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144:うちの子と俺の距離は近いらしい
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いや、ちょっとだけ気まずい。
俺からしてみれば、セブンはかわいい我が子みたいなものだけど、向こうはそんなこと知らないんだもんな?
あらためて、そこら辺は気をつけなければいけないよな……。
「───本当にいいのか、セブン?」
必死になってテイラーらしい、無表情に近い顔を取りつくろおうとしたけれど、はたして本当にできていただろうか?
「あぁ、どうせあんたは止めてもムダなんだろ?だったら下手に反対するより、オレがそばについててやったほうが、あんたを守ってやれるからな」
うっ、うちの子が男前すぎる……!!
ダメだ、こんなのホレるの不可避だろ!
「ありがとう、セブン……!」
「別に……」
あふれる感謝をおさえきれずにお礼を言えば、いかにもなこたえがかえされた。
出た、ツンデレ!
これぞセブンって感じがするよな~!
照れたようにかすかにほっぺたを赤くして、そっぽを向くセブンは、あまりにも公式ツンデレ気味設定のとおりで、いとおしさがあふれかえってしまいそうだった。
あーもう、うちの子最高すぎるだろ!!
「なるほど……そういうことなら俺も付き添おう。これでも王族のひとりだからな、俺がついていれば、たいていの場所は自由に行けるだろう」
「えぇっ!?よろしいんですか?」
「あぁ、かまわん」
そんなふうにデレデレしていたら、今度はリオン殿下までもが乗ってきた。
「ンー、医者としては体力も回復しきってナイときに、歩きまわルのはオススメできナインだけどネェ……あのネ、さっきは『強めの薬』って言ッタけど、麻痺薬なンて強すぎてほとんど毒に近かッタンだヨ?」
ひと目で心配しているのがわかるような、そんな顔と口調で説明される。
でもあのとき『毒じゃない』って、ロコトは言ってたハズなのに……?
てことは、ロコトもだまされてたってことなのか?
そうして説明されたのを聞けば、どうやら俺が嗅がされたのは、主に麻痺の効果がある薬品と強めの睡眠薬をまぜたものだったらしい。
若干言葉は濁されていたけれど、既存のものではなさそうというか、出どころが不明のものみたいだしな。
そりゃそうか、もし俺の推測があたっているなら、それを用意したのは『魅了香』なんて見知らぬ危険な薬物を、この世界に持ち込みやがった侵食者だもんな?
既存の薬品類とは、成分構成がちがっていてもあたりまえだ。
ちなみに、そんな未知の薬品にまぜられていた麻痺薬のほうは、かなり違法瀬戸際な材料で作られていて、放っておけば俺は呼吸困難に陥っていたかもしれないということらしかった。
───それ、麻痺薬どころか、もはや神経毒に近いモンなんじゃねぇの!?
あらためて突きつけられた現実に、背すじがゾッとする。
あまりのことに血の気が引き、一度はセラーノ先生にからかわれたおかげでもどった顔色も、心なしかふたたび悪くなってしまったような気もする。
いや、それでも懲罰房には、行かなきゃなんないんだけども。
「安心しろ、テイラーが自分で歩けなかったとしても、オレがかかえて行けばいいだけの話だ」
「えっ……?ちょっと待って!?」
さらりとなんでもないことのようにかえすセブンの発言は、しかし聞き逃すわけにいかなかった。
「遠慮するな、あんたくらいなら余裕で抱きあげられる。前に一度そうしたことがあったが、まったく問題なかった」
「えっ??はっ??!」
いや、待てって、かかえて行くってどういうことだよ!?
それに『前に一度そうしたことがあった』って、たぶん授業中のボールぶつかり事件のときのことだよな!?
あれってたしか、俺のこと保健室までセブンがお姫さま抱っこで運んだとか言ってなかったか??
