的に同意を示してもいいくらいだ。
けれど今、クレセントはなんて言った?
『なに勝手に自我とか芽生えさせてんのさ』だ。
おいおい、テイラーに自我があることにまで怒るのは、さすがにそれは横暴すぎる苦情というモンだろ!!
「はぁ~~、あんたもわからない人だな!さっきから俺が言ってることの意味、ちゃんと理解しようとしてるのか?『俺』がここに来ようが来まいが関係なく、元からテイラーだってこの世界で生きるひとりの人間なんだ、自我くらいあるに決まってるだろ……」
どうしよう、こんなあたりまえのこと、あらためて説明しなきゃいけないことか?
「なんだよ、その上から目線な言い方!たかがテイラーのクセに、何様のつもりだよっ!?」
そんな俺にたいして激昂するクレセントには、まともな論理なんてなくて、もはや気にくわないからとカンシャクを起こす子どものようでしかなかった。
───うん、どうしても目の前にいるコイツとは、わかり合える気がしない。
本当に、さっきよりも頭痛がヒドくなってきた気さえする。
一瞬ふらつきそうになって、あわててふんばった。
「………こんなの、上から目線でもなんでもないだろ?現におまえだって、この世界の住人と話してみればわかったハズだろ?判を押したようにおなじ発言しかしないゲームのなかのモブキャラたちとちがって、この世界にいる皆は、ちゃんと生きている人間なんだってことくらい」
どんなに高性能なAIがついていたって、こんなになめらかな会話が成り立つハズないのは、さすがに気がついているだろうに。
「モブが生きてる人間だとか、そんなのどうでもいいし!僕にとっては、パレくんが周囲から愛されてるってことのが大事なの!」
あいかわらずクレセントの主張は、いきおいだけはあるけれど、まったく論理的ではない。
「だったら、その周囲から愛される理由をしっかり描けって言ってるんだよ、俺は」
それこそが『星華の刻』の世界観の根底にある、『必然』の部分として大事なんだから……。
でもその前提となる部分が省略されているのが、今回のいちばんの問題なんだってば。
「は?!パレくんがかわいくてえっちなのにピュアなショタっ子なのは、世界の真理ですけど?!」
「だから、それはおまえのなかの常識だけでの話だろ?!」
俺が言いたいのは、そうじゃなくて、第三者の目線から見ても合理的な説明のつく理由を、きちんと用意しろということなのに。
「僕だけじゃないですぅ~!実際、ペロさんの描くパレくんはそういうキャラで大人気なんだから!マンガやイラストをネットに上げればイイネの嵐だし、オフにしたって毎回壁サーで列整理のスタッフが出るくらい大人気なんだからね!なにも知らないクセに、エラそうなこと言わないで!!」
ともすれば裏返りそうな声で主張するクレセントからは、主張する内容の是非はさておき、必死なことだけは伝わってくる。
あぁ、もうマジでクラクラしてきた。
それになんだか視界も、どことなく暗く感じる気さえする。
まちがいなく悪化してきたコンディションに、早く決着しろと願わずにはいられなかった。
そしてクレセントは、それに全力で乗っかった。
それこそ本来ならブレイン殿下とならんで『星華の刻』の二大腹黒キャラクターと称されるようなパレルモ様を、『純粋無垢』というキャラ設定のもとに白痴化させ、周囲から溺愛されるだけのシナリオをこの世界へと押しつけてきたわけだ。
これは本来の設定を無視した、とんでもない改悪と言えなくもないわけで。
「はぁ?!なんでそんなこと、あなたに言われなきゃならないんだよ!余計なことって……ヒロインがパレくんと仲良くすることなんて、あたりまえのことじゃん!なのになんで僕が糾弾されなきゃいけないんだよ?!」
クレセントは顔を赤くしていきどおる。
「そりゃ、おまえがパレルモ様と仲良くしているだけなら、問題はなかっただろうな」
───そう、正直なところクレセントだって、パレルモ様との親密度を上げていただけなら、そのままこの夢のような世界で楽しい生活を送れていたハズだった。
あんな改変をされていたとしても、もとをただせばパレルモ様だって、攻略対象キャラクターのひとりなんだ。
想いを寄せるヒロインのベルと結ばれるなら、たとえその性別が男でも問題ないと、俺だって見逃していたかもしれなかった。
なのに彼はわざわざ俺に冤罪をふっかけて陥れ、強制的に断罪タイムに突入させようとした。
それがめぐりめぐって、結果的に自らの首を絞めることにつながっていたというのは、もはや自業自得でしかないだろ!?
