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128:やっかみイベントは必修ルート
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本来ならば授業がはじまろうというこの時間、寮の部屋に閉じこもるパレルモ様を待っていた俺に声をかけてきたのは、見たことのない顔の男子生徒だった。
……つーか、だれだよこの筋肉ゴリラ?!
あきらかに鍛えた見せ筋というか、貴族としてどうなんだとツッコミたくなるほどに厚い胸板に太い腕が、真っ先に目に飛び込んでくる。
あと、首だとか太もももやけに立派で、言うなればたくましいボディビルダー体型をしていると言ったほうが早いだろうか?
うちの制服は、きちんとひとりずつに合わせて仕立てられているおかげで、実際にはそうではないんだろうけれど、なんだか制服のようなきっちりした服が似合っていなくて、若干窮屈そうに見えるというか。
たぶんあれだ、着ているのがもし戦場にいそうな迷彩服とかだったら、なんの違和感もなかったかも知れない。
次に目につくのは、派手な色の髪だった。
クリーミーなエメラルドグリーンというか、水彩絵の具のビリジアンに、白を少し混ぜたときみたいな色というか。
なんだろう、ほかにもっとふさわしい色の表現があるような気がする……。
───あれだ!
銅につく緑青?
それとも、パンとかに生える青カビか??
いずれにしても、あまり目にやさしくない色味なのはまちがいない。
その派手な色の髪を、クシ目もハッキリとしたオールバックにして、ぺったりと後ろへなでつけている。
それらが合わさるとどうなるかと言えば……ものすごいたれ目で、下まつ毛がやたらと目立つ彫りの深い顔の濃さとあいまって、暑苦しくて全体的に胃もたれしそうな感じがした。
「貴様がダグラスなら、少々話し合いたいことがある!」
「……こっちにはあんたと話したいことなんて、なにもないんだが?」
尊大な態度の青カビあたまの筋肉ゴリラに、思わずムッとして塩対応でかえす。
いや、だって初対面だし。
それに応じる義務があるわけでもないし、そもそも俺は悪役ぼっちゃんの取りまきのひとりなんだし、少しくらい態度が悪くても別にいいだろ。
……なんて思っていたら。
「貴様には応じる義務があるんだ、いっしょに来てもらおうか」
「はぁっ?!」
まるで俺の心を読んだかのような発言をすると、ガシッとこちらの手首をつかんで、そのまま筋肉ゴリラは、きびすをかえして歩き出す。
「ちょっと待てよ!俺は今、パレルモ様をお待ちしてるんだって言っただろ?!」
つられて何歩か進んでしまったところで、必死に足を踏みしめて立ち止まると、ライムホルン公爵家のための用事の最中だと口にする。
目の前の男子生徒がだれであれ、ライムホルン家の『公爵』という身分的な意味でも、俺の主はパレルモ様だという意味でも、それより優先される用事にはなり得ないハズだと言外に拒否をすれば、わかりやすく顔をゆがめ、盛大に舌打ちされた。
「チッ!うるさいヤツだ。貴様は黙って我輩についてくればいいんだ!」
いやいや、今どき一人称が『我輩』の人、いる?!
思わずツッコミそうになったのは、言うまでもない。
マジでなんなんだよ、コイツ?!
さっきからツッコミが追いつかないくらい、ツッコミどころが満載なんですけどもっ!?
「いいから、手ぇ離せよ!」
つかまれた手を必死にふりはらおうとして、しかし全然うまくいかないイラ立ちをぶつけるように、相手をキッとにらみつける。
「どうした、そんなに嫌ならふりほどけばいいだけの話だろう?」
「うるせぇ、あんたが離せばいいだけだろ?!」
俺の非力ぶりをあざ笑うかのように、ニヤニヤとゆがめられる口もとには、こちらをバカにしたような色が乗っていた。
ギリッ……
マジで意味がわかんねぇ!
思わず悲鳴をガマンするために歯噛みをしてしまうくらい、つかまれた手首が痛みを訴えてくる。
「~~~~っ!!」
コイツ、まさか本気で俺の手首の骨を粉砕しようとしてたりしないよな?!
そんなん、冗談抜きでゴリラじゃねぇかよ!?