「~~っ、歩いてく!ちゃんと自分で歩けるからな!?」
「あんたを守るのはオレの役目だし、ワガママも言っていい。遠慮なんてするな。オレはあんたよりも背は低いかもしれないが、体力的な意味では、まったくもって余裕だぞ?」
冗談じゃないと拒否すれば、とんでもないトキメキ爆弾なセリフがかえされる。
「あああ、もうっ!セブンのそういうとこ、男前でカッコいいと思うけどさ!俺にも男としてのプライドってモンがあるんだよ!」
「むぅ、そういうことなら仕方ないが……」
ちょっとセブンさんや、そこでなんで残念そうにしてんだよ?!
「とにかくっ、心配でも肩貸してくれれば、それだけでいいからっ!」
「承知した。まかせとけ、必ずあんたを紫殿下のもとまで無事に連れていってやるさ」
うっ、やっぱりうちの子、カッコよすぎだろ!!
そうして、なんとか自力歩行を勝ち取ったところで、ふとこちらにたいして妙な視線がふりそそいでいることに気がついた。
「ん?どうしたんだ、みんな?」
視線の主は、ジミーとカイエン、そしてリオン殿下だった。
それぞれがあっけに取られたような、そんな顔をしている。
「いや……なんていうか、テイラーとセブンて、めっちゃ仲いいんだな?!なんかズルくねぇ!?」
そんななか、真っ先にジミーが声をあげた。
えぇっ、ズルいって、どういう意味だ?
「だってさ、こんなかじゃオレがいちばんテイラーとの付き合い長いんだよ?!なのに、これまで全然笑顔とか見たことなかったし、カッコいいとかほめられたこともないし!!セブンばっかり、ズリィよ!」
「なんだよ、それ」
子どもみたいに、ほっぺたをふくらませて文句を言うジミーに、思わず苦笑がもれる。
「それなっ!!なんとなく最近仲よさげなのは知ってたけど、ふたりでいるとおたがいに自然と表情が豊かになるってか……ぶっちゃけふたりだけの世界になってて妬けるんだよな!」
「カイエンまで、なに言ってんだよ!?」
ふたりだけの世界なんて、作ったつもりないんだけども??
「だってさぁ、こういう話したとき、前までならセブンは我関せずって顔してたと思うのに、見ろよあの顔!」
「うん……?」
はてなマークを飛ばしまくる俺を見かねたのか、カイエンが解説をしてくれたものの、その内容はだいぶ想定外なものだった。
俺からしてみれば、セブンはかわいい我が子みたいなものだけど、向こうはそんなこと知らないんだもんな?
あらためて、そこら辺は気をつけなければいけないよな……。
「───本当にいいのか、セブン?」
必死になってテイラーらしい、無表情に近い顔を取りつくろおうとしたけれど、はたして本当にできていただろうか?
「あぁ、どうせあんたは止めてもムダなんだろ?だったら下手に反対するより、オレがそばについててやったほうが、あんたを守ってやれるからな」
うっ、うちの子が男前すぎる……!!
ダメだ、こんなのホレるの不可避だろ!
「ありがとう、セブン……!」
「別に……」
あふれる感謝をおさえきれずにお礼を言えば、いかにもなこたえがかえされた。
出た、ツンデレ!
これぞセブンって感じがするよな~!
照れたようにかすかにほっぺたを赤くして、そっぽを向くセブンは、あまりにも公式ツンデレ気味設定のとおりで、いとおしさがあふれかえってしまいそうだった。
あーもう、うちの子最高すぎるだろ!!
「なるほど……そういうことなら俺も付き添おう。これでも王族のひとりだからな、俺がついていれば、たいていの場所は自由に行けるだろう」
「えぇっ!?よろしいんですか?」
「あぁ、かまわん」
そんなふうにデレデレしていたら、今度はリオン殿下までもが乗ってきた。
「ンー、医者としては体力も回復しきってナイときに、歩きまわルのはオススメできナインだけどネェ……あのネ、さっきは『強めの薬』って言ッタけど、麻痺薬なンて強すぎてほとんど毒に近かッタンだヨ?」
ひと目で心配しているのがわかるような、そんな顔と口調で説明される。
でもあのとき『毒じゃない』って、ロコトは言ってたハズなのに……?
てことは、ロコトもだまされてたってことなのか?
