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145:うちの子は特別かわいいもの

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 いやいやいや……うちの子にかぎって、俺と仲がいいくらいでドヤったりはしないだろ!
 なに言ってるんだろうな、カイエンは。
 ……なんて思っていたら。

「まぁ仕方ないな、なにしろオレはテイラーの『特別』な存在だからな」
 ふりかえった俺の目に飛び込んできたのは、カイエンたちに向かって胸をそらす、うちの子の姿だった。

 はあぁ?!
 なんだよ、かわいすぎか!!?
 そんなことでドヤ顔とかしちゃうんだ、セブンてば!?

「クソッ、オレらよりも一歩リードしてるっていうマウントかよ!」
 なんでカイエンも、そこでくやしそうに歯噛みしちゃうかな?!
 別にそんなの、なんの自慢にもならないだろうに。

「そ、そうだ!聞き捨てならんぞ、スコーピオン!ダグラスは『』兄上の恋人だ!兄上ならばいざ知れず、なにゆえ貴様が『特別』な存在なのだ!?」
 リオン殿下まで、なんで張り合おうとしてるんですかね……??

「なにゆえと問われましても、前に本人から直接言われましたものですから」
「なんだ、と……っ!?」
 そしてセブンも、しれっと胸を張りなおしてるの、ホントかわいいんだけどさー!
 それ、さりげなくリオン殿下にたいして『慇懃無礼』というヤツになっちゃってるからね!?

「……なぁテイラー、なんで急にこんなモテモテになってんの?」
 ベッドに身を起こした状態の俺のひざの上にしがみついたままのジミーが、ふしぎそうに問いかけてくるのが、なんとも気まずかった。

「そんなの、こっちが聞きたいくらいだよ……」
 女神様いわく、俺自身がそれぞれのキャラクターの攻略を進めているらしいけど、でもあの原作ゲームには全員から同時にモテるようなハーレムエンドなんて都合のいいエンディング、ないハズなのにな?

 ───というより、そもそも『星華せいかとき』のジャンルは乙女ゲームであって、断じてBLゲームではないハズなのに……!!
 俺がモテてどうするんだよ?!

「ちょっと待て、ダグラス!貴様、兄上というものがありながら、スコーピオンを口説くとはなにごとだ!?」
「えぇっ!?」
 油断をしていたら、直接流れ弾がこちらに向かって飛んできた。

「そんな『特別だ』などと言って笑いかけたとは、なんともうらやま……ゴホン!いや、もはやそれは口説いているも同然であろう!どういうことなのか、聞かせてもらおうか!」
 いつのまにこちらに来たのか、腕組みをしたリオン殿下が、目の前に立ちはだかる。

 キラキラの宝石みたいな澄んだ青い瞳に金髪って組み合わせは、まさに『王子様』を体現していると思う。
 あらためてこうして真正面から見ると、いやはやイケメンすぎるというか、絵面がきらびやかすぎるだろ。
 さすがは本編メインの、攻略対象キャラクターだけある。

「……申し訳ありませんリオン殿下!えぇと、セブンが……なんでしたっけ?」
 あらためて目前にあるその姿に、うっかり見とれてしまってから、ハッと気がついた。

「だからっ、なにゆえスコーピオンがテイ……っ、ダグラスの『特別』な存在たりえるのだっ!?」
「いや、その……」
 気のせいだろうか、今一瞬『テイラー』って名前のほうを呼ばれかけたような気がするんだけど……。

「あの、自分にとってセブンは……おはずかしながら、はじめてかつ唯一と言ってもいい友人なので……」
 本当は語るんなら『うちの子』だっていうのは、はずせない部分なんだけど、さすがにそれをこの場で口にするわけにはいかないしな。

 でも、セブンがはじめてにして唯一の友人ってのは、正しいと思う。
 これまでのテイラーには、友だちらしい存在なんてまったくいなかったし。
 いつもパレルモ様の取りまきとして、周囲ににらみを利かせているか、最近ではブレイン殿下とばかりすごしているもんなぁ……。

「えーっ!?じゃあオレは?!」
「う~ん、ジミーは友だちっていうよりは……パレルモ様に仕えるもの同士という意味での『仲間』とか『同志』っていうか……それになんか弟みたいな感じっていうか……」
「うぅん、そう言われると、そんな気もするような……?」

 単純なジミーは、それで納得してくれたけれど、リオン殿下はどことなく納得してない顔だった。
 まぁ、『はじめてかつ唯一の友人だから特別だ』っていうのは、あまりにも幼すぎる理由だもんな……。

「───そうだな……どれくらい特別かというと、オレはテイラーのほうから抱きついてきてくれるし、泣き顔だって見たこともあるしな。あとは、おたがいにあたまをなで合う仲だ!」
「ンンッ!」
 ドヤァと音がしそうな顔で自慢をするうちの子、マジ天使!!

「「クソッ、盛大なマウント取りやがってっ!!」」
 なぜかハモるリオン殿下とカイエンのセリフは、耳を素どおりしていく。

「「あたまなら、オレだってなでたいんだけど?!」」
「「いや、遠慮しよう」」
 そして今度は、カイエンがセブンに、ジミーが俺に向かって手をのばしてくるのを、すげなくあしらうその声もまた、見事にハモっていた。

 あぁ、うちの子と俺は、気が合うなぁ……。
 本当にささいなことかもしれないけれど、こんなことでさえも、うれしかった。
 あらためてセブンにたいするいとおしさが、胸のなかにあふれかえる。

「はー、もうマジで俺のセブンがかわいい~~」
 そのせいで、気がつけば必死におさえたハズの口もとから、うちの子にたいする愛がダダもれていた。

「『俺の』だと……?」
「え?」
 うつむいて、ふるえていたと思ったら、急にリオン殿下が顔をあげる。

「認めん!断じて認めんぞ、スコーピオンだけを特別あつかいするとは、どういう了見だ!俺だっての『特別』になりたい!」
「え……?えぇっ??」
 正面切って、ガシッと両肩をつかまれる。

 突然の急展開に、あたまがついていけない。
 だから、なんで俺が攻略対象キャラクターたちから、いきなりモテてるんだよ?!
 あまりの情報過多に、脳みそのキャパオーバーを起こしてしまいそうだった。
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