「もう一度言うぞ、ダグラス。貴様とは話し合わねばならんことがある故に、おとなしく我輩についてきてもらおうか」
「……悪いが、遠慮する。さすがの俺だって、だれかもわからない相手にホイホイついていくほど、危機管理がなっていないわけじゃない」
ヒリついた空気のなか、にらみあいがつづく。
「ははっ、『危機管理』ときたか!まるで『王族の恋人』みたいなことを言う……貴様、おこがましくもブレイン殿下の恋人面をする気か?!」
わざとらしい笑い声をあげた相手の顔には、俺への嫌悪がありありとにじんでいた。
「別に俺は、そんなつもりで言ったわけじゃない。つーか、そもそもだれがブレイン殿下と付き合おうと、あんたには関係ないことだろ?」
少なくとも、ブレイン殿下の交遊関係のなかに、こんな筋肉ゴリラがいるなんて話、俺は知らない。
だから友人として『悪名高いダグラス家の人間とつきあうのをやめさせたい』と心配をして、おせっかいを焼きにきたわけではないんだろう。
ならこれは、話しかけられ方からして、まずまちがいなく『俺がブレイン殿下の恋人だ』というウワサにたいするやっかみとしか思えなかった。
ブレイン殿下自体、作中屈指のモテ男なんだから、俺に向けられるのはおおかた嫉妬なんだろうとは思うけれど。
それでもその感情は、目の前のこの筋肉ゴリラとは結びつかなさそうで、そこにとまどってしまう。
「───それとも、実はひそかにブレイン殿下にホレてたとかいうオチじゃないよな?」
「そんなわけあるか!」
まさかと思いつつ口にすれば、案の定即座に否定された。
……なら、コイツの目的はなんだ?
そりゃゲーム本編でもブレイン殿下だのリオン殿下だのといったルートに入ると、ライバルの悪役令嬢キャラや殿下たちのファンから嫉妬でイビられるイベントはあるけれど……まさかこれがそれだとか言わないよな?!
だって俺、そもそもヒロインじゃなくてモブだし!
突如として降りかかってきたトラブルに、心臓はバクバクと激しく脈を打ちはじめる。
穏便にやりすごすには、これはいったい、どう対処するのが正解なんだ───?!
……つーか、だれだよこの筋肉ゴリラ?!
あきらかに鍛えた見せ筋というか、貴族としてどうなんだとツッコミたくなるほどに厚い胸板に太い腕が、真っ先に目に飛び込んでくる。
あと、首だとか太もももやけに立派で、言うなればたくましいボディビルダー体型をしていると言ったほうが早いだろうか?
うちの制服は、きちんとひとりずつに合わせて仕立てられているおかげで、実際にはそうではないんだろうけれど、なんだか制服のようなきっちりした服が似合っていなくて、若干窮屈そうに見えるというか。
たぶんあれだ、着ているのがもし戦場にいそうな迷彩服とかだったら、なんの違和感もなかったかも知れない。
次に目につくのは、派手な色の髪だった。
クリーミーなエメラルドグリーンというか、水彩絵の具のビリジアンに、白を少し混ぜたときみたいな色というか。
なんだろう、ほかにもっとふさわしい色の表現があるような気がする……。
───あれだ!
銅につく緑青?
それとも、パンとかに生える青カビか??
いずれにしても、あまり目にやさしくない色味なのはまちがいない。
その派手な色の髪を、クシ目もハッキリとしたオールバックにして、ぺったりと後ろへなでつけている。
それらが合わさるとどうなるかと言えば……ものすごいたれ目で、下まつ毛がやたらと目立つ彫りの深い顔の濃さとあいまって、暑苦しくて全体的に胃もたれしそうな感じがした。
「貴様がダグラスなら、少々話し合いたいことがある!」
「……こっちにはあんたと話したいことなんて、なにもないんだが?」
尊大な態度の青カビあたまの筋肉ゴリラに、思わずムッとして塩対応でかえす。
いや、だって初対面だし。
それに応じる義務があるわけでもないし、そもそも俺は悪役ぼっちゃんの取りまきのひとりなんだし、少しくらい態度が悪くても別にいいだろ。
……なんて思っていたら。
「貴様には応じる義務があるんだ、いっしょに来てもらおうか」
「はぁっ?!」
まるで俺の心を読んだかのような発言をすると、ガシッとこちらの手首をつかんで、そのまま筋肉ゴリラは、きびすをかえして歩き出す。
「ちょっと待てよ!俺は今、パレルモ様をお待ちしてるんだって言っただろ?!」
つられて何歩か進んでしまったところで、必死に足を踏みしめて立ち止まると、ライムホルン公爵家のための用事の最中だと口にする。
目の前の男子生徒がだれであれ、ライムホルン家の『公爵』という身分的な意味でも、俺の主はパレルモ様だという意味でも、それより優先される用事にはなり得ないハズだと言外に拒否をすれば、わかりやすく顔をゆがめ、盛大に舌打ちされた。
「チッ!うるさいヤツだ。貴様は黙って我輩についてくればいいんだ!」
いやいや、今どき一人称が『我輩』の人、いる?!