そうして説明されたのを聞けば、どうやら俺が嗅がされたのは、主に麻痺の効果がある薬品と強めの睡眠薬をまぜたものだったらしい。
若干言葉は濁されていたけれど、既存のものではなさそうというか、出どころが不明のものみたいだしな。
そりゃそうか、もし俺の推測があたっているなら、それを用意したのは『魅了香』なんて見知らぬ危険な薬物を、この世界に持ち込みやがった侵食者だもんな?
既存の薬品類とは、成分構成がちがっていてもあたりまえだ。
ちなみに、そんな未知の薬品にまぜられていた麻痺薬のほうは、かなり違法瀬戸際な材料で作られていて、放っておけば俺は呼吸困難に陥っていたかもしれないということらしかった。
───それ、麻痺薬どころか、もはや神経毒に近いモンなんじゃねぇの!?
あらためて突きつけられた現実に、背すじがゾッとする。
あまりのことに血の気が引き、一度はセラーノ先生にからかわれたおかげでもどった顔色も、心なしかふたたび悪くなってしまったような気もする。
いや、それでも懲罰房には、行かなきゃなんないんだけども。
「安心しろ、テイラーが自分で歩けなかったとしても、オレがかかえて行けばいいだけの話だ」
「えっ……?ちょっと待って!?」
さらりとなんでもないことのようにかえすセブンの発言は、しかし聞き逃すわけにいかなかった。
「遠慮するな、あんたくらいなら余裕で抱きあげられる。前に一度そうしたことがあったが、まったく問題なかった」
「えっ??はっ??!」
いや、待てって、かかえて行くってどういうことだよ!?
それに『前に一度そうしたことがあった』って、たぶん授業中のボールぶつかり事件のときのことだよな!?
あれってたしか、俺のこと保健室までセブンがお姫さま抱っこで運んだとか言ってなかったか??
「~~っ、歩いてく!ちゃんと自分で歩けるからな!?」
「あんたを守るのはオレの役目だし、ワガママも言っていい。遠慮なんてするな。オレはあんたよりも背は低いかもしれないが、体力的な意味では、まったくもって余裕だぞ?」
冗談じゃないと拒否すれば、とんでもないトキメキ爆弾なセリフがかえされる。
「あああ、もうっ!セブンのそういうとこ、男前でカッコいいと思うけどさ!俺にも男としてのプライドってモンがあるんだよ!」
「むぅ、そういうことなら仕方ないが……」
ちょっとセブンさんや、そこでなんで残念そうにしてんだよ?!
「とにかくっ、心配でも肩貸してくれれば、それだけでいいからっ!」
「承知した。まかせとけ、必ずあんたを紫殿下のもとまで無事に連れていってやるさ」
うっ、やっぱりうちの子、カッコよすぎだろ!!
そうして、なんとか自力歩行を勝ち取ったところで、ふとこちらにたいして妙な視線がふりそそいでいることに気がついた。
「ん?どうしたんだ、みんな?」
視線の主は、ジミーとカイエン、そしてリオン殿下だった。
それぞれがあっけに取られたような、そんな顔をしている。
「いや……なんていうか、テイラーとセブンて、めっちゃ仲いいんだな?!なんかズルくねぇ!?」
そんななか、真っ先にジミーが声をあげた。
えぇっ、ズルいって、どういう意味だ?
「だってさ、こんなかじゃオレがいちばんテイラーとの付き合い長いんだよ?!なのに、これまで全然笑顔とか見たことなかったし、カッコいいとかほめられたこともないし!!セブンばっかり、ズリィよ!」
「なんだよ、それ」
子どもみたいに、ほっぺたをふくらませて文句を言うジミーに、思わず苦笑がもれる。
「それなっ!!なんとなく最近仲よさげなのは知ってたけど、ふたりでいるとおたがいに自然と表情が豊かになるってか……ぶっちゃけふたりだけの世界になってて妬けるんだよな!」
「カイエンまで、なに言ってんだよ!?」
ふたりだけの世界なんて、作ったつもりないんだけども??
「だってさぁ、こういう話したとき、前までならセブンは我関せずって顔してたと思うのに、見ろよあの顔!」
「うん……?」
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