なのにクレセントは、俺のかんがえ方が気に入らなかったらしい。
格子をつかむと、思いっきりこちらをにらみつけてくる。
「そっちだって余計なことしてるクセに!テイラーなんて金魚のフン、パレくんのためになら、いくら犠牲にしようと問題ない存在のハズなのにさ!!なに勝手に自我とか芽生えさせてんだよ!」
カッとなったクレセントは、感情のままにさけんでくる。
「え……?」
───なんなんだよ、それ!?
あまりにも理不尽すぎる言いがかりじゃないか?!
俺がヒロインよろしく、各キャラクターの攻略を進めてしまっていたことを怒るならまだわかる。
だってテイラーは、『星華の刻』の主人公ではないのだから。
なんなら、俺からも積極的に同意を示してもいいくらいだ。
けれど今、クレセントはなんて言った?
『なに勝手に自我とか芽生えさせてんのさ』だ。
おいおい、テイラーに自我があることにまで怒るのは、さすがにそれは横暴すぎる苦情というモンだろ!!
「はぁ~~、あんたもわからない人だな!さっきから俺が言ってることの意味、ちゃんと理解しようとしてるのか?『俺』がここに来ようが来まいが関係なく、元からテイラーだってこの世界で生きるひとりの人間なんだ、自我くらいあるに決まってるだろ……」
どうしよう、こんなあたりまえのこと、あらためて説明しなきゃいけないことか?
「なんだよ、その上から目線な言い方!たかがテイラーのクセに、何様のつもりだよっ!?」
そんな俺にたいして激昂するクレセントには、まともな論理なんてなくて、もはや気にくわないからとカンシャクを起こす子どものようでしかなかった。
───うん、どうしても目の前にいるコイツとは、わかり合える気がしない。
本当に、さっきよりも頭痛がヒドくなってきた気さえする。
一瞬ふらつきそうになって、あわててふんばった。
「………こんなの、上から目線でもなんでもないだろ?現におまえだって、この世界の住人と話してみればわかったハズだろ?判を押したようにおなじ発言しかしないゲームのなかのモブキャラたちとちがって、この世界にいる皆は、ちゃんと生きている人間なんだってことくらい」
どんなに高性能なAIがついていたって、こんなになめらかな会話が成り立つハズないのは、さすがに気がついているだろうに。
「モブが生きてる人間だとか、そんなのどうでもいいし!僕にとっては、パレくんが周囲から愛されてるってことのが大事なの!」
あいかわらずクレセントの主張は、いきおいだけはあるけれど、まったく論理的ではない。
「だったら、その周囲から愛される理由をしっかり描けって言ってるんだよ、俺は」
それこそが『星華の刻』の世界観の根底にある、『必然』の部分として大事なんだから……。
でもその前提となる部分が省略されているのが、今回のいちばんの問題なんだってば。
「は?!パレくんがかわいくてえっちなのにピュアなショタっ子なのは、世界の真理ですけど?!」
「だから、それはおまえのなかの常識だけでの話だろ?!」
俺が言いたいのは、そうじゃなくて、第三者の目線から見ても合理的な説明のつく理由を、きちんと用意しろということなのに。
「僕だけじゃないですぅ~!実際、ペロさんの描くパレくんはそういうキャラで大人気なんだから!マンガやイラストをネットに上げればイイネの嵐だし、オフにしたって毎回壁サーで列整理のスタッフが出るくらい大人気なんだからね!なにも知らないクセに、エラそうなこと言わないで!!」
ともすれば裏返りそうな声で主張するクレセントからは、主張する内容の是非はさておき、必死なことだけは伝わってくる。
あぁ、もうマジでクラクラしてきた。
それになんだか視界も、どことなく暗く感じる気さえする。
まちがいなく悪化してきたコンディションに、早く決着しろと願わずにはいられなかった。
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