思わずツッコミそうになったのは、言うまでもない。
マジでなんなんだよ、コイツ?!
さっきからツッコミが追いつかないくらい、ツッコミどころが満載なんですけどもっ!?
「いいから、手ぇ離せよ!」
つかまれた手を必死にふりはらおうとして、しかし全然うまくいかないイラ立ちをぶつけるように、相手をキッとにらみつける。
「どうした、そんなに嫌ならふりほどけばいいだけの話だろう?」
「うるせぇ、あんたが離せばいいだけだろ?!」
俺の非力ぶりをあざ笑うかのように、ニヤニヤとゆがめられる口もとには、こちらをバカにしたような色が乗っていた。
ギリッ……
マジで意味がわかんねぇ!
思わず悲鳴をガマンするために歯噛みをしてしまうくらい、つかまれた手首が痛みを訴えてくる。
「~~~~っ!!」
コイツ、まさか本気で俺の手首の骨を粉砕しようとしてたりしないよな?!
そんなん、冗談抜きでゴリラじゃねぇかよ!?
「もう一度言うぞ、ダグラス。貴様とは話し合わねばならんことがある故に、おとなしく我輩についてきてもらおうか」
「……悪いが、遠慮する。さすがの俺だって、だれかもわからない相手にホイホイついていくほど、危機管理がなっていないわけじゃない」
ヒリついた空気のなか、にらみあいがつづく。
「ははっ、『危機管理』ときたか!まるで『王族の恋人』みたいなことを言う……貴様、おこがましくもブレイン殿下の恋人面をする気か?!」
わざとらしい笑い声をあげた相手の顔には、俺への嫌悪がありありとにじんでいた。
「別に俺は、そんなつもりで言ったわけじゃない。つーか、そもそもだれがブレイン殿下と付き合おうと、あんたには関係ないことだろ?」
少なくとも、ブレイン殿下の交遊関係のなかに、こんな筋肉ゴリラがいるなんて話、俺は知らない。
だから友人として『悪名高いダグラス家の人間とつきあうのをやめさせたい』と心配をして、おせっかいを焼きにきたわけではないんだろう。
ならこれは、話しかけられ方からして、まずまちがいなく『俺がブレイン殿下の恋人だ』というウワサにたいするやっかみとしか思えなかった。
ブレイン殿下自体、作中屈指のモテ男なんだから、俺に向けられるのはおおかた嫉妬なんだろうとは思うけれど。
それでもその感情は、目の前のこの筋肉ゴリラとは結びつかなさそうで、そこにとまどってしまう。
「───それとも、実はひそかにブレイン殿下にホレてたとかいうオチじゃないよな?」
「そんなわけあるか!」
まさかと思いつつ口にすれば、案の定即座に否定された。
……なら、コイツの目的はなんだ?
そりゃゲーム本編でもブレイン殿下だのリオン殿下だのといったルートに入ると、ライバルの悪役令嬢キャラや殿下たちのファンから嫉妬でイビられるイベントはあるけれど……まさかこれがそれだとか言わないよな?!
だって俺、そもそもヒロインじゃなくてモブだし!
突如として降りかかってきたトラブルに、心臓はバクバクと激しく脈を打ちはじめる。
穏便にやりすごすには、これはいったい、どう対処するのが正解なんだ───?!
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