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143:一斉に食らう、周囲からの反発と心配

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 そもそも、俺をとりまく環境が変わりすぎている気がする。
 それはたぶん、女神様いわく『攻略が進んでいる』かららしいけど。

 それこそ前までなら、いくらジミーが教室でさわいだところで、リオン殿下が俺を探しに来てくれるなんてあり得なかっただろうなぁ……。
 というよりも、だれも手伝ってくれなかったんじゃないか?

 たぶん原作ゲーム内でのテイラーなんて、パレルモ様の威光を笠に着てえらそうにふるまっていただけの小者だっただろうし、言うなれば嫌われものだった。
 そんなテイラーがヒドイ目に遭ったところで、自業自得でしかなかったと思う。

 もちろん、特別大切な『うちの子』であるセブンから好かれているのもふくめ、この変化がうれしくないハズない。
 なにしろ『』からすれば、『星華せいかとき』の登場人物たちは皆、我が子同然に大切に思っているわけで。
 そんな彼らと仲良くなれるなんて、めちゃくちゃうれしいに決まってる。

 ───でもその一方で、大事な乙女ゲームとしての世界観を、自分の存在が壊してしまっているんじゃないかって、その不安のほうも大きかったけど。

「───それで、いったいなにがあったんだ?」
 近づいてきたリオン殿下は、俺の手首に巻かれた包帯を目にして、かすかに顔をしかめる。

「えぇと、簡単に言えば『逆恨み』ですかね?でもまぁ、そんなのはよくあることなので、どうでもいいとして……問題は───彼らをたきつけたヤツがいるってことなんですよね」
 リオン殿下に問われ、ざっくりとしたこたえをかえす。

 なにしろ俺に恨みを持つ兄弟を見つけ出し、彼らに言葉巧みに近づいて、俺を排除しようとしたヤツがほかにいるんだぞ?!
 どうかんがえてもロコトにあの薬を渡した人物を問いただせれば、この世界に侵食してきて改変した犯人に近づけるチャンスになるのは、まちがいないと思う。

「いや、そこは気にしろよっ!?」
 ところが、リオン殿下から正面切って両肩をつかまれ、真顔でせまられる。
 ちょっと怖いですって、リオン殿下。
 ほら、その迫力に若干ジミーも引いてますよ。

「なんでですか?だってマオトが俺のこと、恨みたくなる気持ちもわかりますし……」
 本来なら地味で悪役系モブにすぎない存在なのに、そんな俺がまさかのブレイン殿下の現恋人なんだぞ?
 そりゃ、まわりから嫉妬されたってしょうがないだろ。

「『なんでですか』っておまえなぁ……」 
「リオン殿下のおっしゃるとおりだ、あんたはもう少し自分を大事にしろ」
 深いため息とともにあたまをかかえてしまったリオン殿下に代わって、セブンが後ろから苦言を呈してきた。

 たしかこれ、女神様にも似たようなこと言われたんだよなぁ……俺が、自分のことを後まわしにしがちだって。
 ───でもそんなの当然だろ、周囲はすべてかわいい我が子みたいなモンなんだから。
 親の立場になってかんがえればわかるだろ、我が子と自分のどちらを優先するかなんてさ。

「大事にしろって言われても、もう十分すぎるほど大事にされてるし……そうだ!それよりも、懲罰房に行かなきゃならないんだ!」
「なに言ってるんだよ、テイラー!まだ顔色悪いってのに!」
 ちょっと想定外のメンバー集結に、うっかり気を取られそうになったけど、これだけはゆずれない。

「あぁ、ナルデロの言うとおりだ。どうしておまえは無茶ばかりしようとするんだ?!」
「そうそう、せっかくダカラもっと言ってやッテ」
 リオン殿下からの説教に、セラーノ先生がかさねてくる。

「えぇっ!ちょっとセラーノ先生、裏切るんですか?!懲罰房まで連れてってくれるんじゃないんですか!?」
「ごめんネ~!僕だッテ君のことが心配なのはおなじなンだモン!」
 顔の前で両手をあわせてあやまってくるセラーノ先生は、正直かわいかったけど……。

「あのなテイラー、どう見ても顔色悪いままだし、そんな弱った状態で行けるわけないだろ?懲罰房って、ベル・パプリカもいるんだろう?また心ないセリフ吐かれて、嫌な思いすることになりかねないんだぞ?!」
「~~っ、そりゃわかってるけどさぁ……」
 心底心配そうな顔で、カイエンにまでたしなめられた。

 でも、できることなら今回のロコトだけじゃなく、ベルからも話を聞いてみたいって思ったんだ。
 まだ確固たる証拠があるわけじゃないけど、たぶんロコトもベルも、この世界に改変を行った侵食者本人と接触をしている可能性が高かったから。

 そりゃ、俺のこと心配してくれるその気持ちはありがたいけど、今はむしろ困るんだってば!
 でも説明しようにも侵食者のこととか、みんなには言えないこともあるわけで。
 どうしたらいいんだ───?!

 と、そのとき。

「───それでもあんたには、行かなきゃならない理由があるんだろう?なら、オレが連れてってやる」
「セブン!?」
 まさかの申し出をしてくれたのは、セブンだった。

「正気か、スコーピオン?!」
「そうだよ、いくらなんでもダメだろ、セブン!」
 だけど俺がお願いするよりも先に、リオン殿下とカイエンからの猛反発を食らう。

「ウーン、僕にも連れてってあげタイ気持ちはあルンだけど……それこそ危ないッテ、ブレインに怒られちゃうと思うンだけどナ?」
 セラーノ先生からも、やんわりとたしなめられた。
 うぅ、劣勢だぞ、これ!?

「なら紫殿下から、オレもいっしょに叱られてやる」
 うわ、なにそれ、カッコいい!!
 まったくブレないセブンが頼もしすぎる。

 やっぱり頼りになるのは、うちの子じゃん!
 友だち思いのイイコで、最高だろ!
 どうだ、うちのセブンは!?

「……わかったから、そんなキラキラした目で見なくてもいいって」
「えっ?!」
 どうやら俺がセブンを自慢に思う気持ちは、ダダもれていたらしい。
 セブン本人からツッコまれ、あわててごまかすようにせきばらいをした。
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