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157:それはまるでキラキラなエフェクトのごとく

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 不機嫌さの残る顔で、まるで値踏みでもするかのようにこちらをじっと見つめてくるニセモノベルに、なんだか居たたまれない気持ちになる。
 そんなにしみじみと見られると、なにも問題はないハズなのに、落ちつかなくなるんだが?!

「なんだよ?そんなにじろじろ見て」
「───いや、なんかこう、僕の知っている姿とおなじビジュアルのハズなのに、なんか妙にキラキラして見えるなと思って」
「うん?キラキラ?」

 気まずさをごまかすように話を振れば、想定外のセリフがかえってきた。
 俺がキラキラして見えるって、どういうことだ??

「……あぁ、着ているカーディガンの色がちがうからとか、制服の仕立てがいいからとか?『馬子にも衣装』的なアレで。それにピアスとかも、原作じゃつけてなかっただろ」
 たぶん原作のゲームのなかでのテイラーは、家紋カラーのモスグリーンのカーディガンを愛用していたハズで、特に宝飾品だって身につけてはいなかったハズ。

「ちがうし!ていうか、なにそれ紫づくしとか、あからさまにブレイン様からの贈り物感満載なんだけど、自慢かよ!?」
「ごめん、そういうつもりじゃないってば!」
 どうせテイラーのことなんておぼえてないだろうと、原作とのちがいをあげてみれば、なぜだかキレられた。

「じゃあ、そのブレイン殿下の色だからこそ、ものめずらしさでレア度がアップして、なぞのエフェクトかかって見えるとかじゃないのか?」
「~~~、そういうんじゃなくて、ふつうに似合ってるからムカつくんだよ!」
 代替案を出してみたら、今度はキレ気味に褒められて、どうしていいかわからない。

「あのね、教室ではじめてあなたを見たときは、すでに今とおなじ格好してたでしょ。でも僕の知っているパレくんの取りまき要員のひとりでしかないテイラーっていうか、いかにもモブっぽいヤツに見えたんだよね。なのに今は、なんていうかメインキャラみたいに目立って見えるというか……」
 もどかしげに言葉をつむぐ様子に、とりあえず黙って先をうながす。

「~~っ、アレだ!今のあなたはさ、原作のテイラーよりも表情豊かで、いかにも『受け』くさいんだよ!!うん、それだわ!受けちゃんがヒロインムーブメント中なときと、おんなじキラキラ感がにじんでくるんだわ」
「ハァッ?!」
 ひらめいたとばかりに、パァッと明るい顔で言われたところで、ハイそうですかとはならないだろ!

「でも実際のところ、あの査問会のときのあなたを見てるかぎり、パレくんよりもよっぽど攻略対象キャラが落とされてる感じがしたし……ブレイン様なんて超絶メロメロだし、セラーノまで完落ちしてたよね!?あり得なくない?!ふたりとも隠し攻略キャラなのにさ!もはやあなたが総受けか!ってなるしかないでしょ、これ!!」
 ニセベルからのツッコミは、妙に耳に痛く感じる。

「うっ……でもたぶん肝心のパレルモ様からは嫌われてると思うし、フィリウス・ブルーに至っては、まだ出会ってすらないからな?!第一、ブレイン殿下にしたって、きっかけは不本意というか、想定外の事故みたいなモンだったんだってば!!」
 でも断じては、俺が望んだ展開なんかじゃない!
 そこだけは、俺の名誉のためにも言わせてほしい。

「はあ?!想定外って、どういうことだよ説明して!?……つーかパレくんからも溺愛されてたら、僕が嫉妬のあまりに殺してるっつーの!それにフィリウスは後半からのレアキャラじゃん?まだ出会ってなくて当然だってば!」
 腰に手をあて、堂々と言い切られた。

「うぅっ……いや、それはそうなんだけど……」
 ダメだ、会話の主導権が取られる。
 そもそものところ、俺自身がこの件に関してはいくら女神様からは問題ないと言われていても、勝手に自分のなかで解釈ちがいを起こして納得できずにいるんだよな。

「それ!そういう顔するところとかが、めちゃくちゃ受けくさいんだよ!」
「はっ?なに、どういうこと??」
 待ってくれ、まったくもって意味がわからない。

 そんなことを言われても、テイラーの顔は神絵師様のおかげでそこそこイケメンには描かれているものの、受け認定をされるほど、かわいらしい顔にはなりようもないと思うんだが??
 俺だってテイラーは、この世界においてはただのモブだと思っているし、二次創作においてだって、受けか攻めかで言えば、たぶん攻めのほうじゃないかと思っているんだけどな……。

「だーかーらー!そういう悩む姿とか、めちゃくちゃ隙だらけだし、はずかしがる姿とか『どこの乙女だよ?!』って感じだったし、なーんかまとう雰囲気も人妻並みにエロいんだってば!啼かせたくなる顔してるっていうのかな、押し倒してブチ犯したくなる顔してるんだわ」
 なのにニセベルはさも当然という顔をして、とんでもないことを言ってくる。

「ひぇ、なにそれ怖い」
「だって事実だし」
「いやいやいや、事実じゃないだろそれ!めちゃくちゃおまえの主観入ってるから!!」
 やめてくれよ、この前ゴリラにもおなじようなこと言われたばっかりなんだぞ?!

「えー、なーんか怪しくない?心あたりがありそうな感じするけど?」
「つーか、そんなに俺って泣かせてやりたくなるほど、ふてぶてしい顔なのか……?」
 この件に関しては、たぶんだれに聞いても過剰反応されそうだからこそ、ここで第三者的な意見を聞いてみたい気持ちもあった。

「その反応……てことはやっぱりだれかに言われたんだね?!そこんところ、くわしく!つーか待って、よく見たらなんかケガしてんだけど……ひょっとして無理やり襲われた的な……?ヤダ、マジでヒロインムーブメント中すぎない!?」
「ちがうから!」
 そこはぜひとも誤解のないよう、きっちり否定させてもらいたい。

「でも……ペロさんが『テイラーなんて抵抗できないうちにヤラれてしまえ』って息巻いてたから、てっきりそんな展開になったのかと……」
「むしろそのペロさんの殺意が強すぎて、貞操の危機の前に、命の危機がおとずれてたところだよ!!」
 いきおいに乗って言いかえしたところで、ハッと気がつく。

 ひょっとしなくても、今コイツが口にした『ペロさん』って、じゃないか───?!
 突然もたらされた重要情報に、ドキリとして、心臓は大きく脈打った。
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